朗々と

「ナラ板目とステンレスの食器棚のオーダー」

都筑 S様

design:Sさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kouhei kobayashi
painting:kouhei kobayashi

ステンレスとナラのキッチン背面収納

ダイニングから見た全体の印象。

Sさんからご相談のメールを頂きました。
「建売戸建てを購入しまして、アイランドキッチンはすでにあるのですがその背面や横の壁への収納(カップボードや棚)をつけたいと思っております。
圧迫感は出したくないと思っておりますが、それなりの収納力は必要と思っておりまして、悩んでおりご相談をしたいと思っております。
できれば、こちらの自宅で実際の状況を見ながら相談できればと思います。
イメージについても妻と相談の上、お伝えするようにいたします。」
メールと一緒に現在の様子の写真と、家具の配置イメージの図を送ってきてくださいました。

ステンレスとナラのキッチン背面収納

こちらが最初に送ってくださった写真と図。オレンジ色のラインの部分に家具を作ることを検討されていたのですが、冷蔵庫の開け閉めの分家具を逃げて設置するとしても、少しばらついた収納になってしまうかどうかが図と写真からだとなかなか判断が難しく、お話しながら考えたほうが分かりやすいかなということからスタートしたのです。

図を見ると、冷蔵庫を閉じ込めてしまうような印象。あくまでもイメージなのだと思うのですが、うーん、どういうふうな家具の形にまとめてゆけばよいだろうか・・。
メールでのやり取りだとお話が伝えにくいことと、ちょうど近くでお仕事をしていることもあって、まずはお伺いしてお話を聞いてみようということに。

ステンレスとナラのキッチン背面収納

冷蔵庫柄から見た印象。吊戸棚と食器棚の右のラインを揃えたことで、目に見えない仕切りのような感じでリビングとキッチンがうまく分かれました。

静かな住宅街では「フリーハンドイマイです。」というインターホンの声も大きく聞こえます。
玄関ドアがそっと相手出てきてくださったご主人がSさん。
「イマイさんですか、初めまして。ようこそいらしてくださいました。」というその声がまるで歌舞伎役者のように低くのびやかに響きます。
「どうぞ、どうぞ。」
そう案内されて、玄関から折れてリビングに足を踏み入れると、リビングの向こうにキッチンとダイニングがある大きなひと部屋になっている、という印象です。
なるほど、こういう間取りなのですね。

ステンレスとナラのキッチン背面収納

小さな吊戸棚。当初は窓枠に上端を合わせて取り付けましょう、というお話をしていたのですが実際に壁にあててみるとちょっと使うには低かったので、高さを上げて取り付けました。

おそらくキッチン周りというと奥様のご要望が多いと思いますが奥様はお子さんのお世話をしてまだ2階にいるようでしたので、さっそく寸法を測らせて頂いて、大まかなお話をお聞きしていきます。
一番知りたかったのは、家具のレイアウトのこと。
たしかに食器棚がない分まだ物が少し散らばっておりますが、この間取りを見る限りは冷蔵庫を閉じ込めた形にしなくてもうまく収納のレイアウトはできそうな印象です。

ステンレスとナラのキッチン背面収納

扉を開けるとこのような感じです。全開時には90度で止まり、閉める時には、ゆっくり自然と閉まるソフトダウンステーをつけています。

そうしていろいろとお話を聞いてみると、冷蔵庫が大きくてこの冷蔵庫のレイアウトだと、開ける向きが限られてしまいそう、ということでした。
たしかにもともと冷蔵庫は部屋のこの角に置くのではなく、シンクの真向かいになる位置に置かれる予定でコンセントがついているのでした。
ただ、実際に暮らしてみるとリビングから冷蔵庫が丸見えになるのもどうかと思って部屋の角に置くことにしたのですが、冷蔵庫のサイズが大きいからその向きをリビング側に正面を向けた形にするしかないかなってずっと思っていたのだそうです。

ステンレスとナラのキッチン背面収納

ステンレスはヘアライン仕上げで、厚みを50mmに見せるように仕上げています。

「うーん、でももしかしたらこのスペースなら冷蔵庫の向きを変えておけるかもしれませんよ。」
実際に測ってみるとどうにかだいじょうぶそうです。
「おぉ、本当ですか。」
と言いながら不意に冷蔵庫を動かし始めるご主人。その頃には奥様の階上から降りてきてくださって、どのようになるかみんなでワクワクしながら考え始めております。
スルスルスル。
ほぅ、今の冷蔵庫って4つのキャスターがついているのですね、片手で軽く動いちゃうくらい。知りませんでした・・。
そうして、向きを変えてダイニング側に正面を向けて引き出しを開けてみると、おぉ、開きます。しかも開けても通路を通ることはどうにかできそう。
「このアイランドキッチンは魅力的だったのですが、ぐるりと回りこめる分レイアウトがなかなか難しくて・・。冷蔵庫がこう置けるなんて考えもしませんでした。」とお二人ともうれしそう。

ステンレスとナラのキッチン背面収納

ゴミ箱はEKOのフタが両開きで横開きのタイプのものを使っています。

冷蔵庫の向きが決まってしまえば、あとの収納はよりシンプルな動線で考えられます。
食器と道理道具、家電が今はわかりやすく散らばった状態なので、どこをどうしまいたいかをお二人に考えて頂いて、さらにリビングから見た時にすっきり見えるようにするにはどんな印象が良いかをあれこれお話していきました。
おおよそ形がまとまったところで、「もし、良かったら一度私たちの工房まで家具を見にいらっしゃいませんか。そのほうが実際どんな素材でどんな形を作っているのかが分かって頂きやすいですので。」とお伝えして、家具を急いで必要としているわけではないので、ぜひ一度伺います、ということに。

そうして、工房の上のショールームを見て頂いて、素材や木目の印象、そのほかの素材をいろいろと見てもらいました。
木目は最初の希望通りにナラの板目材の表情が気に入っているということで、その印象で作ることにして、天板を今回はステンレスにしたのです。
「ステンレスはどのくらいの厚みに見せますか。」
もともと1.2mmの厚みのステンレスを使って、厚みを作っていくのですが、そのままの厚みで見せたいというお話やオーソドックスに25mm前後で仕上げるお話は多かったのですが、今回のSさんは「厚く見せたい。」というご主人のご要望で50mmの厚みで仕上げることにしたのです。
今までになかった厚みですがその存在感がとてもよく出ています。

ステンレスとナラのキッチン背面収納

引き出しの様子、その1。


ステンレスとナラのキッチン背面収納

引き出しの様子、その2。


ステンレスとナラのキッチン背面収納

引き出しの様子、その3。


ステンレスとナラのキッチン背面収納

引き出しの様子、その4。


ステンレスとナラのキッチン背面収納

引き出しの様子、その5。

こうしてできあがった形を無事に設置してみますと、印象としてはひとつながりになっているこの部屋ですが、この家具がついたことでリビングとキッチンの役割や空間がきちんと分かれることができたと思います。

「本日の取付作業、ありがとうございました。
取付はもちろんのこと、家具自体のデザイン・質感・製作精度が他の家具と比較して群を抜いており、急にキッチン・リビングが華やかになり、奥さんとともに感動しております。
インターネットがなければ、フリーハンドイマイさんのことも知ることがなかったですので、今の時代と素敵なホームページに感謝してます。
オイル塗装について本日説明いただいておりましたが、メールでさらに理解深まりました。定期的にワトコオイルを塗ってみようと思います。
これからもどうぞよろしくお願い致します。」

ご主人の声がいまにも響いてきそうなうれしいメールを頂きました。
今回の家具を作らせて頂いたことで空間にメリハリが出ましたね。
続いて私が個人的に気になっているのがダイニングに置かれた細かいものを置いている棚なのですが、これをうまく片付けられたら良いなと思っているのはまだSさんにはお伝えしておりません。(笑)
いつかお声が掛かるのをお待ちしております。
ありがとうございました。

ナラとステンレスの食器棚

価格:750,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は50,000円から)

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