
町の距離、心の距離
「ナラ板目突板とステンレスバイブレーションのセパレートキッチン」
大和 N様
design:Nさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kenta masakane murakami
painting:iku nogami

私は娘たちと仲が良いのか自分でもよく分からない。
年頃になってきたせいか、積極的に親子の会話をするわけでもないし、私は子供たちがまだ起きる前に出ていくし、帰ってくるとすでに自室に戻ってしまっているか寝ている時も多い。
おのずと何をきっかけに話したらよいのかだんだん分からなくなってくるし、アキコ伝手に彼女たちの日常のことを聞いているとそれで十分に思えて、いまさら私に同じ話を聞かせてくれと言うのもむさくるしい。
そうなると会話は、「うん。」とか「そう。」とか「いや。」とか「そうだね。」だけになっちゃう。
ハルはまだ何となくオープンな性格なので会話が成り立つのだけれど、チィのほうはなかなか自分の表現してくれないのでさっぱり分からない。
私はこの家に居なくても良いんじゃないかしら。
まあいいんだけれどね。
Nさんはクマのようにおおらかなお父さん。
打ち合わせの時も、家族みんなでオイル塗装をする時も、こうして写真を撮らせてお邪魔させて頂いた時でも終始おおらかな様子で、二人のお嬢さんは(こういう言い方をすると失礼かもしれませんが)大きなぬいぐるみに抱きつくようにお父さんに抱きかかえられていた。
今から6年も前の話なので、わが娘たちが抱きついてくるほど幼くなかったのですが、こうして無邪気に愛情を表現してくれる存在が居るっていいなあ、なんて写真を撮らせていただきながら思っていたのですよ。
その暮らしの様子もご家族皆さんそのままを表現しているようでそこかしこが温かな様子で、ああ、暖かいなあと素直にそんなことを思っていたのでした。

ご新居の設計はマドリヤアーキテクツさんとNさんからのメールに書かれていて、へぇ、不思議な偶然があるものだなあと思ったのでした。
ちょうどその少し前に町田のKさんからキッチンのご相談を頂いた時にマドリヤさんの名前をお聞きしたばかりでした。
ネットやインスタグラムなどでよくお見かけしていた設計事務所さんでそのような会社さんと一緒に仕事ができるのは当時はとても楽しみでした。
今でこそこうして定期的にオーダーキッチンやオーダー家具のご相談でお声掛け頂けるようなお付き合いができるようになったのですが、そのきっかけはそのKさんや今回のNさんに作って頂いたような感じです。
たいへんありがたいのでした。
Nさんのキッチンはコンパクトでレイアウトもセパレートではありますがとてもシンプルで、私たちが良く取り入れるデザインをとても気に入ってくださっていたので、形はスムーズに決まっていき、マドリヤさんとの納まりの打ち合わせも問題なく進んでいきました。
形がまとまってしばらくしたタイミングで、現場にお邪魔させて頂きました。
このNさんが暮らしていくことを選んだ町は大和市の高座渋谷という町。
この町は私の故郷でもあったりします。
私が高校生の半ば頃までは横浜のはずれのいちょう団地という巨大な団地群の中に住んでおりました。
堺川という川を境に大和市になるのですが、大和市側にもいちょう団地があって、そこにはマッチ(近藤真彦氏)が住んでいると小学生の時に噂になって、やれあっちでマッチを見た、こっちではあばれはっちゃく(当時流行っていたドラマです)の彼女を見た(近所に住んでいたのだそうです)なんて子供たちでワイワイ賑わっているマンモス団地でした。
ちなみに私は有名人と言われている人たちを見かける機会がとても少なくて、アキコと二人で歩いていた時も、「あっ、今ドラマで時々見かける○○さんとすれ違ったよね。」なんて言われることが何度かあったのですが、あまり周りを見ていないだろう私はやっぱり気が付かないのです。
今は多国籍団地として有名な場所になってしまいましたが、その最寄り駅がこの高座渋谷駅だったのです。
高校生の頃はこの駅のそばの焼肉屋さんでずっとアルバイトをしておりまして、バイトが終わると近くの貸本屋・貸CD屋に出掛けたり、ちょっと離れたレコードショップに出掛けて、当時掛かっていたエニグマのCDが欲しくて店員さんの前で歌ったら、見事にCDを持ってきてくれたり、近所のコンビニエンスストアで日付が変わるまで無駄に思えるような時間を過ごしていたりしたっけ。でもあのコンビニに通っていたおかげで、チィコさんというシャムの血が入ったようなベージュのネコに出会うことができて、私のネコ生活が始まったのだから、きっと良い時間だったのでしょう。
なんだかんだと温かみのある時間だったかな。
今はそういうゴチャゴチャした町の面影はまったくなくなってしまって、あの狭かった道は快適に広くなって、どこか淋しかった駅前も広々としたロータリーができて清潔感が生まれていて、近くには小さな子供たちが安全に遊べる大きな公園もできていたりして。
Nさんの打ち合わせで久しぶりにこの駅の間近を通った時はその面影のなさに懐かしさなんて感じなかったことが淋しくもあり、明るい町が見られてうれしくもあり、なんだか不思議なところに来てしまったなあという感じがしたものでした。
そして、街道を歩いているとそのなんだかぐるぐると不思議な気持ちの為か、まわりはこうして健やかに変わっているのに自分だけどこか何かに乗り遅れているように感じることがあって、そういう気持ちが子供たちとの時間をギクシャク感じてしまう原因なのかもしれないなあなんて物思いにふけりながら自分と故郷を俯瞰したのでした。
家族と向き合うのはもちろん、自分自身にもきちんと向き合っていないのかもしれないなあ。
ギクシャク感じるのではなく、私が周りをギクシャクさせてしまっているのかもしれない。
結局何にしても背中を押してくれるのは自分なのだからね。
かつて過ごした街は私をそういう気持ちにさせてくれたのでした。
そう、Nさんとのお仕事はそういうささやかなエールとサウダージを頂いた気がしたのでした。
と、キッチンのお話がどこかに行ってしまいましたが、キッチンはご家族皆さんで塗装してくださったのですが、とてもきれいに塗られていて、(いつか時間ができたら内側も塗ると良いですよ(笑))、そしてみんなで楽しそうにとても快適に使ってくださっていて、そういう場所を提供できたことはやはり自分としてもうれしいです。
Nさんご家族の笑顔が私を元気にしてくれました。
| 天板 | ステンレスバイブレーション |
|---|---|
| 前板・扉 | ナラ板目突板 |
| 本体外側 | ナラ板目突板 |
| 本体内側 | ポリエステル化粧板 |
| 塗装 | オイルノーマルクリア塗装仕上げ |
ナラ板目突板とステンレスバイブレーションのセパレートキッチン
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