おいしくなあれ

「タモとブラックウォールナットのセパレートタイプの食器棚のオーダー」

鶴見 M様

design:Mさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:tatsuya suzuki
painting:yasukazu kanai

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

使いたいものが使いたい位置に置かれている、良い食器棚。

「初めまして。Mと申します。
今秋に新築のマンションへ引越しをするのですが、不動産業者紹介のデザイン会社で食器棚を見積もりしてもらったところ、今ひとつピンと来ず、いろいろとネットで探していたときに御社のページに辿り着きました。
せっかくお金を出して作るのであれば、納得のいく形にしたいのです。そういう意味では御社なら叶えられるかな?とページを拝見して思いました。
検討しているのは「北欧風の色とデザイン、炊飯器置き場は扉を持ち上げられるデザインです。ゴミ箱置き場は検討していません。(なくてもいいかな、と。。)
添付写真1枚目(モデルルームにて撮影)は備付けのキッチン。
写真2枚目はデザイン会社から提示された食器棚。(モデルルームにてこちらも撮影)。
左サイドの炊飯器置き場、また下棚の天板は人工大理石で、奥行きを通常450㎜から、500mmに変更するとさらに追加料金が発生します。
持っているスチームオーブンを置くためにはどうしても奥行き500㎜はほしいと思っています。
心配なのは、スチームオーブンの蒸気が後方上面から出るので、上棚の底が傷まないか、ということです。
何か特殊加工をした方がいいのか、通常の無垢材のオイル仕上げで大丈夫なのか…正直、素人の私にはわかりません。
アドバイスいただけますと幸いです。
またもっているカップボードの写真をも併せて送ります。これはリビングダイニング側にアクセントで置く予定です。
なので、オーダーする食器棚も同じような色合いがいいかな・・・と漠然と考えております。
なお、マンションの内覧会が8月に決定しておりますが、今からオーダーしても間に合いますでしょうか?
引渡しは9月末ですが、他の施工業者が入る関係上、引越しは10月後半を予定しています。
お忙しいとは存じますが、お時間ございますときにお返事いただけますと幸いです。
以上よろしくお願いいたします。」

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

吊戸棚の様子。戸棚下のオープンスペースは、今回は吊戸棚と同じ奥行で深めにして作っています。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

カウンターの様子。今回の家具の樹種、色、デザインは、Mさんが長年ずっと使ってきたチェストに合わせているのです。少しクラシカルなデザインに2色を組み合わせた素材使い。真鍮のツマミなど、今はダイニングに置かれたそのキャビネットと同じ印象にしているので、ダイニングからキッチンがとてもまとまった印象になっているのです。

Mさんから食器棚のご相談を頂きました。拝見させて頂いたデザイン会社さんの図は、キッチンメーカーさんのキャビネットの組み合わせで展開された食器棚の図でした。サイズは一般的なモジュールの組み合わせですので、きちんと納まるようになっているのですが、その人それぞれの要望まで踏み込んだ形にはやっぱりならないのです。

みんなが同じ形を望んでいるわけではないから、一番標準的な形で作られているキャビネットが多いのです。
だから、メールで頂いたような細かな要望となると対応しづらい部分があるのでしょう。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

引き出しの様子、その1。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

引き出しの様子、その2。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

引き出しの様子、その3。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

引き出しの様子、その4。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

引き出しの様子、その5。

そこでさっそくより具体的にお話をお伺いして形を考えていったのです。
スチームオーブンのヘルシオを使っていて、その蒸気を逃がす形にしたいこと。食器棚設置壁面の左上に梁があること。そういう条件が重なってひとつの形が見えてきたのです。
「空いたスペースは、素人考えですがスチームオーブンの水蒸気および発生する熱を早めに逃がすためと考えています。
そのために上が空くのはもったいない、とデベロッパーからは言われましたが、毎年梅干しを漬けるので梅を干すための盆ざる(直径50センチ)を壁にかけて置きたいと思ったり、ジャムを作るときのレードルや木杓子などを吊り下げておくなどの“空間”を作りたかったためです。変でしょうか?」

全然変じゃないです。楽しみですね。
そこで私は一つ提案をさせて頂いたのです。
以前にKonaSalonの熊崎さんからのご提案で作らせて頂いた「鍋掛」や以前cafeのカウンターに作った「長押」をつけると良い雰囲気になりそうだと思ったのです。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

最終的には扉は付けないでオープンになった炊飯器用のスライドテーブル。

「さっそくのご回答、ありがとうございます!
また素敵なご提案もくださり、とっても参考になりました。
シンプルなのにすごくかわいいですね!
ぜひつけたい、と思いました。
それとは別に、持っているキッチンインテリアの本に載っている壁かけ(?)の中で、これいいなー、と思ったモノがありました。
写真をお送りしますのでお時間あるとで結構ですので、ご覧になっていただきご意見頂戴できればと思います。
写真ではカップがたくさんかかっていますが、もう少しキッチンのツールをかける仕様で、段の幅が広くなったものにできたらいいのかな、とか。。
また、写真の中のサイドの壁についている、上に小物が置けて、その下にフックがつけられる仕様のものもいいかな、とか。。
キッチンの食器棚とコンロの間の壁に、こういうのがあっても便利かなーと思ったりしました。
見せる収納、見えないように隠す収納をバランスよく取り入れられるといいなぁ~と思っています。」

mrt013

長押のイメージ。

そこで、何となくイメージが頭の中に浮かびましたので、それを絵に描いてMさんにお送りしたのです。

「昨日は、お見積り、図面、スケッチなど、お送りくださり、ありがとうございます!
迅速に対応くださって、なんだか恐縮するとともに、うれしく思いました。
夫はスケッチを見て、かなり感動しており、我が家の今井さまへの信頼がどんどん厚くなっております^^
そして、さっそくすべて拝見させていただきました。
まず左側の吊戸棚を外してくださったことで、見た目の全体感がスッキリしますね。
こうして図面にしていただくとすごくわかりやすいなーと思いました。
またその空いたスペースにつける長押し!
すっごくシンプルかつ機能的に使えそうでいいですね。とっても気に入りました。
季節によって飾るものを変えても素敵だな~と勝手に思ったりしてワクワクします。
あとは実際の木目や色で雰囲気も変わるかな、と思うので材料や色のお打合せが楽しみです。」

とうれしいお返事を頂いたのです。

ブラックウォールナットとタモホワイトの二樹種の食器棚

みんなでつぶやいているように見えるカウンターの上。

こうして、形がまとまってできあがった食器棚。実はそのあとなかなか都合がつかなくて、取付の時も参加できず、その後もなかなかお会いする機会がなかったのでした。
そして、納品から2年半後、お便りをいただきました。
「フリーハンド イマイ 今井大輔さま
初夏の日差しが心地よい季節となりました。
いかがお過ごしでしょうか。
時折、フェイスブックで今井さんのお仕事を拝見しています。
相変わらず、今井さんの作られる家具に憧れつつ、なかなか次のものに着手できないでいます。
さて、そんなご相談なども兼ねて、我が家へご招待でも、と思いご連絡致しました。
招待というほど、大したおもてなしもできませんが、今の住まいに入居してから、
作っていただいたキッチンの家具の写真などを撮りたいとおっしゃっていましたので、
遅ればせながら、ご都合をお伺いしたかったのです。
お忙しいと思いますので、ご都合つく頃などをお知らせいただければと存じます。
6月の最終週あたりか7月くらいになるでしょうか?
またお時間ございます時にご連絡くださいね。
それではお返事楽しみにお待ちしています。」

タモの長押

長押、その1。

タモの長押

長押、その2。

やっとお伺いできそうです。うれしいなあ。
そして、このメールから半年後の冬に差し掛かった頃、ようやくMさんご夫婦と、食器棚と再会。3年ぶりでしょうかね。
うれしいなあ。

「イマイさん!来て下さってありがとうございます。食器棚は大満足です。どこも不具合なくきちんと使えていますし、とても使いやすくてありがとうございます。」と奥様からうれしい言葉を頂きました。
使い込まれた食器棚は、Mさんらしさがそこかしこにあふれております。
「おいしくなあれ。」って食器棚の中のみんながMさんの背中に向かってつぶやいているのが聞こえそうなくらい賑やかな食器棚。

「さあ、イマイさん、ここに座ってくださいね。」
ご挨拶と点検を終えた後、写真を撮らせて頂いてから、Mさんに促されて食卓へ。
「準備ができるまでは、あなたがお話相手よ。」とご主人を促します。
そうあらためて言われちゃうとかしこまっちゃうのですが、ご主人もとてもユニークな方ですので、お話をしているとあっと居間に時間が過ぎていく。
その時間を見計らって、奥様が手際よくお料理を運んでくださいます。
おぉ、ここはレストランだろうか。
美味しいものほどすぐに忘れてしまうもので、ふたを開けるとホクホクになった丸ごとの玉ねぎや、ほろほろになった具合の良いお肉や、・・とそれしか思い出せないのですが、(すみません・・。)大変おいしい料理をおなかいっぱい頂いて、家具の点検しに来たのに最後は街道までお見送りまでして頂くという大変すばらしいおもてなしを頂いてしまって、ありがたいことです。

タモとブラックウォールナットの食器棚

価格:570,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は30,000円から)

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