どこか懐かしく

「ウォールナットのリビング壁面収納とテレビボードのオーダー」

鶴見 S様

design:Sさん
planning:daisuke imai
producer:gaku suzuki
painting:iku nogami

ブラックウォールナットのカウンター下収納とリビングデスクと格子のテレビボード

キッチンから眺めた様子。

「はじめまして。来春3月下旬に横浜市内のマンションへ引越し予定のSと申します。
収納が少ないため憧れのオーダー家具を検討していましたところ、イマイ様の素敵なHPに出会いました。
場所も我が家の住まいから近くて驚いています。たくさんの例のなかに求めていた家具がいくつもあり、「築き上げること」 たまプラーザ M邸がマンションですし、希望する家具がイメージに近いです。
カウンター下収納の引き出しや、机とつなげるアイデアなどがとても素晴らしく、デザインも洗練されていてぜひお願いしたいと決め手になりました。
お願いしたい家具の種類は、
「カウンター下収納」
引き出しとプラスして、マガジンラック、ゴミ箱収納を希望しています。サイズ:カウンター幅250、高さ105、奥行き20

「ダイニング壁面吊り戸棚・テーブル・収納棚」
飾り棚扉のない棚下にLEDダウンライト、引き出しつきのテーブルPC収納

「リビング壁面吊り戸棚」
ダイニング吊戸棚から続けて壁面収納を設けたい。
夫の趣味がレコード鑑賞なので出来ればレコードの収納が出来るように

入居予定日が3月26日で、内覧会は未定ですが二ヶ月くらい前のようです。
そのときに採寸をお願いできればと思っています。
初めての事でどのようにお伝えしていいかわからず、一方的な文章で失礼致します。
今後いろいろご教授いただければと思います。」

ブラックウォールナットのカウンター下収納とリビングデスクと格子のテレビボード

リビング側からキッチンを見る。どこかモダンで懐かしい印象。

Mさんの家具は人気がありますね。家具のレイアウトやテーブルのデザインなど、皆さんからとても評価を頂いていてうれしい限りです。
そうなると、Sさんの家具はどのような感じになるのかな、と思い、とにかくSさんのお住まいがこの工房からとても近かったので、まずはこのショールームを見て頂いて、それでいろんなお話ができたら良いなと思いましてお誘いしました。

ブラックウォールナットのカウンター下収納とリビングデスクと格子のテレビボード

L型の角になる部分は、レイアウトを参考にしたMさんと同じようにデスクにしています。そして、カウンター下収納の写真一番手前はゴミ箱のスペース。

私がこの仕事を始めた当初は、まだ工房はこの場所ではなく、ここから車で5分くらい走ったところにある倉庫を工房にしていたのです。
ただのプレハブののっぺらとした倉庫だったのですが、天井が5メートルと高くて細長い形をしていたのが良くて、長い板を振り回したりするのが楽で、細長い工房のレイアウトだったので、みんなのワークスペースを確保するのがしやすかったのを覚えております。
そこの一部に展示室を作ろう、ということで、父の知人の大工さんが腕を振るってくださって、100mm近くある柱をずんずん立てて、工房の1/3くらいのスペースを使って2階を作ってくれたのです。
事務所と更衣室、そして、食事ができて打ち合わせができるスペースができあがったのです。
当時は店舗用の家具ばかり作っていた時期でしたので、仕事に波があります。忙しくて、日付が変わってしまう日々が続くこともあれば、朝からプラプラしてしまう日があったりもする。木工所ってそういうものでした。
それで時間ができた時に自分たちで考えた小さな家具を作ったりしていたのです。(今は忙しくてそのような時間はなかなか取れなくなってしまいましたが・・。)
そういうちょっと変わった家具や雑貨が並んだ狭くてあったかい打ち合わせスペースだったのです。
3月に窓を開けると、裏の畑に植えられた梅が一斉に白い花をつけたり、ノラネコがとても多いにぎやかな通りだったので、朝会社に来ると10匹近いネコが待っていたり、時には自分の背丈ほどある大きな迷い犬がきたり、木っ端が出たら、焼却炉で燃やして暖を取ったり(当時はまだ自分の場所で物を燃やすことができた時代でした・・。)のんびりとした工房でしたね。

ブラックウォールナットのカウンター下収納とリビングデスクと格子のテレビボード

その角の部分。机の高さは70cmくらいが一般的ですが、対面カウンターの高さは90cmから100cmが多いので、その差ができる部分はこのように引き出しにするプランが一般的です。

それから20年近く経った今、この工房に移って、そしてショールームを部屋のようにしたい、と思い立ったのが6年前。
「キッチンを作る」と言う今まで考えもしなかったことがひとつの大きな仕事になりつつあって、それならと思ってキッチンを置いて、テーブルを置いて、ひとつのリビングダイニングのようにしたのでした。
それが今は私たちの良い印象を表す手助けとなってくれて、「ここに来るとホッとする。」って言ってくださる方が多いのです。
今まで経てきた時間がこういう形になって今があることに感謝しております。

ブラックウォールナットのカウンター下収納とリビングデスクと格子のテレビボード

こちらがデスクの印象。形はシンプルですが、扉を開けると通信機器がきちんとしまえるようになっていたり、照明の電源がうまく採りまわせるようになっていたり、意外と複雑なのです。

と、お話しが大きくなってしまいましたが、その姿をSさんに見て頂いたほうがきっとお話が分かりやすいと思ったのです。
そして、ご家族3人でいらして下さって、とてもこの印象と私たちのこと、私たちの家具を気に入ってくださって、おおよそその場で考えた形のまま家具のご依頼を頂けることになり、さらには、そのリビングの家具に合わせてテレビボードも一緒に作らせて頂くことになりました。
そして、いよいよ内覧会に。

ブラックウォールナットのカウンター下収納とリビングデスクと格子のテレビボード

このパネルの中に配線が通っているなんて分からないでしょう。

ご新居がマンションの場合でお引越しに合わせて家具を設置したい、と言う場合は、設置場所の採寸はこの内覧会の時に行なうというのがいつものタイミングです。そして、内覧会で測った寸法を図面に落とし込んで、図面を修正して製作に取り掛かり、お引越しまでに間に合わせる、と言う進め方が一般的です。
戸建て住宅の場合は、ご新居の工事期間中に採寸に伺える現場がほとんどなのですが、マンションみたいに大きな建築現場の場合は、いろんな人が出たり入ったりするといけないのでこの内覧会で初めて私たちのようなほかの業者が入れるのです。
その内覧会も、昔は最初から私たちも同席しても良かったのですが、近年は内覧会がきちんと進行が決まっていて、まずは2時間くらい入居される皆さんが内覧してお部屋のチェックや共用スペースの使い方などの説明を受けて、そのあとにいろんな業者さん(私たちのような家具屋さんや、エアコンや照明をつける電気屋さんやカーテン屋さんなど)がやってきて賑やかになります。
ですので、その日はだいたい皆さん疲れちゃうようです。2時間から3時間説明を受けた後に、いろいろな業者さんとお話ししたらほぼ1日掛かりますものね。ちびっ子なんて最初は新しいうちを楽しんでみているけれどだんだんと退屈しちゃう。

ブラックウォールナットのカウンター下収納とリビングデスクと格子のテレビボード

カウンター下収納の引き戸にはおなじみの手掛け。

Sさんの場合は、ご主人がお嬢さんと遊んで、奥様と私とで、設置場所を確認したり、細かい部分を打合せしたりすることに。
Sさんのご新居はマンションでそこに使われているドアや扉の色はブラックウォールナット柄のもの。今回はその色に合わせて家具もブラックウォールナットを使って作りましょう、ということになりました。
ダイニングとリビングまでつながるので、採寸もちょっと大変。それから、今回は吊戸棚に照明もつけるので、その電源の取り回し方を、既存のコンセントからどのように持ってくるかをうまく考えたり、カウンター下収納の作りたい奥行と、実際のカウンターの奥行とのバランスを考えたり。
事前の打ち合わせで形はすんなりと決まっていたのですが、大きな家具ですので実際に現地と照らし合わせながら確認することがたくさん出てきます。

ブラックウォールナットのカウンター下収納とリビングデスクと格子のテレビボード

引き戸を開けると食器棚。

そして、全て確認し終わり図面も修正していよいよ製作に取り掛かります。
以前に製作したたまプラーザのMさんのようにL型につながる部分をうまくまとめて、さらに机と吊戸棚をつなぐパネルからうまく電源線を通して照明へとつなぎ、スイッチも経由させる工夫はなかなか大変です。工房での仮組みまではうまくいきましたが設置場所のリビングでも同じようにうまくいきますように。
この頃、私は慌ただしくしていることが多くて、このSさんの取付の時も立ち会うことができず、ベテランのスズキ君とムラカミ君に任せてみんなで取付に行ってもらったのですが、配線の取り回しもL型の角の部分も無事にきれいに納めることができたということでホッとひと安心。

ブラックウォールナットのカウンター下収納とリビングデスクと格子のテレビボード

いつもは横の格子が多いのですが、今回は縦の格子。だいぶ印象が変わります。

その後、Sさんからお便りを頂いたのです。
「お世話になっております。先日新子安の物件において家具を取り付けてて頂きましたSです。
品良くかつ落ち着いた雰囲気に仕上がり、感激の一言です。
既製家具とも、良く見かける作り付けとも、ひと味も二味も違う仕上がりを目の当たりにして、フルオーダーならではのメリットを最大限に享受出来たと思っております。昨年の打ち合わせから幾度となく打ち合わせ機会を持って頂き、誠に有り難うございました。
年末の大掃除の際、ステイン塗布頑張ります。靴は丁寧な磨きを重ねて美しい風合いを醸成出来るように、取り付けて頂いた家具も同じように施せるか、まさに試されているといっても過言ではありませんね。」

うれしいお言葉、ありがとうございました。

ブラックウォールナットのカウンター下収納とリビングデスクと格子のテレビボード

扉を開けると、一部が引き出しになっているのです。

ブラックウォールナットのカウンター下収納

価格:360,000円(制作費・塗装費)

ブラックウォールナットの壁面収納

価格:750,000円(制作費・塗装費)

ブラックウォールナットのテレビボード

価格:330,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は40,000円から、取付施工費は80,000円から)

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