この場所に合わせて
「食器棚のオーダー」
鶴川 H様
design:hidenori terai/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:daisuke imai
以前ご紹介したHさんですが、あの家具を納品する少し前にHさんの奥さんから食器棚のお話を伺ったのです。
今度のHさんの新居のキッチンは約3畳と少し狭く、さらに洗面室と行き来する為の引き戸がシステムキッチンの向かい側についてしまっているので、食器棚を置くスペースが取っても小さな場所しか残らなくて、既製品をあれこれ組み合わせようと思ってもうまく納まらないということでした。
Hさんの奥さんの希望は、「食器の他にレンジや炊飯器が置けるスペースを採ってほしい。」と言うことでして、最初にこの場所を見て私が考えたのは、電化製品は縦に置いて食器用の戸棚と電化製品用の戸棚と分割した方が良いだろうと思ったのです。壁面の状況やL字型に変形させなければいけない形状について考えると、その方が作りやすいのではないかと思っていたのです。しかし、キッチンスペースが狭いため、なかなかうまくプランは進まず、それでも電化製品と食器を分ける方法にこだわり続けて、結局でき上がったプランは、言葉で説明すると難しいのですが、食器戸棚と直角になる位置に、電化製品を載せたキャスター付きの棚が置かれてこのキャスター付きの収納を動かすことでスペースを有効に生かすというお粗末なものでした・・・。
リビングボードなどを納品する時にそのプランをHさんに見せたのですが、やはりあまり評価は得られず、「う~ん、どうしたものかな。」と思ってその日は納品だけを済ませて帰ることにしました。
その帰り道、スタッフの寺井君とプランについて話していたら、「こんなのはどうですか。」と言って話してくれたのはこういうプランでした。
それは、「普通の上下が分かれた食器棚のように吊戸棚があって、その吊戸棚はL字型をしていて、なおかつHさんのキッチンの壁は吊戸棚が補助的にしか固定できないので加重を床に落とすように脚をつけて、その下にL字のカウンターがあって、その下はゴミ箱なんかが置けるようにフリースペースにして、代わりに吊戸棚の扉と同じ表面材で食器収納用の小さなワゴンを2台置く。」と言うものでした。
私も一度は上下に分けた形で考えてみようと思ったのですが、吊戸棚を固定する強度が背面壁に得られない不安と、L字になる交点の部分をどのようにしたら使いやすいかが思い浮ばなくて上下分割のプランはやめたのです。
でも、この寺井君の話を聞いた時に、吊戸棚の荷重を床に落とすところに「あっ、なるほど、それはいい。」と思えるプランが寺井君の話から浮かんだのです。
Hさんは白い化粧板のイメージに金属が混ざったような感じの家具にできたらいいなと言っていたのを思い出し、吊戸棚の脚を金属で作ったら面白いかもと思ったのです。
さっそく会社に戻って、寺井君のプランを図面にしてみて、さらに収納量を多くするためにワゴンを無くして、代わりに下も全て収納にする形のものと2つのプランを描きました。プランを描いているうちに(と言うか寺井君の話を聞いているうちに)L字の交点になる部分のアイデアも浮かんできてなかなか使いやすそうな食器棚の形ができたのです。
その後、Hさんに見てもらい、そのプランをとても気に入ってくれて、最終的には下の部分も収納にした2番目のプランの食器棚ができあがったのです。