あこがれ

「テレビボードのオーダー」

山手 U様

design:Uさん
planning:daisuke imai
producer:shouko tsuchie
painting:kurihara tosou

2005年4月の最後の日は、初夏のような陽気でした。
ゴールデンウィークは始まったばかりで、渋滞を気にして早めに会社を出発した私たちの運転するトラックには、陽光とは対照的なシックな色合いの黒い家具が満載されていました・・・。
Uさんの内覧会には、私の妻と二人で出席しました。だいたいマンションなどの内覧会は、居住者の方々のお休みに合わせて土日に開催されることが多いので、私も休みの時は妻と一緒に行くのです。色々なおうち見るのは私たちにとっても楽しい経験ですから。(今は私たちにもいよいよ家族が増えたので、私一人になってしまいましたが・・。)
「山手」と言う地名を聞いて、一体どんな住まいなのだろうと、二人でとても楽しみにしていました。内覧会に行く前の夜は、いつも子供の頃の遠足のような気分です。「どんな人に会うのか」、「どんな場所なのか」二人で話して楽しみにしながら寝るのです。
小高い丘の上に立つ不思議な階層の白いマンションに到着すると、居住者でもないのに係りの人に案内してもらってエントランスまで出ると、ちょうどそこにUさんご夫妻も来ていてやっと出会うことができました。
正直、もっと若い方かと思い込んでいたのです。でも、実際にお会いしたUさんご主人はロマンスグレーで黒いロングコートでとても素敵な方で、私が歳をとったらこの人のようになりたいなって、思わず何だかすごく憧れのような感覚を抱いてしまうくらい素敵な印象の方でした。メールでやり取りを重ねた奥さんもすごくタイトな黒っぽいワンピースを着たとてもシックな方だったのです。私と妻が何だか子供に見えてしまうくらいでした。
何だか私たちとは別の世界にいるような人たちに見えてしまって、お話するのが恐縮な気がして・・・。
でも、話をはじめてみると、とても家具に対して分かりやすい意見を持っていて、話を聞いていると何だかとてもうれしかったのです。内覧会の帰りも何だかうれしくて二人ではしゃいでしまったくらいでした。

そして、4月30日の納品当日、予定よりも30分以上も早くマンションについて初夏の暑さに参りながら無事Uさんのお部屋に到着。もともとシンプルな形の家具なので、取付は普通の家具よりもスムーズに取付が終わって(と、言っても2時間半ほど掛かりましたが・・・。)、「お待たせしました。では、これで取付が終了しました。」とUさんに伝えました。実は、私はこの時が一番緊張しています。だってその人のイメージどおりのものになっているかどうかが判断される瞬間ですから。
「バッチリ、イメージ通りで、とてもうれしいです。私の描いたあの図面がこんなにきちんとした形になるなんて。とてもうれしいです。」そう言ってくださいました。
そこまで言われると、作ったのは土江さんなのに、何だかすごく私が照れくさくなってしまって。お二人からそう言って頂けたので私はすごくうれしかったのです。そのあと、内覧会の時の話をしていて、Uさんたちは、妻と私を「何だかすごく良い雰囲気でいいなって思っていたのですよ。」って言ってくれて、まさかそんな風に思ってもらえていたなんて考えてもいなかったから、そのことを聞いたあと私は何だか舞い上がってしまいました。
今日はいい日です。

ナラ柾目を使ったモノトーンなテレビボードとカップボード

「イメージしているのはこの食器棚なのです。」と言って内覧会の時に見せられたのは、1枚の雑誌の切抜きの食器棚でした。黒地の本体に白い引き出しの入ったコントラストの強いモダンな形です。

「妻はこのデザインがとても気に入っているのでこれに基づいた仕様で製作していただけますか。」と言われて作ったのが今回の食器棚です。塗装の色は、とてもオイルフィニッシュで出せる色ではなかったので、ほぼ黒に着色してウレタンクリアを吹いて仕上げています。塗装はいつもお願いしている栗原塗装の栗原さんに。だんだんと一緒に仕事をさせてもらうようになってきて、私たちの好みが分かってきてくれたので、今では気軽にいろいろと塗装のことを相談させてもらっています。
と言うことで、今回は木目を残したツヤ消しの少し茶色の入った黒い色で塗ってもらいました。引き出しの前板は、塗装ではなくメラミン化粧板の鏡面仕上げの「ホワイト」を使っています。
取り付けが終わったあと、奥さんは食器棚の天板を撫でながら「イメージどおりでうれしいです。ありがとうございます。」とにこやかに言ってくださいました。

ナラ柾目を使ったモノトーンなテレビボードとカップボード

引き出しを開けるとこのような感じ。


ナラ柾目を使ったモノトーンなテレビボードとカップボード

ステンレスのハンドルと、白い化粧板の印象。


ナラ柾目を使ったモノトーンなテレビボードとカップボード

こちらはご主人が主に使うリビングの収納です。イメージはシンプルに衣装箱のようなカタマリに、ガバっとフタをあけて中に本をドサッとしまえる収納です。黒いラインが白い床と壁を横切る、その長さは4m以上あるのです。これは、実際に眺めるととてもきれいです。

イメージどおりに天板は壁側に手を掛けられうようにアールを描いたくぼみをつけてそこに手を掛けてフタを開けるようにしています。ふたを開けた中は、本当にシンプルでところどこと区切られた空間になっています。この収納の中には通気用の白い樹脂キャップをつけています。と言うのもこの家具は床に固定しているのですが、冬場に床暖房をつけると熱家具が熱を持ってしまうからです。家具自体が変形してしまうくらいの熱さになるわけではないので収納内部の収納各ヵ所の四隅にそれぞれ樹脂キャップをつけています。 また、この家具の設置位置は背面の壁には触れずに、壁から5cm離して床に固定しているのです。ふたを閉めてしまうと全く分かりませんが。なぜかと言うと、その5cmの隙間は左の壁から出ているコンセントなどの配線を通す為のスペースなのだそうです。また、一番左の収納は、コンセントなどがうまく使えるように収納の奥行を小さくしています。
そして、左から2番目の収納はテレビ台になっていキャスターでどこでもゴロゴロと転がせるようになっています。ゴロゴロと手前に引っ張り出してAV機器とテレビの配線をしたら、また、ゴロゴロと元の位置に戻して、フタの手掛けと同じように欠き込んだ天板の奥から配線が落ちるようになっているのです。
これで線の目立たないとてもすっきりとした黒い四角いものが横たわった姿が完成するのです。

ナラ柾目を使ったモノトーンなテレビボードとカップボード

テレビボード部分を正面から見た姿。


ナラ柾目を使ったモノトーンなテレビボードとカップボード

このように軽くて前に引き出せます。


ナラ柾目を使ったモノトーンなテレビボードとカップボード

テレビボードの隣の収納部分はこのような感じ。


ナラ柾目を使ったモノトーンなテレビボードとカップボード

床暖房用の通気口。


ナラ柾目を使ったモノトーンなテレビボードとカップボード

収納のフタの手掛けの様子。


ナラ柾目を使ったモノトーンなテレビボードとカップボード

コンセントがある部分はこのような感じで配線スペースを設けています。


ナラ柾目を使ったモノトーンなテレビボードとカップボード

全てセットし終わった様子。

モノトーンの食器カウンター

価格:380,000円(制作費・塗装費)

モノトーンのテレビボード

価格:560,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は30,000円から)

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