引き出しの高さについて思うこと

2022.10.04

最近キッチンの作り方を考えていて思うことに引き出しの深さのことがあります。

ひと昔前までのキッチンには引き出しというものが少なかったですね。
私が数年前まで住んでいたマンションは、今年で築20年になるはずでして、新築当時から入居してそこで子供たちが生まれて一番自分たちにとって大きな変化のある時代を過ごしたなと思い返すのですが、そこに導入されていたシステムキッチンはシンクの下は大きな観音開きの扉でしたね。その観音開きの扉の隣も片開きの扉があって、扉3枚を開けると中が全部つながっているものですからなかなか不便な使い心地で、私たちもまだオーダーキッチンを始める前のことで、初めてもまだ自分のノウハウが浅かったりしたものですから、アキコが市販のラックなどを活用してだいぶ工夫して使っていましたね。
その扉3枚は中がつながっているものですので、1枚の扉は束のような細い帆立に丁番がついているものですので、扉の開け閉めを繰り返しているうちに帆立がグラついてきて、扉がきちんと閉まらなかったりする。
お客様の家でもそういうことを時々見かけたもののですので、こういう点が改善できたらよいのになあ、と思っていたら引き出しが主役の時代になってしまって扉はあまり見かけなくなりました。

ただ、引出しも当時はまだローラータイプのものが主流で、引き出しても奥まで引っ張り出せないものが多く、使い心地もイマイチに感じられました。
お鍋など重いものを入れようなら、その重さがダイレクトに引き出す時の重さになるので、まるでパワーステアリングのない車のハンドルを動かすような気持だったような気がします。
それから次第に小さなスチールの球がたくさんついたベアリング式の引き出しの側面につけるスライドレールが主流になって、そのあとにアンダーマウント式(引き出しの底面につけるタイプ)でソフトクローズするレールが最近では一般的になってきました。
ここレールは動きが軽くて重いものを入れてもレールの動きに影響が少ないので、今ではどのメーカーさんも主にこのレールを使っているのではないでしょうか。

このアンダーマウント式ではないソフトクローズレールというものあるのですが、これが私が思うになかなかクセモノで、引きが重いのです。
このお話はまたどこか機会がある時にお話しできればと思います。

そして最近よく思うことが、引き出しの深さについてなのですが、システムキッチンの各メーカーさんは引き出しの段数が少なく見えるような作りのものが多いように感じられます。
その大きな引き出しを開けるとさらに内側に別の引き出しが入っているような感じです。
システムキッチンメーカーさんだけではなくオーダーキッチンメーカーさんのキッチンでも、段数を少なくする傾向がみられるように思えて、ガスコンロのグリルの高さに引き出しの前板の高さを揃えるようなデザインが多かったりします。

それらの形は見た印象としてとてもきれいなのですが、私が勉強不足なのでしょうけれどそれ以外のメリットがないように思えてしまって、私としてはかさばる調理道具などを入れるところや背の高いびん類やラップなどを立ててしまう場合を除いては、引出しを4段くらいにするほうが使いやすいのではないかと思ってしまうのです。
キッチンの引き出しは大きな調理道具でかさばることがあるので、3段にするほうがかえって使いやすい場合もあるのですが、そのキッチンに合わせて向かい側に食器棚を作ろうとするときに、その引き出しの段数まで3段になっているものを見ることもあるのですが、そうなると1段が結構深くなってしまうことが多いです。
不必要に深い引き出しだと、積み重ねて収納してしまう可能性があります。
調理道具や食器などキッチン周りのものって意外と背が高いように見えても低かったりして、お椀を2~3個重ねたり(*)しても、お皿を4~5枚重ねても、高さはそれほどなく、一般的なパスタパンや2~3段積みのセイロなどの高さを測っても30センチもなかったりします。

*引き出しにしまう場合は前述のソフトクローズレールを使う場合は、閉まる手前でブレーキがかかるので、引き出しが閉まる速度が落ちます。
そうなるとお椀などをたくさん積み重ねるとグラつくので、重ねても2~3個がちょうど良さそうです。
それと余談ですが、ブレーキがかかるので、引き出しの底板がツルっとしていると、食器が滑って、お互いぶつかってしまうこともありますので、すべり止めシートを敷いて使ってくださっている皆さんが多いです。

お皿もたくさん重ねちゃうとせっかく引出しにして取り出しやすくしたのに、重ねたお皿に一番下のものを使いたい時はそのお皿一式をカウンターの上に取り出してから一番下のお皿を取るという動作になってしまって、それがちょっと億劫に感じるという意見を聞いたこともあります。
そう考えると、高さ85センチのキッチンや食器棚の場合は、あまり重ねないで使えるように浅めの引き出しにして4段~5段くらいのほうが使いやすいのではないかと私は思ったりするのです。
ただ、それだと見た目の印象がちぐはぐになってしまうのでしょうか。と質問されることがあるのですが、私自身の好みとしてはそう思うことは少なくて、使いやすい高さに考えられた形のほうが美しい思えております。

我が家のキッチンはというと、高さを90センチにしていまして、ガスコンロと引き出しの高さは揃えておらず、引き出しの段数は4段にしております。
それにあわせて食器棚の引き出しも同じく4段にしたのですが、こうしてよくよく入っている食器を見てみると、これ以上食器を積み重ねてしまうと、「あの食器はどこいったろう。」となりやすいので、このくらいの積み上げ具合で使っております。
そう考えると、5段にしても良かったかもしれないなあ,なんて3年経って今さら思ったりするのでした。

このあたりの見た目と使いやすさの感覚は、人それぞれの好みだと思います。
深さと段数というのはキッチンを毎日使う上でかなり重要な部分だと思いますので、ストレスなく使える最適な形というのは日々の暮らしかたの中で見つかるものですから、毎日どんなふうに物を出し入れして、家族みんながどう使っているかを少し見つめてみると自分にとって使いやすい深さや段数が見えてくるのではないかと思うのです。

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