Nordic

「北欧風な印象の食器棚のオーダー」

十条 A様

design:Aさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hiroshi ito

北欧テイストの食器棚

完成した食器棚の様子。丁寧に使ってくださっていることが良く分かります。

「はじめまして。
いま新築中で来月には完成なのですが、理想の食器棚めぐり合えずにいます。
新居は夫の父が経営する事務所の二階部分であまり広くなく、キッチンも狭いです。なので天井までとどく大きな食器棚が欲しいです。家電もそこにすべて収めたいのでカップボード型?が希望です。
木の色味は添付した写真一枚目のように薄めの色で、形は下部分はすべて引き出し、上は引き戸がいいなあと思っています。
引き出しには写真二枚目のようなシンプルな取っ手がすてきだなあと思っています。あと、引き出しにソフトクローズのレールがついているとうれしいです。
来月完成なのですが引越しはゆっくり、年内にできれば、と考えています。
こんなすてきなオーダー家具屋さんがあるなんて思っていなかったのでうれしくてドキドキしています。
どうかよろしくおねがいします。」

Aさんから9月に頂いたメールを読み返すと懐かしくなります。
Aさんとはかなり細かくやり取りとさせて頂き、2度も当社まで脚を運んで頂いて、本当にほんとうにいろいろな形を考えて、ようやくひとつの形に辿り着いたのです。
最初は、無垢材、特に小さな節の入ったナラ材を使ってカウンター部分にはステンレスを使ったどちらかと言うと無骨で素材の表情が良く分かる感じの食器棚をイメージされていたのでした。そして、大きさも標準的な冷蔵庫と同じ高さでキッチンスペースに置くだけの家具、と言う形で考えていたのです。
それから、3日おきくらいにかなり具体的な打合せをメールで繰り返し、直接お会いしたわけでもないのに、Aさんの顔が見えるかのようないろいろな思いをお聞きしながら検討を重ねていったのです。そうするうちに、Aさんの中でもモヤモヤしていたイメージが、だんだんと固まっていったようです。木や金属の表情が良く出た仕上がりから、出来上がっていく新居の内装を見ていくうちに、白い食器棚へと変わって入ったのです。

「お返事が遅くなってすみません。
図面見ました。ゴミ箱の入った図面がいいなあと思います!
ただ、ゴミ箱が見えないようになるとうれしいです。横から見るとL字型のキャスターが付いたようなものにゴミ箱を乗せるような。なにかいいアイディアがあるでしょうか?
あと、本当に申し訳ないのですが、食器棚本体の色を真っ白にしたいです。見える部分はとにかく真っ白で。木目で、角っとした取っ手の食器棚に憧れていたのですが、やっぱり壁も窓枠もキッチン本体も真っ白で、食器棚の両脇も真っ白な冷蔵庫と真っ白なリビングの扉なのです。最初から木目と白で悩んでいたのですが、先日キッチンの写真集を買ってよく考えてやっぱり白で統一したいなあと・・・。
イマイさんのHPを拝見すると木目を生かした作品ばかりなので、真っ白をお願いするのは失礼な気がしています。
もし真っ白で作っていただくことが出来るようでしたら、お日にちを相談させていただいて主人とショールームへ伺いたいと思っています。
食器棚の色やサイズがはっきりしていないうちから見積もりをお願いしてしまってすみませんでした。。
お返事お待ちしています。」

このお返事を頂いたあとにぼんやりと考えていたら、ひとつの食器棚が頭に浮かんだのでした。
それは、「おおきな贈りもの」の中央林間のNさんの食器棚でした。

「お返事ありがとうございました。
「おおきな贈り物」いいですね!ほんとすてき!間取りやサイズも新居と似ていて参考になります。でもガラス、すてきだなあと思ったのですが指紋汚れや食器をぶつけて引き戸や食器が欠けてしまうのでは、と心配でやっぱりガラスではないほうがいいなあと。
あと全部開き戸のパターンもステキですね!表面がフラットになってとてもシンプル。迷います・・・。
もうちょっとだけ考えさせてください。
あと、天板の上のマグカップなどを置く小さめの棚ですが、無しにしたいです。そのぶん上の収納をたっぷりと!」

そうして、白い食器棚で、Nさんのように冷蔵庫の上も戸棚をつけて、とだんだんと形が固まってきました。最初にお問い合わせを頂いてから1ヶ月が経過していました。

「あとお聞きしたいのですが、扉の色をいま白とお伝えしていますがほかに木目以外で色ってあるのでしょうか?
とてもかわいらしい本に出会ってしまい、ナントいまさらですがカラフルな感じ、気になっています。でも実際は派手色にする勇気はないと思うので開き戸の取っ手を丸くて色の付いたものにするのもいいかなと考えているのですが・・・。
いちおう本に載っていたとても惹かれている写真を添付しておきますね。
なんか、ほんとうに、スミマセン。。」

と、ここで素材が変わるのです。白だったものがガラッと変わってしまうのでした。
その本がこちらでした。

北欧テイストの食器棚

この本に載っている食器棚たちは、カラフルなペンキで塗られていたのでした。なるほど、こういう形もステキだなあ。
私自身もいろいろと勉強になります。そうして、Aさんがショールームまで来てくださることになったのでした。
その日は、いろいろとお話させて頂きました。Aさんの好きな形やお子さんの服を手作りするお話など。そういうお話を聞くことができると言うのはとてもうれしいことです。

「昨日はありがとうございました。
じつは最初、見積もりをいくつかの会社に出したのですがいちばん早くて丁寧でアドバイスをたくさん下さったのがイマイさんでした。昨日そちらへうかがってたくさんの作品を見せていただいてやっぱりこちらへお願いしてよかったと思っています。
また伺う機会があったらうれしいです。」
うれしい言葉を頂きました。それから、数回打合せを重ねるうちに決めた色がこの形でした。

北欧テイストの食器棚

スカイブルーとオフホワイトの2色を使った食器棚です。この食器棚にAさんの色が入ったものたちが並ぶと、きっと良い雰囲気になりそうって、そう思っていました。そこで、こういうふうにお返事したのでした。
「よく皆さんにも、イマイさんのところで作る家具は多彩で、皆さんそれだけのイメージを持っていてすごいですよね、ってよく言われます。
でも、家具を作るにあたりましては、みなさんもやはり最初は、「オーダーだと高いかな。」とか「どういうふうに要望を伝えてお話してゆけばよいか分からない」と言う方が多いです。
それを、Aさんのようにメールを通じて、細かい部分を一つ一つ検討していくことで、最後に自分の好きな形に皆さんが辿り着いています。
オーダー家具と言う実物のないものをイメージすることは時間も掛かるし、考える力も相当いります。(考えるのってなかなか疲れますものね(笑))
でも、最後に自分の好きな形ができあがって、それをずっと使ってゆけるのですから、それはすてきなことです。
一度家具を作ってお客様がまた頼みたくなると言います。
なぜかと聞くと、楽しいのだそうです。自分のイメージしていたものがだんだんと精錬されて形になって、そして現実のものとして目の前に現れるというその過程も楽しいし、その家具を使っていても楽しい。
すてきなことですね。
Aさんの食器棚もそういうすてきな家具に仕上がるようにがんばりたいと思います。」

「こんにちは!
さっそくのお返事、ありがとうございました!
そんなふうに言っていただけてうれしいです。
毎日毎日キッチンのことで頭がいっぱいです(笑)
色も素材も形も、何もかも自由というのは本当にわくわくしたし考えるのが楽しいのですが、無限の選択肢からひとつの形にまとめるあげると言うことは思った以上に難しいんですね。…というかまとめてしまうのが恐いです。もっと工夫できたりもっと素敵だと思えるかたちがあるかもしれない、とか無難に白くしたほうがいいんじゃないかとか、一度決めたことさえまた考えてしまって(実は…!)。。
長年大切にしているものたちと同じように、食器棚もぜったいそうしたい!と思いすぎているようです…(笑)
その結果いろいろ考えすぎて変更を重ねてしまって申し訳ない気持ちもいっぱいです。
引っ越してキッチン本体や冷蔵庫を実際に使ったり、リビングに物が入った状態でキッチン側を見たりしてもう一度見直したいなと思っているのですがいいでしょうか?いまのデザインはもちろん気に入っているので大きな変更はないと思いますが、実際の生活とそれを重ねてみたいんです。」

そうして、9月から早くも年が明けて、Aさんは引越しされたのでした。その中でまたひとつのイメージが・・。
Aさんのご新居の近くには、化粧板メーカーのアイカ工業さんのショールームがあったのだそうです。ふと、立ち寄ってみた時に、とても気に入ってしまった木目の化粧板があったのだそうです。ベージュっぽい色をした柾目柄の化粧板でした。そうしてもそれが気に入ってしまって、ご主人ともいろいろと相談した結果、スカイブルーとオフホワイトから大胆な変更となりました。
「たくさんのアドバイスをありがとうございました! ここ数日木目が縦か横で迷い今井さんの作品を何度も見直して、結果、縦も横もすてきで悩みました笑  添付してくださった画像の中には見ていないものもあって参考になりました。ただ本当の木だからすてきだけれど、プリントの木目だと縦にしろ横にしろ柄が均一になっておかしくないかなあとちょっと心配です。。 でも今井さんがうまく仕上げてくださると信じているので(プレッシャー笑)柄は変えません。 で、頂いたアドバイスと自分の好みで横目にします!お騒がせしました。」
こうしてお話ししなかったら、この食器棚には辿り着いていなかったのだと思います。
「お話しする」と言う研磨していく作業を行うことで、鈍い光の石のどこ部分が光っているかを見つけることができたのです。
Aさんがこの形を見つけることができたのはひとつの奇跡なのです。

北欧テイストの食器棚

「ホッとプレートもちゃんと入ったし、それ以外のものもけっこう入るんですよ。」

北欧テイストの食器棚

「自分の頭で考えていたよりも冷蔵庫は真っ白でした。だから、この冷蔵庫上の戸棚も真っ白で正解です。」

北欧テイストの食器棚

「ここはまだあまり物が入っていないのですが・・。」

北欧テイストの食器棚

「ゴミ箱の部分はちょうど良いサイズでした。」 今回は、引き出しのスライドレールだけではなく、このゴミ箱のスライドレールもソフトクローズするタイプのものを使っています。

北欧テイストの食器棚

「これから、いろいろと考えながらお気に入りの食器を入れていきます。」

北欧テイストの食器棚

「ここも、まだ物が入っていないのです。それから、レンジも古いもののままだから、写真写りが悪いかも・・、いいですか。」

北欧テイストの食器棚

価格:650,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は50,000円から)

ちょっと関わりのありそうな家具たち