いろをさがして

「ウォールナットのテレビボードのオーダー」

小田原 T様

design:Tさん
planning:Tさん/daisuke imai
producer:gaku suzuki
painting:gaku suzuki

ランダム張りウォールナット突板を使ったテレビボード

この家具は、壁には固定せずに、置いてあるだけにしています。左右のちょっと背の高いボードと真ん中のテレビボードは、それぞれ分けて使えるようにもしてあるのです。

Tさんとは、とても長い時間やり取りをしていたような気がします。でも、メールを見返すと、最初のお問い合わせから最後のメールまで8か月間。それほど長くはないのですが、かなり密にメールをやり取りしていたので、とてもとても長く感じたのです。

ランダム張りウォールナット突板を使ったテレビボード

Tさんのリビングは、2階に広々と採ってあるので、この大きな家具は階段からではないらなかったので、全てバルコニーから、荷揚げ。いつものように4人で荷揚げでしたが、Tさんのバルコニーの手摺がいつも以上に背が高くて、ちょっと大変だったのでした。

最初に、Tさんが描いてくださったイラストを添付して、御見積の依頼を頂いたのです。私から見ますと、私たち家具屋が見てもきちんと分かりやすいイラストで、家具に詳しい人なのかな、と言う印象でした。

ランダム張りウォールナット突板を使ったテレビボード

テレビボードの印象。中央は、AV機器をしまうので、リモコンが効くように格子扉にしています。格子に使う無垢材も突板の色に近いものを選んでいるので、良いまとまりです。

見積を提出してまもなくお知らせ頂いたのですが、私たちと同じ家具屋さん数社に御見積依頼をされていたのだそうです。
それは良いことだと思います。特にこういうオーダー家具って金額がとても分かりにくいものです。私たちは、なるべく皆さんに分かりやすくお伝えするために、使用する材料と、作るための日数でその家具のコストを計算していますが、私たちから見ても他の家具屋さんはどのように計算しているかと言うのは分からないですから。

ランダム張りウォールナット突板を使ったテレビボード

格子扉の格子とその隙間の間隔も、自由にできるのです。皆さんによくこの感覚はどのくらいになりますか、と聞かれるのですが、今回のTさんのように格子を広めにしたり、反対に隙間を広めにしてもっとシャープな印象にしたり、自由にできるのです。

だから、何社か比較して、はじめて平均が分かって、それからご自身で選択していく、と言うのはとても良いことだと思います。
そして、Tさんから頂いたお返事は、
「 お見積もりについては率直な所では予算が厳しい所です。
最初、オーダー家具はどのくらいかかるのかが分からないまま、何件かに見積もりをお願いしたところ、やはり良い物にはそれなりにかかるのだなぁと言うことが分かり少し予算も検討しました。
まだ詳細を詰めていないところで最初の見積もりなので何とも言えませんが御社様は他より少しお高いかもしれません・・・。
ただ御社様の見積プランは一番現実的で分かりやすく丁寧、尚且つ近いというところもあり今後の打合せからメンテまでを考えれば少し安心という魅力もあります。
予算も大事ですが正直材質など希望のものができるかも不安ではあります。主人を説得してオーダー家具で進めてみようと思っていますので、もう少し私の要望のお付き合いください。」

ランダム張りウォールナット突板を使ったテレビボード

その扉は、下に向かって開く扉です。格子の裏面には、静電気でホコリを集めないようにアクリルを入れています。ガラスでも良いのですが、もし、物を落としてしまって割れたら危ないので、通常下に開く扉にほこりよけを入れる場合はアクリルを使っています。

なるほど。でも、他の家具屋さんよりも高いのに、検討してくださっているということが何よりうれしいのでした。
そして、それから、Tさんとの細かいやり取りの日々が始まります。
そして、いろいろとメールでの対話を重ねていくうちにようやく一つの形が見えてきました。ふぅ。
それでは、ということで、ご自宅までお伺いして、設置場所を確認して採寸したり、搬入経路をチェックしたり、そして、Tさんの希望されている家具のイメージと合うかどうか、他の家具を見せて頂いたりしたのでした。
それで、最後に色の確認。
すると、どうもTさんのイメージしていた色と柄が見つからない。見つからないという表現は分かりにくいのですが、Tさんの思っているウォールナットと今私たちが持っているウォールナットの色が少し異なるのでした。

ランダム張りウォールナット突板を使ったテレビボード

その両脇は、おもちゃ箱のようなケース。いずれお子さんができた時におもちゃを入れることができたり本を入れることができるようにと考えた多目的収納部分です。いつもならちょっとコストを抑えて、このおもちゃ箱の内部はシナ材を使うことが多いのですが、今回は中も統一したい、というTさんのご要望通り、すべてウォールナットで。

突板や無垢材と言うのは、出合うタイミングと言うものがあって、希望どおりの色の木を使うことができるというのはなかなか難しいものなのです。特にこういう天然の素材は、この木は赤茶っぽくても、こちらは青みが買った黒さだったり、白太が入れば色は抜けて明るく見えるし、それにウォールナットは経年変化で色が抜けやすい。そういう条件がある中でも、材料屋さんに協力してもらって、今使うことができる突板を何種類か用意してもらったり、それでも合わない時はしばらく時間を空けて次の材が入ってくるのを待ってTさんと一緒に色を探したのでした。長かった・・。
でもこうして待つことで、タイミングよくTさんが希望している色のウォールナットが入ってきたのでした。そしてその突板を使って、木目を少しずらしてより動きのある突板を突板屋さんに作ってもらって、ようやく完成。長く時間を掛けた甲斐あって、凛々しい家具ができましたね。

ランダム張りウォールナット突板を使ったテレビボード

コンセントは、JIMBOのNKシリーズの黒いものを使っていますので、落ち着いた印象になりました

「イマイさん、先日はありがとうございました。
大きさも存在感があり主人も大変満足しております。確かにどこかこの存在感が、高級な印象に見えてとても素敵です。
ご存知のとおり主人は気分が上がりすぎて明日あたりこの家具をつまみに一杯やるのではないでしょうか…(笑)
色や木目細部まで期待に応えて頂き本当に有難うございました。
木目が派手に入っているのも好きですが、これくらい上品な木目の方が存在感としてはしつこくなく飽きもこないのでとても良いです。
顧客の要望に近づけようとしてくれるイマイさんの対応や行動力、主人も私も関心しておりました。
大雑把な人には絶対出来ないお仕事ですね、今後も頑張って下さい!
それからメンテナンスや素材特性についても有難うございます、参考にさせて頂きました。吊上げや配線など結構大掛かりでしたね、会社の方々にもどうぞよろしくお伝え下さい。
それでは今後とも宜しくお願いいたします。」

ウォールナットランダム張りのテレビボード

今回は、オリジナルの突板を使っているわけですが、いつものものとどう違うか、写真だと分かりにくいですね。 色はTさんのイメージに近いものが出回るまで待っていたのですが、そのほかにもう一つ、今回の突板は幅30cmほどのものを3枚並べて90cmの板にして作っているのですが、その30cmの板をただ並べるのではなく、少しずらして並べているのです。そうすることで、木目がずれて見えるのでより動きのある木目になったのです。 一番最初の写真を見ると何となく分かりますでしょうか・・。分からないかな・・。

Tさんはご新居を建てた時から、このテレビボードを考えていたのだそうです。
でも、工務店さんも家具はそれほど得意ではなかったようで、さらにTさんの要望に応えることが難しいということもあって、ご新居と一緒には作らなかったのだそうです。それから、いろんな家具屋さんを見て回ったり、インターネットで調べたりすること数年、私たちのようなオーダー家具やさんが集まるポータルサイトを見つけて、そこで依頼をしたのだそうです。でも、問いかけても返事は来なくて・・、それで思い切って直接私たちのところに相談に来て下さったのです。
そういう思いがあって、いつもあれほど熱い眼差しをされていたのですね。(笑)
その期待にこたえられるかいつも自分が心配でした。(笑)
それでもこうして気に入ってくださってとてもうれしく思います。
奥様にもこうして気に入ってもらえましたし、途中から打ち合わせに参加してくださった、ご主人が「うちのが細かいことを言って大変かもしれませんが、よろしくお願いしますね。」と言って大きな口で快活に笑ってくださったこともよく覚えております。
お二人にこうして良くして頂いたことがとてもうれしかったです。ありがとうございました。

ウォールナットランダム張りのテレビボード

価格:690,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から)

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