
ここが私の拠りどころ
「ステンレスバイブレーションとタモのペニンシュラキッチンと背面カップボード」
平塚 T様
design:Tさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:daisuke hirose
painting:daisuke hirose




実は、Tさんが加賀妻さんでご新居を建てると知ったのは、お話が半ば進んだ頃でした。
カラコルフードネットのHさんのご新居の見学会に参加されて、そこで私たちを知ってくださったのそうです。
加賀妻工務店の高橋さんは私たちが携わらせてもらったご新居の見学会のたびに
「キッチンのカタログ持ってきてくださいよ。ここにドンと置いていってくださって構いませんので。」
と鋭い眼光とにこやかな口元でそう言ってくださるので、私たちもお言葉に甘えてしまうのでしたが、そこからこういう出会いがあるのはとてもうれしいことです。
最初にご連絡をくださったのはご主人。とてもてきぱきとお話が進むさっぱりした印象のメールを頂きまして、まずは私たちのキッチンがどのようなものかをこちらにいらして頂いて見てくださることになりました。
「こんにちは。」といらしてくださったTさんはやはりさっぱりとした印象で、お話を進めます。
と言ってもお料理をされるのはやはり奥様ですので、細かい使い勝手については奥様がいらっしゃらないことには決めづらい部分が出てきます。
「でもね、イマイさん。私も憧れるのです、オーダーキッチンが入るということに。」
なるほど。
「特にこういう木の表情を活かした形ってなかなかないじゃないですか。料理のしやすさというよりもこういうキッチンがある空間であってほしいんですよね。」とうれしそうにお話するTさん。
なるほど、なるほど。
今まではどちらかというと「使い勝手が良い形」を最優先にするべきって考えていましたので、この言葉を聞いてハッとさせられたのでした。

そういえば自分にも思い当たる節が出てきたように思えます。
使いやすさも大事だけれども、見ていて美しいもの、触っていて心地よいものというのは気持ちが落ち着くのです。
それが少し変わったものでちょっと不便に感じることがあったとしても、心地よいって思えるものってあるのです。
でも、やってみたいけれどまだ実現していないこともあります。
例えば、引き出しのツマミ。
探せば使い心地がよいものがあるのだと思うのですが、ツマミだと指の力で開け閉めするからちょっと疲れるんじゃないかって思っていて。
特に最近はソフトクローズレールという機能金物が主流になっているので、このレールでゆっくり閉まるために閉まる側にバネが入っているので、最初に引き出す時に少し重さを感じるのです。
その重さがほど良く軽減されているグラスのダイナムーブというレールを採用しているのですが、それでも年を重ねていくと、つまんで開けることが億劫に感じるようになるかもって思っています。
だからいつもは手のひら全体で開けられるようにハンドルだったり、手掛けだったりにしてしまうのですが、ここがつまみだったらだいぶ印象が変わるのだろうと思ったりします。
最近、我が家のキッチン水栓のメッキが剥がれて地金が見えてきちゃったので、思い切って少し背の高いグースネックの水栓に変えたのです。
それもちょっとクラシカルなデザインのコーラー社にものに。
で、水圧があるから今までのようにシャワーを使うと、高さがあることも相まって、バンバン跳ねるわけです。
使い始めたアキコは「びしょ濡れだあ。」と言いながらお腹周りだけ色が変わったシャツを見せてくれた。
これは大変だ、と思ったのですが、代わりに通常の吐水の感じが柔らかくてとても良いことに気が付いた。
今まではシャワーで洗うことが当然みたいに思っていた私の思いはこうして崩れて、今では上手にこの水栓と付き合えるようになってきたのです。
心地よいという思いは強いものだなあと思ったわけです。

お話がそれましたが、ツマミでもそれなりに迷うことなのに、キッチンとなると形も大きいし掛かる費用も大きく変わってきます。
システムキッチンのほうが使い勝手は優れているようにも思えますし、そこに私たちのオーダーキッチンを導入するというのは決断だと思うのです。
でも、心地よいという思いは強いのですよ。
というわけで、1回目の打合せは雑談に終わってしまって、ふたたび奥様と一緒に見にいらしてくださいました。
「ほらぁ、こういうの良いと思わない。」
「手触りも気持ちいいし、ここが格好良いよね。」
とご主人。
奥様はどちらかというとじっくり考えるタイプのようで、ご主人の言葉にも動じない、というか「ふーん、ふむふむ。なかなか自分の暮らしに合わせえてイメージするのは難しいのね。」とご主人の言葉を置いてけぼりにして一人で思いを巡らせているようです。
結局この時も奥様からはおおまかなイメージを頂いたのみで、具体的なお話が見えてこないのでした。
でも、加賀妻さんで家を建てるということなら、木の表情が良く表れた形がお好きなはず、ということで、まずはオーソドックスな形で原案を作ってみることになりました。

そして、そのできあがった原案のスケッチを見て頂きましたら、どうやらその印象で合っていたようでして、その形を基に具体的にお話が進んでいくことになり、ひと安心。
そこから細かい部分について変更が減額をしながら、もう一度お二人にこちらにいらして頂いてようやく一つの形がまとまりました。


そして、このタイミングで私たちがオープンハウスを行なう予定がありました。
ちょうど庭をきれいにする工事が終わって植栽がしっかり根付いてきたタイミングで、キッチンや家具を使い続けるとどんな感じになるのかを、皆さんに見てもらえたらという思いで開いたのでした。
そこにTさんもいらしてくださることになって、いよいよ実感を持って私たちのキッチンを迎える準備が整っていったのでした。
「ほらあ、やっぱりいいよね。」
「使い込んでもこういう感じになるのは美しいよ。」
「うん、すてきね。」と、キッチンもそうでしたが、タイルの使い方や外壁の印象まで気に入ってくださって、今までご主人主導だった様子が奥様のほうが前のめり気味に。
どんな感じの暮らし方なのかをアキコとあれこれお話し始めてくださいました。
というわけで奥様も実感を持って感じて頂くことができたようでよかったよかった。
特に我が家は加賀妻さんに無理を言って建ててもらったこともあって、(その経緯は、自宅のキッチンの制作例に詳しく書いております)加賀妻さんの仕上がりや時間の経過を楽しむこともできたようでよかったです。

「毎度お世話になっております。
こちらこそ、昨日は休日のところ、ご自宅を見学させて頂き誠にありがとう御座いました。
イマイさんと奥様の趣味の良さに妻は驚いており刺激になったようです。
小物や全体のバランスが非常に整っており見習いたいところばかりでした。
ジョリパット外壁の色に関しては、グレーを検討しておりましたがイマイさんのお家を拝見して変更しようかと思っております。
また今後も色々とアドバイスを頂けたらうれしいです。
引き続き、どうぞ宜しくお願い申し上げます。」
趣味が良いなんて初めて言われて照れくさいのでしたが、こうしてTさんにも喜んで頂けて、いよいよそのキッチンの制作が始まりました。

そして、無事に上棟が終わって、床が張られて壁が張られる前のタイミングで監督のミヤジマさんから声が掛かり、いざ現場に。
今回のTさんのキッチンはシンプルなプランなのですが、それなりのサイズがあるので、搬入経路を確認して、また設置階が2階ということなので配管が根太や大引に干渉しないかをチェック。(1階でも干渉することはありますが、なぜか2階のほうが干渉することが多かったりするので、ある程度配管位置に遊びができるように考えています)
問題なさそうですので、いよいよ制作の開始です。

制作の担当は、ヒロセ君。
そういえば、ヒロセ君の名前はダイスケ。私もダイスケ。Tさんの名前もダイスケ。
おもしろい。
今回のTさんの形は、シンプルというか、私たちが標準としているオーソドックスなレイアウト。
オーソドックスということは作り慣れた形ということですので、制作は順調に進みます。
今回は、背面のカップボードの制作もご依頼頂いて、その形も引き出しと扉のみのシンプルなレイアウト。
1点、気を使うと感じていたのは食洗機部分。
食洗機は海外製ではなくリンナイのものにしたので、シンク下の配管まわりもすっきりした作りになるのですが、このリンナイのフロントオープンの配管は、配管を指定の高さで手前に転がしてくるという特殊な納まりですので、そのあたりについては設備屋さんとも事前に打ち合わせます。
よく現場で「このタイプの食洗機は、配管の位置出しがシビアだから一度食洗機を組み込んでいいよ。そのあとで位置を調べたら引っ張り出して配管するから。」なんて言われてしまうことが多いのですが、今回は、「うんうん、この食洗機か、うん、ちょうどこの前の現場でやったから配管は事前に転がしておくから大丈夫だよ。だから、食洗機はきっちり固定しておいてもらえるとありがたいかな。」と安心のお返事。
こうして無事に制作が完了しまして、いよいよ設置工事。
搬入は屋内階段からでは難しかったので、バルコニーを使って荷揚げをしてきます。
こういう時は4人くらいで現場に乗り込んで手分けしてあげていくのですが、私だけ一人でピキッという感じとともに腰を痛めてしまって・・。
みんなとは10歳ほど年齢が違うとこうなってしまうのか・・、年なのですね。
どうにか荷揚げを終えて、作業は皆に任せて無事に設置が完了。



あとは、Tさんご自身でオイル塗装をして頂くことになっているので、お引き渡しの前に塗装の指導。
このオイル塗装ですが、皆さん、意外に楽しんでやってくださることが多くて、今回も奥様がとても前向きでご主人を引っ張って進んでいくような感じで塗り始めてくださいました。
私は最初の30分ほどのレクチャーで帰ってきてしまったのですが、後日仕上がりを確認させてもらうと手触りよくざらつきなくツルっと仕上がっていました。
そして、実際にキッチンを使っている様子も拝見させて頂いて。
キッチンに立つと目の前の公園の借景の大きな緑たちがぐんと入り込んでくる。これは気持ちが良い。
「イマイさんのご自宅に伺わせて頂いてぜひ取り入れたいと思って外壁もね、ほら、少しこういう濃い色にしてみたのです。グレーにしなくて正解でした。」
と、とてもうれしそうにお話されるTさん。我が家の外壁よりも濃い色ですが、その感じが土に囲まれた感じでとても暖かく柔らかい印象が出ていて気持ちよい。
緑にもよく映えます。
気持ちが良いということは大切です。
家ですからね。
やはりここはいつもそうであってほしいとTさんのお話を伺いながら自分の暮らしを省みながら、そう思うのでした。
| 寸法 | キッチン:幅2,600ミリ/高さ900ミリ/奥行1,000ミリ カップボード:幅2,700ミリ/高さ900ミリ/奥行650ミリ |
|---|---|
| 天板 | キッチン:ステンレスバイブレーション/プレスシンク[N760ZW] カップボード:タモ板目無垢材 |
| 前板・扉 | タモ板目突板 |
| 本体外側 | タモ板目突板 |
| 本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
| 水栓器具 | KVK[KM6091SCEC] |
| 食器洗浄機 | リンナイ[RKW-F403CM4-SV] |
| ガスコンロ | ノーリツ プラスドゥ [N3WS9KJTKSTED] |
| レンジフード | アリアフィーナ サイドバルケッタRモデル[SBARR-903LS4] |
ステンレスバイブレーションとタモのペニンシュラキッチンと背面カップボード
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