オーダー製作例

ナラ材のL型オーダーキッチン

いつかのその日

調布 S様

design:Sさん
planning:daisuke imai
producer:masanake murakami
painting:Sさん

ナラの板目と柾目を混ぜたL型のキッチン
L型のステンレスヘアラインカウンターの表情。直角になる部分はヘアラインの模様が描く45度のラインができます。

「はじめまして、調布市在住のSと申します。以下長文になりますがどうぞご一読くださいませ。
私どもは昨年末に隣の府中市に中古住宅を購入し、夫の両親と同居を始めることになりました。
広いとは言えない建て売りの家ですが、2階にもLDKを作ることにしました。
現在、設計事務所DIG DESIGNの嶌陽一郎氏にお願いしてリフォームプランを練っているところです。
予算は限られますが『私の』キッチンは是非フリーハンドイマイさんのものを、と強く願っております。HPにて数々の作品を拝見し、そのシンプルさ、温かさにもう夢中です。
義父が大工で、今回のリフォームも現場は任せることにしております。ですのでまだ工期もハッキリせず、決定した部分から取り掛かることになると思います。希望としては3月末に入居できたらよいなと思っております。
それでは十分な製作期間が取れないと、即お断りされてしまいそうですが、当たって砕けろの気持ちでお問い合わせさせていただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
キッチンについてこちらの希望は下記の通りです。

ナラの板目と柾目を混ぜたL型のキッチン
「みなさん、まな板ってどこに置いているのかしら。」と、いろいろなお客様からよく聞く質問。Sさんは、カウンターの上に立てておきます。

*タイプはL型、1700×2200(コンロ側壁付ペニンシュラ)奥行650
*辻堂 S邸のようなタイプのステンレストップ
*シンク内に洗剤ポケット(川崎 M邸タイプ)
*コンロ下はスライドワイヤーシェルフ(川崎 Y邸タイプ)
*コーナー部分はダイニング側に引出し(浅深4段ぐらい)
*バーミックス用にコンセントが欲しい
*予算は70万円ぐらい
*ガスコンロはリンナイデリシア、食洗機はミーレの45㎝を予定しております
*材質は未定。なるべく低予算で、手入れしやすく、でも無垢材の手触りは欲しい…のです
*床はブラウンの竹フローリングを予定しております。床暖房を導入予定です
*塗装は、自分たちで是非やってみたいです(貴社側のスケジュールがあえばですが)
*嶌さん作の図面を写真にて添付します。細かい仕様は上記の希望に添っていただきたいです
以上の内容で、もしお受けしていただけるのでしたら、目安となるお見積りをお願いいたします。
お忙しいでしょうからどうぞお時間のある時に…その貴重なお休み時間を潰してしまうお願いですよね、本当に申し訳ありません。
当方、土日でしたらそちらに伺うこともできますので、どうぞ前向きなご回答をいただけますよう、お願い申し上げます。」

ナラ柾目と板目を混ぜたL型のキッチン
シンク下は、ゴミ箱を置くためのオープンスペース。その右隣は食器洗浄機。

最近は新築だけではなく、Sさんのようにリフォームでキッチンをご依頼頂く機会も増えてきました。
「帰るおうちがあるから安心する」って気持ちはどんな人にも必ずあって、だから家ってとても大事なものなわけですが、そこに住む人の時間はずっと前に進み続けているのです。
家族もだんだん大きくなったり、出たり入ったり、過ごす居場所や時間もどんどん変わってくる。でも、自分の使う場所、使い続ける場所はいつも気持の良い場所にはしたい。
そういう思いがあって、皆さんが私たちに声を掛けてくださるのだなあといつも思っているのです。

ナラ柾目と板目を混ぜたL型のキッチン
引き出しの様子。
Sさんのご要望をプランにまとめてさっそくお送りしました。程なくして、すんなりと「お願いします。」というご依頼のお返事を頂けたことは、(気取った言い方ですが)何となく分かっておりました。
それは、最初にSさんから頂いたメールから伝わってきた思いが強かったでした。
「1台のキッチンを作る」ということは、依頼してくださる方にとっても、作る私たちにとっても覚悟がいることです。
「何で私は、わざわざキッチンを作ってもらおうと思ったのだろう。」「どうして、この場所にそれほど思い入れるのだろう。」

ナラ柾目と板目を混ぜたL型のキッチン
洗剤やスポンジを置くポケット。

リフォームの場合は、新築ほど費用が掛からない場合もあります。そうなるとキッチンが占める金額はが高く見える時もあるのです。
「どうして、ここまで費用を掛けて私はこのキッチンを望むのか。」
自分や家族や、そして、私たち作り手や、暮らし方や、さあ、いろいろなことを見つめ直すことを始める時間です。
新しい暮らしはなじむまでは、決して素晴らしいことばかりではないはずですから。
もちろん、その環境になれてしまえば、人は誰だって暮らしていけるのですが、その前に、今までの暮らし方を見つめ直すことで新しい暮らしへの臨みかたが大きく変わってきます。
すると、とても気持の良い場所が生まれます。

ナラ柾目と板目を混ぜたL型のキッチン
ガスコンロの左隣に引き出し。
設置場所を確認するために、Sさんのご実家を拝見させて頂きました。ちょっと大きめな戸建て住宅。その2階をリフォームして住むということは、今まで1世帯だった場所が2世帯で暮らす、ということです。言葉で描くと窮屈に聞こえるかもしれませんし、私が2回にお邪魔させて頂いた解体直後の様子を見ても、やはり少し窮屈な印象を受けました。
ごめんなさい、Sさん。(笑)。

ナラ柾目と板目を混ぜたL型のキッチン
そして、コンロの下はスライドワイヤーシェルフ。

私は、家具の作り手の立場からのアドバイスと、今までキッチンを作らせて頂きながら皆さんからお聞きしたご意見をお伝えすることはできます。でも、ここに住むということは私の主観だけでは表現できないものです。
でも、ここにこれから住むSさんには、ここでどういう暮らしをして、どういうキッチンが入るか、設計士さんや私たちともいろいろと打ち合わせしながら決めてきました。
だから、思いはすでに描かれているのでした。

ナラ柾目と板目を混ぜたL型のキッチン
ダイニング側の様子。この部分が引き出しになっています。

プランはこうしてまとまりましたので、続いて考えなくてはいけないのが搬入でした。
今回のSさんもそうですが、新築においても2階にリビングを作られる方がとても多いのです。そこにL型の天板を搬入するのは、いつものことながらあれこれ頭を悩ませます。
サッシが外せるから大丈夫だろう、このバルコニーの広さならうまくこちらに振って、お尻から入れれば搬入できる、スケールをあてながらイメージはするのですが、ときにはシンクが引っかかりそうになったり、対角線測るとかなりギリギリの搬入になったり、ヒヤヒヤするものです。
今回は、長手方向が少し短めの天板ということもあって、搬入は無事に終わり、設置もどうにか無事に終えました。
(一部、動かせない窓枠と関わりが出てきてしまって、引き出しが開かなくなりそうな場所も出てきましたが、高さを調整することでどうにか問題なし。フゥ。)

ナラ柾目と板目を混ぜたL型のキッチン
引き出しは、押すと開くプッシュオープン式のスライドレールを採用していますので、見た目の印象はすっきりとできて、木目を良く引き立たせています。

お引き渡しの後に、写真を撮らせて頂くためにお邪魔させて頂く機会がありました。
写真を撮り終えた後に、奥様がお昼ご飯を用意してくださるということで、奥様がキッチンで作業をされている間に二人のお嬢さん(まだおちびちゃんです。)がSさんの真似をして「イマイさん、イマイさん。」と言いながら、絵を描いてくれたり、ご飯をサーブしてくれたり。それを流しに立ちながら、ニコニコと見つめる奥様。
「お前たち、静かにしなさい。」とお嬢さんたちに翻弄されるご主人。
こういう時間がここにあることがSさんの願いだったのですね。
そして、いつかお嬢さんたちが大きくなって、お母さんと一緒にご飯の支度をしながら、お父さんのおつまみを作ってあげる、ような時を思い描いて、あの広い天板を作ったのかな、そう思えたのでした。

キッチン仕上
天板 ステンレスヘアライン
扉・前板 ナラ板目突板練り付け
本体外側 ナラ板目突板練り付け/ナラ板目無垢材
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 ワトコオイル塗装「ナチュラル」(Sさんが施工)
キッチン
価格:870,000(製作費、塗装はお客様施工、設備機器は別途)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から取付施工費は90,000円から
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