オーダー製作例

ナラの節アリ材とグレーのキャビネット

背中を押してくれるひと

「食器棚のオーダー」

横浜 K様

design:Kさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:iku nogami
painting:iku nogami

ナラの節アリ材とグレーのキャビネット
「もし良かったら、写真に入ってもらえるとうれしいのですが。」とお願いすると、「ええ、でもおなかが大きな姿でいいのですか。」「もちろん。」

ある日曜日にひとり工房で作業をしておりました。
何をしていた時かな、忘れちゃったな。
機械の音に交じって若い女性の声が聞こえてきたのです。
んっ、と振り向くとかわいらしい女性がドアの向こうではにかんでおります。いつも突然声をかけてくるのは、工房の前を通るおじさまばかりでしたので、これはめずらしい。

ナラの節アリ材とグレーのキャビネット
こちらが食器棚全景。向かいにキッチンがあるのですが、間取りが不思議なもので、キッチンまでの距離がとても遠いのです。「家族が増えてこの先もっと収納場所が必要になったら、また相談させてください。」

うちの前には、家具作りの時に出る端材を駐車場の前に箱に積んでおいておくのです。
そうすると、日曜大工好きのおじさまが自転車の荷台にゴムロープで括り付けて大量に持って行ってくださるのです。何に使うのだろう・・。
時には、下校途中にちびっこも箱をのぞき込んでいきます。
男の子は何を作るのかなあ、ちゃんと私たちに声を掛けて丁寧に選んできちんと持っていく子もいれば、棒材でチャンバラを始めちゃってその辺にポイって捨ててっちゃう子もいたりして、そうするとスタッフのみんなが「おいおい。」って子供たちに言って聞かせるのですが、わんぱくな子はわんぱくです。
時には、女の子も自転車でやってきてはやっぱり丁寧に楽しそうに材を選んでいくのです。女の子も木工が好きなのだなあ・・。

ナラの節アリ材とグレーのキャビネット
引き出しのハンドルは、KUMA鍛鉄工房さんの槌目がきれいに映るハンドル。

でも、若い女性が一人でってめったに来ることはなくてこれはめずらしい。
家具の相談という感じでもなさそうでしたので、「はい、どうされました。」とお聞きすると、「あの端材頂いていっても良いのですか。」と。
めずらしいなあ。
「どうぞ、どうぞ。お好きなだけお持ちください。」とお伝えすると、「実は昨年主人が自治会でお世話になって、こちらの会長さん(私の父のことです。)にいろいろと面倒を見てもらったので、一度来てみたかったのです。」と、かわいらしい笑顔でそうおっしゃってくださいました。
「そうですか、父はもうここの仕事をするよりは町のことにかかわってい時間が長いですもので。知って頂けて良かったです。」
そんな感じで、その日はその女性はお帰りになられたのです。

ナラの節アリ材とグレーのキャビネット
引き戸を開けた内部は、グレーの化粧板で、棚板の小口はナラ材を練りつけています。これがとても良い表情。

ご近所にかわいらしい方がいらっしゃるのだなあ、なんて思いながらそのまま忘れておりました。

ナラの節アリ材とグレーのキャビネット
食器たちもまだお二人分ですので、余裕があります。中が濃い色でも食器の鮮やかな色が映えるのだなあ、と良い勉強になりました。

ところで、私たちは毎年の12月に「クレミル」という名前の小さなイベントを開いているのです。
元々父がまだがっつりここで頑張っていたころに仲間を集めて自分たちの趣味のものを展示するイベントだったのですが、少し趣向を変えて、私たち若者?メインで仕切り直し始めたのが、この「クレミル」です。
期間中は知り合いのクラフト作家さん、版画家さん、パン作家さんの作品をおかせて頂いて作家さんもいらしてくださって、みんなで和やかに過ごす小さなイベントです。その中の1~2日間を使って、私たちの工房を使って木工教室を開く、というワークショップも行なっているのです。小さなお子さんやお父さんお母さんが1日楽しめるようなイベントにしたい、ということと、家具作りで出た大きな端材をみんなで活用してもらいたい、ということで始めたワークショップで毎年好評を頂いております。
その参加者さんは、本当に両若男女で、赤ちゃんを抱っこしたご夫婦から、2世代で参加するご家族、私の近所のお父さんなどいろいろな皆さんが集まります。
その中で、3世代(おばあちゃん、お母さん、ちびっ子たち)で参加してくださったグループがいらっしゃいました。
その時は、あれっって思ったのですが、なかなか思い出せず、作業を終えてみんなでお茶を飲んでいる夕方になってはじめて、あぁ、あの時の女性だって気が付いたのでした。
それでお話を伺うと、やっぱり近所に住んでいらっしゃるということで、今日は自分の子供たちとお母さん、そして、妹さんと参加してくれたのでした。
で、この女性も妹さんもとても魅力的な方々で、いろいろとお話をすると、みんなでこの寒川を盛り上げていきたいなってそんなお話になったのです。ちょうどその日にいらしてくださっていたほかの参加者さんも、聞いてみるとご近所でご主人の勤め先が同じこの先にある大きな会社さんということで、なんだかつながっていくのです。
おぉ、心強く、とても楽しい方向にお話が広がっていきます。

以前にキッチンを作らせて頂いた「木々があいさつしてくる」のMさんと打合せしているときに言われたことがあるのです。
「少し遠くに出掛ける用事ができたときは、その用事が終わってしまったら戻ってくる、っていうのだと何となく淋しいんです。だから、下調べしておいて、その用事が済んだら、どこをどう回ってその街を1日楽しめるかってことを考えるのです。」とMさん。
すると奥様がすかさず「で、用事がすんだらおいしいもの食べて、おいしいものを手に入れて、最後は温泉があればそのままお風呂に入って泊まっていくこともよくあるのです。」とうれしそうにおっしゃっていました。

ナラの節アリ材とグレーのキャビネット
今回この引き戸は内部に合板を挟んでプレスして、反りを抑える作りにしました。そして、手掛けは30ミリ角の四角い小さな引手。

その様子を思い出しました。
この寒川という町は何ができるんだろう。まだまだ知らないことが多かったりして、ご近所の方々とこうしてお話していると、もっと魅力のある1日楽しめる街にできるんじゃないかってワクワクしてきたのでした。
そうして、少しずつこの町の楽しい部分探しをアキコと二人で始めたわけですが、それはまた別の機会に。

このワークショップに参加してくださったかわいらしい女性の妹さんが、今回のオーナーのKさん。
前置きがとても長くなりました。
Kさんはご結婚されて、このすてきなタイミングで赤ちゃんができて、さらにはご新居に移るというすてきな年だったのです。
このKさん、ワークショップの時はどちらかというとあっさりしたしゃべり方をされる女性でしたので、うちのことをどう思ってくださっているか少しわかりづらい部分があったのですが(笑)、いろいろと思っていてくださって、「新居に置く食器棚はイマイさんにお願いするんだ。」って決めてくれていたのだそうです。
うれしいなあ。

ナラの節アリ材とグレーのキャビネット
カウンターはトップのみステンレスのバイブレーション仕上げの板を貼り、カウンターの小口部分はナラ材を練りつけています。
ナラの節アリ材とグレーのキャビネット
引き出しの様子を少し。今回はシナ合板で引き出しを作っています。
「昨年のワークショップでお世話になりました、Kです。あの時作った鍋敷きは我が家で大活躍しております。
姉が机を作るのでもお世話になりました。まだ、実物を見ることは出来ていないのですが、見て触るのが楽しみです。
今回メールさせて頂いたのは、昨日のInstagramに載っていた、ナラを使ったカウンターがとても気になったので連絡させて頂きました。
まだ、正式に決まったわけでもないのですが、近々戸建てを購入予定です。そこで、電子レンジ、炊飯器、精米機を上に置くことができ、且つ食器を下にしまえるものがないか考えていました。
はじめは、無印で済ませてしまおうか・・・、自分で作れないか・・・、でも、やっぱりフリーハンドイマイさんで触った木たちが忘れられない・・・などと考えていた時に、フリーハンドイマイさんのInstagramで「これだ!こういうのがいい!」というものを見つけました。それがNさんがオーダーされたナラ材のカウンターでした。
まだ、主人には話していないので、必ずお願い出来るかはわからないのに、こんなことを聞くのは申し訳ないのですが、このNさんがオーダーしたものがお幾らなのか教えていただけますでしょうか。」

Nさんとは、「ひとつずつ」の茅ケ崎のNさんですね。
ご依頼いただいた皆様の家具が次の皆さんへとつながっていくというのは本当にうれしいことです。
さっそくNさんの費用をお伝えして、まずはお願いできそうだ、ということで詳しく打ち合わせをすることになりました。
そうして、いろいろとお話をするうちに、同じナラ材でもより表情に動きのある節の入った材を使うことになり、引き出しの取っ手も槌目を残したKUMA鍛鉄工房さんのハンドルを使うことになりました。
手の跡や表情がよく分かる仕上げを好むKさんらしい選択になりました。
そして、最近皆さんにお話しする時に内部の仕上げもひと工夫すると面白いかも、ということで、今回濃いグレーの化粧板を使ってナラとのコントラストが出るようにしたのです。

「本日はありがとうございました。
先程、搬入が終わり我が家にきた食器棚を見て、さわって、うっとりしながらメールを打っています。
ナラの無垢材節ありにしたこと、引き戸の手掛けを四角にしたこと、引き出しのハンドルをKUMA鍛鉄工房さんのにしたこと、化粧板をグレーにしたこと、上をステンレスにしたこと。そして、フリーハンドイマイさんにお願い出来たこと。すべてしてよかったなぁと食器棚を前にして思っております。
家は買ったものの、まだ自分たちの家だ!という気持ちが少なかったのですが、この食器棚が来てくれたことで、あー、自分の家だなぁとより想えます。
ぜひ、落ち着いたら見に来て下さい。
食器棚はこれから家族の一員として大事に使っていきます。
本当にありがとうございました。
スタッフの方々にも、感謝をお伝えください。
近々というわけにはいかないかもしれませんが、またお願いすることがあると思います。
その時はよろしくお願いいたします。
あー、良い買い物しました!職人さんってやっぱり素敵です!」

そういうKさんも職人さん。ご夫婦で整体師さんなのです。そういう素晴らしい方々から素敵な言葉を頂けることが幸せなのです。
そして、何よりもお姉さんやご近所の皆さんと一緒に私たちの背中を押してくれたこと、それが一番うれしいことです。
この先、こうしてみんなの言葉を頂いて、この工房をもっと魅力的に、この町をもっと魅力的にしていくことが私たちの役割なのかもしれませんね。

チェリーとステンレスの食器棚
価格:420,000(製作費,塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から取付施工費は25,000円から
ちょっと関わりのありそうな家具たち