まゆ

「タモのダイニングテーブルとダイニング収納のオーダー」

王禅寺 H様

design:Sさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kenta watanabe
painting:kenta watanabe

「FREE HAND IMAI イマイ様
初めまして。神奈川県川崎市に住む、Hと申します。
御社のHPを拝見し、ご相談させて頂きたくメールをお送りしました。
現在我が家は新居を建設しており、9月末ごろに完成の予定です。
新居に合わせ、家具も家族に合ったものを作りたいと思い、ご相談させて頂きます。
今回の希望は『ダイニングテーブル』と『ダイニングカウンター』です。
正直、予算も限られている中で、このふたつを作って頂くことが可能なのかどうか・・・、
ご相談だけになってしまうかもしれませんが、前に進もうと思い、メールさせて頂きました。
新居を建てるに辺り、設計士さんには、「ダイニングを中心に暮らす家」を作って頂きたいとお願いをしました。

〇家族それぞれが1日頑張ってきて、「ただいま~」と帰って来た時に“ほっとする家”
それは大きなダイニングテーブルで家族が迎えてくれること、夕ご飯のいい香りがすること、 リビング・ダイニングがすっきり片付いている空間だったりするのかなぁと。

〇ダイニングテーブルを囲み、家族の団らんがあること
テーブルに着き、今日あった良いこともしんどかったことも話せること、宿題ができること、のんびり本を読んでいても良いこと、「そろそろ自分の部屋に行ったら~」と言われても、もう少しここに居たいなぁと思えること。

〇家族の経年に家や家具が馴染んでいくこと。

私が思い描く家のイメージの真ん中に、ダイニングテーブルがあるのです。思いばかりで、具体的なテーブルの仕様については知識が足らず、細かいところまでをお伝えするのは、なかなか難しいのですが・・・

~ダイニングテーブルについて~
・大きさ;幅2000㎜/高さ750㎜/奥行1000㎜
・樹の種類;未定ですが、床がナラ、オイル塗装風なので、同じナラが良いのかなぁと思いますが、ナラが大きいテーブルに向いているのかどうか分かりません。 他の樹でも相性の良いものがあれば、ご提案頂けたらと思います。御社の制作例でいうと、『授かったもの』葉山のNさんのテーブルのような、存在感があり、私たちの暮らしに寄り添ってくれるテーブルをお願いしたいと思います。

~ダイニングエリアのカウンター収納について~
パソコン作業と収納ができるようお願いします。
・大きさ;壁の柱芯から柱芯の幅3185㎜に収まり/高さ750~800㎜/奥行450㎜
・樹の種類;ダイニングテーブルに同じ

ダイニングの様子が分かる図面と収納するものやイメージを簡単に書いたものを添付いたします。
手書きのイメージはひとまずのたたきです。良いアドバイス、ご提案をよろしくお願いします。
日中は仕事の為、ご質問、お返事はメールで頂けると助かります。できれば、工房のほうにもお伺いできればと、夫とも話しておりますが、現在、夫が単身赴任の為、スケジュールの調整が限られた日となります。8月の週末のどこかで、今井様のご都合がよろしい日があれば教えて頂けますか。
フリーハンドイマイ様が作られる、素朴で美しい温かみのある家具に魅力を感じております。
お忙しいとは思いますが、制作プランとお見積をどうぞよろしくお願いします。」

ダイニング収納の図

Hさんから頂いた図はきちんと丁寧な思いが伝わってきました。

と丁寧に書かれたメールが届きました。
テーブルが暮らしの中心というのはすてきです。(子供の頃は分からなかったがことでした。)
でもこうして家族を持って暮らしてみると、あらためて、テーブルを囲んでいる時間、座っている時間が心地よいと気が付くのです。
でもね、そうして家族が一緒にご飯を食べられる時間は短いなあということも実感しております。子どもは私たちが感じている時間以上にいろいろなものを吸収してあっという間に大きくなっていく。自分なんて、10年前から何も変わっていないように思えるくらいなのに。
そして今では、子供たちはすっかり自分がしっかりできあがってきたから、ご飯を食べたらまもなく自分の部屋に移っていってしまうくらいになりました。
淋しいなあとは思うけれど、それがなければかえってもっと淋しいかもしれない。子が大きくたくましくなってゆく姿は私たちに元気を与えてくれます。
私にとってテーブルは安心させてくれて、元気を与えてくれて、まるでまゆのように思えるのです。
というよりも、それ以前によく食べる私たちを支えてくれる食卓というのが一番うれしい姿なのですが。
それで、さっそくスケッチを描いて内容を伝えさせて頂きました。

タモのダイニングボードとダイニングテーブル

できればこうありたいなと思って描くスケッチ。図面じゃないと伝わりにくい部分もありますが、スケッチじゃないと伝わらないこともあって。

そのスケッチを見て、Hさんとても喜んでくださいました。
「お忙しい中、さっそくスケッチと見積をお送り頂きありがとうございました。
フリーハンドで描かれているのでしょうか。中学1年の娘と“美しいスケッチだね”としばらくの間、眺めていました。
メールも読ませて頂き、樹の種類によって、用途に影響があるということや雰囲気に違いがでてくることをあらためて知り勉強になります。
夫にもスケッチを見てもらい、ダイニングに選んだ照明器具と良い感じになりそうだと、デザインには概ね納得しておりました。
一度、お会いしてお話できると良いのかなと、思います。」

タモのダイニングボードとダイニングテーブル

こちらがHさんのダイニング。お母さんがキッチンに立つそばにお子さんが座る様子が見えませんか。


タモのダイニングボードとダイニングテーブル

昔の民家が好きで良く見に行くのですが、昔は構造上火元は土間にあったから玄関入るとすぐに竈があったわけですが、今の暮らしはこうして部屋の中心にキッチンを置くことができる。これはとても幸せなことです。

ご予算を大きく上回っていたのですが、どこかでコストダウンをできる部分を探りながら、Hさんにとっての良い形を見つけましょう、ということになったのです。

以前にも何度か書いたかもしれませんが、家具を作る工房はいろいろとあるのです。
その中でも私たちを選んでくださったのはどうしてなのだろうといつも自問するのですが、答えは出ません。
家具をご依頼くださった皆さんにもお聞きするのですが、今のところ「そうか、よく分かったぞ。これが自分の強みなんだ。」と確信できる部分は、情けないことになんとも自信がなく、なので今の私の有り体をお伝えすることが良いことなのかなとなんとなく思いながら今に至っているのです。
自分の暮らしやみなさんの暮らしや思いを絵を描いたり、長々と文章を書いたりと何だかたいへんアナログな表現方法で伝えることが、自分が家具を作るうえで大切なのだということをいまだに思いながら続けているのです。
いつかは暮らしかたが大きく変わって家具というものの意味が変わる時が来るかもしれないのですが、自分の中ではいまだに暮らすための道具でしかないので、そこに必要以上に華美な気持ちは要りませんし、用途の見えない形も要らないです。その気持ちとどうしたらその形を実現できるかをお話していくことで、今回Hさんの家具を作らせて頂くことになったのでした。
ありがとうございます。

タモのダイニングボードとダイニングテーブル

テーブルで思うことは「大きいに越したことはない。」と言うことです。もちろん、その置かれる場所にそぐわない大きさはいけないと思うのですが、これは暮らしの中で一番良く使う道具でもあります。いろんなことができてたくさんご飯が食べられる場所でありたいって思うのです。今回のHさんのテーブルは1000×2000ミリととても大きい。でもとても気持ち良い印象でここに在りました。


タモのダイニングボードとダイニングテーブル

デザインはとてもシンプル。天板は2Rほどの程度な面取りと脚はほんのり色ついた印象のテーパーをつけた形。

今回、いろいろと考えたコストダウンの中に「事前の現地確認をしない」ということも含めておりましたので、こうしてできあがった家具たちがどのような場所に置かれるのかを見るのは初めてでした。
(もちろん、現地確認をしないからということで、設置場所の確認は皆さんに任せっきりにはしませんよ。家具が納まらなかったらたいへんですので。このような場合は、設置場所や搬入経路の写真をスマートフォンなどで取ってもらって(便利な世の中)その写真にここを測ってくださいと赤ペンで印をして、送り返させて頂き、その通りに皆さんに測ってもらって家具を作るのです。かなり複雑な形だと心配なのでこの方法はやめておりますが、シンプルに納まりそうな形でしたら、コストダウンのひとつの方法として皆さんにお話させて頂くことがあります。)
私は今回納品にも立ち会えなかったので、あらためてお手入れの方法をお伝えするタイミングで伺わせて頂きました。
お話を重ねて思ってきたHさんご家族らしい空間に納まった2台の家具は、もうすっかりとHさんの家具になっていたのです。
うれしい姿を見ることができました。
ありがとうございました。

タモのダイニングボードとダイニングテーブル

ダイニングボードもシンプルな形です。少しものを隠しておきたい部分だけに扉をつけて、一部だけパソコンが使える机に。そして、あとはカゴを使ってうまく収納したいということで、オープンの棚に。


タモのダイニングボードとダイニングテーブル

棚は一つのスパンが長いので、板が垂れさがってきてしまうのを防ぐために、板の下に幕板を入れて補強しています。デスク部分にも同様の補強を入れてきれいにラインが整いました。


タモのダイニングボードとダイニングテーブル

左端のデスク部分と右端の扉収納部分は幅を揃えて、中央にオープン棚を持ってくるデザインはとても落ち着いた印象になりました。そして、今回は突板に幅の広い単板を使って木目を縦方向にすることで、心地よいグラデーションが生まれました。


タモのダイニングボードとダイニングテーブル

引き出しの様子。


タモのダイニングボードとダイニングテーブル

扉を開けるとこのような感じで可動棚が入っています。可動棚で時々言われるのが、「どのような棚ダボを使っていますか。」と。私たちはネジ式のダボをもう父の代からずっとそうして使っています。差し込むだけのシンプルなものでしっかりしたものも出ていてその方が加工も早いし、使う人も差し替えやすいと思うのですが、こちらのかっちりした感じが好きなのです。

タモのダイニングテーブル

価格:320,000円(制作費・塗装費)

タモのダイニングボード

価格:400,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は30,000円から)

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