風と子らが駆けめぐる

「ナラ板目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン」

町田 H様

design:Hさん/daisuke imai
planning:Hさん/daisuke imai
producer:iku nogami
painting:iku nogami

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

リビングから見たキッチンの様子。壁付けの棚板は私たちのほうでは取付ができないですので、作り終わったらボードを張る手前の頃に大工さんに渡して付けて頂きました。

「こんにちは、Hと申します。4月に、「おうちパンをつくろう」のワークショップに家族で参加させていただきました。
現在、新築住居の設計を地元の工務店さんと進めております。
キッチンは、念願だったフリーハンドイマイさんに!と、さっそくメールをさせていただく次第です。」
そうでしたか、念願だなんて今メール読みかえしてあらためて気が付きました。
うれしい言葉じゃありませんか。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

リビングから見た様子。このレイアウトでもきちんとパントリーがあるのですが、それがこちら側からは質素に映るようになっていて、とても不自然な感じがないのです。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

キッチンと背面カウンターのその奥にあるのが、そのパントリー。そして、その奥が玄関。買い物をして帰ってきたら、そのままパントリーからキッチンに向かえる心地良さ。このキッチンに向かって吹いてくる風ともう一つ、玄関入ってそのまま庭に向かってずーっと土間が続いているのです。土間は庭で突き当たるのですが、掃き出しの窓になっているからそのまま外に出られる。そうなると土間と庭をぐるぐる回っちゃうのはもう自然なこと。こうして心地よい風が巡るような場所になっているのです。

そういえば、このご相談を頂く半年ほど前、私たちの工房では、時々作家さんを呼んでのワークショップを開催しているのですが、寒川のおうちパンの藤沢さんがパン教室をここで開いてくださった時にHさんいらしてくださっていたのをすっかり忘れておりました。
あれから半年経っていよいよ家作りが動き出したのですね。
どんな形に膨らんでいくのか楽しみです。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

シンクには洗剤ポケットを付けています。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

今回は巾木にフレキシブルボードというグレーのコンクリートのような質感の板を使っていて側板はこのような納まり。(自分のための備忘録)

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

今回はクリンスイの浄水器一体型水栓「F914ECO」(節湯タイプ)を使っています。浄水器のカートリッジの納まりはこのような感じ。

Hさんから頂いた内容にはこのように書かれておりました。
「私のイメージしている理想のキッチンですが、施工例にある「海が見える丘の家」のキッチンがとても好きです。
○ナラ材にステンレスの天板
○コンロしたの引き出せるワイヤーシェルフ
○スッキリした見た目
また、コンロの前をオープンにするのは油はねや換気の影響が気になりますが、その点はどうなのでしょう・・・?いずれ詳しく伺いたいです。設計の方にはコンロ前の壁をすすめられまして。」

ありがとうございます。でもプランを考えて、その形で作るための費用を出すには、もう少し具体的な要望を聞かせて頂けたら‥、と思いまして、再度ご質問。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

側板と背板は今回留め加工でつないでいます。接着強度を高めるためにビスを打っているのですが、その目隠しにかんざし風の飾りをつけています。

そして、お返事を頂きました。
「お世話になります。冬のような寒さですね。
遅くなりましたが、キッチン等の仕様希望について、お伝えします。
【キッチン】
シンク下はオープンにします。
コンロ下は洗えるワイヤーシェルフ。
食洗機は45cm、フロントオープンのものを検討しています。
シンク内に洗剤置きをつくってほしいです。
ゴミ箱はシンク下のスペースに生ゴミ用の小ぶりなものと、あとはパントリーに置くつもりです。
【背面収納】
まず用途ですが、食器収納として考えています。
引き出し収納ではなく、観音開き、または引き戸のものがいいです。
「海が見える丘の家」のカップボードのように、両方あわせもっているものが理想です。
そのため、奥行きのサイズは650mm以下で構いません。
天板上には、電子レンジと炊飯器は置くつもりでいます。
このあたりを含めてイマイさんのご提案を頂けますでしょうか。お手数ですがよろしくお願い致します。」

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

引き出しの様子。Hさん、パン教室のほかにクレミルにもいらしてくださって、包丁差しを作っていったのでした。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

引き出しの様子。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

引き出しの様子。

はい、これでおおよその意見がまとまりましたので、さっそくプランを一つ考えてみて、掛かる費用とともにお送りしました。
しばらくしましたら、Hさんからお返事が。
どうやら工務店さんから上がってきた見積金額はHさんの想定以上だったそうで、予算がオーバーしてしまうので、あらためて間取りの練り直しから再スタートすることになったのだそうです。
そのようななかでもキッチンだけは私たちにお願いしたい、といううれしいお言葉を頂いて、年をまたいでしばらく待っておりますと・・。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

ガスコンロの下はワイヤーシェルフ。

1月の終わりの雪がたいへん積もった日の翌日、お久しぶりに連絡を頂いたのでした。

「こんにちは。すっかりご無沙汰しております。
昨日は予想以上の大雪でしたね。お仕事に支障もあったかと思います、お疲れさまです。
最後のメールから2ヶ月が経ち、家の間取りがようやく決定しました。
以前お願いしたものから、キッチンの仕様・大きさ共に変更となってしまっています。
大変お手数をかけてしまいますが、今一度、イマイさんにご相談させていただきたく思います。
その際、イマイさんのショールームで直接お話をしながら検討させていただきたいので、お忙しいところ恐縮ですが、お時間を頂戴できますでしょうか?」

というご連絡。さっそく日取りを決めまして、あらためて打ち合わせをしていき、何度か打ち合わせを重ねてようやく形が決まりました。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

調味料用の引き出しの様子。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

ボトル用の引き出しの様子。ボトル入っていませんね。

キッチンや食器棚など家具のかたちを考えていく時って何が一番前にあるだろう。
自分が今の家を建てようって思った時はそれほどはっきりとしたイメージはなかったかな。
設計をする福原さんの形が好きだったから、あの人が作る空気の中で暮らしてゆくこと自体が楽しみだったかな。
あとは、娘が二人ともキッチンに立って手伝ってくれるので、みんなできちんと作業ができるような場所を作りたいって気持はあったかなあ。
食器を洗うことは暮らしの中で当たり前になっているから食器洗浄機は要らないかな、お湯が沸いたやかんはちょっと横にずらしておいておきたいからガスコンロのごとくは大きくしたいよね、そういう小さなできごとが今の自分たちの暮らしを形作っているって思うのです。
それから、もう一つ。
でも、自分たちだけで決めていたら、きっと食器棚の奥行は65センチにはしなかっただろう。
福原さんの意見で冷蔵庫となるべくラインを揃えることで、玄関から洗面室への心地良さがきっと違うよって言っていたのでそうしたわけですが、確かに奥行は深いけれど、使い勝手はよいし、重い印象はなく、背面収納の天板の広さが調理中とても頼もしかったりするわけです。
そういうワクワクする部分を思ったり、まだ見えていないけれどきっとワクワクするはずの部分を伝えながら、形って決まってゆくのだと思うのです。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

コンロ周りの様子。コンロは、リンナイのデリシアグリレ。

ステンレスヘアラインとナラ板目のペニンシュラキッチン

最近よく見かけるようになりました。ネオジム磁石の入ったフック。Hさんもとてもうまく活用されています。

Hさんのキッチンという空間は、その使っている様子を見させて頂いて、なるほど、と思わずにんまりしてしまう部分が多くて、打ち合わせの最中はきっと私に伝わっていないけれど、Hさんたちが心で温めているワクワクがあったのだなあと思うと、それはそれでうれしくなるのです。
特に玄関ね、キッチンと玄関がこうして楽しくつながっているとは思っていませんでしたから。
だから、お引越し後に上がらせてもらって、その空気の心地良さを伝えてくださるHさんの表情がとてもうれしそうだったのはよく分かります。

ナラ板目材のキッチンバックカウンター

背面収納。キッチンと同じ意匠に見せるために、キッチンはカウンターの厚みを20mmにして、その下の目地を10mm採ったので、こちらもそのように見えるために30mmの板を細工して仕上げています。

そうして形は決まりましたので、いよいよ制作に取り掛かります。
今回家を建ててくださるのは、カキザワホームズさん。以前、「ストーリテラー」のDさんのところでお世話になった工務店さんです。おもしろいものですね。偶然ほぼ同じ時期に町田で家を建てているなんて。
そういうわけで、一度カキザワさんの現場に入らせて頂いておりますので、何となく気持ちが安心です。

ナラ板目材のキッチンバックカウンター

当面は小さなレンジが入っているそうです。

今回は、無事に上棟が終わり、床が張り始められたころHさんとカキザワさんで打ち合わせがあるところにお邪魔させて頂いて、水道管やガス管の取り出し位置、レンジフードのダクト取り出し位置、電気配線の位置、そして、キッチンの設置時期の確認などをさせていただきます。
また、今回はキッチンのある場所は1階でしたので、家具を分割する必要も、搬入の複雑さもありませんでした。
ここで問題なさそうでしたら、いよいよ制作に入らせて頂き、大工さんの木工事が終わる頃に設置工事に入れるように進めていきます。
家つくりで一番大きいのはやはり監督さんや大工さんの段取りだと思うのです。
そこがきちんとしていて、現場に笑顔があると、現場はとてもきれいだったり、仕事がとても丁寧だったりするのです。
カキザワさんもそういう良さがありまして、キッチンを設置する時には私たちが作業しやすいように場所と時間を作ってくださったおかげでとても気持ちよく作業ができたのでした。
そして、そういう家はとても丁寧に作ってあります。
新居が完成して伺わせて頂いた時、前述したような気持ちよさとともに作りの丁寧さが心地よかったのでした。

ナラ板目材のキッチンバックカウンター

バックカウンターの引き出しの様子。

ナラ板目材のキッチンバックカウンター

バックカウンターの引き出しの様子。

ナラ板目材のキッチンバックカウンター

バックカウンターの引き出しの様子。

ナラ板目材のキッチンバックカウンター

バックカウンターの引き出しの様子。

ナラ板目材のキッチンバックカウンター

バックカウンターの引き出しの様子。

ナラ板目材のキッチンバックカウンター

バックカウンターの引き出しの様子。

今は無邪気に走り回る子供たちもまもなくこの気持ち良さが何なのかきっと気づくはず。
あっ、もう分かっているかもね。アハハって笑いながら通り抜ける風を思いきり吸い込んだから。

キッチン仕上
天板 ステンレスヘアライン
側面・背面 ナラ板目無垢材
扉・前板 ナラ板目突板突板
本体外側 ナラ板目突板
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 オイル塗装仕上げ

ナラ板目のペニンシュラキッチン

価格:900,000円(制作費のみ、塗装は施主様施工、設備機器費用は別)

ナラ板目のキッチンバックカウンター

価格:500,000円(制作費のみ、塗装は施主様施工)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は50,000円から、取付施工費は150,000円から)

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