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「ナラ材を使ったセパレートタイプの食器棚のオーダー」

葉山 K様

design:Kさん/seiji imai
planning:daisuke imai
producer:tsuyoshi kawaguchi
painting:tsuyoshi kawaguchi

オークのセパレートタイプの食器棚

2009年の5月5日は子供たちを連れて出掛けていたので、Kさんがショールームにいらっしゃったのは知りませんでした。
お休み明けに、父が「連休中にお客さんがいらっしゃったよ。」と言って、簡単なスケッチやお客さんが持ってきてくださった平面図などを渡してくださいました。
「葉山に住むKさんと言ってね、食器棚を作りたいのだそうだ。この他に、もう少しアイデアを送って下さるそうだよ。」
翌日、さっそくKさんからメールが届きました。
「お世話になります。昨日お伺いしましたKです。
早速ですがメールさせていただきます。ただ、室内の写真を添付しようと思ったのですが、デジカメとPCを繋ぐコードがこの引越でどこかに紛れてしまったようです。しばしお待ち下さい。
また、我が家のイメージを図にする件もお待ち下さい。妻と私で作り込みます。お話を伺って作っていただきたいアイテムが増えてしまいましたので・・・。
正直、貴社へお伺いして非常によかったと思っています。ネットだけではなかなか困難な『全面的信頼』を得られたと思っています。
また、『音』へのこだわりは様々な造作に精緻な形で現れるように感じられました。オーディオもいつか・・の楽しみにしたいと思います。
まずは第一報メールです。準備が整い次第、写真等を送信します。
今後とも何卒宜しくお願い致します。」
そのような感じでやり取りは始まりました。
程なく、プランはまとまりました。もともと複雑な形ではなく、必要な機能だけをまとめたシンプルなプランでしたので、いくつかのアドバイスをさせて頂いたうえで、Kさんの希望をまとめたらきれいな形にまとまったのです。ただ、シンプルな形は素材によってその表情がガラッと変わります。Kさんはその点をしばらく迷っていたのでした。
ひとまず、形が決まったのでお伺いすることになり、葉山の丘の上まで出掛けたのです。
このあたりはお客様が多く、良く来るところですが、いつでも静かで良いところです。丘の上だから、車の音もあまりしないし。森の葉っぱがサラサラこすれる音が聞こえてくるくらいです。
Kさんのおうちもその丘に良く映えるおうちでした。明るく白っぽい色使いを基調としたインテリアになっていて勾配天井のリビングは気持ち良いくらいの高さです。
「でも、いつかはこの部屋をリフォームしたいって思っているんです。
フローリングも無垢材に変えたいし、壁も塗った壁にしたいんです。そういった将来的なことを考えても、良い雰囲気になる食器棚にしたいなあって思っているんです。」
なるほど。
この時点まで食器棚はチェリーで作る予定でした。と言うか、私はチェリーを想像しながら家具を設計していました。もちろん、Kさんもそうだったのです。
でもね、この空間ってオーク(ナラ)でもとても良い雰囲気になりそうだったのです。
もちろんチェリーでも良いのです。でも、チェリーだとちょっとインパクトが強いかなあって思えたのです。天井が高くて、広いリビングダイニングと言う印象を受けるので、壁の白が際立つ。おそらく塗り壁に換えたとしても、その印象が残るだろうし、白い方が明るくてよいものね。床もスギの向くなどに変えた場合は、経年変化で赤茶色になるだろうから、同系色になるのチェリーよりはもっとナチュラルな色みのあるオークの方がこげ茶色っぽくなっていい感じなんじゃないかなって思えたのです。
そのような思いをそのままKさんにお伝えしました。Kさんも、「うーん、なるほど。」と考え始めてしまいます。でもその日は、気に入った木にしましょうと言うことでチェリーでお話しがまとまったのですが・・。
しばらくして、ご連絡がありました。
「イマイさん、すみません。
つい昨日、これでお願いしますというメールをしたばかりなのですが、実はちょっと迷ってしまっています。
何がというと、木の種類です。
やはり、イマイさんのおっしゃったナラにしようかな・・・と。
イマイさんのHPをまた拝見しておりまして、「シャープなデザインよりも・・・」の葉山のYさんのキッチンダイニングの様子が直感的に、とても好きなのです。
何度もみていた写真だったのに、ついさっきそれに気が付いて・・・迷い始めてしまいました。
よく読むと、背後のキッチンはナラではなく、アイランドカウンターとテーブルがナラなんですよね。
でも、写真を見る限りでは、手前のイマイさんの家具と、キッチンの色はそんなに違って見えないのでナラで作ってある場合のイメージとして私は捉えています。
間違っていますか?
やっぱりすごくキレイだし、素敵だなぁと思います。
また将来、我が家で杉の無垢材でのリフォームをしたとしても、きっと合うかなぁとも思います。
チェリー自体はとても好きで憧れなんですが、我が家の空間の中であったときには、ナラの方が私のイメージに近いかなと思いました。
テレビボードでチェリーという手もあるかな、という気もしますし。
今から変更は可能ですか?あるとしたら、どれくらい猶予はありますか?
もし変更ができないということでしたら、
チェリーでも、それはそれでアリかな、と思うので構いません。
お手数をおかけして申し訳ありません。」
と言うことでした。
そこで、
「ご連絡ありがとうございます。
素材の変更はまだ大丈夫です。
現在7/10まではとても慌しくしているので、それまでは取り掛かれないかなと思っておりますのでその頃くらいまでにご連絡を頂ければと思っております。 別にそれ以上に悩んで遅くなっても大丈夫です。(笑)
ただ、製作期間は1ヶ月ちょっとは掛かると思っておりますので、あらかじめご了承頂ければと思います。
葉山のYさんのキッチンは、シナ材です。
本当はこの部分もナラがよいかなあ・・とチラッとYさんはおっしゃっていましたが、建築士さんの家全体のデザインのバランスがあるでしょうし、
またそこまでコストも上げられないのでキッチンはすっきりとシナで、カウンターからテーブルにかけては、ナラで役割によって素材を変えてみましょうということであの時の作品ができました。
K様の場合は、ナラで全体のバランスを合わせても良いと思いますし、チェリーで存在感のある食器棚にしてもどちらでも雰囲気は合うと思います。
床をスギの無垢材に変えた場合も同じだと思います。
ただ、スギはずっと使い込んでいくと肌色から、かなり濃い赤茶色になり、最後は手入れ次第で古民家のように濃い茶色になると思いますので、チェリーの雰囲気の方が近くなるかもしれません。
でも、その頃はチェリーでもナラでも使い込んで少し色が濃くなっていると思いますので、ナラでもチェリーでもスギには良く似合います。 考え込んでしまうと難しいですよね・・。
私は迷った時はいつも、気に入った木の表情で決めることにしています。
ナラは、木目が太くて迫力がある男性的な木ですが、チェリーは木目が細くどちらかと言うと女性的な柔らかい表情のある木です。
その表情を良く比べて気に入った木にすると愛着がわくと思います。
それでは、いろいろと悩んでみてくださいね。
また決まりましたらご連絡ください。」
とお伝えしたのです。
そして、
「こんにちは。
とても的確なアドバイス、ありがとうございます。
今井さんに質問をすると、いつもとてもいいアドバイスをいただけるので、本当に助かります。
今井さんの持ってきてくださった木のサンプルを見たときは、やっぱりチェリーが好きだなぁと思いました。
でも、葉山のYさんの写真を見ると、やっぱりこの感じも素敵だなぁと思ってしまいます。
主人は、変わらずチェリー派なんです。
そういうことも含め、気に入った木で選ぶという今井さんのアドバイスからすると、やっぱりチェリーに落ち着きそうな気がします。
ですが、まだ決められません・・・
取りとめもなくすみません。
とにかく、近日中に決めてお知らせします。
お忙しいところ、ありがとうございました。」
それから、まもなく・・
「おはようございます。
木の種類、やっと決まりました♪
ナラでお願いします!
もう、笑っちゃうくらい、頭の中で堂々巡りを繰り返しました。
イマイさんのHPや、持っているキッチン関係の雑誌を総動員してやっと決まりました。
主人も、じゃあナラにしようかと言ってくれましたので、大丈夫です。(笑)
こんなぎりぎりに変更にして申し訳ありません。
よろしくお願い致します。」
と言うことでようやく決まったのです。
こんなに思われている食器棚がうらやましいです。
そうしてできあがった家具は、やっぱり良い。取付の当日は、残念ながらご主人にお会いすることができなかったのですが、奥さんは、もうとてもうれしそうにしてくださって、見ている私たちもうれしくなります。いいねえ、ナラの家具。
テレビボードはチェリーにするのだとか。次回が楽しみです。
それから、Kさんからお便りを頂きました。
「先日は本当にありがとうございました。
本当に素敵な食器棚をつくっていただいて、とても嬉しく、幸せだなぁとおもっております。
無事に、食器など全てを納めることができました。
端正な印象なのに、どこか優しさがただよっている感じがとても好きです。
扉を開け閉めするときの、なんともいえない感触や、使いながら、とても丁寧に作られたことを感じられる家具です。
また、お気に入りの食器などが、この食器棚ではより一層素敵に見えます。
なぜでしょう(笑)
主人も、大変気に入っておりました。
二人で、食器棚を見ては「いいねぇいいねぇ」とにやにやしております。
ブログに我が家の写真を載せていただいたことがとても嬉しいようで(私もですが)写真と実物を交互に見たり、娘に写真をさして、「これはどこ?」とわざと聞いてみたり・・・(笑)
その内、主人からもメールが行くと思います。
みなさんの、とても丁寧な仕事振りを拝見できたことも嬉しいことの一つです。
シリコンで周りを接着しているところや、扉や引き出しの凹凸がないかを確認して微調整されているところや
最後までやすりをしてオイルを塗ってくださったことなど、そこまでしてくださるんだぁと思いながら見ておりました。
河口さんや、渡辺さんにもよろしくお伝えください。
それでは失礼します。」
Kさん、ありがとうございました。

オークのセパレートタイプの食器棚

天板は突き板ですが、3100mmあるため、特注サイズで材料屋さんに張ってもらって作った板です。戸建住宅なので、幸い搬入は無事にできました。

オークのセパレートタイプの食器棚

引き出しの感じ。開閉はいつもの手掛けです。

オークのセパレートタイプの食器棚

ワイヤーバスケット。家具の割付を考えたら、樹脂のレールではなく木のレールの方がサイズが良いのと見た目が良いのとでレールはナラの無垢材で作っています。

オークのセパレートタイプの食器棚

5つのゴミ箱をきちんと置けるようにしたいと言うのがKさんの希望。分別が細かい分ゴミ箱が増えるのは良いのですが、見た目がゴチャゴチャしてしまうので、きちんと並べられるようにしてすっきりとさせたかったのです。

オークのセパレートタイプの食器棚

吊戸棚の上は勾配天井なので、あえて塞がずに開けています。当初は大きなフィラーを作って塞ごうと言うお話も出ましたが、そのフィラーが結構圧迫感が出てしまうと思ったのと、この上にちょっとしたものを飾ることができるので、せっかくだから開けておいた方が良いのではと言うお話にまとまり、この形になりました。

オークのセパレートタイプの食器棚

当初家具の奥行を吊戸棚も、下の収納も同じくらいの深さにしようかと迷っていたのですが、吊戸棚の奥行が深いと物の出し入れがしにくいことと、見た目の圧迫感が出ると思いましたので、吊戸棚は浅く、下の収納は深くしました。

オークのセパレートタイプの食器棚

Kさんがとても丁寧に使ってくださっているのがよく分かります。

ナラ板目のセパレートタイプの食器棚

価格:640,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は18,000円から、取付施工費は40,000円から)

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