Sさんのカウンター下収納:スタッフヒロセ君の制作日記

2021.05.23

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今回作らせて頂いた家具は、Sさんのナラ板目突板を使ったカウンター下収納でした。キッチンの対面カウンターの下に納めるため、奥行きに制限があり普段制作する家具のように奥行きを大きく取ることができないのが特長です。
奥行きが変わるだけでも通常の作り方とは多少変わってきます。
たとえば、可動棚の棚板がしっかり安定するよう、ダボの位置もいつもより外側にしたり。これは通常私たちが作る家具の場合は、棚板の前後30ミリの位置に棚ダボをつけるようにするのですが、奥行が狭い家具で30ミリずつにすると、かえってダボの位置が近すぎて棚板の手前に物を置いたりすると、その重みで棚板が手前に浮き上がってしまうことがあるのです。(文章だと分かりづらくてすみません。)

「さまざまな場面でのその家具にとってより良い作り方」というものは、常に違うものであると考えています。
特にその加工法においては、その時の条件や状況、寸法によって変わる事が多く、その場面において何が良い手なのか、あらかじめ数パターンの方法を考え、各案のメリットデメリットを把握しながら、最良の手段を選び制作しています。

今回の形は、左側は大きな引き違い戸、右側は片開き扉になっています。
手を掛ける部分に特徴があるのですが、引き戸の外側と開き扉の上部には無垢を接いでいます。なぜかというとそこに手掛けの掘り込みを入れるためです。突板では掘り込むことで下地の芯材が露出してしまうので無垢を練り付けてその部分を治具を使用して掘り込み、手掛け加工しているのです。
今回の開き扉上部にある手掛けの形状は、私自身初めて加工するものでした。
似ている形状はよく製作するのですが、この形だといつものようには加工できません。そのため加工する機械を変え、その機械を使う事でのリスクを無くすような治具を考え加工する事に。その結果、機械を安定させ思った通りに加工する事ができた思います。
また、部屋の右側面の壁には点検口がありまして、それに干渉しないように家具の内部は点検口部分を回避した作りにしています。
具体的には、開き扉は閉めた時に点検口に干渉しないように、点検口の厚み分を壁面からの扉を離すことにより、扉を閉めた時には家具の雰囲気を崩さず、自然な見え方にしています。
実は私の自宅にも同じ条件のスペースがあって、その場所にこれだけの収納力が作れるという事を知り、とても良い参考になる仕事をさせて頂けたと思います。
できあがってみるとシンプルに見える形は、こういうオーダーでこそ考えられる工夫があってこそできあがるものなのだと思うのです。