
古知屋さんの個展
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月29日
もうすぐオープンハウスということで2階の荷物を整理していたら、あったあった。
古知屋さんの絵を掛けたかったんだ。
今年も茅ケ崎街路樹で古知屋恵子さんの個展が開かれます。
今週末から来週末に開かれるので、私たちは今週末のどこかで会いに行こうかな。
「古知屋恵子木版画展」
日時:11月2日(土)~10日(日)11時~18時
場所:「街路樹」
住所:茅ケ崎市中海岸2-5-5-110
電話:0467-58-1231
日時:11月23日(土)~12月1日(日)11時~18時
場所:「ギャラリー結」
住所:大田区萩中1-10-27
電話:03-3744-1957
日時:12月5日(木)~12月15日(日)11時~17時
場所:「リンデン」
住所:青葉区もえぎ野22-25
電話:045-532-5288
在廊日の14時~14時30分の間は、また紙芝居も開いてくださるそうです。
詳細:「こっちいファン」
https://twitter.com/aona_12

タモのツマミ
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月28日
とても繊細な形です。
折れないかしら。
【近日開催予定のイベントのおしらせ】
イマイダイスケ 自宅のオープンハウス
日時:11月24日(日)10:00~17:00
場所:神奈川県海老名市
詳細:https://www.freehandimai.com/?p=20061
クレミル2019
日時: 12月14日(土)、15日(日)10:00~17:00
場所:フリーハンドイマイ工房にて
詳細:https://www.freehandimai.com/?p=20028

晩ごはん
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月27日
午前中はこの地域の自治会長さんをはじめ、地域で活動されるご年配の皆さん、小中学校に関わる皆さんが集まる会議に出席。
相模川のそばに住む私たちにとって、テレビの向こうで起きている映し出される災害の様子は今すぐ自分たちの身に起きてもおかしくないことで、堤防が決壊していたら今ここでこうしてみんなで集まっていることもなかったでしょう、と会長さんが静かにおっしゃっていました。
今を生きているということをとても実感しています。
いっときいっときを大事に過ごすとかそういうのとは違って、自分は今こうしていられるんだってことを実感しながら過ごしています。
とてもありがたいことです。
ハルカは今日は一日出掛けているので、アキコとチィと3人で煮豚をいただきます。
【近日開催予定のイベントのおしらせ】
イマイダイスケ 自宅のオープンハウス
日時:11月24日(日)10:00~17:00
場所:神奈川県海老名市
詳細:https://www.freehandimai.com/?p=20061
クレミル2019
日時: 12月14日(土)、15日(日)10:00~17:00
場所:フリーハンドイマイ工房にて
詳細:https://www.freehandimai.com/?p=20028

オーダーキッチン「Oさんのお引渡し」
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月26日
今日は午前中にハルの通う中学校で会議に出席。再び、台風は怖いよねってお話になりましたが、結局、学校が避難所として開設された時には、私はこの工房の不測の事態に備えてここに来てしまったので、地域には何も協力できなかったなあと振り返る。
自分が住んでいる場所で一つの大きな力になれることがとても大切なことだけれど、やっぱり工房も心配だし、工房に居るアイも心配だし、みんな思い思い大切にしているものはいろんな方向を向いているけれど、そういうかたちの中で自分が何ができるのかな。難しいな。
明日はその地域の皆さんが集まる会議があるから、いろんな話を聞いてこよう。
その後にOさんのところに。
もう長いお付き合いのmf Atelierの藤井さんの設計するOさんの新居。緑に囲まれたとても心豊かになれる住宅のリノベーションでした。
その中で作らせて頂いた2台のオーダーキッチン。
そのうちの2階のキッチンがこちらです。
藤井さんらしい素材使いだなあとしみじみ思います。
藤井さんは「おしゃべり」の藤井さんですよ。
今回は藤井さんのお付き合いのあるフランジプライウッドさんと一緒にお仕事をさせて頂きました。壁面収納をフランジさん、その中のキッチンを私たちという形をつなげて作っていくのでしたが、フランジの上田さんはとてもお話していて心地良いかたで、とても楽しく面白くお仕事をさせて頂けたのです。
今度はお母さまの住む1階と合わせて、使っている様子の写真を撮らせて頂こうと思います。
またお邪魔させて頂きます。
【近日開催予定のイベントのおしらせ】
イマイダイスケ 自宅のオープンハウス
日時:11月24日(日)10:00~17:00
場所:神奈川県海老名市
詳細:https://www.freehandimai.com/?p=20061
クレミル2019
日時: 12月14日(土)、15日(日)10:00~17:00
場所:フリーハンドイマイ工房にて
詳細:https://www.freehandimai.com/?p=20028

テーブル使用感
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月24日
今日は鎌倉のNさんのところに、家具のご相談をくださった設計士さんとコーディネーターさんと一緒に打ち合わせに行ってきました。
食器棚や本棚を作らせて頂く予定で、前回こちらの工房までいらして頂いていろいろとお話させて頂いたのですが、その時はお見合いという感じでご挨拶とこういうオーダー家具を作っている工房なのですよ、とご説明させて頂いたまででしたが、今日は、「では実際にどのような家具の形にしましょうか。」という具体的なお話のスタートの日でした。
そのいろいろと楽しいかたちの話をさせて頂くなかで、ご主人が「以前お伺いした時に見た円卓を置いてみたいと思っているのですよ。」と言ってくださって、うれしい反面、自宅で使っていてこういうことがあったなあ、ということもお伝えしなくては、と思い、ここでまたいろいろとお話させて頂いたのでした。
それはまず、「脚が細い」ということ。
脚が細いので、当然荷重がその5点に掛かってくるのです。自宅の床はアカマツで柔らかいので凹みやすかったので、脚の下に小さく切ったフェルトを張ったのでした。
でも、脚の底面積が小さいので、フェルトの粘着が弱くてだんだんとずれてくる。
何でずれるのだろうと思っていると、うちの二人の女子たちが肘をついたまま椅子をズズッと引き寄せる動作をするんですね。
そうすると、わずかにテーブルが彼女の方に傾いて・・、とこれを繰り返していると、フェルトがだんだんずれてくる。次第に取れちゃって、床が凹んでしまうのでした。
当初はお湯をかけては床を膨らましていたのですが、なかなかこれも大変ですので、思い切ってフェルトを張ってしまおうと思いまして、かなり強力な接着剤(ロックタイト)で張ってしまいました。
フェルト自体もなかば硬化してしまったのですが、これで外れなくなり床へのダメージが減りました。
というお話をさせて頂くとともに、底面のデザインを変えることも可能です、というお話もさせて頂きました。
こちらのYさんのローテーブルの脚の底面に円盤をつけたように。
「そのひとの色」
そして、もう一つが「音」でした。
脚がスチールでできているからか、音が少し響くのです。
気にならないと言えば気にならないのですが、静かな室内で、コーヒーカップをテーブルにトンと置くと、その音が脚に伝わって、トォンって感じに聞こえるのです。
悪くはないのですけれどね。
そういうお話をさせて頂きました。
いろんな形にはその形特有の個性があって、家具をオーダーで作ることはその家具の個性を好きになってもらうことだったりして、そういうクセも何もかもひっくるめて、「やっぱりこの家具は好きなんだよね。」
って言ってもらえる家具作りをしていきたいなあ、とふと思ったのでした。
Nさんの暮らしにどのような形を表現できるか楽しみです。
【近日開催予定のイベントのおしらせ】
イマイダイスケ 自宅のオープンハウス
日時:11月24日(日)10:00~17:00
場所:神奈川県海老名市
詳細:https://www.freehandimai.com/?p=20061
クレミル2019
日時: 12月14日(土)、15日(日)10:00~17:00
場所:フリーハンドイマイ工房にて
詳細:https://www.freehandimai.com/?p=20028

「ヘ」の字のキッチン
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月23日
ちらっと見るとL型のキッチンに見えますが、今回は「ヘ」の字なんです。
ちょっと変わった形のキッチンのオーダーを頂いたのです。
どきどきするわけですよ、やったことない形って。

朝ごはん
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月22日
どうも毎朝ご飯をきちんと食べるという習慣が身につかなくて、なんだか気持ちが焦っちゃうのは自分のよくないところです。
朝の渋滞が始まる頃にせかせかした気持ちで車の横を自転車で走るのは好きではないし、スタッフのみんなが工房に入る前に会社についていたいという気持ちがあるし、って思っていると平日の朝はいつも牛乳飲むくらい。
でも、会社に着いて、アイと遊んで、窓を開けて、ゴミをまとめて、アイのトイレを掃除して、神様のお水を新しいものに変えたら、気持ちが落ち着いてきて何か食べたいなあってなる。
と思っても、何も持ち合わせていないので、お昼になるまでコーヒーを飲むのです。
でもね、今日は祝日なので朝から気持ちをゆったりしているので、何だかいつもよりもにおなかが減っている。
とりあえず、冷蔵庫にあったものをパンにはさんで持ってきたのでした。
さあ、食べようかなとふと思ったら、アキコが目玉焼きを焼いてはさんでくれていたっけ。
(切ったらトロリとなっちゃうかな。)と思っていたけれど、余熱で卵がまとまってしまったみたい。
ほんとはトロリとなってほしかったのですが。
とお話が長くなりましたが、こういう木のお皿作れますよ。
【 tw-di03 [osiki]】
クレミルの時にね。
長方形でも六角形でも、円形(ちょっと時間が掛かりますが)でも。
木のお皿ってそのままナイフが使えるから、気兼ねなく使えるのが良い。
卵がトロリとなっちゃっても、ご飯つぶがあちこちついちゃっても、ソースでベタっとなってしまっても気兼ねなく使えるのが良い。
自分で作ったお皿で食べるご飯っておいしいでしょう。

リビングボードのオーダー「Iさんのお引渡し」
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月21日
荷揚げを手伝った後は、Sさんの作業をみんなに任せて小田原のIさんの現場まで。
今日がお引渡しなのです。
加賀妻さんの現場はいつも温かいわけで、お引渡しも長閑というか居心地よい空気が流れていて、お施主さんのIさんのキャラクターも相まってとても良い時間でした。
全開全体の写真をお見せしたので、今回は実際に見てみないと感じづらい細かな部分。戸の重さや触り心地を考えてできた意匠。
きれいでしょ。
ガラス棚には良いかたちが飾られて、一番右にあるオープンスペースには楽器が吊り下げられるそう。
その時またお邪魔させてください。
ありがとうございました、Iさん。
さてこのあとは、工芸技術所に立ち寄らせて頂いて、NCの加工の相談をしてきます。
ちょっと変わったものを作るのです。

オーダーキッチン「Sさんのナラのペニンシュラキッチン」
Category : 日記「自由な手たち」朝一番で平塚のSさんの現場でみんなで荷揚げ。二世帯住宅の2階で階段が回り込んでいるので、どうにもステンレスカウンターが上がらないのでバルコニーからどうにか揚げました。オーダーキッチンだと、搬入にも柔軟に対応できるように、と行きたいところですが、収納部分はそれぞれのユニットごとに分けやすいのですが、やはりワークトップは大きな面で形になっていると美しいのです。
キャビネットやワークトップが浮いたような印象。側板の木口の仕上げ。実際に見てみるとこれは気持ち良い、と思える部分が組み込まれたキッチンです。
印象としては、「顔を合わせて」のUさんの印象を取り入れています。あの時のUさんもご主人主導でお話が進んだし、今回のSさんもご主人とのお話がメインだったような。
男性が考える形は似てくるものなのかしら。

見ること
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月20日
ものを作っていくって大変なことなのです。
楽しいこともあるし、辛いこともある。
先日、次女の通う小学校をバックアップしてくれている地域の皆さんとお酒を飲む機会がありました。
「いやあ運動会の時にね、イマイさんと目が合っちゃったから誘っちゃいました。」というおじさまは、私たちの町で大きな力になってくれている人で、ここに住んでいるのっていいなって思わせてくれるのもこの方々の影響。
その席で、その応援団を取りまとめてくださっている方とお話していたのが、よく聞くゲームをする子が多くなったね、というお話し。
私も子供の時はゲームが好きでしたし、そこにしかない世界があってワクワクしたものですが、今の子たちにはその時間が多いように思えるってお話が出たのでした。
楽しいし魅力的な世界ばかりだしそれはすてきなことだと思うのですが、気持ちが受け身になってしまう側面が少し淋しいよね、とそんなおじさんたちのお話になったのです。
私は手に取れるものばかりではなくても、何かを作りだしてほしいと思っているわけで、おじ様たちもそう思っている。
きちんと揃えられた世界の中でゴールに向かうだけでは、得られないものが、もちろん現実にはあるはずでそれを体験してほしいって、みんながそう思っていてそんなお話をしておりました。
そういう話を聞いていたら、ふと学生時代のことを思い出しました。
私はこの仕事に就く前は、どこかでお話したかもしれませんが、「ツルモク独身寮」という漫画が好きで、父の木工所をそのままの形で継ぐのではなくて、家具デザイナーになりたいって思っていたのでした。
それで、デザイン学を専攻するための受験に必要なデッサンの教室に夏休みの間だけ通ったことがあったのですが、そこで講師の先生に教えてもらったのは、「物を描く時に一番暗いと思っている部分はそうではなくてそのちょっと手前が一番暗いんだよ。」ということでした。
なんだろう、それって思っていたのですが、ジーっとよく見ると、そう見えてくるんですね。リンゴを見ているはずなのに、鉛筆のラインまでそこに浮かんできちゃう。
一番暗いと思っていたエッジはほかの反射を受けて少し明るくなっていて、そのちょっと手前が一番暗いんです。
なるほど。
今そこにあるがままを見て、聞いて、読んで、話して、触って、体験することはやっぱり大切で、そういう経験を経て、人は考えること、想像していくことが得意になっていく。
あたりまえですが体験することは想像することのトレーニングですね。
ゲームはだんだんと現実に近づいてきているのかもしれませんが、そういう身体感覚をいつまでも忘れずにいてほしいなあとお酒を飲みながら思ったのでした。
そういう経験を重ねていくと、物を作ることが楽しくなる。
今日は日曜日は工房はお休みですが、お昼過ぎに千葉からお客様が家具のご相談にいらっしゃいます。
これから掃除です。

今年もどこにもないワークショップをやりましょう。
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月16日
美しい金属のほかにヴィンテージタイルの魅力をとても丁寧に引き出した作品作りをされているjardimさん。今年もね、クレミルに楽しいワークショップを考えてくださっていますよ。
「今までは身に着けるものでしたから、今年はね真鍮でクリスマスのオーナメントを作ってみようかなって。」1枚の真鍮板と1本の真鍮棒が星や光の跡に生まれ変わります。
すごいよね、ものを作り出す力って。
今年のクレミルはね、短いんです。12月14日・15日の土日二日間のみの開催です。
でも、その中でいろんなことが体験できるような2日間にしようと思っています。
お楽しみに。

ソファの張地を決めましょう。
Category : 日記「自由な手たち」フジタケワークスの藤武さんは私たちの知らなかったことをいろいろ教えてくださるので、打合せが楽しいのです。
今回のソファにはフジエテキスタイルさんのウールが多く使われている生地にしようと思っております。
その他ウールやリネンが多く使われる素材についていろいろとすてきな張地を見せて頂いたり、座面の布地を解体して、それから型を取るのだという作業中の皮やパイプの素材を見せて頂いたり、コンパクトな工房には魅力的なものたちであふれています。
少し柔らかめで左右だけマチを取った座面に、型崩れしづらいフェザーの背もたれという組み合わせが今回のソファに良く合うことにお話がまとまりました。
帰りにあきる野の中村酒造さんですてきなお酒を手に入れてささやかなうれしさとともに戻ってまいりました。

11歳
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月14日
チアキが11歳になったのでした。嵐の日が彼女の誕生日であの日はみんな気持ちが大変でしたので、昨日ハルカがチアキのために小さなケーキをたくさん焼いてくれたのでした。
そして、2日遅れになりましたがささやかにお祝いです。
おめでとう。

福原さんとの次のお仕事
Category : 日記「自由な手たち」自宅を考えてくださった福原さんは今度は、寒川でまたすてきな形を考えてくださっています。
本日はその現地での打ち合わせでした。
クライアントのKさんや福原さん、そして施工はまた加賀妻工務店さんの近藤さんとも、土曜日の困難を乗り切れたことを感謝しあいました。
こうして近くで声を掛けあえる、気持ちを分かち合える方々がいることに感謝しております。
いよいよKさんの大きな家具の制作が始まろうとしております。
気持ちを引き締めて頑張ります。

食器棚のオーダー「エアコン隠しの格子扉があるナラの食器棚」
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月13日
嵐が去った翌日、予定通りにSさんのお引渡しが行なわれました。
「昨日は大変でしたね。」内田さんや施工を担当された市丸さんやSさんご家族とそういう言葉を交わしました。
2日前まで、無事ここに来られるのかっていう心配が大きかったので、こうしてこの日を迎えることができて本当に安心したのです。
皆さん、ありがとうございました。

命を守る行動
Category : 日記「自由な手たち」台風19号。数十年に一度の災害といわれる大きな台風でした。皆様の住む場所は大丈夫でしたか。無事にお過ごしだとよいのですが。
私たちは、自宅がある海老名市、会社がある寒川町、どちらも相模川が氾濫すると浸水地域に在るので、前日から準備が必要でした。前日の夜中には雨の中相模川の水位が上がるサイレンが数回鳴り響いていました。
上陸する当日は、おとうさんは食料と寝袋を持って会社で見守り番をしに、私と娘2人は自宅で過ごす予定にしていました。
午前中から携帯に緊急速報のアラームが幾度となく鳴り響き、次第に強まる雨風に家にいて大丈夫なのだろうか?と不安が募ってきました。
もし水が来ても2階で過ごせばいいと、必要なものを2階に運びました。お昼ご飯を食べて「上陸は17時~21時」そこを乗り切れば大丈夫と思っていましたが、ハルの同級生の男の子が川の様子を見に行った時の写真を見せてもらうと、河畔のいつもサッカーや野球の練習をしているグランドが全く見えなくなるくらい水没していました。その後、17時から城山ダムを放流するというニュースが流れてくると、もう家で過ごす気持ちはなくなってしまいました。始めは「まだ5ヶ月しか住んでいない新居。早々に離れてなるものか!守り通してやる!」と思っていたのですが、ダムの放流で水位は2~3メートルは上がるという話を聞いたら、「もうここから逃げよう。」という判断しかできませんでした。近所の友人とも「どうする?避難する?どこに行く?」と避難場所の水位も確認しながら、連絡を取り合いました。おとうさんとも話し合い、車もあるし今の雨風の状況なら相模原の実家まで行けるだろうということで、1階が浸水しても被害が少ないように、急いで家具や書類などを2階へ運べるだけ運び、私たちは相模原の実家に避難しました。放流時間は21時半に変わりましたが、寒川の会社にひとりでいるおとうさんが心配なので連絡を取り合いながら過ごしました。
台風が通過しダムの放流後の水位も確認し、会社の無事を確認したおとうさんが夜中に帰宅し家に何も被害がないことを知りました。(私は寝落ちしてしまったので正確には朝知りました。ごめんね、おとうさん。)
実家で朝ご飯を食べた後、家に戻り川の様子を見に行きました。
いつもは鮎釣りをしている人がいる穏やかな川。水位はだいぶ下がりましたがまだいつもよりは高く、濁った水が速く流れていました。グランドには流されたサッカーゴールや木が点在していました。こんなに青かったっけというくらい空は青く。はっきり見える丹沢の山々。この景色が好きで海老名市のこの場所に住むことを決めました。土地を購入するときにハザードマップも確認していましたが、川の近くに住むということはこういうことなのだと身に染みて良く分かりました。家族全員が無事で過ごせている今があることに感謝して、これからも暮らしていきたいと思います。

朝が来ました。
Category : 日記「自由な手たち」結局自分では何もできないって少し諦めながら、日が沈んでから強くなった雨風が次第に弱まるなか、展示室のガラス越しに外の様子を眺めていたのです。
15時から始まって21時頃まで頑張れば大丈夫って言い聞かせて、一人工房におりました。
心の拠りどころって、家族だったり、家だったりするのでしょうけれど、私の中には長年通い続けたこの工房も拠りどころのひとつで、アイも居るし心配なのでした。
アキコや子供たちには心配をかけるけれど、「工房を見てくるね。」と言って、まだ降り方の弱いうちから家を出たのでした。
その時間になるまでは、「ちょっと雨風が強いなあ。」と思える程度で、時間を迎えても前回の台風を見ていたからか、それほど危なさを感じては居りませんでした。
アイもさすがに外に出ようとは思わないらしく、ただ風の音が怖かったようで、いつも怖い時に逃げ込んでしまうスピーカーの下で居眠りをしていたのでした。
危ぶんでいた倉庫の屋根もしっかりしていて、飛ぶ気配もなかったし、倉庫の雨漏りも大きなものになっていなくて、人も車のも通らない裏通りを眺めては工房の周りを見回しながら、ただただ時間が過ぎていくのを待っておりました。
その少し前にアキコたちは「念のためにここを出るね。」と女子3人で相模原のバアバの家に向かっていたので、何となく私とアイと男子2人きりの世界でポツンとした気持ちだったのです。
夜21時ごろの雨風が一番強い時にふとアイが居ないことに気がついて、ぐるりと展示室を見て回っていたら、玄関で足を組んで座り込んでいました。
「ねえねえ、ここから水が入ってきているよ。」と不思議そうにこちらを見ます。
展示室の玄関はちょうど外が吹きさらしになっているので、強い南風が雨粒を連れてサッシの隙間から入り込んでくるのでした。
ビュウビュウ風が戸を叩くたびにサッシの隙間の水がピシャピシャと踊るように水滴が跳ねあがってはレッドシダーの玄関の床に水たまりを作っていきます。
「ああ、いけないね。」と言いながら、バケツと水を持ってきて、吹いては入り込んでくる雨粒と格闘しているうちにふと風がやみました。
本当にふと思ったらピタッと風がやんでいたのでした。
雨は小降りでもうそこに怖さはなくって、アイも水たまりを見飽きたのか、嵐が過ぎていったのが分かったのか、おなかが減ったようでニャアと鳴きました。
ああ、良かったと思った先に、放流を行なうという通知が携帯電話に流れたのでした。
屋根が飛ぶのが心配だったわけですが、川の水位も心配だった私は、見回りする間にパソコンに移る水位をずっと見つめていました。
嵐が過ぎたら家に帰ろうと思っていたのですが、この放流の知らせが来て、ああ、もうダメかなって気持になってしまったのでした。
予想水位を見ると、自宅の北では堤防をあっという間に越えてしまい、自宅の南でも堤防ギリギリというところでした。
予想では真夜中に水がやってくるという。
水が来ちゃったらどうしようもないのですが、すでに家具は作業台の上にみんなで載せておいたので、床上40センチくらいまでなら大丈夫。でも、材料全てを上に上げるのは困難だったから、使えなくなっちゃうかな・・。
自宅は来月みんなに見てもらおうと思っていたのだけれど、ちょっと無理かな・・。
でも、きっと川は持ってくれるはず。
なんて気持ちがオロオロしながら、その時間を迎えたのでした。
そして大変ありがたいことに、川は持ってくれて、日付が変わる少し前から少しずつ予想水位が下がっていったのでした。
良かった。
夜中に無事帰宅し、女子3人とは会えないまま、朝を迎えてまたこうしてここに居るわけですが、アイがここに無事座っていられることに大変感謝しております。

ソファの座面
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月11日
大きな台風がやってくるということで、午前中にいろいろと外の片づけをします。
10時頃母から電話が掛かってきて、「電線に掛かりそうな枝葉を切りたいのだけれど届かないから手伝ってもらえるかしら。」ということでちょっと実家に。
歩いて、この工房から歩いて3分のところが私の実家であります。
そんなに近いから、以前は、こうして私がこの工房を切り盛りするようになっても、しょっちゅう両親が顔を出す。
「ダイスケ、仕事はうまくいってるのか。」
「ほら、腹減ってると思ってパン買ってきたぞ。」
もう40を過ぎているのだから放っておいてください。(わたくし先日45歳になりました。)
そんな感じでいつもけんかになっておりました。
そんなわけで久しぶりに実家に行くと、母はだんだんとおばあちゃんで父もそろそろお爺ちゃんな感じだよね。
脚立に乗って、隣の電線に掛かっている枝葉を切っていると、おぉ、ハチの巣じゃないか。
脅かさないようにそろりそろりと切りはじめたわけですが、のこぎりでギリギリやるもんだから、ハチたちの羽がブンブンうなりだして、だんだんと怒り出してちゃって。
「やい、枝を揺らすのは止めやがれ。」って感じで。
幸い、飛び跳ねるくらい怒らせることはなく終わりましたが、この先枝葉を揺らされるよりももっと強い風がやってくるんだぜ。君たちも気を付けたほうがよいぜ。
すっかり片付けて、缶コーヒーをたくさんもらって、(やっぱりなんか用意してあった)会社の外の荷物たちが飛ばされないように縛り付けたりしてひと段落。
無事に何事もなく通り過ぎてくださいませ。
午後からは図面を描きながら、来週座面と背もたれをフジタケさんに頼みに行くために高さの検討。
心地よい高さ、そして硬さってなかなか表現が難しく、自分で感じてみないと分からないものだなあと改めて気づかされます。
良いかたちになるように頑張ります。
明日と明後日は、お休みになります。
無事に通り過ぎるように祈りながら過ごしましょう。

食器棚のオーダー「格子扉のあるクルミの食器棚に会いにゆく」
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月10日
4年ほど前のことですね、Fさんのクルミの食器棚の納品をさせて頂いたのは。
こういう食器棚を作るのは初めてだったので、そのうち写真を撮りに来たいなって思っていたら4年も経ってしまいました。
今回お母様のテーブルのお話がいろいろ広がって、チェアとテレビボードも一緒にクリ材で作らせて頂くことになった時に、お母さまが使われていたまだとてもきれいなソファ(森のことばシリーズの表情豊かなソファです。)をFさんがもらい受けることになって、「それならぜひ私たちが運びますので写真を撮らせてくださいね。」ということでようやくFさんの食器棚の使っている様子を拝見することができました。
食器棚を置くスペースの上部が窓になってしまっていて、吊戸棚をつけたくても普通の形だと付けられない。思い切って窓を塞いでしまおうとも思ったそうですが、いろいろ工夫してね、最高と通気がうまくできるような吊戸棚を実現したのでした。
今日はとてもお天気が良かったので、良い具合に光が入り込んで、中に置かれたものたちがコロコロと浮かび上がって見えます。
「夜になると真っ暗になるからまた違った表情ですてきなんですよ。それと、この季節なら夕焼けの頃は赤い色が入り込んでまたきれいなの。」とうれしそうにFさん。
「それに全く不具合なく使えていてとてもうれしいんです。」と言って頂けて、こちらの気持ちもホクホクします。
扉がちょっとだけ傾いていたので、「じゃあ、きちんと使えているとのことですので調整だけしますね。」と調整したら、ネジの山が1本馬鹿になってしまっていてがたつきが出てしまっておりました。
あらあら、不具合アリですね。
急きょホームセンターに行きましたら、運よくスガツネの蝶番が販売されていて、無事に交換できてひと安心。
「それほど不便はないので、いつでもいいですよ。年明けだってよいくらい。」とFさん。
でも、いつでもってなるとなかなか都合がつかなかったりするので、そのまま年越しちゃったりしたらあまり良い気分ではありませんので、直せてひと安心。
次回作りたいと考えている家具の相談を戴いたので、かえって宿題として頑張ります。
所沢となると距離は遠いですが気持ちは近いですので、またお伺い致しますね。

テーブルと椅子のオーダー「クリの円卓とチェアとテレビボードをお持ちしました。」
Category : 日記「自由な手たち」今日は気持ちの良い日でしたね。練馬のSさん(Fさんのお母さん)は到着すると心地良い笑顔で迎えてくださって、荷下ろしをしていると間もなくFさんも到着。母娘が揃うとやはりアキコとバアバのように声が大きい。向かいで行なわれている解体工事の音よりも頼もしいくらい元気な声が響き渡ります。
制作を担当したのはカイ君。喜んでもらうことができてカイ君も照れくさそうにうれしそう。
クリの表情はとても美しく、今はまだ明るい色をしておりますがまもなく色が濃くなって導管に深みがよく分かってくると思います。今回初めての納品tのなった新しいかたちのダイニングチェアは、ほどよく可愛らしく、そして美しいかたちになりました。座張りはフジタケさんにお願いして、丸みを帯びた柔らかな印象で整えてもらいました。
座の厚みも薄めに作ったのですが、底つき感がなく、疲れない座り心地で、背の丸みもいつもながら座る人を軽く包んでくれる感じになりました。
椅子で工夫した部分の写真を撮り忘れてしまったのが残念。この加工を施せたからこの美しいかたちにまとまったのに、次回展示室用に製作する時にはそのあたりを皆さんに見て頂けるようにしたいと思っております。
円卓は今回はどうしても丸脚にしたくてね。
そして椅子もバランスを合わせるための面取りは、テーブルとの相性がよく仕上がりました。
テレビボードは私の自邸のものと同じデザインで、部屋の隅に合わせて五角形で制作。木口の丸みと格子の連続した表情は相変わらず美しく仕上がりました。
この格天井と真壁の古い作りのままの空間にはよく合うだろうなと期待していた通りの印象でした。
Sさん、ありがとうございました。
お預かりした椅子は良いかたちになるように考えてみますので、しばらくお待ちくださいね。
さて、Fさんのところへ行きましょう。

オーダーキッチン「タモのアイランドカウンターとホワイトエンボスの面材を使ったセパレートキッチン」
Category : 日記「自由な手たち」2019年10月8日
「ここは魅力的な階段になるのです。みどりがパッと目に入ってきてね。」と、お付き合いが始まって8年経つ設計士であるFさんから相談を戴いていて、やっとそのキッチンの取付に入ることができました。
ここは、Fさんの高校の時のご友人が住まう家になるのです。
板張りの外壁の向こうに青々とした背の高い木々が見えるおうちです。
最初はこの2階のキッチンのみのオーダーだったのですが、お話が進むうちにお母様住まわれる1階のキッチンも担当させて頂けることに。
今回は新築ではなくリノベーションなので、工期も短いため、大工さんの工事を見て採寸してから製作、となると間に合わないので、Fさんや大工さんと打ち合わせながら、現場よりも先行して制作に取り掛かるのです。
だから、取付がスムーズにいくかどうかはなかなか緊張するわけです。
いつものオーダー家具の依頼のように、設置場所をきちんと測れてから制作ということなら安心なのですが、見えていない場所を想定しながら作るって、みんなの呼吸が合っていないと本当に難しい。
どうにか無事に納めることができてひと安心。
今回はこの大きな仕事をワタナベ君が滞りなく進めてくれています。
頼もしいではありませんか。

最後の演奏会
Category : 日記「自由な手たち」先日、ハルの中学最後の演奏会がありました。入学当初、本当はダンス部に入りたかった彼女。ダンス部はない学校、でも部活は入りたい、いくつか体験して選んだのは吹奏楽部でした。楽器を習ったことはない、楽譜も読めないハルが先生方といろいろ試して担当することになったのはホルンでした。優しく楽しい先輩達と同級生と後輩に恵まれて、3年では部長に選ばれて最後まで無事に活動することができました。楽しかったね。お母さんも楽しかったよ。
引退して朝練に行く必要がなくなった翌朝、「もうみんなとホルン吹けないのか。」とぽつりと言っていたハル。
そんなことはないよ。高校受験が終わったら、自分でまたその機会を作ればいいんだから。

信じて頼ってくださる
Category : オーダー家具・オーダーキッチン制作事例, オーダーチェア、オーダーソファ2019年10月4日
「ブナとレザーのリクライニングソファのオーダー」
台場 A様
design:Aさん/daisuke imai
planning:Aさん/daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:yasukazu kanai
スチールなのにとても繊細な表情は鉄工のオヌマ工業のタカハシさんのセンスですし、それをナラと組み合わせた形はとてもバランスよくて、Mさんのところにはもう少し明るい印象で天板にはセンを使って、脚部はダークブラウンで仕上げたこのテーブルはMさんに納品させて頂いた後も数台ご依頼を頂けた美しいかたちです。その初代であるナラの試作は私たちの工房でいつでも見られるようにしてあるのですが、ちょうどそのような時期にとてもお久しぶりにAさんからご連絡を頂いていたのでした。

奥のカップボードは、その後ろの壁を将来取り払ってキッチンとつなげることを考えて、置くだけの家具にしています。グラスたちは天板がフタになっていて(天板もガラス製)フタを開けて出し入れできるようになっています。

一番難しかった部分で、コンセントは壁のちょうど角にあって、そこから左方のテレビボードのAV機器収納部にスムーズに配線できるように、アクセスしやすいかたちで設計して、さらには異なる高さの格子扉の格子とすき間を合わせる部分など、一見地味なところが大変な作りだったりするのです。
Aさんは、「color」のAさんです。この家具を作らせて頂きましてから、もう12年が経つのですね。あの時、家具の取付の終わり絵手紙を書いてくれたお嬢さんは、もう高校3年生だそうで、子供の成長を目の当たりにすると、あらためて時間の経過がどれほどだったのか目を細めて考えてしまうのでした。
そのAさんには、以前から年賀はがきを頂いていて、「イマイさんはキッチンのお仕事を手掛けておられるようですので、次は我が家のキッチンをうまく使いやすいようにしたいと考えております。」と数年前のはがきに書かれていたのでした。
そうして、あのお話はどのようになったのかなと思っていたところに、メールをいただいたのです。
「キッチンを使いやすくしていく前提で、まずはリビングの使い方を変えていきたいのです。リビングのいろいろなものたちをうまく整理してからキッチンに取り掛かれたらよいなと考えております。」

もうここで寝てしまいそうな角度。ただ、座面もそれなりに飛び出るので、前方に体重をかけると座面がポンと浮き上がっちゃうのですが。ちなみに置いてある座面は合板下地ではなく、ウェビングベルと下地のもの。そのあたりの座り心地も検討していったのでした。
それでは、お久しぶりにごあいさつを兼ねて、ということで、Aさんのところにお伺いすることに。
Aさんは住まいはお台場にある背の高いマンションです。あの当時は、とても格式高そうなエントランスなのに、集会所でお勉強食べさせてもらったり、車ものんびり留めさせて頂いたり、という思い出がありましたが、どうやら今は違うようです。
「数年前に管理組合が一新されましてね。昨今の社会事情を踏まえてセキュリティが厳しくなったのです。」
なるほど、搬入に少々時間が掛かりそうですね。
そうして、案内されたリビングは懐かしいあの時のままで、あの時作らせて頂いたそれぞれのお部屋の家具たちは、色こそ日焼けしたり、手の跡がついたりしていますが、12年が経ってもきれいなまま。
「とても気分よく使わせてもらっていますよ。」
あの頃、ブナを使って作る機会が少なかったので、特にブナをホワイトオイルで仕上げるなんてなかったものですから、仕上がりのとても良い色合いだったのが思い出されました。

後ろ姿を美しくしたい、というのが今回の椅子の課題と自分で考えていました。この椅子を作る少し前に天童木工のソファを見る機会があったのですが、その背骨の美しさに見とれてしまいまして、いつか実現させたいなって思っていたところにAさんからお声が掛かってので、そのよい機会だったのでした。
あの当時のままですが、家族は大きくなるので物はだんだんと増えていってキッチンもリビングもちょっと窮屈な感じです。
ぐるっと見回した感じでは、リビングだけでどうにかするには物が多すぎるようにも思えます。
できれば今ここで家具を作りつけるのではなく、もう少しすると一人暮らしを始めるだろうというお兄ちゃんの独立を待って子供部屋をリノベーションするのもリビングを広くするためには良いかもしれない・・。
そういったいろんな案をあれこれとAさんと話しながら、それでもまずはリビングだけでも快適に過ごせる方向で整え、将来的にキッチンを隔てる壁や子供部屋を隔てる壁を取り払った場合でも使いづらくない収納を設けたい、というお話になったのでした。
そのお話の中で、ダイニングとリビングが一体になったこの場所で、ダイニングチェアとソファを置くことが難しいから、というお話になり、そこで両方の用途を兼用できる椅子と、回遊できるような円卓を置くことでこのスペースを広く使いたい、というお話になったのでした。
円卓は、藤沢のMさんと同じデザインで提案して、椅子は当初は軸が開店するようなデザインのものを考えていたのですが、打ち合わせの中で背もたれが可動する形へと変わっていったのでした。
そして、テーブルのデザインもここで変わっていったのです。
Aさんのご自宅にお伺いしてしばらくしましてから、今度はAさんが工房を訪ねてくださいました。
そこに置かれていたあのテーブルを見て、「いやあ、美しい形ですね。」とおほめ頂いたのですが、その後で、「イマイさん、我が家の場合は天板をガラスにしたいので、ガラス越し見見える脚部はアイアンではなくて、ぜひ木で作ってもらいたいのです。」と、信じられない提案が飛び出しました・・。
「木で脚を作るのですか‥。」
実はAさんからこういうお話を頂く以前にも、このテーブルをご覧になった方から、ここが木でできたら、また魅力的な形になりそうですよね、なんてお話のためになったこともありましたが、あくまでもお話の中でって思っていたのです。
このテーブルはくの字の部材とパイプ状の細い棒で構成されていて、5枚のくの字
はそれぞれ接していなくて、パイプがくの字と固定されて、成り立っているという、自分で言うのもなんですが、絶妙な形なのです。
タカハシさんにはそういった部分で大変苦労してもらったわけですが、この形を木で作るには強度が持たなそうですし、どうしたらこの3次元の組み合わせを実現できるのか自分でもイメージできなかったですので。
でも、長いお付き合いのAさんからそう言われたときは、ああこれはもういよいよ気を引き締める時が来たのだなってそう思ったのです。
Aさん、一度決めたら気持ちが変わらない部分がありますので。(笑)
「・・では、まずは試作してみますので、少しお時間を頂けますでしょうか・・。」

クロス部材の先端とくの字の接する部分は、手作りですので1本ずつ位置が微妙に違ってきます。無理に位置を合わせようとするとひずみが出てがたつきが出たり、ゆがんで材が破損したりするので、時間をかけて一を出していきます。

この試作には木口をラウンドさせたガラスを使ってみて、脚のシャープな感じに対照的に柔らかな感じにしてみたのです。そして、このテーブルとアイアンのテーブルを一対としてコンテストに応募してみましたら、とても良い評価を頂くことができて、それは一つの糧になったのでした。
ここからは、試行錯誤の繰り返しです。
テーブルとイスはカナイ君の担当で、ノガミ君はリビングボードの担当で、ノガミ君のほうは順調に進めることができそうなので、まずはこちらの家具を先に進めて先に納品できるようにして、カナイ君とあれこれ悩みながら試作、そして本政策へと進めていったのでした。
椅子の角度を変えて固定する機構、座面がずれないようにする部材、張地の選定やベルトの製作。そのあたりはうまく進んでいきます。
問題はテーブル。
くの字の構造はうまくいきそうで、そこに天板が載るとどう荷重が掛かるのか。それがいまいち分からなくて。
でも、天板の重さはすべてくの字が支えてくれるはずなので、あとはくの字同士をつなげるパイプの部材をどのように木で作るか・・。
最初は、ただ、くの字同士をクロスした部材でくっつける形で考えていたのです。でもね、その形って何というか格好良くなかったのです。
どうにかあのアイアンのかたちを表現したい、1本の棒が連続してつながるイメージを表現したいなあ・・。
それにはクロスする部分の接合をどのようにしたらよいのかなあ・・。
暗くなった工房で一人もやもやしながらあれこれ思っていたのですが、あれっ、こういう方法はどうかなってちょっと思いついたのです。
そういえば、アイアンのテーブルを考えた時も一人の夜だったなあ。
こういう静かな時間はやはりクリエイティブになれるのもねえ。
さっそく思いついた形をサクサクと芯材を削ってみまして、うんよし、何となく良い印象になってきた。
翌朝、カナイ君に相談。この形で接合部の強度を出せれば完成できるかも。
ワクワクしながら作業を進めまして、ハイ、完成!秋ごろにできたその試作のテーブルはちょうど冬に開かれる工房のイベントでみんなに座ってもらって、それで強度の試験をしてみよう。
そうして、リビングの家具の納品は無事に終わった後でも試作と試験が続きます。
工房にいらしてくださったお客様にこのテーブルでお茶を飲んでもらうこと2か月ほど。
ガラスが載ると均等にテーブルに負荷が掛かって安定していたし、どうやらくの字
だけが荷重を受けているだけのように見えるし。
よし、大丈夫だね、ということでさっそくブナを使って本製作に入ります。
2回目の製作とあって、カナイ君の作業はスムーズです。
ハイ、完成。
さっそくAさんのところに納品させて頂いて、同時に椅子も完成させていましたので、これですべてが揃いました。
ちょうど乾燥のきつい時期で、リビングボードの天板が大きく縮んだ部分がありましたが、それを手直しさせて頂いて無事に納品終了。
Aさん、楽しんで使ってくださいね。
と、ひと安心して帰ってきたのでした。

さて、椅子は形が確定しているので、角度が変わるタイプを2脚、角度固定のタイプを2脚の本製作を進めていきます。角度を固定させる機構が、試作よりもシンプルになっているのに気づきましたでしょうか。どのようにしているのかは内緒でございます。
と、ここでお話が終わるはずなのですが、工房で使っていた試作の上でお茶を飲むのではなく、ちょっとした作業をしていた時です。
ガラスにフィルムを張る作業をその上で行なっていたのです。
引き続きの強度試験を兼ねて。
フィルムの空気を抜くのにスクレーパーを当てていたら、ピキッという音とともにクロス部分が1本折れてしまったのでした。
「お、お、おやっ・・。」
クロス部分には負荷が掛からないものと思っていたのですが、1か所に荷重が掛かるとくの字だけでは支えられなかったのでした。
幸い、1本折れただけでテーブルが瓦解することはかなったので、ガラスが落ちてくることはなかったのですが、もうぐらついています。
Aさんのところは大丈夫なのだろうか・・。
と、案の定ほどなくしてAさんから電話が。普通に使っていたのに、折れてはいないそうですが、クロス部分に亀裂が入っていてもうすぐで破断してしまいそう、と。
おお、危ない。
さっそく工房に置いてあるアイアンの脚を代わりにお持ちして、グラつく脚としばらく交換。
うーん、どうしたものかなあ。
Aさんも、実現が難しい場合はくの字同士の頂点を接してしまっても良いですよ、と提案してくださるのですが、やはりアイアンはイメージとは違くて、木で実現させたい部分は譲れない。(笑)
アイアンならば、完成形なので問題なく納品できるのですが、なかなか難関です。
さて、どうしようか、とカナイ君と再び悩みます。
今まではクロスの部分は3本の棒で構成して、2本が交差しているように見せていました。クロス部分のホゾもそれなりにしっかりと作ったつもりでしたが、それで壊れてしまったのですから、クロス部分を1つの部材にしてみよう。
四角い板を十字型に切り出して再びチャレンジ。
うん、うん、よい感じです。
そうして、ハイ、完成。
できたね、しっかりした形、とみんなで喜びます。作ったカナイ君が一番うれしそう。じゃあさっそく塗装だね、と思ったら、再びパキッて音とともにクロス部分が割れました。
えっ、なぜ・・。
いろいろ探るうちにどうやらクロス部分の木取りに原因があるようでした。
最善だと思っていた木取りの仕方が、逆に負荷に対して割れやすかったようで。
こうして何度か繰り返すうちにAさんも気長に待ってくださって、応援してくださいまして、私たちも作業の中で最善な形がようやく見えてきていたのでした。
具体的な構造は、説明しちゃうともったいないので書かないわけですが、ここからさらに2回試作を繰り返して、さらに3か月ほど使用してみて、ようやく安心できる形が完成。
そうして、満を持してAさんの本製作に取り掛かり、試作開始から丸2年が経ってようやく納品できたのでした。

工房の試作はリングなしにしていて、相変わらず強度が大丈夫かを試しながら使っていっています。無しでも大丈夫、と確定できればもっと作っていくことができるのですが、今のところは世界にこの2台しかありません。(笑)
ありがとうございました。
試作は今でも工房に置かれています。できあがりの美しさのなかにある時間や手仕事の苦労も見て頂けるとうれしいです。
ガラスとブナのラウンドテーブル
価格:720,000円(制作費・塗装費)
ブナのラウンジチェア
価格:300,000円(制作費・塗装費)
ブナのL型リビングボード一式
価格:1,150,000円(制作費・塗装費)
ブナのベッドフレーム
価格:340,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は25,000円から)

オープンハウスのお知らせ
Category : 日記「自由な手たち」, 庭のある家ようやく皆様にひと通りお見せできるような状態に落ち着いてきた自宅。
半年住んでみて、あちこち壁や床にも暮らしの跡ができたりして、夜中にふと見知らぬ音に目を覚ましたり、庭で少しお酒を飲んだりして、やっと自分の家に思えてきたこの頃、1日だけの内覧会を開きます。
福原さんが考えてくれて、加賀妻さんが建ててくれて、私たちの家具が入ったこの場所を皆さんにももしよかったら見てもらえるとうれしいです。
私たちの家具作りの在り方とか、福原さんの考える気持ち良い空間とか、加賀妻さんが見せてくれる素材のやさしさとか、見てもらえたらうれしいです。
もちろん、福原さんもいらっしゃいます。
イマイダイスケ 自宅のオープンハウス
日時:11月24日(日)10:00~17:00
場所:神奈川県海老名市
海老名の相模川にほど近い場所に建つ小さな2階建ての家です。旗竿地に建っているのでそれほど目立たないのですが、気持ちの良い家になりました。
現地から歩いて5分くらいのところには大きな公園がありますので、お散歩がてらいらして頂いても気持ち良いかと思います。
どのくらいの皆さんがいらしてくださるかはなんとも想像つかないのですが、私たちが皆さんとおしゃべりできるような時間をきちんと取りたいと思っておりますので、予約制にさせて頂きます。
そして、申し訳ございませんが現地には余分な駐車場がございません。
お車でいらして頂く皆様はお近くのコインパーキングか、公園の駐車場(日曜日は有料)をご利用いただければ幸いです。
もし、ご応募くださった方が多数の場合は時間の調整などをお願いすることがございます。
お申し込みは、以下のメールアドレスから、もしくはお電話(0467-75-8719)からお申し込みください。
info@freehandimai.com
お名前、ご住所、メールアドレス、お電話番号、参加人数、希望時間を書いてお送り頂ければ幸いです。折り返しこちらから、空き時間や詳細な住所などをお知らせ致します。
どうぞお気軽にお申し込みください。
皆様とお会いできるのを楽しみにしております。