ベンチのある暮らし

「ナラ板目のベンチ式のリビング壁面収納のオーダー」

市原 Y様

design:Yさん
planning:daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:yasukazu kanai

ナラのリビングベンチを兼ねたAV機器収納

長い長いベンチの全景。正面から見ると、脚がしっかり見えますが、立ち上がってみるとなかなか宙に浮いて見えるのです。

ご新居の一番メインになる部分に不思議な家具がご提案されました。
形を考えてくださったのは、Yさんの家を設計されたスタジオチッタさん。
ベンチを兼ねた収納ということで、まずは担当の設計士さんである山崎さんからの図面を頂きました。
「はじめまして、このたびはお世話になります。どうにか実現可能できればと思っておりまして、ディテールはお任せいたしますのでご確認頂ければ幸いです。」とご連絡を頂いたのでした。
このお話を機にスタジオチッタさんにお邪魔させて頂こうと思っておりましたが、当時は年度末ということもあってかなりバタバタとした日々でしたので、結局お会いしてご挨拶もできず失礼致しました。
ただ、お電話やメールの雰囲気からとても魅力的な方で考えている形の魅力もよく分かりましたので、実際にYさんとお会いする時には、もうとても良い形になっていたのです。

ナラのリビングベンチを兼ねたAV機器収納

背もたれは、キッチンの扉の手掛けのラインに合わせましょう。

当初のイメージは宙に浮いているベンチでした。でもリビングの壁からキッチンまでの長さは3500mmを越えます。そこに引き戸の収納を設けるとあっという間に扉ががたついてしまいそう。
そこでなるべく山崎さんの考えてくださった形のイメージを崩さないように補強をしていくことにしたのです。
まず最初に考えたのは、座面と言うか甲板。ここは座るし、物も置くし、きっとYさんのちびっ子たちも飛び跳ねる。絶対に飛び跳ねる。
ですので、突板より無垢で作りたいなあと思っておりました。

ナラのリビングベンチを兼ねたAV機器収納

座面は無垢で、背もたれは10尺を越える長さの特注の突板を張ってもらいました。

でも、長い材は手に入りにくかったりするので、もうYさんから正式にご依頼頂く前に材料をいつもお願いしている北洋木材さんに確保しておいてもらうためにすぐに連絡。
ちょうど良いナラの板目材があるとのことですぐに取り置きしておいてもらって、あとはこれでじっくりと細かい部分の形を考えていくことができます。
この長さの箱を支えるには、ある程度のしっかりした脚が必要で、それも脚だけだと箱が垂れちゃうから、その箱を受けるための板も横に流して・・。
背板はなるべく壁面に固定している印象を見せたくないから、インロウにして・・。
できあがりはシンプルでもそこに至る過程はいろいろと考えるのです。

ナラのリビングベンチを兼ねたAV機器収納

箱の下の補強。ナラ無垢の角材を右壁から左キッチンまで横に渡しております。

ある程度プランがまとまったところで、Yさんが市原からこちらまでいらして下さいました。
海を渡って来て頂けるなんてうれしいことです。
せっかく来て頂いたので、ショールームをいろいろ見て頂いて(と言っても、すぐに全部見れちゃう程度の広さです。)、この茅ヶ崎で活躍されている古知屋恵子さんのカレンダーも購入してくださったり、お子さんたちには、おもちゃがあるスペースで遊んで頂いたり。

ナラのリビングベンチを兼ねたAV機器収納

格子扉の一番右は、AV機器収納。この右壁にコンセントがあって、CD管も通っていて、壁掛けテレビに線がつなげるようになっているのです。

ちびっ子たちを連れた皆さんを見ていると、いつか機会があれば下の作業場で木工教室なども気軽に開けるようにできたら改装できたらよいなあと思うのです。
こういう打ち合わせって子供たちは退屈しがちなので、なるべく楽しいようにおもちゃ(娘たちが使わなくなったお古が多いですが)をたくさん置いてあるのですが、だんだんと大きくなってくるとおもちゃでも遊ばなくなるし、みんな携帯ゲーム機などを持ってきていて打ち合わせが終わるのを待っていたりするのですが、そういう時にちょっとした作業場で、汗流しながら木を切って組み立てて簡単な箱でも作れたら良い思い出になるのになあと思うのですが、なかなかいつもの仕事が忙しくてそこまで手が回らず・・。
私のささやかなひとつの希望です。
そのうち叶えよう。

ナラのリビングベンチを兼ねたAV機器収納

引戸の印象、その1。

「リビングにフリーハンドイマイさんのベンチがあると思うと、新しい家がますますたのしみです。」
そして、Yさんからありがたい言葉を頂きました。うれしいなあ、頑張ります。

ナラのリビングベンチを兼ねたAV機器収納

手掛けの掘り込みの様子。

そもそもこの家具はベンチであってベンチではない。
ダイニングは斜め向かいの小さく陽が入り込んでくるちんまりとした気持の良い場所があったので、ここはどちらかと言うとリビングです。現にテレビも壁掛けになるし、そのテレビとの配線も行なえるようにベンチの内部にはCD管が通るマルチメディアコンセントもあります。だから、どう使うかはYさん次第。ちびっ子はまだまだおもちゃが楽しい盛りで、どんなふうにこの場所を自分たちのプレイグラウンドにしていくかはYさんさえも分かりません。
だから、これはベンチであって、収納であって、跳び箱でもある。
楽しんで使ってくださいね。
そして、もし壊れちゃったらお声掛け下さい。また海を渡ってやってきます。

ナラのリビングベンチを兼ねたAV機器収納

引き出しは、当面はおもちゃ箱。

ナラのリビングベンチを兼ねたAV機器収納

こちらもおもちゃ箱。

ナラ板目のベンチ式のリビング壁面収納

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

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