ストーリーテラー

「クルミ板目材とセラミックストーンのオーダーキッチン」

町田 D様

design:Dさん/daisuke imai
planning:Dさん/daisuke imai
producer:iku nogami
painting:iku nogami

クルミとセラミックストーンを使ったアイランドキッチン

全体像。お引渡し前の最終調整の時にお邪魔させて頂きました。


クルミとセラミックストーンを使ったアイランドキッチン

2階に上がると、この広い空間にたどり着きます。この場所でまるでステージのようにキッチンが浮かび上がります。


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「お邪魔します。」ようやく3年を経て、使っているお湯酢を拝見させて頂くことができました。デクトンとクルミの組み合わせがどのように変化しているのか楽しみだったのです。

住宅のフリーペーパーに私たちのキッチンが掲載されていたそうです。
それを見たDさん、今度はPinterestに私たちのキッチンの画像が掲載されていたとのことで、それを見てメールをくださいました。
いろいろなところで、すこしずつ取り上げてくださいまして大変感謝しております。
神奈川のほぼ中央のある町なのに、市ではなく郡でいて単線が走るこののどかな町にある小さな木工所をこうして知ってくださることに大変感謝しております。

クルミとセラミックストーンを使ったアイランドキッチン

セラミックストーンのカウンターとステンレスヘアラインのシンク。そして、水栓は触れると吐水するデルタのトリンシックタッチを採用しています。

Dさんはキッチンに対していろいろな思いがあって、それをメールで書いてくださったのです。
「以前、カタログを送っていただきました、Dと申します。このたび工務店との打ち合わせでいよいよキッチンを決めなければいけない段階に入り、色々ショールームも見たのですがなかなか気に入ったものが見つからず・・。
ずっと気になっていたイマイ様にご連絡させていただきました。
ウッドワンのKUROMUKUという製品がとても気に入ったのですが、収納部分が全く隠れないのでKUROMUKUのような表情のキッチンで、かつ収納力もあるアイランドのキッチンにしたいなあと思っています。
制作例でいうと、「跡をのこす」や、「豊かな色」が好みに近いです。木の中に黒が効いているという感じです。リビングの顔、というイメージでは、「ステージ」も好きです。
リビングはオークの無垢板張りにする予定なので、キッチンも合わせてオークがいいと思っています。また、この予算で可能なのか心配ですが、キッチンの天板はセラミックタイルがいいなあと思っています。キッチンの仕組みはザっとですが、シンク下はタオルバーとごみ箱の空間を空け、右隣に海外製食洗器、コンロの下のスライドワイヤーシェルフ2段、コンロ脇は調味料入れ2段、包丁入れ…という感じです。キッチンリビング側正面は、「豊かな色」のような感じで、両脇収納真ん中がグレーの棚になっているのが素敵だなあと思っています。(わかりづらくて申し訳ありません。スケッチしたのですが、プリンターとパソコンの調子が悪く、読み取れませんでした。)」

クルミとセラミックストーンを使ったアイランドキッチン

セラミックストーンは浮いているように見せるために、カウンターの裏打ち材を少し奥に入れ込んだ形にしています。


クルミとセラミックストーンを使ったアイランドキッチン

今回のキッチンのプランは、シンク下の一部にオープン棚を設けて、その隣はゴミ箱を置くスペース。食洗機の隣は先ほど紹介した引き出しで、コンロの下にはスライドワイヤーシェルフ。一番右端がスパイス・ボトル用の引き出しとなっています。

なるほど、最近はすこし色褪せたような、どこか素材の印象がむき出しのような仕上げを好まれる方が増えてきました。
Dさんが挙げてくださった方々のキッチンは、どちらかというと今までは仕上げとしてはイレギュラーな形の納め方をしている方々ばかりです。
そういう形がより生き生きと見える、素材の表情がそのまま感じられる物の良さ、物を作ることで生まれる手の跡、足跡、のようなものが評価されるものの見方が浸透してきたのですね。
この流れとともに物を作り出すことの良さがより見直されて、生み出すことの素晴らしさをもっと実感できる社会になったらよいなと思うのですが、既に必要なものが出揃っているように感じられる今の暮らしでは、なかなか新たなものを作ることに夢を抱くことは少し難しいのかもしれない、とも思えて、淋しい側面も感じられるのです。
しかし、こういう考え方が広まっていくことはとてもうれしいことです。

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特長的なポイントとしてコンセントとスイッチがあります。もともとキッチンの横にダイニングテーブルをつけて使いたいというイメージがあったDさん。シンクの前には家電用のコンセント(JIMBOのNKシリーズの黒いもの)をつけていて、ダイニングテーブルでも家電(ホットプレートなど)を使いやすいようにコンセントと、さらにダイニングのペンダントライト用のスイッチをどちらが分から座っていても入り切りしやすいように真ん中につけています。


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先ほどご紹介したデルタの水栓の隣にあるボトルが洗剤用のボトル。トリンシックタッチを初めて触らせてもらったのですが、かなり感度が良いのですね。今日はメンテナンスをするのにリビング側からちょこちょこと水を使わせてもらっていたのですが、うっかり腕が水栓本体に触れただけでお水が出るというのはおもしろいなあなんて思いながら作業しておりました。


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シンク下はゴミ箱が2台置けるスペースを確保して、残りはステンレスを上面に張った棚板が入る収納を作りました。


クルミとセラミックストーンを使ったアイランドキッチン

食器洗浄機はASKOの「D5556」というかなり大型のタイプを採用。


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このタイプは操作部分が隠れる全面パネルタイプになっていて開けるとこのように操作部分が見えます。また実際稼働中はどのような状態なのかが分かるようにLEDのインジケーターがパネルの下部で光るようになっています。

そして、今回初めて使おうとしているセラミック。ちょうどこのところテレビのコマーシャルでも取りあげられていました。熱いものをそのまま直に置いたり、鋭いものが当たっても傷にならない素材。
ふーん、そのような素材があるんだなあ。とその時は何気なく思っていたのですが、これだったのですね。

クルミとセラミックストーンを使ったアイランドキッチン

引き出しのパーツはハーフェレのものを採用。今回初めて使ったこの引き出しは、中央のパネルにいろいろなボックスやフックを掛けられるようになっている多目的に使える引き出しになっています。


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引き出しの様子。今回ここの引き出しは化粧板ではなくハーフェレのノヴァプロクラシックというスチール製の引き出しを採用しています。


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実際に使っている様子。Dさんいわく、「ここは少し変わった調味料をしまう引き出しなのです。」とのこと。けっこういろいろとしまわれていて、重量もあると思うのですが、動きはスムーズです。

そういえば、「豊かな色」のGさんがキッチンのご要望を伝えてくださった時に「表面がまるで石そのままのようにボコボコしているカウンターが良いのです。」と言っていたのが、当時はセラミックだなんて気が付かなくて、「さっぱりさん」のMさんのお宅にお邪魔した時に見たボコボコしたカウンターを見て、これがセラミックなのかあって、初めて新しことを覚える小学生のような気分で天板を触らせてもらったことを思い出しました。

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どこかで書いたかもしれませんが、キッチン側の仕上げ材はクルミの突板を使っています。クルミの突板は無垢材と違って、色の差が激しくて毎回取り寄せるたびに変わった色のものが入ってくるのです。Dさんの場合はたしか、かなり白っぽい色(ホワイトバーチのような)色だった覚えがあります。リビング側の無垢の印象と大きく変わってしまうので、もともとウレタンクリアで仕上げる予定でしたが、少し着色して、茶色を加味しています。


クルミとセラミックストーンを使ったアイランドキッチン

こちらもハーフェレの高さが変えられるスパイス・ボトル収納用引き出し。今回は一番幅の狭い110ミリタイプ。細かいサイズ展開をしているので、このスペース以外でも使い勝手は広がります。


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そして、調味料、ボトル用の引き出し。これの特徴としては、バスケットが引っ掛けるタイプなので、高さの調整ができる点が良いところ。もしもっと小さなビンばかりをお持ちの場合は、バスケットを増やしても良いですし。

そのセラミックを使わせてもらえることにちょっとドキドキしながら、どんな形でキッチンをまとめていこうかと、楽しみに思ったのでした。
そこで調べてみると、セラミックにもいくつかのメーカーがあってあれこれと特長を比べてみると、本当に傷がつかないもの(磁器なのかな)や尖ったシャープペンシルで引っかくと白く筋がついてしまうもの(陶器なのかな)やいろいろあるようです。
その中でよさそうに思えるデクトンを使うことにしたのです。

クルミとセラミックストーンを使ったアイランドキッチン

コンロは、リンナイのデリシアグリレ。お話の中で、油が飛散しないようにディバイダ―を立てるかどうかというお話が出ました。調理中の油煙が室内に舞うことにどのくらいのデメリットがあるのだろうかと。この3年の間にエアコンの調子がちょっと悪くなったことがあったのだそうで、その際にもしかしたら油煙もその要因のひとつかもというお話が出まして、Dさんといろいろと話をさせて頂いたのでした。

ところで、Dさん。キッチンのスタイルからはちょっとかけ離れたイメージに見える可愛らしい方で、確か国語の先生をなさっています。
ちょうどこの時期に私自身が長女の通う中学校で役員を務めていたこともあって、キッチンや家具のお話以外でも何かとすてきなお話を聞かせて頂いて大変楽しい時間を過ごさせて頂いたのを覚えております。
ちょうど新一年生に向けてどんな話をしようかと思いめぐらせていた時に、私はミヒャエルエンデのお話がずっと好きだったのを思い出して、「モモ」の話のなかに出てくる時間泥棒の様子が虚ろで怖かったなあという気持を子供時分からいまだに漠然とした覚えていて。
それは時間泥棒自身が怖いのではなく、彼らが言う言葉が全く正当に思えてしまって、それに取り込まれてしまう人たちの様子が鵜すら怖かったのを覚えております。
そんなことをDさんにお伝えすると、「ミヒャエルエンデのモモ、良いですよね。「時間」をキーワードにした物語ではありますが、ミヒャエルエンデの物語はどの話も、「既成概念からの脱却」を主軸としているような気もします。その人にはその人の人生があって、周りの人には分からないかもしれないけれど、その人にはとても意味のある、価値のある時間の使い方で、その人の身になっているし、なっていく。自分と他人との違いを認めて、違いを大切にしろ・・・と言われているような、そんな感じがします。世間で言われているところの、大切さとか、重要さとかは置いておいて。」
おお、すばらしきストーリーテラー。
こういうすてきなご意見をくださったり。

クルミとセラミックストーンを使ったアイランドキッチン

リビング側は引き出しと扉というシンプルな構成ですが、その収納を、クルミの板が囲うようなデザインで、その外枠から少し目地を取って、その目地も少し幅広く取って目地の色を濃くすることで、引き出しや扉が浮き出るような印象になることを狙っています。

「違いを大切にしろ」って大事なことです。
そして、家具作りの中でこういうお話ができることってとてもすてきなこと。ありがたいことだと、日々うれしくなるのです。
こうして、有意義な打ち合わせが進んでひとつの形がまとまりました。
大きな四角のなかに構成された小さな四角たち。それがほんのり浮いて見えるような印象で、この形ができあがりました。

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そのリビング側の引き出し。今回リビング側は奥行きが狭いのですが、使い勝手を考えて引き出しを設けています。ただ奥行が狭いと使えるスライドレールが限られていて、今回はこちらはソフトクローズレールではなくベアリングレールを採用しています。


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下の扉を開けた様子。撮影中も一緒に参加してくれていろいろお手伝いしてくれたお嬢さん。何かを一生懸命伝えてくれるのですが、分からず・・。

「お世話になっております。
イマイさん、本当にすてきなキッチンをありがとうございました。キッチンの取り付けが楽しみで楽しみで、毎日のように現場に行っては想像を膨らませていたので、想像以上のものが置かれていて大興奮でした。何度も打ち合わせに伺わせていただき、その度にプランを変更し、たくさんご迷惑をおかしてしまいました。お付き合いくださり、本当にありがとうございました。」

いえ、こちらこそ、この家具ができあがるまでのとても有意義な時間は私を豊かにしてくれました。
ありがとうございました。

キッチン仕上
天板 セラミックストーン「デクトン」
扉・前板 クルミ板目無垢材/クルミ板目突板
本体外側 クルミ板目突板
本体内側 カラーフィットポリ化粧板「グレー」
塗装 オイル塗装仕上げ

セラミックストーンとクルミのキッチン

価格:1,600,000円(制作費・塗装費、設備機器は別途)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は120,000円から)

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