さっぱりさん

「マットホワイト化粧板の食器棚のオーダー」

港南台 M様

design:Mさん
planning:daisuke imai
producer:iku nogami

壁一面の白い食器棚

キッチンから眺める。食器棚がある部屋は、家事室のような場所。少し古びた机とキッチンに置けない冷蔵庫があるシンプルな部屋。この食器棚が設置されて部屋が完結しました。

だいぶ時間を掛けて考えた気がします。
と言うのも最初の打ち合わせから、丸1年以上掛かったからでしょうか。
でも、実際は私が時間を掛けて考えたのではなく、Mさんがずっと思いを描くことをできるまでこれほど悩んでいらっしゃったのです。
最初からシンプルな食器棚を希望されていました。
イメージとしては、「伊藤まさこさんの食器棚」ということでした。

壁一面の白い食器棚

ご飯を炊く土鍋、水切りボウル、懐かしいミキサーなど。どれもきちんと使い込まれた器具たちは、居場所を与えられてどこか誇らしげ。

「はじめまして。パントリー内に置く食器棚を依頼したく、メールいたしました。食器棚というより、台所道具入れといったほうがいいかもしれません。
イメージは伊藤まさこ著「伊藤まさこの台所道具」の中の「食器棚と引き出し」にある写真です。パントリー内で、人の目が気になる場所ではないので、とにかく収納量重視です。
よろしくお願いいたします。」

壁一面の白い食器棚

みんなの居場所、その1。

いろいろなことをお客様から教わることができます。
「なるほど、伊藤まさこさんか。どのような方なのだろう。と勉強してみると、会社に書棚にもその食器棚が映っている雑誌が置いてありました。」
「おやっ、ここにあったんだ。」
とよく見ると、ふーん、と見過ごしてしまいそうなほどシンプルな形。
でも、シンプルな形ほどその人の思いがよく表現されているものです。
食器棚の形が物を言うのではなく、そこに置かれているものたちがその人をよく表すのです。

壁一面の白い食器棚

みんなの居場所、その2。

一番最初のご相談から、初めてお会いする時まで、Mさんはどういうバランスが近いやすいか、ずっと悩んで悩んで。
そうして、1年以上が経過した頃に、「やっぱりイマイさんにお願いしたいです。」とおっしゃってくださったのです。
そう連絡を頂いた時は、そういえばどこかで見たスケッチだなあと思ったのですが、もう1年前のこと。Mさんには申し訳ないのですが、その時の資料はすでに処分してしまっていたのでした。

壁一面の白い食器棚

みんなの居場所、その3。

そこで最初からイメージを思い出します。
Mさんは、パソコンは苦手でFAXでやり取りしていたので、記録がなく、そのおぼろげな思い出だけが残っているばかり。だからどういう形を思い描いていたのかを少しずつ思い出しては、図面にしていきました。
ようやくその時のイメージと、今Mさんが考えているイメージをまとめることができて、ご自宅までお伺いすることになりました。
きっと真っ白で、とてもシンプルな家に住まわれているご婦人なのだろう。

壁一面の白い食器棚

みんなの居場所、その4。

FAXのやり取りと電話の声の様子、その食器棚のイメージからそんな印象を描いておりました。
それが、到着すると木の生き生きとした壁面、室内の温かな印象。なるほど、このような印象にあの白い食器棚。質素な形がとても温かみが出そう。

壁一面の白い食器棚

引き出しの様子、その1。

聞くと、ご主人はずっと林業に携わる方で、ご自身で簡単な家具も作っちゃう。奥様は奥様で、料理のスペシャリストで、どちらもとてもさっぱりとした職人さんと言う印象。
そうか、Mさんにはぴったりの食器棚の形かもしれない。
この時にこの形がそれはもうピッタリと思えたのでした。

壁一面の白い食器棚

引き出しの様子、その2。

設置場所も拝見させて頂き、独特の表情をしたカウンタートップのキッチンも拝見させて頂き、だんだんとMさんの魅力が伝わってきました。
「私ね、パンを焼いたり、お菓子作ったり、料理が大好きで、もうずっとここに居るのよ。それで器具もだんだんと増えてきちゃったから、それをきちんと整理したくて。」
なるほど。
「パンもね、酵母から作って、こねたらこの発酵器に入れて、このオーブンで焼くの。」
「この作業台も良い感じですね。」
「主人が作ってくれたのよ。」
「でもここまで本格的に一から作業をされるのでしたら、お料理教室だって開けちゃいますね。」
「そうね、お友達を呼んでたまにみんなでお料理を作ることはあるけれど、私はどちらかと言うと教えるのはあまり上手じゃなくて、自分一人で作っていたいの。」
「だからね、もう娘は今年就職する年になるのだけれど、お料理は特に教えなかったわ。娘もやっぱり年ごろになると、「お母さん、料理手伝わせて。一緒に作ろう。」っていうのだけれど、「それならきちんとこれとこれができないとダメ。」って無理に入らせないようにしたり。(笑)」
「いじわるみたいに聞こえるかもしれないけれど、自分のペースで作るのが好きでね。」
なるほど。
「でも、娘も毎日私の作っている様子を見ているものだから、わたしたここを使っていない時に、どこで覚えたのかこっそりしっかりとお出汁を取ってきちんとお弁当を作ったりしていて。そういうのを見ているともっと教えてあげれば良かったかなあ、なんて思うけれど、ダメなのよね。私は私一人でここに居たいって思うの。」
と、さっぱりさん。(笑)
面白い、みんないろいろな考え方があるんだなあ。

壁一面の白い食器棚

引き出しの様子、その3。

できあがった形にきちんと置かれた食器や器具たち。どれもきちんと使い込まれていて、どれもきれいに置かれているのは、キッチンが好きでお料理を作ることが好きで、料理を食べることが好きな人のその様がよく表れていました。
Mさん、ありがとうございました。

壁一面の白い食器棚

引き出しの様子、その4。

壁一面の白い食器棚

引き出しの様子、その5。

引き出しと可動棚の白い食器棚

価格:540,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は25,000円から)

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