和む場所、にぎわう音

「ホワイトオークランダム張り突板とコーリアンラバロックのオーダーキッチン」

四街道 S様

design:Sさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kenta watanabe
painting:kenta watanabe

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

玄関から入るとこの印象が目に飛び込んできます。とても穏やかな色合いにまとまりました。

Sさんが最初にキッチンカタログのお申し込みをくださったのは、私たちの新しいキッチンのお披露目を目前に迎えていた1月の初めでした。
その前年の暮れに、湘南T-SITEさんから、「今度新たに料理道具市を開くのです。そのイベント開催にあたりまして、できれば地元に企業さんをいろいろとご紹介したいと考えておりまして。それでイマイさんのキッチンを見つけたのです。」そういうお誘いを頂いていて、よいこれは良い機会かもしれないね、とみんなと気持ちを固めまして、9年間この展示室で活躍してくれたキッチンを知り合いの陶芸家さんに使って頂くことにして、新たなキッチンを迎えることにしたのです。
そのお披露目として、道具市で最初に皆さんに見てもらえたらという思いで、2月から約3週間会場に置かせて頂けることになっていたのです。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

リビングからキッチンを眺めたところ。とても気持ちのよい陽射しが入ってくるのです。玄関からフワッと入っている風とリビングからさり気なく入ってくる風がそのまま洗面所をくるりと回って2階まで届く気持ちのよい作りなのです。

そのタイミングでSさんからご連絡を頂いたのです。
「お世話になります。夜分に申し訳ありません。
本日に大体の家の間取りが決定したことから、いよいよキッチンへの気持ちが夫婦共に盛り上がってしまい、是非一度イマイさんに直接お話を伺いたいと主人が希望している次第です。
現在展示会の最中で、土日は設置のお仕事も多いと思いますが、もし16日中に工房又は湘南の展示会にいらっしゃるご予定でしたら、千葉から伺いたいと思うのですが、ご都合いかがでしょうか?
ご予定を教えていただけると嬉しいです。
明日日曜の朝に一度ご連絡させていただきます。もしご都合合わなければ、別の日にご調整させていただきます。」
おお、とても強い思いを感じますね。うれしいですが、ちょっと焦ります・・。
そうして、はるばる四街道市から4人のお子さん連れで見に来てくださったのでした。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

奥には、コンパクトなパントリーがあるので、見せたくないものは奥にしまうことができる、というレイアウト。だからキッチンを小ぶりにまとめることができたのですね。空間の中で存在感のあるキッチンにする形もすてきですが、あえてキッチンを小さく見せてパントリーをきちんと設けることでキッチンは常にすっきりとした印象を保てるのは一つの素晴らしいレイアウトだと思うのです。冷蔵庫もオーブンレンジもきちんと隠せちゃうし、「いずれ二世帯になる想定で立てたということなので、キッチンを共有しても冷蔵庫は別々になると思うので。」というSさんの意図の通りにこのスペースは魅力的に機能しそうです。

開場時間まもなくいらしてくださったSさんご家族。
「今日は1日旅行気分で来ましたよ。」と言って下さって、それから約2時間、工房から店頭に持ち込んだアイアンの5本脚の円卓を囲んで、来場されるほかのお客様に不思議な様子で見られながらも、その場でキッチンの打合せを始めたのでした。
おもしろいですね、作品を販売する傍らで作品に座りながら打ち合わせをしているとまるで自分たちが作品みたい。
Sさんの要望を聞きながらスケッチを描いていると後ろから女の子が妙味部下そうにのぞき込んでくれたりして。
Sさんが新しい家でどのように暮らしていきたいか、まだ小さなお子さんとどのような時間を過ごしたいかをあれこれ聞かせて頂きながら、その様子をスケッチしながら話を進めていく時間はなかなか楽しかったのでした。

そのあと、Sさん、「打ち合わせありがとうございました。」と言ってこの場を出てゆかれた後も、ときどき店内でお見かけしまして、どうやら夕方近くまでここでゆったりしていってくださったようで、(この展示がうまく私たちのイメージを体現してくださったこともあって、とても心地よい空間になっていたのです。)私たちの空気をよく感じていってくださったのでした。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

最初に相談しながら描いたスケッチを、工房に戻ってから清書し直してSさんにお送りしたのです。

「実はイマイさんがあの日に描いてくださったキッチンのスケッチを見ていたら、まだプランの詳細も見積金額も出ていないのに、もうイマイさんに作ってもらおうって心は決めていたのですよ。ハハハッ。」と、キッチン納品後にお邪魔させて頂いた時、ご主人が大きく笑いながらそう言ってましたね。
うれしいなあ。

現にそれまでは奥様とメールをやり取りしていたのに、そのあとはもっぱらご主人とのメールのやり取りになって。笑。
不思議です。
お料理は奥様が主役ですが、こういうもの作りのキャッチボールは、ご主人が率先してくださったのでした。
「イマイさんのもの作りの考え方がとてもすてきだったのです。」
そう言ってくださったのですが、照れくさいですね。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

天板はコーリアンのラバロック。それをキャビネットからすこし浮かせて見えるように仕上げています。

そして、スケッチが気に入ってくださったという通りに、あの時のイメージは揺らぐことなく、そのままキッチンの形に成っていったのでした。
ただ、打ち合わせはそれだけでは終わらず、キッチン以外に洗面カウンターも一緒にご相談を頂いて作らせて頂くことになりました。
ちなみにみなさんご存知かもしれませんが、洗面台の高さは、手を洗う時の手の高さ肘よりも低くないと不便になります。
そうしないと手を洗っている時、顔を洗っている時に水が腕を伝って肘に流れていってしまいますので。
洗面台がキッチンよりも低いのはこういう理由なのですが、低い分腰を屈めるのがおっくうに感じてしまうのは仕方ないことですね。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

シンクはデッキタイプ(水栓の取付位置がカウンタートップから1段下がって、カウンターが水浸しにならないようにする形)で、洗剤ポケットがついたタイプ。さらには混合水栓と浄水栓を別々にする形(それぞれが独立して吐水ができます)にしています。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

シンク下は、ゴミ箱を2台置ければよいということで、残りのスペースを収納にしています。このあたりは皆さんいろいろ考えていらっしゃって、私たちが作るとシンプルな棚でも高くなってしまうことがあるので、それほどリビングから見えない部分なので、コストを抑えるために市販のものでサイズが合いそうなものを使うというご意見も多いです。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

食洗機はミーレのオートオープン機能が標準になっている「G6620SCi」。

ところでお話は変わるのですが、Sさんとのやり取りの中で、家の床の話になったのです。
私の自宅やショールームでもフローリングにしているのですが、こうするまでは材はナラやカバなど印象の良い材の床にしたいなってずっと思っていたのです。
いざ、自宅の床をどうするかってなった時に設計してくれた福原さんのアドバイスで赤松を入れたのですね。
マツかあ、柔らかいし、マツですからパインのような印象になるだろうし、どうなのだろう‥とちょっと不安が残りつつも福原さんの考えが私は大変好きでしたので、その通りにお任せしたのです。
「赤松でも無節のものにしたから、ちょっと高いけれど、足触りも良いし、見た目の印象もおとなしくて良いよ。そして何より温かいし。」
そう言ってくれたのが実際に暮らしてみるとなるほど、と思えるものだったのです。
家で過ごす時には素足で過ごすことが多いので、その温度の違いは体に大きく影響があると思えました。
特に床暖房などを入れないので(個人的に無垢材の床に床暖房を入れることは矛盾を感じておりまして・・。)床の冷たさが大きく違うというのはうれしかったのです。
あとは、自宅でオープンハウスを開いた時に、以前い家具を作らせて頂いたお客様がいらしてくださって、そのご家族皆さんいらしてくださった時に、「あっ、足が疲れない。」って言っていたのです。
その方は耐久性があるようにとナラ材で床を張っていて、堅くてしっかりしてよいのですが、歩いているとやはりかかとから硬さを感じて足が疲れるのだそうで。
なるほどそういうこともあるのだなととても勉強になったのでした。
自宅を建てたことでキッチンや家具だけではなく、そういうお話がSさんをはじめ皆さんとできるようになったのはうれしいことです。
そして、Sさんはいろいろと検討されて、足触りが柔らかめのクルミの床材にされることになったのです。
暮らし全体の印象をお伝えしながら、自身で取り入れたいと思えること、そうではないことをまでお話しできるようになったのは私たちにとっても素晴らしい経験だと思うのです。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

【食洗機の左隣】引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

【食洗機の左隣】引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

【食洗機の左隣】引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

【食洗機の左隣】引き出しの様子。

そうして、形もまとまりまして、ご新居の工事の着工前に設計事務所さんで打ち合わせをさせて頂くことになりました。
今回の施工会社さんはエーセンス建築設計事務所さん。
以前、やはり同じく千葉県で「しずかにふくふくした様子」のちはら台のSさんの時にお世話になった設計事務所さんでした。
いつも新しい施工会社さんとばかりお仕事させて頂くことが多いので、こうして同じ施工会社さんに巡りあえるのはうれしいことです。
さっそく事務所で最終確認をさせて頂いて、順調に進められることになり、無事に着工、上棟を経て、現場での打ち合わせをさせて頂くことになりました。

現場は小学校が近い静かな新興住宅地で、最寄りの駅からは少し離れていますが、駅からとぼとぼと歩いていると、住んでいる皆さんがまだお若い形ばかりのようで、だんだんと賑やかになっていく様子が分かる魅力的なところでした。
現場打合せは、キッチン設置工事の納期を逆算して少し早い時期にさせて頂くことになり、まだ大引がかけられた状態でしたが、特に壁に関わって大きく絡む部分が少なかったので、唯一正確な仕上がり寸法が知りたい階段の踏み板の寸法は後日監督さんからご連絡を頂くということで、搬入経路と配管位置の確認と設置場所の確認を行なって、問題なく制作に取り掛かれることになったのでした。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

【コンロ右隣】調味料用引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

【コンロ右隣】調味料用引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

【コンロ右隣】調味料用引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

ガスコンロはノーリツのプラスドゥ。今回はコンビネーションレンジもいれています。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

コンビネーションレンジを入れたので、使いたいと思っていたワイヤーシェルフが活躍する場所が無くなってしまいました。そこで、左隣に場所を移して、サイズ900ミリのワイヤーシェルフを導入することにしたのです。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

【コンロ左隣】引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

【コンロ左隣】引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

【コンロ左隣】引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

【コンロ左隣】引き出しの様子。

スライドワイヤーシェルフ

ワイヤーシェルフの様子。

スライドワイヤーシェルフ

ワイヤーシェルフの様子。

それから約2か月後、大工さんの木工事も終わるタイミングで設置工事に。
今回は、工房から距離があることと設置工事が2日間に渡ることから、みんなには現地近くに宿を取って2日間かけて施工してもらうことに。
なるほど。
今までは結構距離があっても車で工房までを往復していたのですが、こうして近くで止まったほうが仕事もしやすい。
ただ、忘れ物だけはないようにしっかり事前の準備だけは確実にやらないといけませんね。
私はいつものように搬入と大工さんとの最初の段取りを終えて先に戻らせてもらってノガミ君、ワタナベ君、ヒロセ君の3人で段取りよく進めてくれたおかげで無事に2日間で設置工事が完了。

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これから塗装を始めます。現場で塗装する時は、このように引き出しや扉をすべて外して行なうので、ある程度広いスペースが確保できて、さらには工事も終わる間際や終わってからのきれいな状態じゃないと難しいのです。

続いては、塗装ですね。
このタイミングで再び現場に伺わせて頂きました。
今回はSさんご自身でオイル塗装を行なうということで、お引渡の間際の現場のクリーニングも済んできれいになった状態の時に行なうことになっていたからです。
いろいろ悩んだタイルもきれいに張られていて、オークとの印象もとても良くなりそう。
でもまだ無塗装なので、白っぽい印象であまりしっくりこないかもしれませんが、オイルが塗られると木目もよく出て、色も濃くなって雰囲気がとても落ち着いて見えてきますよ。

さて、室内は大変賑やかな様子。4人の小さなお子さんがいらっしゃるので、退屈しないかな、はたして順調に進むのだろうか・・・。
なんて心配しながら、塗装方法をお伝えしたら先に工房へと戻らせて頂きましたが、みんなしっかりしていて、お手伝い(したのかな)の甲斐あって、順調に塗装は終わったのでした。
さて、あとはお引渡しを迎えるだけです。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

玄関寄りに設置した食器カウンターの引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

玄関寄りに設置した食器カウンターの引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

玄関寄りに設置した食器カウンターの引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

玄関寄りに設置した食器カウンターの引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

玄関寄りに設置した食器カウンターの引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

玄関寄りに設置した食器カウンターの引き出しの様子。

コーリアンとホワイトオークのセパレートキッチン

玄関寄りに設置した食器カウンターの引き出しの様子。

そうして、お引渡も無事に終わりまして、(実はお引渡に立ち会うことは少なかったりします。初めの頃は取扱説明書を見ながら暮らし始めることが多いので、暮らし始めて少し経ってからのほうがメンテナンスや使い方の工夫など実感して伝わりやすいという意お声を頂くことが多いのです)お引越しも済んでしばらくした頃にご挨拶に伺わせて頂きました。
T-SITEでのご縁があったということで、あの時店頭に一緒に居たアキコと二人でお邪魔させて頂きました。
ちょうどコロナの影響で町が静かになっていた頃でしたので、それほど長い時間お邪魔させて頂くことはできなかったのですが、室内の様子やご家族皆さんの笑顔を見ていると、とても楽しくにぎやかに毎日を暮らしている様子がよく分かったのでした。
木のお手入れの方法やキッチンを使うときの注意点などご説明させて頂き、これでお仕事完了。
でもここからがお付き合いの始まりですね。
何かあれば、ちょっと遠いですが、駆け付けますので、気軽に声を掛けてくださいね。
これからもよろしくお願いします、Sさん。

コーリアンシームレスボウルのある洗面台

1階のに設置した洗面カウンター。カウンターはコーリアンで、洗面ボウルはカウンターと継ぎ目ないようにシームレス加工を施しています。キャビネットは左側のみオープンにして、右はタオルなどがしまえるように引き出しを設けています。

コーリアンシームレスボウルのある洗面台

こちらは2階上がってすぐのところにある手洗い台。1階と同じ仕様でサイズを小さくしてコンパクトに作っています。

キッチン仕上
天板 コーリアンラバロック/ステンレス板金シンク
扉・前板 ホワイトオークランダム張り突板
本体外側 ホワイトオークランダム張り突板
本体内側 ポリエステル化粧板
塗装 オイル塗装仕上げ

ホワイトオークランダム張り突板とコーリアンラバロックのセパレートキッチン

価格:1,440,000円(制作費、塗装は施主様施工、設備機器費用は別)

ホワイトオークランダム張り突板の食器棚

価格:390,000円(制作費、塗装は施主様施工)

ホワイトオークランダム張り突板とコーリアンボウルとカウンターの洗面台1F

価格:430,000円(制作費、塗装は施主様施工)

ホワイトオークランダム張り突板とコーリアンボウルとカウンターの洗面台2F

価格:230,000円(制作費、塗装は施主様施工)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は90,000円から、取付施工費は200,000円から)

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