親どり小とり

「タモとウォールナットの衣類収納タンスのオーダー」

大船 T様

design:Tさん
planning:Tさん
producer:tsuyoshi kawaguchi
painting:haraki tosou

今までTさんからは、「仏壇」、「脚立」ととても個性的で難題の多い家具の依頼を頂いてきたのですが、今回はとてもとてもストイックな作りの箪笥のご注文を頂いたのです。半ば意見をぶつけ合いながら、いつもお話を進めていくのですが、今回もいろいろとTさんとそして、製作を担当した河口君と試行錯誤しながら、この形を作り上げました。

タモとウォールナットの整理タンス

タンス全体の印象。

一言で言うと、うーん、大変でした。
このあと、またまた変わった本棚の依頼を頂いているのです。河口君、引き続きがんばってくださいね。
まず、箪笥本体は、タモ柾目の突き板を使って、ポリエステル化粧板を内張りしています。これはよくある仕上げ方ですね。扉は、その表情を出すためにタモの無垢材を薄く挽いて、4mmほどの厚みに仕上げて、それを表面に張った板を作って扉にしています。そして、途中には、ウォールナットの無垢材を挟んで、ここに手掛けを作っています。この手掛けが複雑で、遠目で見ると、手掛けが見えないようにスリットのラインがつながっているような見せ方をしているのです。このように仕上げるために、まるでパズルのような組み方をしていきます。それなのに、薄板を組み合わせて作ることが影響したのか、このウォールナットの部分だけが反ってしまって再加工をしたりと、とにかく大変な作業なのでした。そして、扉にはTさんがデザインした親子の鳥を掘り込んでいます。
と、一番大変な扉はこのようにできています。
しかし、本体もそれなりに大変でした。
中につけるハンガーパイプは、普段よく使われている肉厚1.2mmのパイプだと洋服の重みでたわむかも知れないからということで、3mmのステンレスパイプを使っているのです。うーん、この長さなら大丈夫だと思うのですけれど、Tさんには、ここは3mm厚が絶対必要だとおっしゃられてしまいまして、どうしようかと困ったのです。と言うのは、現在私たちの扱う金物では取り扱いはなかったからです。そこで、ちょうど別のお客様のキッチンのシンクを頼む機会があったので、一緒にパイプを高橋製作所さんに用意してもらいました。
さらにこのパイプはブラケットが見えないようにつけてほしい、と言うご要望。うーん、難しい・・・、と言うことで、結局側板の外側からパイプを貫通させています。
さらにメガネなどを入れる小物入れは、無垢をくり抜いて作り、引き出しはスライドレールを用いるのを嫌って吊残に。さらに引き出しを開ける手掛けは、本体の棚口を掘り込む複雑な作りです。
そして、この家具には地板がないのです。箱物家具の基本は箱であり、両側の板があって、天板があって、下につく地板があります。地板がない家具も作りますが、それだけだと板の厚みがうすいのであまりに歪みが大きくなるので、壁に造り付け家具の場合に限って地板を省いた形は作ったりします。しかし、置き家具でしかも箪笥なのに、地板がないと納品した時には調子が良くても、洋服を掛け始めたりしているうちに、服の重みで生まれたたわみなどからすぐに歪んで扉が擦れ合ったりしてしまう。うーん心配。その代わりに巾木のところに厚み4mmの合板を地板として入れてほしいとおっしゃいます。
うーん、強度的に持つのだろうか・・・。
と私が不安な点を提示しても、やはりTさん、譲りませんね。
分かりました、とにかく進めてみます。製作過程でどうしても難しい構造部分が出てきたら、また相談させていただきます。と言うことで、Tさんのプランで進めることに。
途中、必要な補強を入れたりしながら、こうして丈夫にできたことに我々はホッとしました。
そしてTさんからは、製作途中の様子を見に来てくださった時も、納品の時も、
「いいじゃない。イマイさんは腕が良くて、素直に作ってくれるから良いよね。」
と、太鼓判を頂きました。
そして、続いての複雑な家具の説明をしてくださいました・・・。
はい、これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

タモとウォールナットの整理タンス

扉を開けた内部の様子。とてもシンプルな内部ですが、いつも以上に手が込んでいるのです。そう見えないでしょ。


タモとウォールナットの整理タンス

河口君が黒していた手掛け。


タモとウォールナットの整理タンス

実は、手掛け部分でちょっと問題がでてしまったのでした。きちんと養生していたのですが、急に大きく反りが出てしまって、それが上下のタモの部分に影響して、扉がうまく納まらなかったのです。それでもう一回、作っているのでした。


タモとウォールナットの整理タンス

シンプルに見える小物入れ。実は無垢を削って、器のようにしているのですが、手道具しかないので、この削る作業がなかなか大変。でも、Tさんは、削ることでできる導管の模様を見たかったのだそうで、頑張りましたね。

タモとブラックウォールナットの整理タンス

価格:560,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は18,000円から)

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