私のアトリエ、まずはテレビボード

「シナのテレビボードのオーダー」

海老名 イマイ邸

design:akiko/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:iku nogami
painting:iku nogami

シナの格子扉のあるテレビボード

壁を時間によって少し赤みがあるように見えるグレーでもありますので、このシナの印象はとても軽やかに映ります。設計の最初の段階からこの位置にテレビを置こうという想定をしていまして、また箱型のテレビボードを置くことも想定していましたので、コンセント類やボードの真後ろに来るようにして、なるべくケーブルをシンプルに納められるように設計しています。

テレビボードを紹介しましょう。
ひと昔前はテレビボードというと壁一面にしっかりした家具を作ることが多かったのですが、ここ最近はテレビというと部屋のすこし際に寄った位置でどこかおしとやかに佇んでいるような印象を受けるのです。昔みたいに部屋の真ん中にでんと構えて家族みんながテレビを囲むという過ごし方も少なくなってきて、各々で、スマートフォンだったり、パソコンだったりといろんな方法でいろんな映像を見られる時代になってきました。レンタルビデオショップに行ってお気に入りの映画を繰り返し見ることも少なくなり、それを再生したり録画したりするビデオデッキなども持たずに映画がケーブルの中を伝ってテレビ画面にやってきてしまう時代になりました。

シナの格子扉のあるテレビボード

正面の印象は、横格子のラインだけに見えるような形にしたかったので、扉を開けるための手掛けは格子の幅に合わせた形にして、指の腹が手掛けに沿うように浅くえぐった形にしました。

そうなると、大きなテレビボードが必要というご家庭は少なくなってくるのではないでしょうか。
私たちも同じでテレビ自体はそれほど大きなものを必要としていなくて、(それでも40インチという今までの暮らしでは思いもよらない大きさです。)その下にしまう機器類もわずかです。
それならコンパクトで佇まいの良いボードを作りたいと思いまして、機能重視というよりは美しいかたちを自分なりにあれこれ悩んでみたのです。

シナの格子扉のあるテレビボード

蝶番は真鍮引き抜き蝶番にして、天地、側板の木口と格子のラインのみが見えてくる形にしました。木口は丸みをつけて柔らかい印象にしています。この形状は洗面所のミラーと合わせております。

自分が子供の頃はよくテレビを見たものでした。
そして、ゲーム機なんてちょうどはやり始めた頃でした。
赤白のファミリーコンピュータと青白のぴゅうたJrの2つのゲーム機が当時戸塚の西友に買い物に連れて行ってもらった時に売っていたのですね。どちらのゲームが楽しいかなんてよく分からずに、誕生日プレゼントとして選んだのは青白のほうでした。しばらく荒いドットのゲームを楽しんでおりましたが、赤白のほうがどんどん楽しいゲームを発売してくるではないですか。
あの時は本当に悔しかったですね。それからゲームはつまらなくなってしばらくして飽きてしまって、テレビばっかり見ていたような気がします。
子供の頃に見た番組というのはよく覚えていて、今でもよく思い出すのがドリフターズがクリスマスにコントをする番組でした。あの番組がテレビから流れていて、小さな団地の今には母が飾ってくれた電飾がちかちか瞬いて、父はいつも仕事が遅くてまだ戻らず(その頃はまだ家具屋さんではなかったのです。)、弟と3人でクリスマスケーキを食べたことをよく思い出します。
そういうふうにいろんな番組からよみがえる子供の頃の思い出も、今の視聴するスタイルでは多様すぎて思い出も複雑になっちゃうのかなあ。
そんなことを思ったりします。

シナの格子扉のあるテレビボード

中にしまいたいものはそれほどなくて、ブルーレイレコーダーとテレビの録画用のハードディスクがしまえればよいかなと考えて、中央の機器収納スペースはコンパクトに考えていたのですが、急きょほしいスピーカーができまして、それに合わせたアンプがどんと居座ることに。両横の引き出しはアガチス材で作っております。


シナの格子扉のあるテレビボード

機器収納部の両横はシンプルな引出しにしています。CDやDVDのソフトが入るようにと考えておりましたが、そのソフト自体だんだんと所有しなくなってきていて(音楽だけは、音源をデータで保有するのではなくCDじゃないと嫌なので、徐々に増えてしまっているのですが、映画などはストリーミングで見られるというとてもすごい時代になりましたので)、まだ引き出しは中身がカランとしております。

話がずれましたが、テレビボード。設置する場所はもともと福原さんと相談して、階段の下に置こうという予定でした。
ですので、踏板しかない階段の隙間からテレビボードが目に入ってくるので、そういう上から見た時もきれいな形にしたいなあというのも私の気持ちのひとつでした。
以前の住まいで使っていたテレビ台は高さがかなり低くて、家族みんなはその高さになれていたので、あまり背の高くなく、幅のそれほど大きな印象を受けない程度のつつましやかな形を目指したのです。
制作を担当してくれたノガミ君には細かい作業ばかりで大変な思いをさせてしまいましたがおかげさまで良いかたちになりました。

シナの格子扉のあるテレビボード

ちょっと印象の良いステーはないものかなと思うのですが、なかなか見つからずエイジング加工されたものを見つけたので使ってみましたが、動きがちょっとぎくしゃくするところがあったりして、油を差してもちょっとね、蝶番に負荷が掛かったりして、その癖を愛しながら使うようにしているのです。


タグチクラフテックさんのリトルベル

以前、大きな家具を作らせて頂いてからうれしいお付き合いが続いている鎌倉のNさんからご友人で独特なスピーカーを作られているタグチクラフテックさんを紹介してもらって、その時にこの「リトルベル」の音を聴かせて頂いたのです。この大きさで出てくる音のまろやかさに、音質の良しあしがよく分かっていない私でもその臨場感に驚いてしまいまして。水が流れる音や小鳥の鳴く声が工房の展示室のそこかしこから聞こえた時は思わず、「オォ」と。さっそく自分のところでも使ってみたい、ということになったのです。「いろいろと高低差などをつけて使うと良い音が豊かになりますよ。」と言われているのですが、今のところ設置場所は模索中。

格子扉のシナのテレビボード

価格:350,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は10,000円から)

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