オーダー製作例

タモの浮造り仕上げとチークを使ったキャビネット

のこしてくださったもの

中央林間 N様

design:Nさん
planning:Nさん
producer:kazunaga watanabe
painting:kazunaga watanabe

「実は、小さなチェストを作っていただきたいのです。」と、とても久しぶりに、Nさんからご連絡を頂いたのでした。Nさんには、以前に食器棚を作らせてもらいました。
そう、その食器棚の記事を読んでいただければ分かりますが、Nさんは、私の友人というか憧れている人でもある福原正芳氏の奥さんの妹さんのユウコさんです。そして、今回の依頼は小さなチェストでした。そして、そのチェストのデザインは、ユウコさんのお父さんであるOさんが考えていたものでした。福原さんとのご縁で、Oさんの家具もテレビボードと、机と作らせて頂いていまして、とてもとてもすてきな思い出で、とてもとても素晴らしい方でした。

タモの浮造り仕上げとチークを使ったキャビネット
ダイニングテーブルと並んだ印象。

そう、このお話を頂いた4ヶ月前に、Oさんは亡くなられていたのでした。お正月には、福原さんとの新年の挨拶も兼ねて、私の娘たちも連れていくと、娘たちは「おじいちゃん、おじいちゃん。」とOさんに良く可愛がられて、とてもとても良くしていただいた方が、いつの間にか居なくなってしまったと言うのは、何だかやはりどうしていいか分からず、ユウコさんから亡くなったんですと、涙ながらに告白された時、私はずっとあの時に頂いた二足の手製の布草履の鮮やかな青と白の色がずっと浮かんでいたのでした。
お正月のあとに棚板の調整でちょっとお邪魔させて頂いたことがあって、その時に「イマイさんさあ、次に来たらお嬢ちゃんの草履も作ってあるからさあ。」って言っていたのに・・。
娘もずっとそれを楽しみにしていて、「おじいちゃんにきれいな草履をもらうんだ。」って楽しみにしていたのに。
今回のチェストは、病床で元気にしていた頃に、スケッチしていたOさんの最後の作品なのです。
「だから、ぜひイマイさんに形にしてもらいたくって。」と。

タモの浮造り仕上げとチークを使ったキャビネット
全体はタモで、手掛けはチークで。

「先日はおはなしを聞いてくださってありがとうございました。
イマイさんの変わらない佇まいに、たくさんのことを思いだしてしまい、あのあと実家の家具を見て、なんだか胸が締め付けられるような思いになりました。
お人柄に、心から感謝の気持ちでいっぱいです。。。
そして図面を送っていただきありがとうございます。
いろいろ想像しちゃいますね♪
チェストにしまうものは、決して特別なものではないんです。
ただいま、と言って靴をぬぎ、真っ先にポケットやバッグから取り出す鍵やお財布、手帳やメモ帳。
ちょっとした文房具に、ちょっとした常備薬。
毎晩口にするウィスキーのデキャンタに、あーでもないこーでもないとぶつぶつ言いながらページをめくるレシピ本。
特別ではないけれど、
毎日かならず使うもの、触れるもの。
そんなチェストなんです。
だから、きっと生活になくてはならない、大切な存在になるのだろうな、と思います。
さて木の好みですが、父が一番好んで使っていたタモ材はどうかなと考えています。
一緒に肩を並べることになる食卓はクルミ材だけど、そんなにピッタリ合ってなくても、きっと仲良くやってくれるかな?」

タモの浮造り仕上げとチークを使ったキャビネット
Nさんがしまうのは、本当に小さなモノたち。おばあちゃんから譲ってもらった裁縫箱のような小さな箱にしまっていた宝ものたちがこの小さな引き出しに入ります。

そのような感じで、Oさんの手から生まれたイメージが形になり始めたのでした。
「いよいよ製作です。
天上で見守っている、お父様にも喜んでもらえるような良い形作りを目指します。
先日タモ材で試しに「うずくり」をしてみました。
硬い木ですが、柔らかい繊維部分は意外にもきれいに取れていって、良い凹凸感が出ました。
実際に天板に施すと、良い表情になりそうです。
取っ手もチークの良い色のものがありました。
全てが組み合わされると、きっとすてきになりますよ。」

タモの浮造り仕上げとチークを使ったキャビネット
天板の浮造り加工を施して凹凸が浮き出た様子が少しでも分かって頂けるとうれしいです。
「イマイさん、ご連絡ありがとうございます。
モノには始まりがあるのですね。
始まりの、始まり。
病室で手渡されたあの図面が、イマイさんの手によって、いよいよ姿かたちを見せてくれるのですね。
こんなにも感傷的な気持ちを引きずっていてはいけないのだけど、なんだか切なく、そして感謝の気持ちでいっぱいです。
そしてイエスは彼に言った
「立ち上がって行きなさい。あなたの信仰があなたを救いました。」
福原のパパさんが好きだった聖句です。
自身を救う、自身を導く灯火は、わたし自身の心に宿っているのですね。。。
チェストの出来上がりを、ゆっくりゆっくりお待ちしてます。」

こうしてできあがった形は、とても穏やかな形でした。
納品の時は、ぜひご主人も一緒の時に迎えたい、と言うことでわざわざご主人に早めに帰宅して頂いた土曜日の夕方でした。
ユウコさんは目に涙をためてこう言いました。
「私は、この家具をこれから一生使っていくことができるんだと思うと、何て言ったらいいか・・、言葉にならない思いがあります。」と。
この家具は届けられたのではなく、ここにやってきたのであって、お二人はそれをお迎えしたのでした。
静かで一途な思いがよく伝わってきました。
お正月には私も亡きお父さんとお父さんが頼んで下さった家具たちにあらためてご挨拶に行きます。
私たちは何と幸せなことなのでしょうか。
ありがとうございました。ユウコさん、Nさん、Oさん。

費用については、お問い合わせくださいませ。
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