しんみり

「オークのテレビボードのオーダー」

茅ヶ崎 Y様

design:Yさん
planning:daisuke imai
producer:hiroshi ito/tatsuya suzuki
painting:hiroshi ito/tatsuya suzuki

ナラ材を使った形状変化するテレビボード

全体の印象。

「ようやくここまでたどり着いたわね。」
Yさんはそう言いました。そう言えば、洗面所のリフォームの時に、テレビ台を作り替えるかもしれないとちょっと相談を受けた時に、(きっとYさんのことだからまだまだ先のことだろう・・。)などと思っていたのに、いつの間にか話が進んでテレビ台が完成していた、そんな感じです。時間が経つのはとても早くて・・。
ふとテレビ台の隣のベンチチェストを見るとついこのあいだ作ったもののように感じているのに。
Yさんのお宅もこの家具でやっと最後となりました。なぜ最後かと言うと、Yさんがイメージしていた家具がこれで全て揃ったからです。
タンスの修理(「生まれ変わった箪笥」)からはじまったお付き合いもこれでしばらく一段落するのだと思うと少ししんみりしてしまいました。
タンスに始まり、ベンチチェスト(「午睡」)、洗面室のリフォーム(「喜び」)、キッチンの簡単な改装、洋室の建具を経てようやく最後のテレビ台となりました。
Yさんがいつも仕事が一つ終わったあとに言う言葉がありました。
「いろいろもめたりもしたけど、やっぱりできあがると素敵ね。」
Yさんとの打ち合わせはいつもいつも大変でした。すんなりと進んだのはタンスの修理の時くらいで、あとは意見が食い違うことが何度もありました。その度にお互い自分自身をぶつけ合って形を模索しながら進めていくのです。時にはイヤになるくらい話がこんがらがったりすることもあるのですが、しかしYさんはダメなものはダメ、良いものは良いというしっかりとした感覚を持っていたのでケンカをしながらも徐々に良い形へと変わっていくのです。また、家具を使う側からの意見や提案、それとYさん自身が通ったほかの家具屋さんやインテリアショップのお話は私にとってとてもよい勉強でもありました。そんな思い出をこのテレビ台を納め終わったあとに、お茶をいただいているときに思い出したらなんだかしんみりしてしまったのです。いろいろと良い経験、勉強をさせていただきました。
ちなみにYさん、このテレビ台の納品に合わせて「まだまだ先のことかしらね。」と考えていた薄型の液晶テレビも思い切って購入してしまったのです。思い切った理由は、ブラウン管テレビの跡がテレビ台に残ってしまうと液晶に買い換えた時に目立つかもしれないからということでした。
この家具の一番の主旨は、以前私が作ったベンチチェストに高さを合わせてベンチチェストの上でゆったりと昼寝ができるようにするという不思議な提案でした。そこで考えられたのがテレビ台部分とベンチにくっつける部分との2種類の家具で構成された形です。いろいろとYさんとプランを検討して、テレビ台となるテーブル部分にはテレビに付随するもの(ビデオデッキなど)を一緒に収納するようにしてベンチとくっつける部分には配線などが絡んでこないで自由に動かせるようなプランとしました。と言いましても、その希望を全てかなえるのは寸法的に無理がありましたので、ミニコンポだけはベンチとくっつけるワゴンの中にしまうこととなりました。でもミニコンポでしたらアンテナとコンセント1本を動かす時に外せば良いので問題になりませんでした。
まずテレビ台の天板はナラの35m/mの厚みの無垢材を接ぎ合わせて一枚の天板にしています。この板接ぎの見せ方はYさんの希望で「せっかくだから接ぎ合わせる部分には昔から使っているダイニングテーブルと同じように目地をつけてもらえますか。」ということで目地をつけました。この天板の幅(奥行)は540m/mテレビ台の正面から見て左側はテレビを載せる為に少し幅を広く700m/mにしています。天板を支える脚は6本にして、テーブルのような作りにしました。
天板のすぐに下に引き出しを設けCDやビデオテープなどがしまえるようにしています。CDの引き出しの奥の高さが低くなっているのはこの天板のすぐ下に天板が歪まないように板を横に流している為です。その板が当たる分だけ引き出しを低くしています。
また、テレビのすぐ下に当たる一番左の引き出しはビデオデッキを収納しているのですが、ここは配線などをしやすくするために引き出しにしてあり、また引き出しを閉まったままでもビデオなどが入れられるように引き出しの前板が手前にパタンと倒れるようになっています。それと、リモコンが効くようにこの前板を当初はガラスをはめ込んで作ったのですが、形状からしてかなり弱いガラスになってしまいすぐに割れてしまいましたので、後日トウメイアクリルに変えました
テレビ台下のベンチまで動くワゴンですがこれは大きなものと小さなものの2つに分けて考えました。小さな方にはCDやビデオが入る引き出しが設けられています。大きなワゴンにはミニコンポが入るようになっています。
ここで苦労したのがスピーカーを収納する部分の扉の収まりでした。この扉の小ささでフリッパードアにしたいとYさんはそう言ったのです。どうしようかと悩んだのですが、よく家具屋さんで見かける簡単なフリッパードアの構造を思い出してその方法で作ってみることにしました。あまり家具屋さんでよく見ていなかったせいか一つこのドアに問題がありまして、「いったい扉が壊れたらどうやって取り外せばよいのか。」という点で悩んでおりました。そして考えた末に、扉は背板を外して後ろから仕込むようにしました。そうすれば扉が壊れても背板を外せば扉は簡単に取り外せますので。
それと、テレビ台の上に載っている200m/m角の四角い箱もテレビ台に合わせて作ったものです。ここには、よく聴く音楽や季節に合わせたものを置いたりしたいのだそうです。

ナラ材を使った形状変化するテレビボード

テレビボードの下の収納部を引き出した様子。


ナラ材を使った形状変化するテレビボード

こちらがオーディオボードになります。スピーカーを収納している扉は、音楽を掛ける時には、扉を開けて収納できるのです。


ナラ材を使った形状変化するテレビボード

CD用の引き出しですが、奥の方が天板を補強する材が入っているので、それをよけるように変形させています。


ナラ材を使った形状変化するテレビボード

こちらがYさんがとても気に入ってくださったフレーム?ボックス?ここにお気に入りのものを置くだけで主人公になるのだそうです。


ナラ材を使った形状変化するテレビボード

こちらはAV機器収納部。誇りよけで扉をつけたいけれど、リモコンも効かせたい。そこでこのようにしたわけです。


ナラ材を使った形状変化するテレビボード

引っ張りだして、手前に扉を倒して、ソフトの出し入れができるように。手をかける部分には,当たりが柔らかくなるように木で取っ手をつけています。

ナラ柾目のテレビボード

価格:700,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は18,000円から)

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