インストルメントパネル

「ナラ板目材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン」

二宮 M様

design:Houseゼロさん
planning:Houseゼロさん/daisuke imai
producer:hideaki kawakami
painting:yasukazu kanai

ステンレスうろこ仕上げを用いたアイランドキッチン

キッチンのイメージスケッチ、その1。


ステンレスうろこ仕上げを用いたアイランドキッチン

キッチンのイメージスケッチ、その2。

鵠沼のMさんのキッチンを作らせて頂いた時にお世話になった「Houseゼロ」さん。その大浦さんから、あらためてご連絡がありました。

「イマイさん、今度私の友人が二宮に新築するのだけれど、そこのキッチンをイマイさんにお願いしたいって思っているんですよ。一度お話を聞いて頂けますか。」とうれしいご相談。
大浦さんは、設計士さんというよりは、大工の親方のような温かな印象の人。そういう方からお声掛け頂けるのはとてもうれしいことです。
さっそく、海のそばの事務所にお伺いします。
見せて頂いた図面は、アイランドキッチンで長さ3600mmほどの大きさ。昨日的、というよりは印象を大事にしたイメージ。
「この形を元にイマイさん、細かい部分まで考えてくれますか。」

ステンレスうろこ仕上げを用いたアイランドキッチン

リビングから見た様子。前回のMさんのキッチンの時もそうですが、広々とした空間にキッチンが静かに座っているのが、大浦さんの間取りの特長に思えます。


ステンレスうろこ仕上げを用いたアイランドキッチン

キッチンのイメージスケッチ、その2。だから、階段を上がってすぐ視界に入ってくるこのキッチンがとても印象的に映るのです。

さっそくその図面を受け取って、プランを考えて費用を考えてみます。
おおよそ細かい部分までまとまったところで、大浦さんにお送りします。
「ほぼこの内容で良いと思いますので、お客様との打ち合わせに同席して頂けますか。その時に墨出しも行ないますので。」
おっと・・。ゆったりと考えていたのですが、もう現場は動いているようでした。
慌てて、いまみんなが作っている家具のスケジュールを照らし合わせて、予定を立てます。

ステンレスうろこ仕上げを用いたアイランドキッチン

キッチン側に立つとこのような印象。うろこ仕上げという独特の模様をこのカウンタートップに用いたかったのですが、サイズの関係で断念。代わりに鈍色に仕上がるバイブレーション仕上げにしています。

そして、現場にお邪魔させて頂きました。
二宮の駅からしばらく歩くと開けた場所に立つ大きめの現場がMさんのご新居でした。
「ああ、イマイさん、お世話になります。来てくれてありがとう。」
と、2階のリビングまで案内してくださって、しばらくするとMさんの奥様が現場に到着。奥様からおおよその細かなイメージを頂きまして、そしてしばらくするとご主人もいらっしゃいました。
大浦さんのご友人ということで、大浦さんと少し雑談をした後は、キッチンの打ち合わせにはあまり細かく口を差し挟まず、そのまま階下へと降りてゆかれました。
どんな方かな、気難しい方かな・・。
家具の形を考えていくにあたっては、その使う人といろいろなお話をしながら形を決めてゆく、という方法が一番と思っております。
あまり細かくお話ができないと、その人とイメージを合わせることができなくて残念なことになってしまったらいけないな、という思いを抱きながら、いつも家具を丁寧に考えているつもりです。
でも、今回のようにあっさりとお話が終わってしまうと、これで大丈夫かなって少し心配になるのです。

ステンレスうろこ仕上げを用いたアイランドキッチン

今回の表面の仕上げは、オーク板目の突板を木目を横に流してダークブラウン色にして仕上げています。

「それでは、これで打ち合わせが終わりましたので、先に失礼させて頂きますね。」と、奥様と大浦さんで打ち合わせしているところを先に階下へと下がらせて頂いたのでした。

そうして、さて、帰ろうかな、と思って居ましたら、この新築現場の隣にすっかりきれいにできあがっているガレージがありまして、そこにご主人がいらっしゃいました。
お話しづらいな‥、なんて思っていたのですが、帰りの挨拶をさせて頂こうと思いまして、「それでは、これで先に失礼させて頂きます。」とガレージに入らせて頂きましたら、ほのかにオイルとガソリンの入り混じった部屋のなかに緑のクラシックカーがとてもきれいに置かれていたのでした。
こちらのブログがその時の様子です。
この数日は

ステンレスうろこ仕上げを用いたアイランドキッチン

数少ない収納部のひとつである調味料用の引き出しは、ハーフェレ社の製品を採用しています。

「これはね、外装が木製なのですよ。」そう切り出してクラシックカーの良さをいろいろとお話してくださいました。今まで知らなかったことを教えてもらえるのはとても楽しいものです。そして、家具と同じようにきちんと手づくりされている車が美しいことにあらためて気づかされたのでした。
構造、機能、仕上がり、蝶番一つの動き方や、車のそのカーブの由縁、タイヤとスポークの関係など見ていると本当に美しい。

ステンレスうろこ仕上げを用いたアイランドキッチン

数少ない収納のもう一つの部分がこの引き出し。白いポリエステル化粧板で製作し、右隣の調味料用のユニットと同じくソフトクローズするタイプのレールを使っています。

昔から私は自転車が好きで、特にロードバイクと呼ばれる自転車が好きなのです。
子供の時分に載っていた通称「ママチャリ」とは違う、軽さ、姿勢、作り。ほんの少し違うだけで自分で漕ぐスピードがぐんぐん変わっていく。
その魅力に取りつかれた時は、毎月お小遣いを貯めては、小さなパーツを交換したものでした。
ここを変えるとどのくらい乗りやすくなるんだろう、この雑誌を見ればここの調整の仕方が分かる、なんて憑りつかれたように仕事が終わっては油だらけの手で自転車を触っておりました。
今の車は、本当によくできすぎていて、何でここでギアが変わるのかも自分で理解できないから、ただ乗っている、って感覚から抜け出せなくて、好きになりにくいのです。
でも、この車を見ていると、前に向かって早くしっかり走るためにすべてがきちんと成されている。
あの自転車を触っていた時のワクワクした気持ちが思い出されるのでした。
自分で自分のものを作りだすことができるあの感覚は、とても素晴らしいものなのでした。

デッキ付きシンク、洗剤ポケットアリ

シンクは、水栓器具がつく部分を1段下げるデッキ付きシンクにして、さらに洗剤ポケットを付けています。デッキを設けることで、水あかなどがつきやすい水栓まわりに水を掛けながら洗いやすくなりますし、デッキに濡れたものをおけるので、カウンターの使い方にメリハリをつけることができました。

「イマイさん、もしできたらこの車の印象をキッチンに取り入れることはできませんか。たとえばこのパネルとか。」

そういってMさんが指し示したのは、運転席の計器類が埋め込まれているインパネ部分でした。
そのマシンのパネルは、アルミの板でできていて、クルット丸く円を描くような模様が描かれているのです。魚のうろこのような。
アルミにうすく入ったうろこ模様が上品に見えて計器類が引き締まって見えます。
「この模様をキッチンのカウンターに入れられますか。」

ステンレスうろこ仕上げを用いたアイランドキッチン

キッチンからつながるダイニング部分。ここにMさんがイメージしていた意匠が施されています。

うーん、どうでしょうか・・。でもご主人から直接頂いたご相談ですから、ぜひ叶えたいところです。
「ちょっと板金屋さんと相談してみますね。」
「ぜひ、よろしくお願いします。」

で、さっそく会社に戻ってキッチンおプランをまとめながら、いつもステンレスカウンターでお世話になっている高橋製作所さんに相談。
「ああ、それはうろこ仕上げっている仕上げだね、イマイさん。そういう仕上げが施された板はあるので、それを使って作ることはできるよ。でも溶接する部分は模様が消えちゃうけれどね。あとはどのくらいの長さまで対応できるかなんだけれど、3600mmかぁ。ちょっと調べてみる。」
「イマイさん、ゴメン。やっぱり長さが足りないや。できても2000mmが良いとこかな。だからつなぐことになっちゃう。」
そうですか・・。それを大浦さんに伝えてMさんにお話して頂くと、やっぱりつなぎ目が入っちゃうのは残念なのですが、どこかに使いたい、ということになり、みんなでいろいろいろいろ考えて、キッチンの一部にその模様を組み込むことにしたのです。

ステンレスうろこ仕上げを用いたアイランドキッチン

ダイニングカウンターを支える脚部にうろこ仕上げのパネルを導入したのです。

こうして、独創的な形がまた1台できあがりました。

「いやあ、この部屋の空間も良いけれどキッチンもすてきですね。」
Mさんがお招きしたご友人様とカウンター越しにお話する様子が耳に届きます。
「良いでしょ。ほらここもこういうデザインにしてもらったのですよ。」と、うれしそうにうろこ仕上げの説明をしていたり。

私もうれしいです。
ありがとうございました。

キッチン仕上
天板 ステンレスバイブレーション
扉・前板 ナラ板目突板練り付け
本体外側 ナラ板目突板練り付け
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 ワトコオイル「ダークウォールナット」

ナラ板目材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

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