少し北のヨーロッパ

2021.09.06

「ナラ節アリ材とアイアンレッグの円卓とタモのダイニングチェアのオーダー」

相模原 K様

今から6年前に作り始めたこの円卓。過去に同じ形で6台作らせて頂いて、また別に木製のこのデザインの脚で1台と、今まで7台を作らせて頂きました。
6年間でその方々にしか良さを表現できなかったのは私の力不足だなあ、なんて思っていたら、「まだそれだけしか生み出されていない貴重なデザインなのですね。」なんてうれしいことを言ってくださった方もいらっしゃいました。
ですので、7台しか出ていない希少な形でございます。

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素材を選んだ指標として、床材と同じ節のあるナラ材を天板に使うことと、キッチンの真っ白な印象に合わせたいということで、テーブルとイアスのそれぞれに白を取り入れています。

ただ、今までにほとんどお話に出なかったのが、この円卓と一緒に椅子も作らせてもらうことでした。唯一作ったのは私の自宅のテーブルと椅子くらい。
今回Kさんから頂いたご要望の中には椅子とテーブルの一体感が気に入っているのです。というお話があったのでした。
私の自宅までテーブルと椅子の様子を見にいらしてくださったKさんは、椅子の背もたれを眺めながらそう言ってくださったのでしたね。
実はKさん、私たちと近いところでお仕事をされているかたで、自宅にいらしてくださった時は、お一人でフラッとした感じでいらしてくださって、(もちろん事前にご連絡は頂いておりましたが)作業着に近いカジュアルな格好で、サンダル履いておられて、おや、どこの設備屋さんだろうかと思うような印象でした。
(何となく、設備屋さんか電気屋さんのように思えたのです。笑)
そして、滑舌よろしくお話も端的で上手で、何だか私の方がお客のような気分になってしまって、「へい、そうなんでございます。」みたいな感じになってしまって。

「いやあ、テーブルに椅子をピッタリ添わせると、背もたれがきちんと合うのはすてきです。」
とKさんが嬉しそうに言ってくださったのですが、そう見えるのですが実はピッタリではなくて・・。
テーブルは標準のサイズだと直径1300ミリで、椅子の背もたれは半径600ミリの弧を描いています。
だから、完全にピッタリとはいかないのですが、それでもその吸い付くように沿っている様子をKさんがとても気に入ってくださって、今回は椅子と一緒に作らせて頂けることになりました。

ナラ節アリ材とアイアン脚の円卓とタモのダイニングチェア

黒と違って白はまた美しい。交差する鋼線の印影が良く浮かんで、立体感がいっそう増して映ります。

そして、今回魅力的だったのは脚の部分をキッチンに合わせて白くしたこと、そしてその脚に合わせて座面も白くしたことでした。
もともと黒という色を想定して考えたこのテーブル。
最初に作らせて頂いたMさんには、黒ではなくてダークブラウンでしたね。
私の自宅はシルバー。
そして今回はホワイト。
スタンダードなブラックはとてもフィットしていて美しいのですが、このホワイトもとてもすてきだったのでした。
なるほど、こういうふうに見えるのか。何というかもう少し北のヨーロッパであるような印象というかなんというか。
たいへん軽快で明るい印象でまだちびっ子二人がいる家庭にはとてもよく合うすてきな形に仕上がりました。

ナラ節アリ材とアイアン脚の円卓とタモのダイニングチェア

天板は節のあるナラ材ですが、椅子も共材で作るのはなかなか難しかったことと、ナラ材だと重くなってしまうと考えて、強度的にしっかりと作れて、印象が近いタモ材で作っています。座面の張り方は私の自宅と同じく、左右はマチを取って角のしっかり出た印象にして、前後は丸張りにして膝裏のあたりを良くしています。生地はお子さんが汚しても掃除がしやすいようにレザーを使いました。

納品の時はテーブルと椅子くらいなら問題なく搬入できるでしょう、安易に考えてお伺いしてしまったのですが、到着してそれが大変なことに気づきました・・。
戸建の2階がリビングのKさんの間取り。2階に上がる階段は標準的なお宅にあるようなぐるりと回って上がっていく階段。
いやあ、ここにこの1300ミリの天板と脚を上げることができるのだろうか・・。
ちょっと冷や汗が出てしまいましたが、Kさんにお手伝い頂いてどうにか無事に搬入完了。
汗だくになりながらきれいに納品することができたのでした。

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錆、土、岩、水などいろいろなテクスチャーを平面で表現していて、それぞれがテーブルトップに使っても大丈夫なくらい強靭な塗膜になっていて、色で質感をこれだけ表現できることにただ驚くばかりでした。

そのあと、今まで使っていたテーブルをKさんのアトリエに持っていくというのでお手伝いさせて頂くことに。

そう、Kさんやっぱり職人さんでして、家具屋ではないものの、塗装で家具の表現したり、室内のリペアのお仕事をされているのでした。

株式会社リペアバンク
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https://www.repairbank.net/

なるほど、だから近い空気があったのですね。
そのアトリエはまた魅力的で、シンプルな倉庫なのですが、その壁一面にはいろいろなカラー、テクスチャーの塗装サンプルが掛かっていてワクワクします。
「ふだんはリペアの仕事がメインなのですが、塗装ってね奥が深いんですよね。こうしていろいろな質感を塗装で表現できるおもしろさはとても魅力的で。こういう形でこの先一緒にお仕事ができたらすばらしいですよね。」
はい、私もそう思います!
どこかで実現できたらよいなとアキコと二人で思いを馳せながら帰ってきたのでした。
家具を通じてこういうご縁が頂けるというのはうれしいなあ。

ナラ節アリ材とアイアンレッグの円卓

価格:407,000円(制作費・塗装費)

タモのダイニングチェア(1脚)

価格:95,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は16,000円から)

ナラ柾目の食器棚

2021.09.06

「わたし、給食のおばさんなんですよ。」と歯切れのよい物言いで、現場からの打ち合わせの帰り道の途中まで送ってくださったYさん。
お土産に持たせてくださった枝豆がおいしそうで、食べ物のお話から器の話になって、柳宗悦さんのお話になった時に、「イマイさん、民藝館にぜひ行くと良いですよ。」とお勧めしてくださったのをきっかけに先日アキコと出掛けたんだっけなあ。
私たちの家具も「民藝」とまではいかなくても、「普段使いの美しい道具」とみんなに思ってもらえるように頑張らないとね、なんて思うのです。
そのYさんのところに土曜日にご依頼頂いていた食器棚の取付に出かけていました。
食器棚と玄関収納ということでかなりボリュームはありましたが、どうにかその日に終わるだろう、とみんなと相談していたら、うっかり、背の高い部材をいろいろと積み込み忘れてしまっていて・・。
その部材がないと家具の固定ができないよという部分もあったりして、「すみませんがYさんもう1日お時間を頂けますでしょうか。」ということで昨日もお邪魔させて頂いていたのでした。
作業は無事にきれいに終わりましたが、貴重な休日の2日間を頂いてしまいまして、申し訳ございません・・。

いつも納品の前日に、図面を見ながら打ち合わせをしているのですが、いけませんね・・。
再発しないように気持ちを引き締めないと。

Yさん、またあらためてご挨拶に伺わせて頂きます。
その時にはまた民藝のお話お聞かせ頂けたらうれしく思います。
よろしくお願い致します。