古き良きを愛でる

「セラミック「ネオリス」とポストフォームのセパレートキッチン」

渋谷 Y様

design:Souq Designさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hideaki kawakami

セラミック「ネオリス」とメラミンとステンレスを使ったセパレートキッチン
Yさんがキッチンを使っている様子を撮らせて頂きました。ご主人はお仕事でいらっしゃらなかったのですが、お二人でキッチンに立つ時の距離も間隔も最適とのこと。その距離はなるべく広く取れるように940ミリにしています。このキッチンのスペースがかなりコンパクトな空間なので、これ以上広げるとアイランドカウンターで食事を採る時に通路に出っ張ってしまうため、この距離感にしています。940ミリあれば大人二人が作業するには十分な広さですね。また、アイランドカウンターの奥行は900ミリでシンクの奥行は500ミリとなっていて、食事ができるスペースの奥行は320ミリほどお子さん二人と奥様が座るとしたら一人当たりA3用紙1枚ちょっとのスペースかもしれませんが、快適に使えているとのことでした。

Souq designのYさんからオーダーキッチンのご相談を頂いたのはいつだったでしょうか。
大きな幹線道路から一つ中に入ると、なんとも静かで古い住宅や集合住宅が並ぶ街路が表れます。
片側4車線の道路がすぐ裏手に走っているとは思えないほど静かな通りです。

キッチンを作らせて頂いた当時で築52年が経つというその集合住宅は、この時代の建物特有に凸凹とした外壁(何と呼ぶのかな)とバルコニーの細い手摺が特徴的な時代の勢いを感じさせる欧風な佇まいで、調和がとれるように増築されたであろうオートロックのエントランスやエレベーターの様子もさりげなくて心地良いのでした。

水切り棚と洗剤ポケットのあるステンレスシンク
シンクは洗うスペースが650ミリ×400ミリと少しコンパクトなサイズ。洗い物は食洗機をフル活用しているので、シンクを小さくする代わりに作業スペースや食事ができるスペースを広く確保しています。シンクの一部にリブをつけて、そこに水切りプレートが置けるようにして、水切りカゴはなるべく置かないようにしました。また洗剤ポケットも備えて、ボトルがワークトップからなるべく出っ張らないようにして、さらに水栓器具はセラミックカウンターに直接取り付けるのではなく、セラミックの6ミリの厚みだけ下がったステンレスのデッキにつけることで水栓の首元に垂れる水が広がらないようなデザインにしています。
セラミックカウンター「ネオリス」のワークトップとサイドパネル
今回初めて採用したセラミックストーン「ネオリス」。その厚みはYさんの提案で6ミリ材を使用しています。そして、天板と両側面のパネルは45ミリの厚みに見えるように6ミリ材を貼り包んで仕上げています。面取りはC1ミリで仕上げているのですが、石材の厚みが薄いからかエッジがシャープに仕上がっている印象を受けまして、とても引き締まった全体像となりました。

家を建てたり家を購入するための費用は年々上がっていて、結婚して新築を建てるという考えを持つことが少し難しくなっている状況ですからリノベーションという住まいのあり方はこの先も今以上に増えていくと思われます。
Yさんとしては、その暮らしかたを自身で体現していくことで、良い部分も悪い部分も住まいを考えている皆さんに伝えられるという思いもあって、この場所で暮らしていくことを決めたのだそうです。
たしかに目の前に良いものがあるのならばそれを活かしつつ自分たちが心地よく住むことができる環境は想像しやすく作りやすいと思います。
古き良きを愛でるという考え方がこういう形でもっと当たり前のように広がっていくのは楽しいではないですか。

シンク側キッチンの引き出しの様子
シンク左隣の上段の引き出しの様子。
シンク側キッチンの引き出しの様子
シンク左隣の中段の引き出しの様子。
シンク側キッチンの引き出しの様子
シンク左隣の下段の引き出しの様子。

しかしYさんから頂いたご要望は、楽しいだけではなくなかなか難しそうなリクエストもあり、全体的には今まで私たちが作ってきたキッチンの印象とは少し変わった仕上げを施していく形でしたので、それがこの場所にどう表現されるのか、楽しみがありながらも未知の形に緊張していたのでした。

さて、そういう経緯がありながらこうしてこの場所までやってきました。

シンク下のゴミ箱スペースとパイプ棚
シンク下はゴミ箱スペース。通常、海外製の食洗機を導入する場合はこのスペースは奥に食洗機の給排水管が横並びになるため、比較的広めに確保するようにしています。今回は、アイランドカウンター自体の幅がコンパクトなので、左側の引き出しをなるべく広く確保できるようにと、設備屋さんが施工しやすいギリギリの幅(850ミリ)で作っています。これ以上狭くすることもできますが、浄水器のカートリッジがあったり、センサー式水栓だったりすると、かなり奥が混雑してくるので、この寸法だと狭くなってしまうかもしれません。またゴミ箱の上も有効活用できるように2本のステンレスパイプを並べています。
ASKOの食洗機
食洗機はASKOのオールドアタイプ「DFI645」を採用しています。
シンク側アイランドカウンターのバックパネルはオーク材仕上げ
写真だと分かりづらいのですが、Yさんの希望で、このカウンターとなっている部分の奥のバックパネルだけホワイトオーク板目材を使っています。「イマイさんが作られるたくさんのオーダーキッチンのようにあまりたくさん木の使えないので、イマイさんとしては淋しいかもしれませんが。」とYさん。「でも一部だけは木目の優しい表情を入れたいのです。」ということでこの部分にはホワイトオイルで導管に白みが残るように仕上げたホワイトオークを使って全体の印象と合うように整えたのでした。

ここにやってくるまでにはYさんには私たちのショールームまでいらして頂いてイメージを共有できたりと、ある程度Yさんのテイストは理解してきたつもりでしたが、何しろ初めての納まりや初めて使う素材もあったりして、特に厚み45ミリで仕上げるパネルや天板がきちんと搬入できるのかが一番心配だったりしまして、実際に現場で打ち合わせしないことには気持ちが納まらないものですから、こうしてすべてが終わった今だからこそ、振り返ってみるとあらためて物静かな良い立地だなあと思えるのでして、当時はそこまで気を配る余裕もなかったものでした。
そして、60平米よりもコンパクトな空間になかなか大きなアイランドカウンターが入るということでしたので、現場との関わりもうまく段取りしておきたいところです。

ということでこうしてやってきたわけですが、今回初めてお付き合いするのだというリノベーションを担当された施工会社さんとの足並みがYさんと揃わずに施工会社さんのルーズさが現場に反映されてしまっていて、キッチンを現場に納品できるのはしばらく先になってしまいそうな状況。
あらあら。
現場内は足の踏み場もないような散らかった状況で、監督さん(社長さん?)が地に足がついていない感じ。
これはもしかしたら・・と思っていたら、やはり実状はうまく進んでいないようなのでした。

ガスコンロはリンナイのリッセ
コンロ側のキッチンの様子。今回コンロの奥の壁面にもネオリスを張っています。また、ガスコンロはコンロ周りの作業スペースを広く採るという目的でリンナイのリッセの60センチタイプを採用。
ガスコンロの下はスライドワイヤーシェルフ
ガスコンロの下はスライドワイヤーシェルフを3枚入れています。
調味料用の引き出しの上段
コンロ右は壁との離隔距離を採るために細長い引き出しになりますので、上段はこのようなコンパクトな引き出し。
調味料用の引き出しの下段はハーフェレのフレームバスケット
下段はハーフェレのフレームバスケットを採用。

それでも、工期は過ぎていくので、予定よりも3ヶ月くらいかな遅れてようやくキッチンの設置ができるという話を聞いて、その事前に現場を確認しに伺った時も、(うーん、この状況だとまだ少し早いのではないか・・)と思えるタイミングでしたが、私たちが口を出せることではないし、またこのタイミングでYさんは里帰りされていたこともあって、大工さんの作業が真っ最中のごった返した現場でどうにかキッチンの設置を終えたのでした。
あとは傷にならないようにと願いながら養生して、完成を待つばかりになりました。

BP.のステンレスハンドル
引き出しのハンドルにはBP.のステンレス引手を採用。最近はお客様からの指定でこのメーカーさんのハンドルが採用されることが多くなってきました。
コンロ側キッチンの引き出しの様子
コンロ左1段目の引き出しの様子。
コンロ側キッチンの引き出しの様子
コンロ左2段目の引き出しの様子。
コンロ側キッチンの引き出しの様子
コンロ左3段目の引き出しの様子。
コンロ側キッチンの引き出しの様子
コンロ左4段目の引き出しの様子。
コンロ側キッチンの引き出しの様子
さらに左の1段目の引き出しの様子。
コンロ側キッチンの引き出しの様子
さらに左の2段目の引き出しの様子。
コンロ側キッチンの引き出しの様子
さらに左の3段目の引き出しの様子。
コンロ側キッチンの炊飯器用スライドテーブルの様子
一番左は炊飯器スペースで手前に引き出せるスライドテーブルにしています。すぐにアクセスできるようにリビング側からキッチンに入ってすぐのところにこのスペースを設けています。
コンロ側キッチンの引き出しの様子
その下は深めの引き出し。

すると、しばらくしてYさんから連絡がありました。
工事が途中でストップしてしまってしまいにこの段階で契約解除になってしまったのだそうです。
これは大変です。
私たちとしてはどうなるのかを見守るしかないので、そこからしばらくYさんからの連絡を待っておりました。

数か月して、その工務店さんとの清算が済んで、次の良い工務店さんが見つかったという連絡が届きまして、ほっとひと安心。
いろいろと大変な思いをされたそうですが、引き継いだ工務店さんの段取りの良さで順調に進んで無事にお引き渡しが終わったのでした。
キッチンの水道やガスのつなぎも問題なく終わったということで、こうして山岡さんのキッチンは無事に完成したのでした。

「でもこの経験をしたからこそ、今後自分のありたい姿がはっきりとしました。
お客さまにはただただ「リノベーションを楽しむ」ことに集中してもらいたい。」
とYさんはご自身のインスタグラムの中でもこうおっしゃっておりました。

【Souq Designさんのinstagram】
https://www.instagram.com/souq_design/

前向きに取り組むことができる気持ちの良さというか、その仕事に取り組む実直な様子はYさんのインスタグラムの丁寧に描かれている内容を読むとよく分かります。

うんうん、よく分かります。
何かを作り出していくことって喜びなのですよ。こうするとこういうものができあがる、でもこうするとさらにこういう形が実現する、でも、きっとこうにもなってしまう可能性もある。
良いことも良くないことも経験しないと分からないもので、それが自分にとっては良くないと感じることもある人にとっては好みのポイントだったりすることもある。
その発見と考察の繰り返しで、物が生まれていって、その生まれる様子が楽しいのですよ。
オーダー家具やオーダーキッチンのご相談の時も、みなさん「楽しい打ち合わせでした。」というお声を頂くことが多くあります。
その結果が自身の暮らしにぴたりとあてはまることもあれば、そうか、こういうこともあるのか、と省みることもある。
でもそれも自分の暮らしの一つのすてきな軌跡ですから。

楽しい暮らしと素晴らしいお仕事をこれからも頑張ってくださいね。

メラミンポストフォーム扉を使ったグレイジュの吊戸棚
吊戸棚はアイカのカラーフィットメラミンのグレイジュのカラーを採用しています。また吊戸棚の下にはハーフェレのダウンライトを取り付けています。
グレイジュの吊戸棚に格納したレンジフード
特長的なレンジフードの納まり。下面からだけその存在感が分かりますね。
グレイジュの吊戸棚に格納したレンジフード
実はレンジフードの手前が下から上に向かって開く扉になっていて、操作する時は手を差し込んでこのボタンにアクセスするようになっているのです。レンジフードはミラタップのミニマルプラスを採用しています。Yさんから聞いた時は実際に使いやすいのだろうか、油汚れはどうなのだろうかと心配な点がありましたが、「不便なく使えていますよ。」ということでまずは安心。
ダウンライトを組み込んだメラミン化粧板を使った吊戸棚
またこうしてできあがってみるととてもすっきりした印象しか見られないのですが、実際はコンロ側キッチン自体は奥行きが70センチくらいあって、この吊戸棚の奥行は50センチくらいあります。吊戸棚の奥にはコンクリートの梁が出ていて、梁の下に吊戸棚やレンジフードをつけるとかなり低くなってしまう。さらには上述のようにレンジフードを隠したい。ということで、梁やフードを隠すような形で吊戸棚を作りました。レンジフードはその梁の手前につけていて、レンジフードの奥に皿にグレイジュの化粧板で板を張って塞いで・・と、この納まりを実現するためにかなり複雑な構造になっているのです。
梁の形に合わせて変形した吊戸棚
さらには右側には小梁。そこも梁に合わせて小さな戸棚にしています。リノベーションだと新しい壁ができてからキッチンを作り始めていては間に合わないので壁ができる前のタイミングでこの納まりを想定して作っていくことになるのですが、小さめのフィラーを用意しておいたのできれいに隙間を埋めて仕上げることができました。こうしてきれいに納まるかドキドキしながら作っているのです。
寸法 シンク側:幅1,850ミリ/高さ880ミリ/奥行900ミリ
コンロ側:幅2,100ミリ/高さ880ミリ/奥行680ミリ
吊戸棚:幅2,100ミリ/高さ400ミリ/奥行500ミリ
天板 セラミックカウンター「ネオリス」
前板・扉 アイカカラーフィットメラミンスクープエッジ扉
本体外側 セラミックカウンター「ネオリス」/ナラ板目突板
本体内側 ポリエステル化粧板
水栓器具 三菱ケミカル クリンスイ[F914HU]
食洗機 ASKO[DFI645]
ガスコンロ リンナイ リッセ[RHS31W32L24RSTW-13A]
レンジフード サンワカンパニー ミニマルプラス[6038S]
キッチン仕上げ

セラミック「ネオリス」とポストフォームのセパレートキッチン

価格:2,650,000円(制作費のみ、設備機器費用は別)

*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は50,000円から、取付施工費は200,000円から)

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