ナラの食器棚

2024.02.21

前回Mさんの家具の相談をくださったeomoさんからあたらめてお声掛け頂いて作らせてもらった今回のナラの食器棚。

マンションに作る食器棚ということで、ゴミ箱スペースを確保することが大きな目的だったのですが、今回はHさんの希望で「そのゴミ箱をできれば隠したいのです。」ということなのでした。

そうなるとよく採用する形としては、引き出しにゴミ箱をしまう形にすることが多いですね。「ワゴンのようなものを作ることはできますか。」と相談されることは多いのですが、今までの経験上、今ではあまりワゴンタイプの形はお勧めしていません。なぜかというと、木でワゴンを作ると重くなることが多く、さらにゴミが入るとけっこうな重量になってしまうことが多いのです。そうなるとけっこう頻繁に開け閉めするだろうと考えられるので、その毎日の動作が不便に感じるのではないかと思うのです。

それと、ある程度閉まった時にピシッと見せたい、となると「ワゴンを収納するスペースぴったりに作る」とまではいきませんが、あまりワゴン自体を小さくしないで作ることが多いのですが、ワゴンって引き出す時は良くても、しまう時にキャスターがクルクル動くので、角をぶつけやすかったりします。あまり逃げないでピッタリめの寸法で作ると、しまうたびに気を使わないといけなくて、以前にはベビーガードのようなものをつけて工夫して使ってくださるお客様もいらっしゃいましたが、本末転倒な気がして申し訳なくなってしまいまして。

ただ、「それでもワゴンが良いのです。」という場合は、前輪は自在車、後輪は固定車にして振れづらいようにしたりしていましたね。

また、キャスターも黒いゴムのキャスターはタイヤ痕が残ったりするので、ウレタン車のキャスターを使うのですが、弾性があるからか、動きが重く感じることがありました。

それに、そもそもゴミ箱をワゴンのようにどこまでもガラガラと引き出すのだろうか・・、と思う部分もあり、そのあたりをいつもお客様にお伝えしていて、そういう諸々を考えるとワゴンじゃなくて普通の引き出しにゴミ箱を入れる形で良いのではないか、というお話になることが多いのです。

ここからが今回の本題です。

そうなると、引き出しにしてしまおうとなることが多いのですが、ゴミを捨てる手は汚れていることが多かったりします。ですので引き出しには触らずに引き出しを開けたい、というわがままな考えが頭をよぎります。

それなら押して開ける引き出しが良いのではというお話に進んでいくことが多いのですが、最近、スガツネの担当者さんがタイミングよくちょっと前にいらしてくださって、熱心に教えてくれた金物に「プッシュオープンソフトクローズレール」というものがありました。なんてわがままな!

と思いつつも、今回Hさんに提案させて頂きました。

押すと引き出しが開いて、閉める時はゆっくり閉まるという矛盾した動きをするレールなのです。

以前には、「glamorous」のMさんのキッチンでMさん自身で個人輸入してきたブルムの電動式のそのレールを使ったことがありましたが、今どきのものは電源要らずでできるのです。すごいね。

現在は、各社趣向を凝らしたプッシュオープンソフトクローズが出ているようなのですが、スガツネの売りは何だったっけな、ちょっと忘れてしまったのですが、「総合的にみると動きが軽い」のでした。

そこで、私たちも今回初めて採用しましたので「もし、使いにくかったら交換しますので。」というお話をして使わせて頂くことにしました。

引き出し自体が軽いためと、食器棚自体の奥行もキッチンほど深くないのでレールが短いために、多少動きが大雑把に感じるのですが、ゴミ箱が入って重さが安定してくるともう少し落ち着いた動きになりそうです。レール自体の動きも滑らか。ただ、引き出しがこの低い位置だと初動は手で行なうにはちょっとやりにくいかな。お行儀悪いですが、膝でポンと押すと軽く出てきて、閉める時も膝や腿で押すとよい具合にしまっていく。

この先どのような感じで使えていくのかHさんのご意見も頂きながら、こういう機能金物を柔軟に取り入れていくことになるのかな。とても良い勉強になった1台でした。