人の手が作るもの

「タモのホワイトペイント仕上げの食器棚のオーダー」

府中 O様

design:Oさん/seiji imai
planning:daisuke imai
producer:gaku suzuki
painting:haraki tosou

タモとホワイトペイントとアイアンを使った食器棚

実際に使って頂いている様子。

タモとホワイトペイントとアイアンを使った食器棚

Oさんのお宅に伺ったときに描いたスケッチ。このプランを元にこの食器棚はできあがっていったのです。楽しい感じが伝わるかな。

最初は、もっともっとシンプルな食器棚を考えていたんです。
Oさんから頂いたメールには、
「吊棚(高さ100cm、奥行45cm、扉4枚程度)と収納(高さ85cm、奥行55cm)を考えています。
幅はそれぞれ160cmです。
キッチン同様、TOPPAN TE-710を使用したいです。
収納部分は3ブロックに分け、1つはゴミ箱スペースとしてオープンに使用、もうひとつは3段引出として、もう1つは1段引出と観音扉をつけたいと思っています。できれば、観音扉含めすべての扉にソフトクロージング(ショックアブソーバー?)を希望します。
天板はメラミンを考えています。
概算およびおおよその納期を教えていただきたく、どうぞよろしくお願いいたします。
いろいろ書きましたが、詳細につきましては正直迷っている点も多く、見積もり後に縁がありましたら、いろいろと相談に乗っていただき、専門家の視点からご提案をいただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。」
とありました。
ひとまず、その内容でトッパンのオレフィン化粧板を使って、システムキッチンによく使われるアルミの手掛けハンドルをつけて、スライドレールはブルモーションタイプ(ゆっくりと静かに閉まるレール)で、扉に使うスライド蝶番にもソフトクローズダンパーをつけた形でプランを作って、お見積を送ったのです。
すると、「ちなみに、まずお話させていただいてからお願いするか決めるというということでよろしいでしょうか?よろしくお願いいたします。
最初のフォームでも書きましたが、出来ましたら専門家の積極的なアドバイスをいただきたいと思っています。
例えば、正直、白一色でいいのか(天板は木目調の色にしてアクセントにした方がいい?、など)など、いろいろ話をしながら、アドバイスをいただき進めたいと思っています。」とご連絡を頂きました。
よし、まずはお話をお聞きしてみましょう。
と言うことで、府中まで。ここからだと遠いように思えるのですが北上するだけで到着する分、都内に向かうよりは近いわけです。私から見るとご近所さん的な地域ですね。
お会いしたOさんもご近所さん的な雰囲気。年齢が近くお子さんの年も私の娘たちと近いこともあって、近い距離を感じながら打合せできたことが幸いでした。
何が幸いかと言うと、打ち合わせが進むに連れて、当初の家具のプランが楽しい方向に変わっていったからです。
まず通されたリビングに入って思ったのが、ナチュラルな木が好きなんだなあと感じさせるインテリアでした。ご主人お手製の椅子やチェッカーガラスのカップボードや綿の布など・・。そして、キッチンには吊戸棚がなくて、調理をしながらリビングダイニングが見渡せる間取り。逆のことを言うと、システムキッチンはリビングからは見えないのでした。
では、さっそく専門家の意見を、ゴホン。
なんて気取ってみますが、要するにOさんのインテリアが私の好きな雰囲気だったので、私の好きな形をOさんにぶつけてみただけです。
その提案とは、システムキッチンはリビングから見えるわけではないので、あえて合わせなくても、気に入った素材を使った食器棚にしたほうが良いのでは、と言うことでした。よくよくお話してみると、「そのキッチンの化粧板が特別好きだと言うわけではなく、せっかく作るなら一緒の方がまとまるかなと思っていました。」と言うことでした。それから、変えちゃいましょう。
続いて、好きなテイストのお話しをいろいろとさせて頂きます。すると、奥さんの目がキラキラしてきました。
「うん、うん、そうですね。それは素敵ですね。」と言う具合に。ご主人も、「君が使う場所なのだから、君の望む形にしなさい。」ってご主人も楽しそう。
お話を聞くと、奥さんはもともと「一途な思い」のSさんの家具が気に入っていたのだそうで。そうなると、もう打ち合わせが弾みます。
「じゃあ、Sさんのような塗りつぶした仕上げと木の表情を生かした食器棚にしましょう。」
「私の身長があまり高くないので・・。」
それでしたら、上の戸棚はこのくらいまで下にさげて、よく使うところと時々使うところで扉を分けるのはどうでしょうか・・。」
「よく使うところは、ガラスにしてみても・・。」
「最近ロートアイアンの作家さんと知り合いになったんです・・。」
なんて、奥さんも「素敵ですねえ。」と言ってくださるので、いろいろ好きなことを話させていただきました。楽しい、楽しい。
その後一度こちらまで来て頂いて、素材を見て頂いたり、うちの雰囲気を知ってもらって、いよいよ製作。
今回は、フリーハンドイマイとツマミやハンドルを担当するKUMA鍛鉄工房とステンドグラスのアトリエヨシダのコラボレーションです。
できあがった食器棚を持って伺った日は、まだ温かな秋の陽射しがキラキラした日。待ちに待った奥さんの目も、ご主人の顔も、そして私たちもキラキラしてしまいます。
だって組みあがった姿は、とても魅力的だったから。工場では、組み立てはできても、吊戸棚が吊られた雰囲気まではこうして壁についてみないと分かりませんからね。
アイアンの作家さんやガラス作家さん、そして木工とそれぞれの手の跡が残るとても良い食器棚になりました。
用意してくださったランチをむしゃむしゃとスタッフの鈴木君と頂いている間に、ここにはこれ、あそこにはあれとしまう姿がまたキラキラ見えます。
良かったです、こんなに喜んで頂けて。

タモとホワイトペイントとアイアンを使った食器棚

ゴミ箱はすでに注文済みだったものをキャンセルして、食器棚の雰囲気に合うように「クード」を購入していただきました。

タモとホワイトペイントとアイアンを使った食器棚

ガラスに映りこむ内部もよく見えるようにちょっと茶色いポリエステル化粧板を使っています。

タモとホワイトペイントとアイアンを使った食器棚

ガラスはヨシダさんのところで槌目のある「ハンマードグラス」を使っています。

タモとホワイトペイントとアイアンを使った食器棚

鍛鉄で作品を作るKUMAさんのその作品。今までも時々使わせて頂いているつくしツマミをさらに小ぶりにしたツマミ。この部分は白く塗りつぶしの扉、タモ無垢の額縁扉、ステンドグラス、ツマミといろんな要素が交わるのでつまみを小ぶりにしたのです。

タモとホワイトペイントとアイアンを使った食器棚

このハンドルも、バッグなどをぶら下げるバッグのフックもKUMAさんに作って頂きました。

白いウレタン塗装とタモとハンマードグラスを使った食器棚

価格:560,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は35,000円から)

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