キッチンのレイアウトについて

2021.10.14

私は料理をするとしても週末くらいで、どちらかというと家よりも工房に居る時間が多いので、キッチンのコーディネートやデザインというと差し出がましく思えるのですが、今までいろいろな方々のキッチンを作ってきて感じてきたことがいろいろあります。

こういう直接いろいろな意見を聞かせて頂くことができるオーダーという形は、私たちにとっても大変魅力のある家具作りの在り方だと思っているのです。

その中にひとつに「キッチンのレイアウト」について皆さんからいろいろなお話を聞かせて頂けたことがありました。

レイアウトというと、大まかに分けて、「I型」「セパレートタイプ」「L字型」「コの字型」に分けられることが多いです。

皆さんの好みがあると思いますが、今までお話伺っていて感じたことは、【一人で使いたいか】【みんなで使いたいか】で大きく意見が分かれるのだな、ということでした。

「うちではお料理はもっぱら私が作るだけなので、キッチンも私一人で使いやすい形にしたいのです。」

そういうご家庭でご要望が多かったレイアウトは、一人でガシガシ使えるようなL型やコの字型のレイアウトでした。

なぜL型やコの字型か、というと共通点は囲まれていることでした。

作業動線を少なくしたうえで、シンク、コンロ、調理スペースといろいろな仕事ができる場所にアクセスしやすいように自分の周りをキッチンで囲みたい、というご意見が多かったのです。

そのキッチン内のワークスペースも通常は、900ミリくらい採って、人とのすれ違いがしやすいように考えることが一般的ですが、「一人で作業したい」とおっしゃる方は反対に「水仕事をしていて振り返れば一歩足を踏み出さなくても作業台の上のものが撮れるようにこのスペースを狭くコンパクトにしてほしいのです。」と、800ミリくらいにされる方もいらっしゃいました。

反対に、「週末は家族みんなでキッチンで料理することが多かったりします。」

という皆さんが選ばれるのは、I型やセパレートタイプのレイアウトになることが多いです。

我が家もペニンシュラキッチンと食器棚として使っているバックカウンターがあるレイアウトです。

実際に使っていると娘たちもキッチンで何やらごそごそと作るのが好きですので、多い時は4人でキッチンの周りをガチャガチャとやるわけです。

さてI型の場合は、【壁を向いて作業をする形】と【ペニンシュラタイプのようにリビングダイニングを向いて作業をする形】の2つがあります。

どちらの場合でも、キッチンだけだと足りない収納量を補うためにキッチンの背面にバックカウンターがあると収納量・作業スペースの確保ができるので、とても使いやすいです。

具体的には、壁に向いたキッチンならダイニングとキッチンを仕切るようにアイランドカウンターがある形、ペニンシュラタイプなら私の自宅のようなバックカウンターがある形です。

こういうふうなレイアウトにすると、I型+カウンターとセパレートタイプのキッチンとの違いが曖昧に思えてきます。

では、どう違いがあるかというと、セパレートタイプのキッチンは水仕事と加熱仕事のスペースを分けることをセパレートタイプのキッチンと呼んでいます。

作業スペースを水、加熱と各々で広く採れるので、L型やコの字型よりももう少し料理に複数人で時間をかけて使いたい、という場合はこの形にされることが多かったりします。

また、レイアウトを考える上で大切なことのひとつに、動線があります。

帰宅してから食材を置いて冷蔵庫にしまう、しまった食材の中から使うものを水のそばに置く、水仕事を終えたら加熱スペースへと向かう。といった一連の流れがお部屋の間取りによっては、その食材を置いたり、作業をしたりするスペースの取り方がI型よりもセパレートタイプのほうが効率良く動ける場合が多かったりします。

そして、一人で使う上ではそれほど大きく気にならないかもしれませんが、複数の人たちでキッチンを使う上でとても大切だと思っていることがあります。

これは個人的な思いも強いのですが、複数でキッチンを使う場合は、I型もセパレートタイプもできれば、ワークスペースが通路のようになっていると良いと思っているのです。

ちょっと分かりづらいのですが、【行き止まりになるよりは通り抜けられる形がとても使いやすい】と考えております。

たとえば、一般的に加熱機器が置かれるのは壁際になることが多いです。

その手前で水仕事をしている人が居る時に、加熱仕事が終わって、ダイニングに向かおうとするときに水仕事をしている人の後ろを通るよりも別の通路があれば、そちらを通ってゆくと動線が重ならないので使いやすいと思うのです。さらにはバックカウンターでレンジを使って解凍している人が居たり、配膳の準備をする人が居たりすると、なおのこと別の通路があると便利です。

となると、つまるところは、アイランドタイプが使いやすいのではないかと感じているのです。

ただ、完全なアイランドになると、コンロ際に油や匂いを防ぐ壁がほしかったり、大きな空間がないとかえってアイランドはダイニングやリビングのスペースを圧迫することもあるので、完全なアイランドキッチンでなくても、ペニンシュラキッチンの突きあたりが玄関になってたり、廊下になっていたりして、戸を開けるともう一つの動線がうまれて回遊できるようになっているととても良いと考えているのです。もちろんその戸は片手で開けたままにしておきやすい【引戸】だとなお良いと思うのです。

ですので、私が皆さんのお話を伺いながらレイアウト考える時は、キッチンを使う人数や玄関からキッチンへの動線、勝手口があるか、回遊できるかなどご新居の間取りと皆さんの家族構成などを伺いながら、どの形が良いのかを提案させて頂いております。

あと一つ忘れておりました。パントリーがとても重要だということ。

それはまた今度お話しますね。

そして、もうひとつ面白いこと。私でも読めないのは、「キッチンが新しくなったら、主人が料理を始めるようになっちゃって、私の場所が狭くなってしまいました。(笑)」とうれしそうにお話しされていた方もいらっしゃったので、気持ちの移り変わりまでは、なかなか読めないのです。

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