オーダー製作例

ウォールナットの仏壇

責任

大船 T様

design:Tさん
planning:Tさん/daisuke imai
producer:daisuke imai
painting:daisuke imai

ウォールナットの仏壇
全体の印象。

ウォールナットの仏壇
和室入口からの印象。

父がぎっしりとイラストや字で埋め尽くされたA3の用紙を眺めている。ちょっと困った感じだ。私はあまり見たくないなって思ったのでしばらくそのまま見ずにいたのだけれど、どうやら仕事の依頼が書かれた用紙らしい。電話で父がその依頼主の方と話しているのが聞こえたから。しばらくして、父がこう言った。

「ダイスケ、仏壇を頼まれたんだよ。」

そう言って例のA3の用紙を見せてもらった。
それは、手描きの図面だった。CADなど使わずに細かく描かれた図面まるでその人の魂が宿っているかのような図面。だんだん見ていると目が痛くなってきてしまった。その時思ったのは、「これを作るのは無理でしょう・・。」ってことだった・・。
それから、どこまでこの話が進んでいるのかわからなかったけれど、父は現地を視察する為に、私はどんな風に話が進むかを知るために、そして(こんなことはとても失礼なのだが)この仕事を辞退させてもらうために現地に向かうことにした。

場所は大船駅から少し入った丘陵地にある閑静な住宅外の一角だった。その方のお宅は、ちょうどリフォームを行なっている最中で、脚立にまたがった年配の大工さんが2人で苦労しながら屋根の増築をしていた。一体この図面の主がどんな人なのか楽しみだった。現地について間もなく、父が携帯で連絡を取りしばらくすると、電動自転車で快活に走ってくるおじいさんがいる。その人が依頼主のTさんだった。Tさんに仏壇を新しくする経緯を伺うと、築年数のだいぶ経つ自宅を改装中でその中の一環として仏壇を新しくするのだという。リフォームの概要のプランもTさんがご自身で作り上げたらしい。近くで仕事をしていた大工さんに話しかけた父に「この人の仕事は大変ですよ。」って応えていた。Tさんに聞くと、リフォームの方も自分で描いた図面を持って話をしに行ったけれど3件ほど断られてこちらの大工さんのところにお願いすることになったのだそうだ。
現地がここまで大掛かりな改築をしていると思わなかったので、大工さんの仕事の邪魔になりそうだったので、その日は据え付け予定場所を少し見せてもらって帰ることにした。
果たして製作可能だろうか・・、あれからTさんの手描き図面を見るたびにそんなことを思っていて、なかなか自分で自分の図面を描き起こす気になれなかった・・。
ある日Tさんから細かい部分の打合せをしたいからこちらに来ると連絡を入った。このとき私は何を考えていたかと言うと、「この仕事、断ろう。」と言うことだった。あまりにリスクが大きいような気がして、責任が持てないって思ってしまった。
Tさんの思い描いているものと私が手掛けることができる実物はかけ離れてしまうに決まっているからっていう臆病な気持ちがいっぱいあったのだ。
だから、この時はわざわざ来てくださったTさんにいろいろと言い訳じみたことを言ってしまった。

「この部分はこうじゃないとできないです。」
「ここは、うまくいくかどうかは今の状況からは判断できません。」
などなど・・。

Tさんにとっては気分が悪かったかもしれない。でも中途半端に引き受けてしまってはお互いとても良くないことになる。だからどうにか仏壇を専門に作っている人に頼んでもらいたいって思っていた。
でもTさんは「実はほかにも話を持ちかけたんだけれど、みんな取り合ってくれなくて・・出来ないって言われるんだよね。」って言った。
(うちでも無理だよー。)って思ったけれど、何だかTさんの「どうにかうまくやってみてくれないかな。」ってうまく言われて・・・。
結局自分でもはっきりとしないまま引き受けてしまうことになった。(本当にできるかな・・。)

電話帳でうちを見つけただけで今まで作った仏壇なんてほとんどないのにどうしてここまでうちのことを信じられるのだろう・・ってちょっと不思議だった。

引き受けたからにはやらなくちゃいけない・。
引き受けたからにはやらなくちゃいけない・・。

何度か自分に言い聞かせる。

気持ちを入れ替えて、まずは図面を描くことにした。私は、複雑な家具の場合はその人の図面がどんなにうまく描かれていてもそれを元にいきなり製作するようなことはしない。絶対に見落としが出るから。今回もその考えに基づいて作図をしたのだか、このTさんの図面は本当に良く描けていた。まるでプロの人が描いたようにうまく計算されている。すごいなぁって思いながらCADに描き起こしていった。デティールがかなり入り組んでいたから作図にとても時間が掛かったけれどどうにか図面は描けた。
「よし、この方法なら作れる。」と曖昧ながら自分に言い聞かせた。その図を元にその頃忙しかった私に代わって父に再度実測に行ってもらった。リフォームの方もいよいよ架橋に入ってきてけっこう手間取っているらしい。寸法には問題がなさそうだったので私は時期を見て取りかかることにした。
何しろ大変細かい作業だからどう手をつけたものか最初は途方にくれていたけれどいつまでも図面を眺めているだけじゃ埒が明かないから、手始めに仏壇の本体から掛かる事にした・・・。
それからどうにかして(本当に自分でも信じられないくらいうまく進んだと思っている)製作は完了し、(何だかこういう細かい作業は工作好きだった子供の頃を思い出して妙に無心になれたりして・・、その感じがまた懐かしかったりして。)塗装に入れる状態になった。

色を確認してもらう為にTさんが再び来社。仏壇を見るなりTさんの顔がほころんだ。「まさか、ここまできれいにやってくれるとは正直思ってませんでしたよ。イヤー、どこも断られるし、今井さんも最初は難しい顔をしていたからちょっと心配は心配だったんです。」って言ってくれた。本当にTさんの思い描いていた形になっているか不安だったから、そのモヤモヤとした気持ちがスーッと降りていった。それから、何だか気恥ずかしくてしかめっ面をしたままの私を残して、塗装色を決めるために父とTさんは打ち合わせをしに工場の2階に上がってしまった。
私は何だかうれしくて出来上がったばかりの扉を開け閉めしたりしていた。
さて、どんな色にするのだろう。

Tさんのイメージはあくまでも黒檀のような黒。私たちは黒檀のような木を扱ったことがないのでこの仏壇を「ウォールナット」で作ったわけだが、こうして全てウォールナットの仏壇を見つめていると、やはり黒く塗りたくないなって思う。どうにか「木地の色のままでも良い。」って言ってくれないかなって思っていたけれどやはり黒は黒。ほとんどの部分を黒く塗ることになった。
塗装を終えて再び見に来られたTさん。色を見て、「とても良いね。」って言っていたな。ひとまずよかった。ひとまず完成だ・・。

この仏壇はただ置けば良いわけではなく、設置場所に据え付けなくてはいけない。しかも仏壇の本体とその扉は独立しているから大変だ。扉は家の柱に吊り込み、仏壇はその中に置かれる。当然扉は柱の成りにつくことになるから、築30年近く経って歪んだ柱には扉は垂直につかない。仏壇を置く面は一応水平になっているので扉と仏壇本体はずれてしまう。極端に言うと、設置場所が真四角ではなく、平行四辺形になっているのだ。これを調整するのが難しかった。扉はお互い擦ってしまうほどになったので(工場で仮組みした時はきれいに納まっていたのに)
この仏壇の据え付けに父と2人で丸2日掛かってしまった。でも時間を掛けたおかげで最後はとてもきれいに納まった。Tさんにも喜んでもらえて、しかも気に入ってもらえた。これはうれしかった。
近々法要を行なって、ようやくご本尊様を安置することができるのだそうだ。
ところでTさん、どうやら次は箪笥を頼みたいらしい。またTさんの図面と格闘かな・・。

ウォールナットの仏壇
欄間の様子。

ウォールナットの仏壇
こちらは、塗装前の天井裏面の様子。

ウォールナットの仏壇
家紋。掘ったあとに金色の塗料で着色。

ウォールナットの仏壇
下のほう徐々にから、サンドブラスト加工をして、さらに紋様も刻んでいます。

ウォールナットの仏壇
背面は緩やかなアールを描いて雲竜柄の入った金色の紙を張っています。 そして、橋の欄干。

ウォールナットの仏壇
経机のように使える引き出せるテーブル。

ウォールナットの仏壇
仏具を入れる引き出し。

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