なかなか居ないと言ってくださった。

2017.03.08

やはり声が大きいシキナミさんがお昼過ぎにいらして下さいました。
今計画している大きな住宅のキッチンの相談にいらしてくださったのです。

「イマイさんのような家具屋さんってなかなか居なんですよ。
家具作家さんはキッチンは設備だっていうことでなかなか踏み込んでくださらないし、オーダーキッチンメーカーさんはメーカーさんの色が出てきてしまってフィットする時は良いのですが、あと少し細かいところに手が届きにくい時があったりして、どっちももどかしく感じちゃう時があって、家具らしいキッチンってなかなか難しくて。だから今回、このようなかたちならイマイさんに相談かなって思っていたのです。」
と朗らかに笑いながらそうおっしゃってくださいました。

いまだに自分の立ち位置がよく分からない私は、必要とされるいろいろな形に柔軟に対応できる工房でありたいとだけ思っていましたので、このように言ってもらえるのはうれしいのです。
だから、反対にイマイさんらしさがほしいって言われると困っちゃうわけで・・。
今日も、シキナミさんに「このあたりはイマイさんにお任せします。」って言われた部分がいくつかあって、さてどうしよう・・。

ウェブサイト更新

2017.03.08

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン今まで念願だったことのひとつ。知り合って20年以上経つ友人でもある福原さんの自宅のキッチンを作らせて頂いたこと。それを記事にしました。

20161217004平成建設さんからのご依頼で、作らせて頂いたSさんのL型のキッチン。どこか懐かしい印象を受けるのですが、まず私が最初にここに訪れて思ったのは、リスがご飯を食べて眠って、毎日を過ごす温かな巣のような場所だなと感じたのでした。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚お料理上手でもてなし上手なMさん。クレミルの時は、手づくりのクリスマスリースを頂いたことのありましたね。そのMさんに3年ぶりにこうして会えたことがとてもうれしかったです。そのキッチンのことをようやく記事にすることができました。

もし、よろしければご覧になってください。

おいしくなあれ

2017.03.08

「タモとブラックウォールナットのセパレートタイプの食器棚のオーダー」

鶴見 M様

design:Mさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:tatsuya suzuki
painting:yasukazu kanai

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

使いたいものが使いたい位置に置かれている、良い食器棚。

「初めまして。Mと申します。
今秋に新築のマンションへ引越しをするのですが、不動産業者紹介のデザイン会社で食器棚を見積もりしてもらったところ、今ひとつピンと来ず、いろいろとネットで探していたときに御社のページに辿り着きました。
せっかくお金を出して作るのであれば、納得のいく形にしたいのです。そういう意味では御社なら叶えられるかな?とページを拝見して思いました。
検討しているのは「北欧風の色とデザイン、炊飯器置き場は扉を持ち上げられるデザインです。ゴミ箱置き場は検討していません。(なくてもいいかな、と。。)
添付写真1枚目(モデルルームにて撮影)は備付けのキッチン。
写真2枚目はデザイン会社から提示された食器棚。(モデルルームにてこちらも撮影)。
左サイドの炊飯器置き場、また下棚の天板は人工大理石で、奥行きを通常450㎜から、500mmに変更するとさらに追加料金が発生します。
持っているスチームオーブンを置くためにはどうしても奥行き500㎜はほしいと思っています。
心配なのは、スチームオーブンの蒸気が後方上面から出るので、上棚の底が傷まないか、ということです。
何か特殊加工をした方がいいのか、通常の無垢材のオイル仕上げで大丈夫なのか…正直、素人の私にはわかりません。
アドバイスいただけますと幸いです。
またもっているカップボードの写真をも併せて送ります。これはリビングダイニング側にアクセントで置く予定です。
なので、オーダーする食器棚も同じような色合いがいいかな・・・と漠然と考えております。
なお、マンションの内覧会が8月に決定しておりますが、今からオーダーしても間に合いますでしょうか?
引渡しは9月末ですが、他の施工業者が入る関係上、引越しは10月後半を予定しています。
お忙しいとは存じますが、お時間ございますときにお返事いただけますと幸いです。
以上よろしくお願いいたします。」

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

吊戸棚の様子。戸棚下のオープンスペースは、今回は吊戸棚と同じ奥行で深めにして作っています。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

カウンターの様子。今回の家具の樹種、色、デザインは、Mさんが長年ずっと使ってきたチェストに合わせているのです。少しクラシカルなデザインに2色を組み合わせた素材使い。真鍮のツマミなど、今はダイニングに置かれたそのキャビネットと同じ印象にしているので、ダイニングからキッチンがとてもまとまった印象になっているのです。

Mさんから食器棚のご相談を頂きました。拝見させて頂いたデザイン会社さんの図は、キッチンメーカーさんのキャビネットの組み合わせで展開された食器棚の図でした。サイズは一般的なモジュールの組み合わせですので、きちんと納まるようになっているのですが、その人それぞれの要望まで踏み込んだ形にはやっぱりならないのです。

みんなが同じ形を望んでいるわけではないから、一番標準的な形で作られているキャビネットが多いのです。
だから、メールで頂いたような細かな要望となると対応しづらい部分があるのでしょう。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

引き出しの様子、その1。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

引き出しの様子、その2。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

引き出しの様子、その3。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

引き出しの様子、その4。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

引き出しの様子、その5。

そこでさっそくより具体的にお話をお伺いして形を考えていったのです。
スチームオーブンのヘルシオを使っていて、その蒸気を逃がす形にしたいこと。食器棚設置壁面の左上に梁があること。そういう条件が重なってひとつの形が見えてきたのです。
「空いたスペースは、素人考えですがスチームオーブンの水蒸気および発生する熱を早めに逃がすためと考えています。
そのために上が空くのはもったいない、とデベロッパーからは言われましたが、毎年梅干しを漬けるので梅を干すための盆ざる(直径50センチ)を壁にかけて置きたいと思ったり、ジャムを作るときのレードルや木杓子などを吊り下げておくなどの“空間”を作りたかったためです。変でしょうか?」

全然変じゃないです。楽しみですね。
そこで私は一つ提案をさせて頂いたのです。
以前にKonaSalonの熊崎さんからのご提案で作らせて頂いた「鍋掛」や以前cafeのカウンターに作った「長押」をつけると良い雰囲気になりそうだと思ったのです。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

最終的には扉は付けないでオープンになった炊飯器用のスライドテーブル。

「さっそくのご回答、ありがとうございます!
また素敵なご提案もくださり、とっても参考になりました。
シンプルなのにすごくかわいいですね!
ぜひつけたい、と思いました。
それとは別に、持っているキッチンインテリアの本に載っている壁かけ(?)の中で、これいいなー、と思ったモノがありました。
写真をお送りしますのでお時間あるとで結構ですので、ご覧になっていただきご意見頂戴できればと思います。
写真ではカップがたくさんかかっていますが、もう少しキッチンのツールをかける仕様で、段の幅が広くなったものにできたらいいのかな、とか。。
また、写真の中のサイドの壁についている、上に小物が置けて、その下にフックがつけられる仕様のものもいいかな、とか。。
キッチンの食器棚とコンロの間の壁に、こういうのがあっても便利かなーと思ったりしました。
見せる収納、見えないように隠す収納をバランスよく取り入れられるといいなぁ~と思っています。」

mrt013

長押のイメージ。

そこで、何となくイメージが頭の中に浮かびましたので、それを絵に描いてMさんにお送りしたのです。

「昨日は、お見積り、図面、スケッチなど、お送りくださり、ありがとうございます!
迅速に対応くださって、なんだか恐縮するとともに、うれしく思いました。
夫はスケッチを見て、かなり感動しており、我が家の今井さまへの信頼がどんどん厚くなっております^^
そして、さっそくすべて拝見させていただきました。
まず左側の吊戸棚を外してくださったことで、見た目の全体感がスッキリしますね。
こうして図面にしていただくとすごくわかりやすいなーと思いました。
またその空いたスペースにつける長押し!
すっごくシンプルかつ機能的に使えそうでいいですね。とっても気に入りました。
季節によって飾るものを変えても素敵だな~と勝手に思ったりしてワクワクします。
あとは実際の木目や色で雰囲気も変わるかな、と思うので材料や色のお打合せが楽しみです。」

とうれしいお返事を頂いたのです。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

みんなでつぶやいているように見えるカウンターの上。

こうして、形がまとまってできあがった食器棚。実はそのあとなかなか都合がつかなくて、取付の時も参加できず、その後もなかなかお会いする機会がなかったのでした。
そして、納品から2年半後、お便りをいただきました。
「フリーハンド イマイ 今井大輔さま
初夏の日差しが心地よい季節となりました。
いかがお過ごしでしょうか。
時折、フェイスブックで今井さんのお仕事を拝見しています。
相変わらず、今井さんの作られる家具に憧れつつ、なかなか次のものに着手できないでいます。
さて、そんなご相談なども兼ねて、我が家へご招待でも、と思いご連絡致しました。
招待というほど、大したおもてなしもできませんが、今の住まいに入居してから、
作っていただいたキッチンの家具の写真などを撮りたいとおっしゃっていましたので、
遅ればせながら、ご都合をお伺いしたかったのです。
お忙しいと思いますので、ご都合つく頃などをお知らせいただければと存じます。
6月の最終週あたりか7月くらいになるでしょうか?
またお時間ございます時にご連絡くださいね。
それではお返事楽しみにお待ちしています。」

タモの長押

長押、その1。

タモの長押

長押、その2。

やっとお伺いできそうです。うれしいなあ。
そして、このメールから半年後の冬に差し掛かった頃、ようやくMさんご夫婦と、食器棚と再会。3年ぶりでしょうかね。
うれしいなあ。

「イマイさん!来て下さってありがとうございます。食器棚は大満足です。どこも不具合なくきちんと使えていますし、とても使いやすくてありがとうございます。」と奥様からうれしい言葉を頂きました。
使い込まれた食器棚は、Mさんらしさがそこかしこにあふれております。
「おいしくなあれ。」って食器棚の中のみんながMさんの背中に向かってつぶやいているのが聞こえそうなくらい賑やかな食器棚。

「さあ、イマイさん、ここに座ってくださいね。」
ご挨拶と点検を終えた後、写真を撮らせて頂いてから、Mさんに促されて食卓へ。
「準備ができるまでは、あなたがお話相手よ。」とご主人を促します。
そうあらためて言われちゃうとかしこまっちゃうのですが、ご主人もとてもユニークな方ですので、お話をしているとあっと居間に時間が過ぎていく。
その時間を見計らって、奥様が手際よくお料理を運んでくださいます。
おぉ、ここはレストランだろうか。
美味しいものほどすぐに忘れてしまうもので、ふたを開けるとホクホクになった丸ごとの玉ねぎや、ほろほろになった具合の良いお肉や、・・とそれしか思い出せないのですが、(すみません・・。)大変おいしい料理をおなかいっぱい頂いて、家具の点検しに来たのに最後は街道までお見送りまでして頂くという大変すばらしいおもてなしを頂いてしまって、ありがたいことです。

タモとブラックウォールナットの食器棚

価格:570,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は30,000円から)

ネスト

2017.03.08

「チェリー板目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン」

沼津 S様

design:平成建設さん/Sさん/daisuke imai
planning:平成建設さん/daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:haraki tosou

アメリカンチェリーのL型キッチン

きちんとなかよく皆さん行儀よく並んでいますね、という言葉がぴったり。Sさんがいつもどれほど気持ち良く使っているかが分かります。


アメリカンチェリーのL型キッチン

さらに全景。自分が使いやすいように置かれている道具たち。いろいろあるけれど狭いのではなく、気持ちより距離にみんなが並んでいる。

相変わらず沼津のほうにはちょこちょことお出掛けする機会があるのです。
平成建設さんが、こまめに私たちにお声掛けくださるのです。ありがたいことです。
今回は、長泉町にご新居を建てられるSさんのキッチンを作らせて頂くのです。
まずは、Sさんも交えて打ち合わせをしましょうということで、平成建設さんの住空間までお邪魔してきました。
私たちの工房がある、寒川町はちょうど神奈川県の真ん中にあります。いつもは横浜や鎌倉、川崎などの県東部から、東京都の方々からお声掛け頂くことが多いのですが、平成建設さんとお付き合いさせて頂くようになりましてから西の方にも出かける機会が増えました。
ここが神奈川の真ん中だからか、距離は確かに違うのですが、時間を考えると混んでいる東に向かうのと、少し空いている西の方に出掛けることはそれほど変わらないのです。

アメリカンチェリーのL型キッチン

Sさんが選んだコンロは、リンナイのグリル無しの4口のコンロ。「それぞれのバーナーの位置が近いけれど、1度に4つ使うこともないし、この形が美しくどこか懐かしいので。」

平成建設さんの打ち合わせの良いところは、みんなが楽しそうなところ。
設計の奥村さんとSさんはもうどこかお友達のようにお話ししているのです。
その輪に私も混ぜてもらうと、Sさんのホワッとした空気に包まれるのです。

あれこれとキッチンを考えていくのですが、「あー、もうだんだん分からなくなってきました。」とSさん。
たしかに、考えるのは大変です。
目の前に形があるわけでもないのに、イメージしていく作業って難しいですから。
家作りは、作る人にとっても、そしてそこに住む人にとっても、それを考えるのはとても大変なこと。
ここはどうしたら素敵になるか、どうしたら使いやすくなるか、それをイメージしながら一つずつ決めていくのです。
それが、なかなか決まらない。「うーん、迷います。どうしましょう。」とSさん。
ニコニコ奥村さん。
そのようなゆっくりとした空気の中、奥村さんの原案をもとにSさんの好みを取り入れたキッチンのだいたいのイメージが段々まとまっていったのです。
きっと温かなキッチンになります。なるべくSさんの思い描いているものを形にできるように頑張ります。

アメリカンチェリーのL型キッチン

シンクは、水栓がつくところをカウンタートップよりも1段下げた通称「デッキ付きシンク」にしています。水栓を開け閉めする時の洗剤の泡などがこのデッキ部分に落ちたり、洗剤のポットのお尻でカウンターが汚れても、カウンター全体が汚れることなく、デッキ部分だけ水あか汚れを落とせばお掃除も楽ですので。

最初奥村さんから頂いていたイメージは、「レトロなキッチン」ということでした。
なるほど、お話を聞くたびにそのキッチンの印象が、というかSさんのふんわりとした印象がキッチンに反映されていくのが分かるのでした。

アメリカンチェリーのL型キッチン

壁にはチェリーの棚板を。このような棚を作る場合は、いつも材料だけ私たちが用意して、施工会社さんに取付は行なってもらいます。大工さんにつけてもらったほうが、コストも抑えられるし、作業工程もスムーズですので。今回も棚板ができあがったら、現場に送って平成さんに取り付けて頂きました。

「こんにちは。先日沼津の平成建設さんで打ち合わせをしていただいたSです。
ふわふわとした私の要望に根気よく付き合ってくださってありがとうございました。
ところで、あの日レンジフードを大きい台形?のいまどき主流ではないほうに即決したのですが、
最近の形と、私が選んだほうの形の性能の違いはなんですか?
その場で聞けばよかったのですが・・・。
おととしリフォームした実家のキッチンが最近の形だったので聞いてみたところ、油がたまるところがある、とか洗いやすいとか言われて心が揺れております・・・・。
それまで実家の換気扇は壁に直についていて、羽がくるくる回るやつでした・・。」

アメリカンチェリーのL型キッチン

引き出しの様子、その1。

結局「大きい台形のレンジフード」に決まったのですが、形はやはりモダンというよりは、どこか懐かしい感じのものになったのです。
私はてっきり白いレンジフードになるかと思っておりました。
たしかに、最近のモダンなレンジフードは継ぎ目無く成形されているもの、金網がついていなくて、簡単にファンを外して丸洗いできるものなどさまざまあります。
でも、最終的にSさんが選んだものは、やはりSさんらしい形でした。

アメリカンチェリーのL型キッチン

引き出しの様子、その2。


アメリカンチェリーのL型キッチン

引き出しの様子、その3。


アメリカンチェリーのL型キッチン

引き出しの様子、その4。


アメリカンチェリーのL型キッチン

引き出しの様子、その5。


アメリカンチェリーのL型キッチン

コンロ下のスライドワイヤーシェルフの様子、その1。


アメリカンチェリーのL型キッチン

コンロ下のスライドワイヤーシェルフの様子、その2。


アメリカンチェリーのL型キッチン

調味料用引き出しスペースの下段は、ボトルがしまえる引き出し。いつもは一升瓶が入るサイズを基準に設計しています。

そのような感じでSさんが思い描いていたのは、少し懐かしい向こうの台所。
向こうの台所で、お母さんがコトコトとご飯の支度をしていて、自分たちはそれをちょっと手前から眺めている感じ。
その向こうの台所って、お母さんのちょっとしたあなぐらのようになっていて、お母さんじゃなくちゃ、何がしまってあるか分からない。
実際、Sさんのキッチンではそのようなことはありませんでしたが、そういうどこか懐かしい巣のような印象になったらいいなと思うのでした。

アメリカンチェリーのL型キッチン

グリル無しのコンロの場合は、発火用の電池ボックスがむき出しになってしまうので、それだと美しくないので、ボックスもチェリーで製作。

そうしてできあがったキッチンは、やはりSさんらしい温かなキッチンでした。
今回のSさんの間取りは、リビングダイニングキッチンが1つのスペースになっているものではなく、キッチンが独立した形になっています。
それでも、リビングに居るだけで優しい空気がキッチンから流れてくるのが分かります。
これから、どんな暮らしが始まるかが楽しみですね。

アメリカンチェリーのL型キッチン

リンナイの4口コンロ「RD640STS」。

「キッチンは、私はもちろん気に入っていますが、夫と義母もたいへん気に入っているようで洗い物のたびに飛び散った水滴をきっちり拭いています。
お手入れの方法など教えていただきたいので、もう少し新しい家でのペースが掴めるようになったら、ぜひ我が家にいらしてください。
また連絡いたします。」

チェリーを使ったペンダントライト

今回は2階に上がる吹き抜けたところに、照明も作らせて頂きました。

できあがったキッチンを使い始めてしばらくした頃にお伺いさせて頂き、写真を撮らせて頂きました。
キッチンに踏み入れると、温かな空気に包まれました。
チェリーは色みを濃くし始めていて、Sさんの使い勝手が良さそうな道具たちが、にぎやかに並びます。
そして、キッチンの隣はパントリーになっていて、こちらも使い心地が良さそうにいろんなものが並びます。
にわかに祖母の家を思い出したのは、Sさんのキッチンが思い描いたとおりの形になっている証拠でした。

キッチン仕上
天板 ステンレスヘアライン
扉・前板 アメリカンチェリー板目突板練り付け
本体外側 アメリカンチェリー板目突板練り付け
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 ウレタンクリア塗装ツヤ消し仕上げ

チェリー板目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

よく食べてよくたべる

2017.03.08

「ナラ柾目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン」

茅ヶ崎 F様

design:MA設計室 福原正芳さん
planning:MA設計室 福原正芳さん/daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:福原さん

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

リビングはタモを白く塗装した床が広がる中にごつごつしたプリミティブなものや素材が並ぶ動きのある場所で、このキッチンは青く、白くどこか物静かな空間。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

でも、戸を一枚開けると、そしてお二人がここに立つとたちまち色が入って空気が流れだす。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

福原さんはうるさいくらいに(笑)料理が大好きで、私が訪ねるとこうして恭子さんと二人でキッチンに立つのです。でも食べたあとはすぐ寝ちゃうんですけれどね。

私が4歳年上の福原さんと出会ったのは、インテリアと建築を学ぶために入った夜間専門学校という場所でした。
夜間という性質なのだからでしょう、歳、性別、職業さまざまな人がいて、いろんな刺激をもらったのを覚えております。
デザインって何だろう、家具って、建築って・・。
以前にもどこかでお話したかもしれませんが、入学した時に校長先生がおっしゃっていたことを今でも覚えております。
「私たちは季節を五感で感じて生きている。その移ろいの機微に触れることが大切です。たとえば、ご飯を頂くお茶碗にも夏には夏の柄があって、冬には冬の柄がある・・。」というようなお話をされておりました。
しっかり覚えていなくてすみません。
その当時は、恥ずかしながらそんなことを考えたこともなかったのでした。ご飯なんて食べられる器があればいいんじゃないかって。
そんな学生でしたので、授業は新鮮で、そこに集う人もまた新鮮だったのです。
福原さんは、偶然にも私の自宅の近くの大学に通いながら、夜間はこの学校に通う学生さんで、いつか建築の道に進むんだっていう思いを抱きながらここに通っていたのです。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

キッチンの収納の形はとてもシンプル。以前に暮らしていた中村さんの設計したキッチンが使いやすかったことから、扉がたくさんあって、引き出しが少しあるだけ。吊戸棚を引き戸にしたいっていうのは福原さんのオリジナル。福原さんの家具を作らせてもらって思うのが扉が大きいこと。今回の引き戸も大きなもので、下に車を履かせているけれど、レールはアルミのものを使わないでナラの硬さそのままで受けているシンプルな作り。敷居がすり減っちゃったらまた考えますね。

当の私は、どちらかというと頼りない動機でした。
父の手伝いから始めたこの仕事にだんだんと慣れてきてしまって、このままで良いものかどうかを知りたくて、家具を作るだけではなく、家具を考えて形にする道があるのかもしれないと思ってこの学校に入ったのでした。
端的に言うと、当時のお店の什器作りの仕事に退屈さを感じて、学校という新鮮な場所に逃げたかったのだと思います。
でも、通い学ぶうちにただ形を考えるだけでは成り立たない仕事だとあらためて気づけたのはとても大きなものを得ることができたと思うのです。
そういう力を与えてくれた方々の一人が福原さんでした。
学校に通っている時から、「いつか一緒に仕事ができたらよいよね。」という話はしていて、実際に卒業してから、いくつか福原さんの建築に携わらせてもらったことがありました。
住宅やカフェなど福原さんらしい手の込んだ形で、いつも頭を悩ませながら作らせて頂きました。(笑)
そして、今回はその福原さんのご自宅のキッチンを作らせて頂くことに。
いつか夢見ていたことが、とうとうやってきたのだなあ。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

リビングに入ってすぐ右を向くとキッチンの入り口。そしてリビングの突当りからもアクセスできる回遊性のあるキッチン。それでも、ちょっと籠れるような作りになっていることで温かな印象。写真だと写っていないのですが、冷蔵庫の向かいは洗濯機が隠れています。これも今までの暮らしで馴染んできたレイアウト。

その福原さんは、ご結婚されてしばらくは中野に住んでいたのですが、その住まいが中村好文さんが設計した家だったのですね。
幾度となく訪れては気持ちの良い家だなと思っておりました。
今回福原さんの自邸もやはりその印象に強く惹かれてか、あの中野の住まいの趣を残しながら、福原さんらしさが加わった静かで優しい場所になっていたのでした。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

レンジフード上の幕板も吊戸棚と揃えて、縁まで揃えているのですから、さあ大変。そして、コンロ前でしゃがみ込むのはおませなお嬢さん。もう三人でしっかりキッチンに立つのですから頼もしい。

私たちは今回、キッチンとその背面収納、そして洗面室のカウンターの製作に関わったのですが、やはり食べることが好きな福原さん。
キッチンについては奥様の恭子さんが考えるかと思っていましたら、ほぼ福原さんのイメージで形がまとまりました。
中野の家でも伺うたびに不思議で美味しい料理が、二人の手から飛び出てくる。
私はまるで魔法を見ているように食卓に座って、彼らのマジックにじっと見入って、そして舌鼓を打っていたのです。
中村さんのキッチンはとてもシンプルでオーソドックスなかたちなのに、使う人の手によってどんなにも変化する魅力的なキッチンだって、そう思っていたのです。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

間仕切り代わりになっている食器棚。「パーテーションになる棚っていいんだよね。」と福原さん。「それとね、イマイ君。この引き出しはスライドレールナシね。」と。ふーん、福原さんらしさですね。手掛けは、以前に奥さんの恭子さんの妹さんのところに納品したチェスト(チェスト>のこしてくださったもの)の取っ手を気に入ってくれていて、そのデザインを取り入れてくれることに。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

この背面収納もナラ柾の突板を使っていて、カウンタートップだけはメラミンを使っていて、正面小口はナラで抑えるというスッキリとしたデザインも福原さんらしさ。面も丸すぎるのが嫌いで、と形はシンプルだけれど細かいところが良いところ。(笑)でも、できあがった形はやっぱり美しいのです。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

カウンターはステンレスヘアライン。キッチン自体あまり広く採れなかったので、シンクもコンパクト。「コンロはグリルは無くてよいから。お魚は編みで焼けるし、パンも同じ。」ということで、グリル無し4口のリンナイのガスコンロ。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

間仕切りの食器棚のメラミンカウンターのさらに上にあるナラのカウンター。配膳台ですね。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

木工家の井藤さんのテーブルは、浮造りになってナラ材の表情がよく表れたイキイキとしたテーブル。そこに3人で作った料理が並びます。いただきます。

そして、この新居のキッチンもまた、質素というくらいにシンプルなかたちなのですが、二人がふわりと動くたびに、魔法のように鮮やかな料理がテーブルに舞い降りる。
うーん、見ていて楽しいねえ。
そして、作るだけではなく、しっかり食べる。
最初に福原さんにあった時に思ったのが、すごいよく食べる人だってことでした。
私も大食なのに、同じくらいにもぐもぐ食べる。
あの時から18年経ってもいまだ変わらない安心があるのでした。

キッチン仕上
天板 ステンレスヘアライン
扉・前板 ナラ柾目突板練り付け
本体外側 ナラ柾目突板練り付け
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 ワトコオイル「ホワイト」

ナラ柾目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。