Sさんの階段下収納を制作して:スタッフヒロセ君の制作日記

2024.03.19

今回はSさんの階段下収納を担当させていただきました。

クルミの無垢材を使用し製作しました。

一般的にクルミ材は表情が豊かな材料で、色味の差が比較的大きく、白太も多いため作り手としては、割り付けにやや悩む事も多い樹種なのですが、その表情には独特の良さがある樹種の一つです。

正面はオープンで棚が入り、階段後ろ側には扉があり、扉を開けると階段下部分が奥行きの深い収納になっています。

その奥行きの深い収納になっているという点がとても難しい点となりました。

階段のケコミ部分のパーツは旗型になり、そこへササラ状のパーツが交差しており大変複雑な形状になっています。

今回の製作では、接着の作業が非常に多く、接着するために必要な締め具にも限りがありますので製作をスムーズに進めるため、材木屋さんに300mm程のハギ板に加工してもらう事になりました。

今回のような形では、作業工程や加工の仕方、ハギ板の切れ目の位置、接着方法など、製作者の考え方によって数多くのやり方があると思います。

今回はいかにスムーズに作業を進めていけるか、という事に重点を置き工程を考えました。

スムーズに進められる、という事は、難しい加工や、手のかかる作業を極力選択せずに済みます。(その分細かくシビアになる部分も出ましたが…。)

複雑で難しく考えてしまうものでも、決まりきった考え方だけではなく、色々な角度から考え、今回はシンプルな発想で作った方が結果としてキレイで正確に仕上げる事ができると考えました。

文章では中々お伝えする事が難しいのですが、接ぎ方や接ぎ位置を合わせる事により、後にやる作業を加工しやすい状態の時に加工したりと、そのような点に重点を置き製作しました。

終盤に近づく程、接着作業が困難になっていきます。

接着作業とは木材にボンドを塗り、ラメロチップをいれ(今回はラメロを使用しました。)あて木をし、締め具で締め、ボンドが乾燥するまで材料同時密着させ圧着しておく作業になります。

当然締め具で締めたところは密着するのですが、この様な形状や条件ですと、締め具で締められない箇所が多く非常に難しい作業になります。両端は締められるのですがどうしても真ん中を圧着させる事ができないのです。

そこで今回はクランプを2段使いしてみたらどうだろうかと考え、試してみたところしっかりと密着させる事ができたのでこの方法で圧着させる事にしました。

他には、正面から見た時に、踏み板部分の小口が出てしまう点が少し気になり、社長と相談をして見た目の統一感を出すため踏み板小口面には薄い無垢を接着したところもポイントになっていると思います。

今回の製作では想定外の状態になる事もなく予定通り作業は進みましたが、今回私が選択した工程や作業方法よりもっと良い方法はあると思います。今回の経験を活かし、また次に繋げていければと思います。

Sさんありごとうございました。