終点

「テレビボードのオーダー」

町田 S様

design:Sさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hiroshi ito/tatsuya suzuki
painting:hiroshi ito

オーク柾目の飾り棚のあるテレビボード

とても落ち着い佇まいになりました。

ある日、こんな問い合わせが届きました。
「新居に越した際、テレビ台を近所の家具屋さんで新たに購入しようとしたのですが、肝心のテレビが載る台の幅が1100m/mまでしかないと言われて困っています。両側の収納はこちらの家具屋さんで購入するとしたら将来的にプラズマテレビを載せる為の幅の広い棚板だけを作ってもらうことは出来ますでしょうか?」と言うものでした。
その家具は私も以前見たことがあってサイドの収納はガラスの扉でできていてその中にガラスの棚板が入っていて、上から組み込まれた照明が中を照らすという上品な組み立て家具でした。
ですが、私には不安がありました。(いつも不安になっています・・。)
棚板だけ作る分には簡単なのですが、かなりの重量があるプラズマテレビを載せる板となるとどう作ったら良いものかと・・。ちょっと前に雑誌で板の中に金属のプレートを仕込んで強度を出すという棚板を見たことがありました。それも大変だと思い、「厚みを増やして強度を出す方法ならできます。」と返事を送りました。しかしそれは棚板にしては少し高いと思える金額になってしまいました。
それからしばらくSさんからの連絡が途絶えてしまって、私も慌しくなり、「結局どうしたのだろう?あの棚を作るのはやめてしまったのかな。」なんて時々思ったりするだけになっていました。
そんな時、Sさんからメールが届いたのです。
「もう一度、イメージをお伝えして今度は棚板だけではなくテレビ台としてお見積をしてもらいたいので、1度お伺いします。」とありました。
「ああ、まだ私たちのことを考えていてくれたのだなぁ。」と嬉しくなりました。
それからこちらに来て頂いた時にいろいろとお話をし、あれから他の家具屋さんにも当たってみたことやなかなか自分たちの希望通りの家具が見つからなかった経緯についてお話してくださいました。
そして二人が最後に辿り着いた意見がフリーハンドイマイにやはり頼んでみようということになったのです、とお話ししてくださいました。
今度のSさんのイメージはテレビを載せる部分は棚ではなく箱として考えてほしいと言うものでした。
「よし、これなら頑丈に作れるから大丈夫だ。」と私も一安心してさっそくSさんと一緒に形や色等を決めていきました。
できあがった家具はとてもシンプルな家具となりました。サイドの収納は最初からのイメージ通りにガラス扉にしこの中の棚板もガラスの棚板にしています。間接照明をどうしようかSさんは迷ったのですが、私としましてはあまり家具の中に電気を組み込むことが好きではありませんので(板の中を潜らせて配線していく手間と、のちのちのメンテナンスのことを考えるとどうしても木の中に照明を入れることが好きになれないのです。)「家具は家具としてシンプルに捉えたほうが良いのではないでしょうか」と私は提案しました。ご主人も賛同して下さり、奥さんもリビングのことを思い巡らせていろいろと考えてみたら家具を置こうと考えている場所にちょうど良くダウンライトをつけてあったのを思い出し、それならあえて家具の中に明かりをつけなくても良いかなという話にまとまりました。
「それが一番ですよ。」と私は言いました。
家具には取っ手はつけずに掘り込んだ手掛けとしています。引き出しはその手掛けを隣り合う扉と合わせて上向きにつけて、CDやビデオ・DVDなどが取り出しやすいようにしています。この引き出しで使ったスライドレールもこちらに来て頂いた時に、実際に触ってもらってその感触を確かめてもらい動きがスムーズで耐荷重の大きなものをつけています。中央のテレビ台には各AV機器との配線がしやすいように下にキャスターをつけています。また、そのテレビ台の内部は最大で6台の機器がゆったり入るような寸法にして、各機器同士の配線がしやすいように中を仕切る帆立の奥に隙間をあけて、また、棚板もその奥行を背板につけないで奥に隙間があくようにして配線が通りやすくしています。テレビ台の天板と両側板にもそれぞれコンセントに向かう為の配線孔を開けて引き出しの下の巾木の奥を通して配線するようにしています。

取り付けに伺ったときに家具をお部屋へ入れた時、その家具を見てご主人も奥さんも「おぉ。」と二人声を揃えて喜んでくださいました。こんなに喜んでもらえるととても嬉しいですね。
取り付け終わったあと、ご主人が「やはり、家具が届くまでは不安でしたよ。結局、私たちの頭の中とイマイさんの頭の中にしかその完成図はないわけですから。どのくらい良く出来上がっているのか、またどのくらい悪い部分があるのか実際に見てみないと分かりませんから。すごくきれいに出来上がってうれしいです。」とおっしゃいました。「そうですよね。私も不安です。どこまでイメージが一致していたかを作りながら考えると。」と私も思いました。その後、奥さんが「この家具に合わせてリビングの家具を全て作ってもらいたくなってしまいました。」とにこやかにおっしゃってくださいました。

オーク柾目の飾り棚のあるテレビボード

飾り棚の扉とガラスの棚板の様子。この部分には、あまり重いものを置かないと言うことで、5mmの厚みのガラス棚にしています。


オーク柾目の飾り棚のあるテレビボード

こちらはAV機器収納部の扉。この部分だけ配線がしやすいように手前に引き出せるようになっているのが分かりますでしょうか。


オーク柾目の飾り棚のあるテレビボード

引き出しの手掛けの様子。

ナラ柾目のテレビボード

価格:450,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は18,000円から、取付施工費は30,000円から)

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