オーダースピーカー「Pure Wood Ⅱ」

「ユニット交換型のオリジナルオーダースピーカー」

川崎 N様

design:seiji imai
planning:seiji imai/daisuke imai
producer:gaku suzuki
painting:gaku suzuki

チェリーのオーダースピーカー

スピーカー全景。

「Nです。昨年12月にキッチンの打ち合わせをさせてもらった者です。
その際にオリジナルのスピーカーを視聴させて頂きましたが、頭から離れず、引っ越しに合わせ是非お願いしようかと考えております。
そこで、もう一度スピーカーを拝見したいのとオーダー方法についてお話しを聞かせて頂けたらと思います。
急で申し訳ないですが、明日の11時頃お伺いしたいのですがご都合は如何でしょうか?」

チェリーのオーダースピーカー

これから試聴を始めるために、ショールームでNさんが来るのを待つスピーカーさん。

おやおや、これはうれしいご相談!
キッチンの打ち合わせでは、もっぱらその主役は奥様でして、どんなキッチンにするか終始私とお話ししている時に、ご主人は私の父と一緒に、スピーカーに試聴をずっとしていたのです。目をキラキラさせながら。
「いいなあ、いいなあ。お前は自分の理想通りのキッチンを作って、俺はスピーカーを作るっていうのもいいなあ。」って。

チェリーのオーダースピーカー

デザイン性よりもイタズラ防止の意味が強いこの格子は、今回は音を遮らないようにスピーカーユニットが良く見えるようなデザインで。

ということで、キッチンと一緒にスピーカーも作らせて頂くことになったのでした。
ただ、すべて一緒の納品は難しいので、スピーカーはお引っ越し後の後日にということで。

チェリーのオーダースピーカー

Nさんが選定したアンプが結構ギリギリなサイズなのでした。

通常、スピーカーを製作するにあたっては、またキッチンや家具とは違ったアプローチで進めていくのでそれなりにお時間を頂くのです。
まずは、箱。エンクロージャーですね。基本的な形はこの1台で左右を同時に鳴らす、と言うコンセプトなので、大まかな形は決まっているのですが、樹種は何にするか、使用するアンプなどの機器はどこの製品にするか、それに合わせて、サイズなどを検討していきます。今回は、キッチンや玄関収納に合わせてチェリーで作ることはもともと決めていたのですが、どういう音にして、どういうユニットを選定して、どういう機器で鳴らすかは今後の打ち合わせ次第です。

チェリーのオーダースピーカー

格子が出っ張って印象が際立たないように、天板をひさしのように少し延ばして、格子の両端もこのように縦の板を入れることで、カチッとしたデザインにまとめました。

私は音には詳しくないので、ここは長年の音楽経験豊富な父、イマイセイジの出番です。
父はカントリーウェスタンからジャズと言った弦楽器、管楽器主体の音が好みですが、Nさんはもう少し若い音が好き。
Nさんによく聞く音を教えて頂き、そこでどういった音にしていくかを検討していきます。
この時点でエンクロージャーのデザインは確定して、ある程イマイセイジのほうでユニットを選定して徐々に組み立てていきます。
そして、まずは大まかな完成。見た目はもうすでに完成した形をしていますが、音はここから作っていくもの。
ユニットのネットワークを音響設計の専門家であるガラットのシノザキさんと打ち合わせて、音の抵抗を考えて組んでいきます。
そして、余分な音を筐体の中で減らすようにして、約半月から1か月ほど音を鳴らし続けます。

チェリーのオーダースピーカー

スピーカーの素材は、板の動きが少ないように合板をメインに使っているのですが、この音の出口部分のゆるやかなアールは合板だと出しにくいので無垢材で加工をしております。合板と無垢の切り替わり部分が分かりますでしょうか。また、このようなデザインの脚をつけるのも私たちのスピーカーの特徴。

そして、徐々に音が落ち着いてきたところで、Nさんにあらためてお越し頂き、音の感想を聞きます。
そのご意見をもとに再調整。
そうしてようやく完成。
スピーカーは、当たり前ですが形だけではなく音作りが大切。これがまず完成してようやく納品となるのです。

チェリーとアイアンのターンテーブルを置くためのキャビネット

スピーカーとキャビネットが揃いました。

そのようななか、Nさんからあらためてお便りが届きました。
「それと別件ですが、ターンテーブル(レコードプレーヤー)の台を探しております。
台と言うより、上面にターンテーブル2台、その下にレコード、CDが収納できる棚です。
移動できるようにしたいので、脚は黒塗装した鉄アングルで四角の枠を作り(キャスター付き)、その上に棚を乗せるような感じです。
DJをやる訳でも無いので、機能性は重視してません(配線を隠す程度)。
スピーカーの件でお伺いする際に、イマイさんに製作を依頼した場合の概算を知りたいので、サイズやイメージ(こんな感じといったイラスト)を事前にメールで送らせて頂いてもよろしいでしょうか?
また、同様の製作例があれば写真など拝見させて頂けたらと思います。」

おやおや、Nさんすっかり音の魅力にのめり込んでくださったようです。ありがとうございます。
こちらもスピーカーと同じくチェリーで脚部は少し無骨に鋼材を黒く焼付塗装をして仕上げる形で作らせて頂きました。

チェリーとアイアンのターンテーブルを置くためのキャビネット

このキャビネットもNさんしばらくデザインを悩んでおりました。素材は、キッチンやスピーカーと同じチェリーで決まっていたのですが、側板の傾斜具合やアイアンの脚のデザインなどのバランスをどうしようかと・・。結果、とてもシンプルな形にして、扉に使った無垢の表情が生き生きと映るような形になりました。

「Nです。お世話様です。
先日はありがとうございました。
キャビネットありがとうございました。理想通りのスッキリした雰囲気で使い勝手は非常に良いです。
そして、あのスピーカーが我が家にある事に何となく自分の家じゃないような違和感を感じつつも音のある生活をとても堪能しております!
ありがとうございました。」

スピーカーとキャビネットで、リビングはすっかりご主人の場所になってしまったようです。
Nさん、ありがとうございました。

アメリカンチェリーのオーダースピーカー

価格:870,000円(制作費・塗装費)

アメリカンチェリーとアイアンのキャビネット

価格:350,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から)

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