私のキッチン

「ナラ板目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン」

鎌倉 N様

design:studio acca/Nさん
planning:daisuke imai
producer:tsuyoshi kawaguchi
painting:tsuyoshi kawaguchi

思いかえせば、Nさんとのお付き合いは古く、当時の私は、まさかNさんのキッチンを作らせていただくことになるなんて思っていなかったわけで、何とも不思議なつながりに感謝して、そして、とてもうれしく思うわけです。
Nさんと最初にお会いしたのは、鎌倉のMさんの食器棚を作らせて頂いた時でした。Mさんのお嬢さんが、ご結婚されてNさんとなり、そしてこのたび新たに鎌倉にご新居を建てることになったのでした。まさかご両親にもお嬢さんにも家具を頼んでくださるなんて、それはもううれしいわけです。

ダークオークとステンレスのI型キッチン

使い込まれたキッチンは、ちょうど1年月頃にお邪魔させて頂いて写真を取らせて頂きました。キッチンがどんどんNさんご夫婦の色に変わってきていたのがとてもうれしかったのでした。

そしてNさんは、以前キッチンを作らせて頂いて、とても良い評判を頂いた(Kさんのおかげです。)「海の近く、ソラの近く」の茅ヶ崎のKさんと学生時代からのお友達でした。KさんとNさんともう一人のお友達で始めたのが、そう、「LUCCA」です。LUCCAを通じて、今まで何度も皆様にキッチンの依頼をいただいてきました。そう思うと、このお二人には頭が上がらないわけです。
そんな、Nさんから、とても寒い二月にとても温かい問い合わせを頂いたのでした。

ダークオークとステンレスのI型キッチン

長谷の大仏様に向かって歩く人の列が絶えないこの通りで、このレイアウトだとまるでカフェのようで通りすがりの人たちは、必ずチラッとのぞいていきました。「いつ、オープンなんだろうね。」とささやく女子の声も聞こえたりして・・。

「こんにちは。初めてメールさせていただきます、Nと申します。
初めまして、というか、なんというか・・・
梅雨明け」の、七里が浜のM邸の娘で、茅ケ崎のKさんの友人です。(一緒に「LUCCA」をやってます。)
実家の搬入の時には確か私も居りましたので、その時にチラリとお会いしていると思います。
また、実家のキッチン棚はもちろん、Kさんのおうちでいつもキッチンを使わせてもらっていますので、イマイさんの家具は(まだオーダーしたこともないのに)私にとって、すでに馴染み深い感じです(笑)。
実はこの度、我が家もマイホームを建てることになりました。
現在、夫婦2人暮らしで、鎌倉の長谷に小さな土地を買いました。
家は鎌倉の設計事務所studio accaさんにお願いすることになりました。
着工時期などはまだ未定ですが、4月から5月ぐらいには着工して、今年の秋には完成するといいなぁと思っているところです。
今は設計を詰めている段階で、前回の打ち合わせではキッチンの話になりました。
設計士さんからは、「オーダーキッチンでもシステムキッチンでも、まずは、お好きなものを探してきてみて下さい」ということでした。
ただ、今回、私たちは家にかけられる予算が大変厳しいものになりそうなので、今のところ、キッチンにもいくら位まで予算をかけられるのか?
まだ家全体の詳しい見積りが出ていないので、なんとも言えない状況です。
ただ、私なりに色々調べたり、実際にキッチンのショールームへも足を運んだりした結果、私は、システムキッチンよりもオーダーキッチンに心が傾いています。
そして、オーダーキッチンならば、フリーハンドイマイさんにお願いしたいと思いました。
私はやはり、Kさんの素敵なキッチンをいつも見ているせいか、ステンレストップの木張りの感じがいいなぁと思っています。
一応、設計士さんにも、フリーハンドイマイさんに問い合わせをしてみたい、という話はしました。もちろんOKで、あとは予算との絡みの問題だね、という感じです。
設計士さんとしては、もし予算的に厳しいようであれば、キッチンは大工さんの造作で・・・ということも検討しているようです。
なので、まずは、ざっくりでいいので、イマイさんに概算を出してもらってはどうか、ということでした。
一応、今のところ設計上では、キッチンの長さは270cm、奥行70cmぐらい、壁付けの、いわゆる「I型」という形で考えています。キッチンが、北側と東側の壁に付く感じ。
ガスコンロと食洗機を入れて、ワークトップとシンクはステンレス、壁面に接していない側面部分(=西側と南側)は木張りがいいなと思っています。
簡単に言うと、Kさんのキッチンの、リビング側の木張りが無いタイプ・・・という感じでしょうか。
こんな曖昧な情報で見積りをお願いするのも心苦しいですが、もし何か足りない情報等があれば、ご連絡下さい。
ではでは、突然のメールで長々と失礼しました。何卒よろしくお願い致します!」

ダークオークとステンレスのI型キッチン

私がどうしても実現させたかったのが、この飾り棚でした。キッチンを目隠しして、さらにこのカウンターに置く家電を隠すことが目的だったので、当初のプランではキッチン側から物がしまえるようにと反対向きに開いている棚だったのでした。でも、そうなると、柱を飲み込む構造なので、作りがかなり難しくなるのと、キッチンをさえぎる壁みたいに重くなってしまうような感じがしたのです。それで、リビング側に開いているほうが軽い印象になるかなって思いました。そこにガラスの扉が入っていたり、入っていなかったりすると、光りが反射してとても軽やかになるかなって。 細長い棚が3.6mも続いているなんてなかなかないから素敵じゃないですか。

メールを頂いた時は、もうとてもうれしくて、お返事には、
「お問い合わせありがとうございます。お待たせいたしました。図面とお見積ができましたのでお送り致します・・。」なんて冷静に書いていますが、もううれしくうれしくてニコニコしていました。なんだかまるで、ラブレターをもらった男の子のような気分でした。
それで、さっそく図面を書いてお見積りと一緒にお送りしたのですが、もともとKさんのキッチンを使い慣れているので、ほぼそのプランのまま進めさせて頂けることになりました。

ダークオークとステンレスのI型キッチン

シンクの様子。扉の方は開けると配管が見えるようになっていて、それ以外のところは引き出しとして有効活用できるようにと言うレイアウト。 上段を引き出しを深くして、タオルを掛けやすいようにして、大きめの道具が入れやすいようにしています。

その後、キッチンの背面に考えていたカウンターもできれば一緒に素材を合わせてお願いできれば、と言うご相談を頂き、作らせて頂けることになりました。どちらかと言うとこのカウンターのほうがキッチンよりも難しくなりそうなのでした。
ひとまず、形が決まりましたので、accaさんでの打合せに同席させて頂きました。

ダークオークとステンレスのI型キッチン

シンク下の深めの引き出しは、ボウルなどの調理道具がたくさん。

鎌倉の八幡さまから峠道へ向かう途中の元は幕府の西門があったと言われる、西御門にaccaさんのサロンがありました。大正時代の作家「里見惇」さんの自邸がサロンとして使用されており、すばらしく穏やかな時間の中で打ち合わせをさせて頂いたのを良く覚えています。そのあと、Nさんのお誘いでご自宅にお邪魔させて頂いてランチをごちそうになり、(そこでNさんの好きなものがいろいろ見えました。ありがとうございました。)、そのあと、ロープが張られたままの予定地を見させて頂き、私はいろいろと楽しみにして帰ってきたのでした。
そのあと、いくつか細かい部分をやり取りさせて頂いて、いよいよ、着工。そして上棟。上棟後まもなく現地で打合せがあり、大きな変更もなくそのまま製作に取り掛かれることなったのは、まもなく梅雨に入ろうとする時期でした。時間が経つのは早いのです。

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ガスコンロは、グリル無しのリンナイ「RD640STS」。「結局、見た時の印象の格好良さで選んでしまいました。でも、実際に4つすべて使うとちょっと狭いかな。」とNさん。

そして、いよいよ夏の真ん中に取り付けです。今年の夏は今までにない信じられない暑さで、まだ風が通らない現場ではそれはもう滝のような汗をかきながら作業をしていたのです。それから、Nさんが一番気にしている湿気。鎌倉は海に近く山から風が吹くためか、すごい湿気なのだそうです。この夏にそれを直に体験できたわけです。危うく脱水するくらい、カワグチ君と二人でふらつきながら作業をしておりました。

コンロ右の一番壁側は、ボトル・スパイスラック。実際に使ってみてNさんから貴重なご意見を頂いたのでした。 「ボトルとスパイスが一体になったこの形も良いですが、ボトルを横から出すことになるので、上と下で引き出しを別々にしておいても良かったかなあと思ったりもしました。また、スパイスはどちらかと言うと、小さなものだけではなく、小瓶くらいのものがけっこうあるので、そういうちょっと背の高い調味料のほうが使う頻度が高かったりするので、一番上の引き出しにそういうビンが入ると良かったかな、なんて思いました。」 ありがとうございます。勉強になります。

最初の取付は、キッチンの本体の箱部分とステンレスのカウンターのみ。扉や引き出しは、いろいろな職人さんが出入りする現場では、うっかり傷になったりすることも考えられるので、一番最後に持ってきます。こうしておけばとりあえず、壁を仕上げる職人さんの手を止めてしまうことのありませんので。そして、キッチンの取付の他にもう一つ大事な作業がありました。

ダークオークとステンレスのI型キッチン

スライドするワイヤーシェルフは、お鍋がたくさん置かれていました。「こうしておけば、洗ってすぐに置いてしまっても、きちんと乾きますものね。」

それはカウンターの採寸です。今回キッチンの背面につくカウンターは、accaさんの設計でなかなか複雑な形になっています。キッチンへの視線をある程度さえぎり、さらに雰囲気を統一させるために、両面使いのカウンターになっているのですが、それが構造上、柱を飲み込む形になってしまうのです。一番上の写真を見て頂ければ何となく分かると思います。柱に合わせて、ステンレスのカウンターを設置しなくてはいけないのです。そのために今回は、カウンターの下の収納部分を持ってきてそれを仮に設置してみて、その上にうすいベニヤを敷き、その場で柱の部分だけベニヤをカットして、ピッタリと納まるようなベニヤの型板を作ったのです。そして、カウンターの下の収納は、この時点で取り付けちゃうと、他の職人さんの邪魔になっちゃうから、お持ち帰り。大変なのですが、ひとまずキッチン本体はすんなり終了したのでひと安心。
その日は、途中にNさんやお友達まで見学に来てくださって、汗だくの私たちは何だか恥ずかしいやら。

食器洗浄機は、ミーレの45cmタイプ。そろそろ、キッチンをトータルに製作できるように、今回はNさんとこのご新居を建てるビルダーさんの理解もあって、食器洗浄機とコンロの取付を私たちに任せて頂いたのでした。

そして、9月にできあがったステンレスカウンターを持って、再び取り付け。うん、うまく行きました。柱から1mmから2mmの範囲の逃げで納まりました。良くやったとカワグチ君と二人でニンマリ。そして、ビルダーさんも「すばらしい。」とお褒めの言葉を頂いて。
ふぅ、これて大変な部分はおおかた終わりました。

ダークオークとステンレスのI型キッチン

カウンターの下は、食器がぎっしり。LUCCAを良く見ていると分かるとおりに、NさんもKさんも人を招くのが上手で、大好きで、さらに奥様は食器も大好きなので、二人暮しでもこんなにたくさんの器たち。

そして、内装工事もほぼ完了した後日に、扉や引き出しを設置させて頂き、はい、完了です。
もう秋ですね。鎌倉の三つの季節を眺めることができたのもNさんと出会えたおかげです。

ダークオークとステンレスのI型キッチン

食器棚の家電収納部分。レンジとトースターは、このような感じで納まって、その隣にお料理の本を収納。キッチンの手の届くところに本があるのってとても良いです。

「・・・それから、キッチンとカウンターについて、本当に肝心なことを言うのを忘れてました。
どちらもとっても使い勝手がよくて、とても気に入っています。
本当にありがとうございました!
最初の打合せの時に、こちらが気付かない点をイマイさんがいろいろアドバイスして下さったので、初めてのキッチン作りにも関わらず、大変満足で納得のいくキッチンにすることが出来ました。ありがとうございます。
例の、水栓やスパイスラックについては、私が実際に自分で使ってみて気付いた点・・・ということで、今後、キッチン作りをする方たちの参考やヒントになればと思い、イマイさんに是非お伝えしなきゃ~と思っていたので、そちらにばかり意識がいっていて、肝心のキッチンの満足度とお礼を言うのを忘れてしまって、本当にお恥ずかしい限りです。
大切に使いつつ、でも、これから色んな傷やシミができて、それがまた味となって馴染んで、「私のキッチン」になっていくといいな~と思っています。
まだスタートしたばかりの新居生活ですが、今後も住んでいく中で必要なものやスタイルが変わっていくと思います。
その時にはきっとイマイさんに色々ご相談してしまいそうです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
いよいよ師走でお忙しい日々をお過ごしのことと思いますが、イマイさんもくれぐれもお体ご自愛下さいね。
ではでは、少し気が早いですが、よいクリスマスとよい年末をお迎え下さい!」

キッチン仕上
天板 ステンレスヘアライン
扉・前板 ナラ板目突板練り付け
本体外側 ナラ板目突板練り付け
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 ワトコオイル塗装「ダークウォールナット」
カウンター仕上
天板 ステンレスヘアライン/ナラ板目突板練り付け
扉・前板 ナラ板目突板練り付け
本体外側 ナラ板目突板練り付け
本体内側 シナ合板
塗装 ワトコオイル塗装「ダークウォールナット」

ナラ板目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン

価格:730,000円(制作費・塗装費、設備機器は別途)

ナラ板目のアイランドカウンター

価格:600,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は40,000円から、取付施工費は130,000円から)

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