一歩ずつのぼる

「テレビボードのオーダー」

大船 S様

design:Sさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:number 8 furniture
painting:tsuyoshi kawaguchi

ウォールナットの格子のテレビボード

全体の様子。本当は、鏡も取り払いたかったのだそうですが、そこまで改装すると、」費用がかかるということで、当面はこのままにすることに。

Sさんからお問い合わせ頂いたのは、もうすぐ冬がやってこようとしている頃でした。
「こんにちは。
今月末に入居する予定のマンションのリビングに、TVボードとローチェストのような家具を作って頂きたく思っております。
一度そちらにお打ち合わせに伺いたいのですが、16日(土)の午後はいかがでしょうか? ご都合がつくのならお願いします。」
お問い合わせのメールに書かれていた住所をみますと、ちょっと懐かしいマンションの名前がありました。以前、家具を作らせて頂いた大船のMさんと同じ、あの大きなマンションにお住まいの方でした。
懐かしいなあ。あの頃からかな、家具を作ることがどういうことかって、はっきりと覚悟を決めたのは・・。

ウォールナットの格子のテレビボード

リビング側の収納部分と、テレビボード部分で高さをこのくらい変えております。

さっそく、Sさんがいらしてくださって、いろいろとお話を聞かせてくださいました。
Sさんの考えている形は、あまり複雑なものではなく、なるべくシンプルな形が壁ピッタリに納まると言うのが理想でした。そこで、まずはSさんから頂いたスケッチを元にこちらでプランを作りお送りさせて頂き、その形で作らせて頂くことが決まりました。
それでは、採寸です。
これから越されると言うお部屋は、まだリフォーム中と言うことでしたので、工事が終わりましてから、採寸にお伺いすることになりました。

ウォールナットの格子のテレビボード

この長さのウォールナットの材を探すのが少し苦労したのです。探すのだけではなく、搬入もでしたが・・。

形はシンプルでも、素材はウォールナットが好きだと言うことで、採寸にお伺いした時にいろいろと見せて頂いたのですが、食器棚もウォールナットのものをお持ちで、ダイニングテーブルも以前に家具屋さんでオーダーしたと言う耳付きのとても良い柄の板でできたものでした。
「イマイさん。今回はこの部屋のテーマを自分なりに決めているんです。このダイニングテーブルが気に入っていて、それで家具はこのテーブルの素材に合わせて、全体的に濃い色でまとめようと思っているんですよ。」と嬉しそうに話してくださいます。聞くと、このダイニングテーブルを買った家具屋さんでSさんと打合せをして下さった担当の方は、私も知っている方でした。「こういうのは縁なのでしょうかね。」なんだか嬉しくなります。

ウォールナットの格子のテレビボード

リビング側の収納部分。置き家具なので、壁いっぱいに作るのではなく、少し余裕を見たのですが、実際に設置してみると パイプスペースの点検口に触れるくらいぴったりに納まりました。

そのような感じで、順調に形は決まり、家具の製作も進んだのですが、一つだけ不安な点がありました。それは、搬入です。
今回は設計上、テレビボードとリビングボードが一つにつながったプランになっているのですが、テレビボード部分は、テレビを載せた時にあまり背が高くならないように高さを抑えて、さらに使い勝手を考えて、幅を2000mmと決めました。このビングダイニングの幅は約5000mmあります。とすると、残りの3000mmほどがリビングボードになります。収納部分はある程度分割して製作するので問題ないのですが、天板は、その家具の顔でもありますし、なるべくなら長さ方向につなぐことなく3000mmの長さ1枚で作りたいところなのでした。
エレベーターに乗るかな・・、これが一番の心配でした。あの時エレベーターをしっかり計っておくのだったなあ。

格子の印象。

Sさんが配慮してくださって、取付に伺う前に、管理人さんと一緒にエレベーターを計ってくださいました。「イマイさん、もしかしたら入るかもしれませんよ。」
ちょっと喜びますが、通常の大きさのエレベーターだと、板ものが最長で2800mmしか入らないことは以前から分かっていたので、うーん、あのエレベーターは普通の大きさだったような、そうじゃなかったような・・。相変わらず、心配なままなのでした。

ウォールナットの格子のテレビボード

テレビボードの収納部分の様子。格子扉の裏には、アクリルを入れています。

で、どうだったかと言いますと、やはり入らなかったのでした。と言うか、管理人さんに、「もしかしたら無理すれば入るかもしれないのですが、やっぱり無理するとエレベーターも家具も傷になっちゃうといけないので、階段からにしていただけると大変うれしいのですが・・。」と言われてしまったので、「はい、もちろんです。」と言うことで階段で決定です。
長さ3000mmの幅450mmの厚み27mmのウォールナットの無垢の天板と言うのは、けっこう重いのです。これをマンションの最上階の15階まで、河口君とフゥフゥ言いながらどうにか運び込みまして、もうこれを運び終わっただけで、仕事が終わったような気分です。
実際、そこからの取付作業はトントンと順調に進んで、あっさりと終わって、ホッとひと安心。Sさんにも喜んで頂けて、ようやくひと心地つきました。

「夜分にすいません。Sです。
今日は家具の設置、お疲れさまでした。そしてありがとうございました。中古で購入した我が家ですが、新築のような香りがして、なかなかいいものです。
何度も何度も眺めては、ニヤニヤしてしまい、少し気持ち悪い人みたいです。
本当にお願いして良かったです。
それから、以前より気になっていた箇所も手を加えていただき、すっきりしました。素人ではどうすることもできないので、有難いです。では、お疲れが残りませんように。とりあえずは御礼まで。」

ウォールナットの格子扉のテレビボード

価格:690,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は25,000円から、取付施工費は45,000円から)

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