
吊戸棚が戻ってきた
「ナラ板目突板の食器棚とカウンター下収納」
野毛 M様
design:Mさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kouhei kobayashi
painting:daisuke hirose

「イマイさんの撮る写真はきれいですね。」と時々褒められてうれしくなる私ですが、こういう写真が撮れる今に至るまでのその時々ですてきな出会いがあったのでした。
Mさんもその一人でして、さかのぼること11年前。(これを描いているのは2026年)
まだみんなが若々しくあった頃に食器棚を作らせて頂いた時に、写真撮影についてのすてきなアドバイスを頂いたことは今でもきちんと覚えておりますよ。
その時の食器棚は、【いろいろなものを「再発見」】でご紹介した食器棚です。
そのMさんから2024年の10月にたいへん久しぶりにメールを頂いたのです。

「フリーハンドイマイ 今井様。
今井さん、大変ご無沙汰しております。
約9年前にこちらのキッチン背面の食器棚と引き出しをお願いしたMです。
この度、自宅マンションを買い替えることになり、非常に残念ですがあの時の食器棚は鶴見の家に残していくことにしました。
(新しく住まわれる方に使っていただきます。内見の際に非常に気に入ってくださいました。)
新しいマンションでも再度食器棚+αをお願いできないかと思い、相談をさせていただきたくメールをしております。
概算のお見積りと、新築の場合の進め方をまずは伺いたいと思っています。
ご相談したい家具は2点です。
①食器棚(上下)
②キッチンカウンター下戸棚
※キッチンカウンターのリビング側の壁面です。
日程感についてですが、現在マンション販売会社と提携しているインテリア会社で、上記2点とほぼ同内容の家具制作の見積もりを取っており、割引がある関係上既に仮申し込みをしています。
こちらのキャンセル期限が11月19日のため、それまでに今井さんから概算見積もりをいただき、最終判断したいと思っています。
2点とも大まかな方向しか考えておらず、相談させていただきたいこともあるため、伺って打ち合わせをさせていただくことは可能でしょうか。
以上、よろしくお願いいたします。」
とうれしいご連絡でした。
ただ、あの当時の食器棚の制作金額と今作る金額では大きな開きが出てしまうだろうから、ご依頼を頂けるのか私自身分からないところでしたので、まずはどのようなイメージなのかをお聞かせ頂くことになりました。
そうそう、そのMさん、当時私が食器棚の写真を撮らせて頂くためにご挨拶に伺った時のことでした。
「イマイさんの写真きれいですよね、どのようなカメラをお使いなのですか。」とMさんの聞かれてさっそく見てもらうと、
「D5300ですね、私もニコンが好きなのですよ。新しいカメラで使いやすいのではないですか!」とほめてもらえてうれしくなったのですが、実はすこしストレスを感じていたのでした。
「今まではD60を使っていたのですが、レンズではなくてファインダーの中に黒い粒が出るようになっちゃってこのまま使うかどうかを迷っていて、思い切ってこの機に変えたのですが、写りはすごくきれいなのですがどこかきれいすぎて、不自然に見える時があって。それから色みがちょっと思っている色と違うのです。それから軽すぎてスピード落とすとブレちゃって。それから・・。」なんて、数えだすと少しよりも多めのストレスがあることに自分でも気が付いたのでした。
特に感じていたのが、何というか写りが「刑事貴族」のように鮮明さがありすぎて、「あぶない刑事」のような余韻のあるコントラストが残らないきれいすぎる印象がとても淋しいなと感じていたのでした。(ずいぶんと時代掛かった表現ですね・・。)


そんな話をMさんに伝えていたら、「4桁のナンバーズはイメージセンサーが新しタイプなので、今までの2桁のナンバーズとは、色みも画角も異なるのですよ。それでも4桁にはそのぶん手軽に使いやすいようにできているから、解像度も前機に比べるとかなり上がっていてきれいに写るので、写真をもっと近くに感じられる良さがありますよ。」
おぉ、そうなのですね、それは知らなかった、ありがとうございます。
と、見渡すと部屋の後ろにはカメラの保管庫があって、その中にはぎっしりと本体とレンズがしまわれていたのでした。
「Mさん、写真を撮るお仕事をされているのですか・・。」
「いえ、趣味なのですが、なかなか行き過ぎてしまって・・(笑)」
ということで、Mさんはあらためてカメラの楽しさを教えてくれたある意味先生でもあるのです。


そういう方からまた家具のご相談を頂けるのはうれしいことです。
それから、「こんにちは。」とショールームまでにいらしてくださって、私もMさんご夫婦も9年も経てばそれなりに年を取るのですが、それでもあの時にお会いした印象そのままの快活なお二人でした。
今度は鶴見から野毛のほうに住まいを移すということで詳しいお話をお伺いしまして、金額もプランもご納得いただくことができて、食器棚とダイニングの家具を計画させて頂くことになったのでした。
今度のキッチンには物入がないので、今までよりも収納量が減るのです。そこで、前回のサイズ感から少し大きく考えていくことに。
一般的に食器棚というと、吊戸棚と食器棚とが上下に分かれているレイアウトが多くなります。
そしてその食器棚の天板の高さはキッチンに合わせることが多くなります。それは、食器棚の天板のうえでもキッチンの補助作業ができるようにと考えてることが多いからです。同じ高さだと振り返って作業がしやすいですからね。
しかし、今回のように食器棚の幅がコンパクトになると(最近のマンションはこのように食器棚スペースが小さい間取りが多いのはなぜだろう)、天板のうえには家電の置くだけでいっぱいになってしまう場合が多かったりします。
そうなると、キッチンの高さに合わせる必要もなくなって、代わりに食器をしまう部分をもっとたくさん採れるように計画することもできます。
今回Mさんはそのように考えて、壁についている家電用のコンセントギリギリまで高さを上げて、927ミリを天板の上面にしています。
さらには、前回の食器棚のように広すぎる冷蔵庫スペースをうまく活用できるように天板だけ壁の幅よりも延ばして、さらに納まりが良いように天板の形状を置くまで延ばしてL型にしています。
こうすることで、収納の多い食器棚を実現することができました。

さらに今回は、足りない収納を補うため、そして旅先で集めたものたちを飾るための戸棚をダイニング側に作らせて頂きました。
最近のマンションでよく見かける天然御影石のキッチンのダイニング側がちょっとしたカウンターのようになっていたのです。
そこに食器棚と印象を揃えたシンプルな戸棚を作りたいのです、ということで、今回食器棚と同じナラ板目ランダム張り突板を取り入れた戸棚を作ったのでした。
これでリビングから見たキッチンまでの印象を整えることができまして、また馴染みのあるキッチンになりました。
「Mです。
いつもお世話になっております。
昨日は設置ありがとうございました。
とてもきれいに仕上げていただきました。作業していただいた、ノガミさん、ヒロセさんにもよろしくお伝えください。
「吊り戸棚が戻ってきた!」という表現がしっくりくる感じがします。
これがあるとようやく自分の自宅になった気持ちです。
色味は、塗装のサンプルの印象からイメージしていた印象がいい意味で裏切られ(笑)、私たちが想像していたより床や扉の色と合っていて驚きました。
きっと色々と工夫いただいたのだろうと思っています。
またお越しいただけるのを楽しみにしております。」
と、Mさんからうれしいご連絡を頂きました。

そのご連絡を頂いて私も自分の昔の頃を思い出したのでした。
「M様
フリーハンドイマイの今井大輔です。
お世話になります。
ご連絡ありがとうございます。
「吊戸棚が戻ってきた」という言葉、とてもうれしく思っております。
あたらしい暮らしの中でも、慣れ親しんだ動作や形がすぐそばにあることってうれしいことです。
我が家も今の家に越してきた時に、妻がなぜか、もうだいぶ使い込んで傷んできた洗面室の吊戸棚をぜったいに使い続けたい、ということで、そのサイズに合わせて洗濯機のスペースを考えていました。こんな感じです。
2020年4月12日 「洗濯機置き場の収納を考える」
あの頃は、だいぶ傷んでいたあの戸棚をわざわざ持って行くのだなあ、なんて軽い気持ちで思っていたのですが、記録を見返すと、当時まだこの仕事を始めてまだ経験が浅い頃の2001年くらいに仕事の合間に作った戸棚で、それがいまだにここにあるのは不思議でもありうれしくもあると、あらためてここに持ってきてよかったのだと確信しております。
Mさんの家具もそのような暮らしにとけ込むものになっていってくれるとうれしいです。
次回、お会いできるのを楽しみにしております。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします。」
あらためてM先生、よいお話を伺うことができました。ありがとうございました。
ナラ板目突板の食器棚とカウンター下収納
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