かたちづくられる

「チェリーのテレビボードのオーダー」

横浜 K様

design:Kさん
planning:Kさん/daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:yasukazu kanai

「はじめまして。オリジナルのテレビボードを作りたいと考えています。
こちらで書いた簡単な図面を見ていただき、詳細な構造や寸法など、実現の可能性についてお話できればと考えておりますので、一度お伺いして、お打合せいただくことはできないでしょうか。」
Kさんからシンプルなメールを頂きました。

チェリーのオーディオテレビボード

配線の穴が開いている部材は実は取り外しできて、配線しやすいようなフタになっているのです。

さっそく日時をお約束して、私たちがここでどんな形の家具を作っているのかを見に来て下さることになりました。
いらしてくださったKさんご家族は、温和な表情のご主人と、小さなお子さんを抱えた奥様。まだまだ私よりもお若くて、これからまさに新しい暮らしが始まるのだな、と思わせてくれるご夫婦でした。

チェリーのオーディオテレビボード

両端のデザイン。そして、天板の奥にぼんやり見えるのは、隠れるようにひっそりしている引き出し。

「こういう形のテレビボードを考えているのです。」
そうして、見せてくださったのは手描きで細かく掛かれたスケッチでした。
「ちょっと分かりづらいかもしれませんが・・。」と少し照れた表情でご主人がはにかみます。
「いやいや、全然。よく分かりますよ。こういうふうに描いてくださると、家具の様子が良く見えて大変助かります。」

チェリーのオーディオテレビボード

ウーファが入る部分はサランネットを張ったのですが、おちびさんにイタズラされないように、格子扉にネットを張っています。この扉が意外に手間が掛かるのです。

私たちのところには、さまざまな形で皆さんが相談にいらして下さいます。
その中でどのように形を実現していくか、できあがった形よりもその過程が大事であることが多いのです。
頂いたイメージをそのまま忠実に再現することももちろんできます。
でも、ここにいらして下さる方々は、まだ何かを見つけていないことが多かったりします。

チェリーのオーディオテレビボード

左右対称のデザインにしているので、ウーファ部分の対になるサランネットの扉は開けるとこのような感じ。引き出しが上部についていて、下には本をしまえるようなサイズで設計。

例えば、
「わたし、全然イメージがまとまらなくて、こんな状態で今井さんのところに来ていいのかしら。」と言いながらいらして下さる方もいらっしゃれば、
「ここにはこういうものをしまって、こういうふうに取り出せるようにしたいのです。そして、その隣はこれをしまえると毎日動きやすくできそうです。」としまうものひとつずつをきちんと考えてくださる方もいらっしゃいます。
どちらかというと、すべてきちんと考えられていたほうが、家具の費用は出しやすいのです。
だって、使う材も拾いやすいし、掛かる加工費もおおよそ検討がつきます。
かえって、漠然とした状態のものを、「おおよそこのくらいの費用でできますよ。」とは伝えにくくて。だって、しっかり津s刳り方を考えてみたら、こういう形にするにはこれが必要だった‥ってなることもありますので。

チェリーのオーディオテレビボード

こちらは、市販のテレビボードでよく見かけるデザイン。引き出しを開けると上部のAV機器収納部の扉がくっついているというもの。今回は濃色のアクリルを採用。

しかし、きちんと決められているほうが費用は出しやすくても、必ずしも使いやすい家具になるかどうかは分からなかったりします。
実際、そこにそれをしまえるようにしても、はたしてずっと同じ使い方をするのか、家族構成は変わるのか、しまわれるものがマイナーチェンジしたらどうなるのか、そのモノをしまうための家具にするとかえって縛られた形になってしまったりして・・。
突きつめて言えば、扉がついていて中に棚板さえ入って入れたば、あとは使う人が自由に物をしまったり、かごをしまって引き出しの代わりにしたりできるからそれでいいのではないかって思う時もあります。
そういういろいろなはざまで、使う人の好みを聞いたり、暮らしかたを聞いたり、その人の人となりを眺めたりして、そして、その人も私を見て、私と話して、私たちの家具を見て、そういう過程を経て、固まり過ぎていたイメージが、漠然としていたイメージがどこか一つの形に向かっていくのです。
そこに導くことが私たちの仕事、そして、その形を実現させるのが私たちの仕事です。

チェリーのオーディオテレビボード

全体の印象。

今回のKさんの形は、きちんと考えられていました。
AV機器類は、時代に左右されず、きちんとした規格のものがあって、それをうまくしまいながら、使い方の動線もできていて、「すてきな形ですね。」ということで、細かい調整をさせて頂いて、さらに私たちのテイストも加味させて頂いて、ほぼそのまま実際の製作図面にすることができたのでした。

チェリーのオーディオテレビボード

将来分けて使うことができるように、3分割に製作しております。

どこにも売られていない形は、そこにしかない気持ちとそこに至るまでの時間がつまった大きなかたちなのです。

アメリカンチェリーのテレビボード

価格:700,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から)

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