暮らしの演出

「食器棚のオーダー」

辻堂 A様

design:Aさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:daisuke imai

フラップ扉やスライドテーブルなど多機能な食器棚

食器棚全体の印象。


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Aさんから頂いたスケッチ。


フラップ扉やスライドテーブルなど多機能な食器棚

上部の扉は上方向に扉が折れる収納です。こんな金物は私もはじめて使いました。以前金物屋さんのカタログを眺めていて、(へぇー、こんなものもあるんだ。)なんて思っていただけなのですが、Aさんの要望を聞いているうちに(あの金物が使えるかもしれない)と思って思い切って使ってみたのです。構造上、上に折れるという重力に逆らった動きをするので、バネが多少硬めで女性には少し開けるときに硬い感じを受けるかもしれませんが、開け方のコツをつかめば意外と使いやすそうです。Aさんがこの金物を決めた理由は、扉を開けっ放しにしたまま調理していても、自分やご主人が扉に頭をぶつけることがないから、と言う理由でした。なるほど。 そして中段の扉は、手前にパタンと開いてくる扉です。ソフトダウンステーと言う金物をつけていて、扉開けている時に途中で手を離してもゆっくりと開くのです。この上はちょっとのあいだものが置けるような作業台になるように考えています。

「食器棚に30万円以上もお金をかけるなんて・・」って周りの方から言われることもあるのだってAさんはおっしゃいました。
私自身も家具屋をやっていなかったら、きっとそう思ったかもしれません。でも、既製品とはやっぱり大きく違うんです。
まずは金額。1台ずつ作るから加工費が高いって、これはよく言われることです。でも家具を作るスタッフのお給料、工場を動かす為の資金など、そういうことを考えるとごく自然に掛かってしまう金額なのです。
既製品は大量に一括で作ることでこれを抑える。でも、それを何だか不自然に感じてしまうのは職業柄だからでしょうか。ほしい人がいるから家具を作るのであって、作ったのだから販売するというのは、今の社会では当たり前だけど物のあり方としては何だかちょっと違うような気がするのです。
だから私たちの金額は一つずつ作るので既製品より高くなることが多いのです。
次に形。Aさんは気に入ったダイニングテーブルがあったのでその家具屋さんに問合せに行ったのだそうです。そうしたら、「あの家具は前回の時点で廃番になってしまって今は扱ってないのです。」と言われたそうです。なるほど、それなら仕方ないかなってAさんも思い、私も家具以外のことならきっとそう思っていたでしょう。でも良く考えると「廃番って何だろう。」って思ってしまうんです。私たちの家具を見て同じものが欲しいという方が入れば、その気に入ってくれた家具と同じものをまた作ることができるのです。それはとても自然なことだと思うのです。
最後にその後のお付き合い。
当然、ほしいと望んでいる人とそれを作った人が顔を合わせれば、家具を作った、家具を作ってもらっただけの関係ではなくなるのが自然だと思います。家具が故障すれば修理に行くし、他の家具の相談を受ければいろいろとできることを応えます。そうやって一つの家具を通して良い付き合いが始まっていくのだと思います。でも既製品ではなかなかこうはいかないようです。壊れた時に既製品では修理を受け付けてもらえないことが未だに多いのだそうです。なぜかと言うとお互い相手のことを知らないから、こういうことが普通になってしまうのかもしれません。そういうのって寂しいことですよね。
こんなことを家具を取り付け終わったあとにAさんと話していたのです。こういういろいろなことを考えるとこの金額で家具を注文できると言うことは決して高いものではないとAさんはおっしゃってくださいました。そう言ってもらえることはとてもうれしいことです。
Aさんの考えた食器棚にはいろいろなものがつまっています。
最初は、右のイラストのようなプランにする予定でした。それから打合せを重ねるうちに扉の開き方が変わって、ゴミ箱収納のあり方が明確になって、どんな材質で作るのかもはっきりとしてきて現在のこの形に仕上がりました。
自分にとって寄り使いやすいキッチンへと、この食器棚がAさんの暮らしに彩りを添えることができましたら私たちは幸いです。

フラップ扉やスライドテーブルなど多機能な食器棚

最上部は両開きの扉になっていて、可動棚が入っています。この扉には後から耐震ラッチを追加でつけさせて頂きました。


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パタンと開く扉のスペースには、オーブンレンジと炊飯器が入ります。オーブンレンジは普段は電子レンジとして使用するばかりでオーブンとして使うことはあまりないとのことなのでこのスペースの左に置いています。オーブンとして使う時は、少し手前に引き出しで熱が逃げるようにするのです。隣の炊飯器は蒸気がこもらないようにスライド式のテーブルになっています。


フラップ扉やスライドテーブルなど多機能な食器棚

ゴミ箱収納です。Aさんは普段からビニール袋をゴミ袋として使っていたので、そのビニールを引っ掛けられるようなゴミ箱収納にしてほしいと言うことでこのような形にしました。


フラップ扉やスライドテーブルなど多機能な食器棚

ゴミ箱収納の隣は引き出しです。Aさんのお兄ちゃんも興味津々でお手伝い。

ホワイトエンボス化粧板を使った家電収納兼食器棚

価格:430,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は25,000円から)

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