オーダー製作例

木製可動式パーテーション

導くひと

大塚 ヘアープラッツ悠雅様

design:daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:gaku suzuki
painting:gaku suzuki

2008年の11月の終わりに、以前問い合わせを頂いたHさんから再びメールを頂きました。
とても特殊な問い合わせだったので今でも覚えています。ただ、あの時からもう5ヶ月近く経っていたので図面も見積もりもすでに処分していたのです・・・。
どうしようかな・・。

アルダーの棒で作る可動式パーテーション
まるで天上に向かう階段のよう。

そして、その時の11月に頂いたHさんからのメール
「今年7月頃、パーテーションの見積もりをお願いしたHと申します。制作をお願いしたいと思います。以前イマイさんからお送り頂いていたメール内容はこのようなものでした。ご確認頂ければ幸いです。
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「はじめまして、お問い合わせありがとうございます。
メールとFAX拝見させて頂きました。頂いてからネットでいろいろと調べてみましたがやはりなかなかそれと分かるようなものはありませんでしたので私なりに構造を考えてみました。参考までにスケッチを添付いたします。
基本的に「C」の形をした棒を紐でつないでいければ製作可能だと思いますが、1200mmや1700mmの長さの木の棒を「C」の形に正確に多くの本数をくり貫いていくのは、手作業と機械作業を平行して行う私たちのような小さい工場では難しい加工だと思っております。
お風呂のフタの蛇腹のような形状でしたら、できなくもないのですが・・
機械設備の整った工場を持った家具屋さんに一度問い合わせして頂けますでしょうか。
埼玉や群馬のあたりは比較的大きな家具工場があるようですので、対応してくださるところがあるかも知れませんのでよろしければご検討ください。」
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「そこでお聞きしたいのですが、お風呂のフタの蛇腹のような形状とは、どのようなイメージでしょうか?
接続はどのようにするのでしょうか?
「C」の形をした棒にこだわっているわけではないのですが、大きさは、1700×2200ぐらいでFAXに描いたような全体の形をしていて、固定するのではなくではなく形を変えられるもの。また、移動をするので持ち運びが可能な重量で考えていただければと思います。一本(一枚)の幅は、曲線がつくれる程度の幅。
これらの条件で蛇腹のような形状でしたら製作できるでしょうか?」

アルダーの棒で作る可動式パーテーション
ブラックウォールナットのような色みに塗装しました。

うーん、説明が難しいかな・・。
「蛇腹のような形の上から見た図を添付します。木の棒を台形に加工して、その台形の木を両側からキャンパス地のような丈夫な布に貼りつけて六角形が連続するような形になります。
これでしたら、ある程度曲げることができます。
ただ、完全な円形にして収納するにはお互いの角が当たってしまうと思いますので大きな円形になると思います。持ち運びについては、1700×2200くらいの大きさですとかなりの重量になると思います。
大人の男性二人で運ぶことができるくらいではないかと思っております。
それと、このくらいの大きさになりますと、全て広げた時(1700×2200大きさに開いた時)に、このパーテーションの構造上多少ゆがみが出る可能性がありますので、全て広げた状態で自立させるのは難しいと思いますのでご了承ください。
このような形でしたら私たちでも製作可能だと考えております。
ただ、量産品ではなく1つずつ木の棒を作っていきますのでかなりのコストになりますのでその点ご検討ください。」

それからしばらく経った頃。
「金額に悩んでいましたが、5ヶ月考え決心しました。設置場所を見て頂き、相談に乗って頂ければと思ってお「ります。 宜しくお願いいたします。」
と、お返事を頂いたのでした。
Hさんはこのパーテーションを思いついたわけではなく、ふと立ち寄ったアンティーク家具のお店にこのようなものが置かれていたのを見たのだそうです。その時はまだこのパーテーションを活かすアイデアがHさんの中でまとまっていなかったので、すぐに購入するつもりはなかったのだそうですが、それからまもなくやはりそのパーテーションが必要だなと思ってお店に戻った時はすでに誰かが購入されたあとだったのだそうです。それから、いろいろなお店を当たって探したのですが、見つからず・・。そして、私たちに作ってもらうことを思いついたのだそうです。
当時私たちは、Hさんがメールと一緒に送ってきてくださったそのパーテーションのスケッチを見てこれは基本的に製作は難しいと考えておりました。作ることができるとしても大変な日数が掛かってしまうだろうから、もっと大きな加工所に相談した方がコストが落とせるのではないかと思っていました。
だから、そのように返事をさせて頂いたのですが、Hさんとしては何でももできる家具屋さんをようやく見つけたから、どうにか製作可能な形を考えてほしいという思いです。
それならばどうにか作れる形をと思って考えたのが、通称「タンボア」と呼ばれている曲面を仕上げるのに使ったりする材をで作りしてみようと言う考えだったのです。
建材としていろいろなものが出ていますが、以前これを手作りで作る方法を見たことがあり、基材に強化紙ではなく、布を使えばもっと丈夫にできると考えたのです。布の両側からかまぼこ型に加工した木をサンドイッチしていけば1枚のパーテーションになるだろうと・・・。ただ、それを作る工程や時間を考えるとかなり高価なものになってしまうのでした・・。
それをHさんに告げると、「やはりコストが掛かるのでしばらく考えたいと思います。」ということに。それから、5ヶ月が経ってこのように再び連絡を頂いたのです。

アルダーの棒で作る可動式パーテーション
こちらが製作中の様子。

正直なところ、そうか、作るんだなあ・・。と言う気持ちでした。時々思う複雑な気持ちです。厚木のNさんや大船のTさんや大和のSさんの家具の時のように、何となく先が漠然として見えないものを引き受けてしまった時のぼんやりした気持ちになりました。
でもね、きちんと作るならもう一度いろんな角度から見つめ直してみようと思い、もう一度考え直すことにしました。タンボアが良いか、それとも最初に頂いたオリジナルの形状をうまく工夫して私たちでも作れないかと。そうこう考えているうちに、うちの機械をうまく使えばもっと効率よく加工できる方法が頭に浮かんできました。それをスケッチして、まずは、サンプルを作ってみることにしました。うまく行くかな。
サンプルの出来はとても良く、加工も予想以上に時間も材料も無駄なくできることが分かったのです。サンプルは2つ作り、一つはHさんに送り、もう一つは手元に置いておいて実際に製作にあたってのスケールモデルとして不具合が出たりした場合に検討するようにしました。サンプルを送ってもまもなく、Hさんからメールが来ました。
「サンプル届きました。拝見して、「すごい、すごい」と一人ではしゃいでしまいました。
カーブの具合も重量も、想像していたよりずっと良いです。色は、見本を作っていただいた「こげ茶色」でお願い致します。
細かい部分はお任せします。希望は・・・かっこよく・・・。
完成を楽しみにしています。今日はとても気分よく仕事ができます。
お忙しいところ、早々にサンプルを作って頂きありがとうございました。」

アルダーの棒で作る可動式パーテーション
お店の外から眺めます。
素材はアルダー。コストが安く、曲がりや反りが起きにくく、軽めの材だったからです。Hさんは樹種の指定はなく、「濃い色で格好よく」と言うのがイメージでしたので、このアルダーをワトコオイルのダークウォールナット色に塗ることにしたのです。
サンプルを製作した鈴木君に引き続き本番でも担当してもらい、80本近いアルダーの棒を加工します。Hさんの希望で「上方は波打ったような曲線で高いところで1800mm低いところで1200mmくらいに・・」と言うことで、鈴木君と二人できれいな曲線が見つかるまで検討してようやく加工します。
そして、全ての加工が終わり、製作の中で一番重要だと考えている連結をしてみます。
最初は、サンプルと同じようにタコ糸で。
これでひとまず組みあがったので、曲げたり延ばしたりして具合を見ていると、プチンッと糸がはじけました。木の角に擦れて、綿の繊維が切れてしまったのです。困った・・・。
そして、いろいろと悩んだ挙句、行き着いたのは、自転車のブレーキワイヤーのように撚り合わせた針金でした。これから、木に負けることもなく、木もそんなに削れてしまうこともない。負荷の掛かる部分の木には、金属のハトメをつけて補強をして、さらにワイヤーのテンションを調整できるように工夫をして完成。出来上がったパーテーションは、動きも渋くなく軟くもなく、ちょっとした地震で倒れるようなことなくしっかりとしたものになりました。ただ、問題は重さです。やはり予定通り、大人一人でどうにか動かせると言う感じです。Hさんは女性。動かせるかな・・。

アルダーの棒で作る可動式パーテーション
店内から眺めます。

と言う心配もなく、私より小柄で細身なHさんは抱きかかえるようにして持ち上げました。
うーん、すごい。
「これなら、大丈夫です。良かったです。お店で見たパーテーションはもっと軽そうでしたけれど、1本1本が細くて、華奢だったから倒れたら嫌だなあと思っていて。私もここまできちんとできるなんて思っていませんでした。とてもうれしいです。
ようやくこのパーテーションが来たから、これでようやく新しい仕事が始められます。良かった。」
そう、Hさんのお店はヘアーサロンですが、これからはエステも始めたいということだったのです。髪をカットするのと違って、外を行き交う人達からエステの様子が見えてしまってはいけないということでこのパーテーションが必要だったのです。なるほど。
このパーテーションを作ることでまた一つ私たちの道が見つかった気がしました。

費用については、お問い合わせくださいませ。
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