あかるいお部屋
「カバザクラのリビングボード」
大磯 M様
design:ecomoさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:iku nogami/daisuke hirose
painting:iku nogami/daisuke hirose
藤沢の設計事務所ecomoのKさんから久しぶりにご連絡を頂きました。
Kさんからのご相談というと前回は建具の引手だけを作ってほしいと頼まれたことが最初のお付き合いの始まりでした。
そのあとに、「無骨だけれど、暮らしは愛らしく」のFさんの施工会社がecomoさんだったこともありましたし、つい最近では、寒川のOさんに依頼された吊戸棚もecomoさんが建築された家だったりと、何かとご縁がつながっているのだなあとうれしくなります。
そのKさんから頂いたご相談は、大磯のMさんのリビングボードの制作。
メールと写真が送られてきまして、これからリノベーションを行なうのだそうで、そのお話の中でオーダー家具で壁面にリビングボードを作りつけたい、というお話が出たのだそうです。
Kさんから頂いたイメージをもう少し具体的な形にして提案させて頂くと予算的に厳しい部分がありながらもご依頼頂けるということでさっそくより細かい部分について打ち合わせを行なうことになりました。
一度こちらまでいらして頂いて、私たちの作る形をいろいろと見て頂いた後にMさんのご自宅で実際の納まりや設置場所の採寸を行なうためにお伺いしました。
最初に頂いていた写真の印象からは戸建て住宅のように思えたのですが、場所は大磯の海のそばの集合住宅で、過去に一度リフォームを行こなっているということで、特徴的な壁紙の色など個性的な室内の印象になっていたのでした。
この日は採寸だけと思っていたのですが、室内を拝見させて頂いてお話をお聞きすると、かMさん、機能的にどう使っていったらよいかをこのリビングボードの場所以外にも悩んでいらしたようで、Kさんと一緒にどういうふうに解決できるかその場であれこれ相談することに。
どんなことかというと、元々室内の建具などは明るめ(カバザクラのような色)だったそうですが、前回のリフォームの時にもっと落ち着いた感じにしましょう、となったのかこげ茶色に変えたらしいのですね。
そして、建具だけではなくて建具枠もダイノックシートでこげ茶色に覆われていて。
これを明るく戻したいのです、という話になりまして、リビングボードはアルダー材とカバ材を使ってその印象にすることはできそうなのでしたが、新しい家具だけが明るくなっても印象がまとまるのかが何とも言えないということになったのでした。
このリビングボードと一緒にキッチンの家電やゴミ箱を収納するシンプルな棚も頼まれていて、この2台だけ明るくすれば印象は整うだろうか・・、と迷うところでした。
うーん、と思いながら室内を見まわしていて思いついたのは、「それならこの対面カウンターの下の収納もリビングボードと印象を合わせてはどうでしょうか。」と提案させて頂いたのでした。
「えっ、そういうこともできるのですか。」とMさん。
この前、別のお客様にも、「オーダーでできるといってもできることに結構制限があるものだと思っていました。」と言われたことがありました。
そのお客様は、私たちのところに相談に来られる前に立ち寄った家具屋さんでは、「制約が多くてまるで自分たちの思いが伝わらなかったのです。」とおっしゃっていて、私たちでの打ち合わせが終わった後は「とても楽しかったです。」と言ってくださったのでした。
Mさんのところでも状況を拝見させて頂いて、「もちろんできないこともありますが、こういうことでしたら全然問題なくできます。」とお伝えしたのです。
どのように印象を合わせるのかというと、カバ材で扉とサイドパネルを新しく取り付けて、このオープン棚を囲ってしまおうという考えでした。
それなら大掛かりになることなく、印象を変えることができます。
そういう提案をきっかけにそれならは暗くなってしまった玄関も明るくしたい、というお話になりまして、玄関収納はそっくり取り外せなかったので、同じく囲う形で印象を変えましょう、というお話になったのでした。
そして、さっそく採寸。
今回のeocmoさんではなく、最初にリフォームしてくださった業者さんの仕上がりがあまりよくなかったようで、床も傾いていたり、さらには(もともとついていた?)対面カウンターも手前の丸みがついている部分がかなり垂れ下がってしまっていて、このオープン棚が対面カウンターを支えているのかと思ったら、上は隙間が開いているし、ほかにも不要なところに隙間ができていたりと、囲うだけではなく、その修正がなかなか手間が掛かりそうなことが分かりました。
玄関収納も最初からついていた玄関収納にダイノックシートを張ってしまっていたので、それをうまく隠せるようにパズルを組み立てるように採寸していきました。
工房で家具を作ってその場所に納める形でしたら、工房内で加工を終わらせることができるので仕事は進めやすいのですが、現場の状況に合わせて扉や天板などを作っていくというのは、きちんと採寸して想定していても思いがけない加工が必要になったりすることもあって結構ドキドキするのです。
そして、いよいよ制作開始となりました。
今回のリフォームは、時期がマンションの大規模修繕と重なってしまうようでして、私たちの家具などの工事をその修繕よりも先に終わらせて、修繕後に内装工事の残りを仕上げるという2回に分けた形になるそうで、段取りよくやらないといけません。
制作の担当はヒロセ君。
ヒロセ君は自分の考えでいろいろな作り方や納まりを考えることが好きなので、リビングボードは順調に制作が進みましたが、現場合わせになるカウンター下収納や玄関収納は彼なりに現場でどうやったら進めやすいかをあれこれ相談してくれて、これなら安心だという思いで進めていったのでした。
そして、いよいよ設置工事当日。
やはり予定通りに進めることが難しい部分があったり、隙間を調整する部分が予想よりも時間が掛かったりして大変な部分はありましたが、きれいに納めることができたのでした。
Mさんにも、「まだまだ使い方は試行錯誤で、イマイさんにこの使い方で合っているのか確認してもらいたくて。でもリビングの印象がまとまって見えるようになってとてもうれしいです。」と、おっしゃっていただけてひと安心です。
使い方はもうこのままで十分すてきです。
当初カウンター下のオープン棚に入っていて散らかって見えがちだった本は、予定通りに大きなものはリビングに移して、しまえるものはカウンター下収納に入れて、きれいにまとまっていましたし、飾り棚の印象もカップボードの印象もとてもすてきです。
やはり部屋が明るくなったことが一番うれしいことですね。
Mさん、Kさん、ありがとうございました。
カバザクラのリビングボード
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