偶然ではなく必然

「クルミとステンレスのキッチンアイランドカウンターのオーダー」

湘南台 K様

design: Kさん/daisuke imai
planning: daisuke imai
producer: gaku suzuki
painting: gaku suzuki

shounaidai-kurakmatsu009

Kさんから頂いたスケッチ。

「初めてメールさせていただきます。藤沢市のKと申します。
このたび、アイランドキッチンカウンターの見積依頼をさせて頂きたいと思います。
天板は“木”または“ステンレス”で、床材がバーチ、ダイニングテーブルがナラなのでそれに合うのが良いと思っています。
カウンターの下の右側に炊飯器用スライドテーブルが一つ、その下に扉付の棚が一つ、真ん中は観音開きの扉があり中が棚になっているもの、左側はゴミ箱を置けるように空洞にしたいと考えております。
扉は取っ手付きではなく表面はつるっと何もないような感じで手を入れると溝があって開けられるようなのです。
簡単な絵ですが添付図面をご参照ください。
電化製品用に供給元(家)への接続コンセントを一つ、接続口を二つ付けたいです。
北側にシステムキッチンがあり、ダイニングテーブルとの間に設置しようと考えております。
図面では1600mmx600mmになっており、600mm又は650mmにするかは悩んでおります。その場合、キッチンとの距離は850mmにする予定です。
カウンターの裏側と側面をできれば線の入ったような仕上がり(表現が適切でなくて申し訳ありません)にしたいのですが可能でしょうか?添付の写真をご参照ください。」

クルミとステンレスヘアラインのアイランドカウンター

全体の印象。アイランドカウンターがほど良く、キッチンとダイニングを分けてくれています。

Kさんから頂いた写真には、線が入ったような仕上がりということで目地張りした腰壁のあるカウンターが写っていました。目地は写真で分かるほどの目地だから1cmくらいかな。それと一緒に、スケッチも。さあ、どんなふうに作ろうかな。

クルミとステンレスヘアラインのアイランドカウンター

テーブルに載っているトレイは、昔に私たちが作ったもの。それを見てとても気に入ってくださったのです。 カウンターはトップだけステンレスヘアラインで仕上げて、木口は他と同じクルミをぐるっと巻いています。

その後、Kさんには私たちの家具を見て頂くためにこちらに来て頂けることになりました。
その中でどんな家具が好きか、どんなご新居になるのかと話していると、ふと三好さんのお話が。
そう、以前に独創的な家具たちを作らせて頂いた三好歯科クリニックさんです。

クルミとステンレスヘアラインのアイランドカウンター

背板と側板部分の角の納まり。私は、側板の木口を背板に現す見せ方が好きで、このような納まりにすることが多いのです。造りやすいし、無垢の動きも分かりやすいし。

「あの、歯医者さんに通っていたのですよ。」とご主人。
「とても変わった家具ばかりある不思議な歯医者さんだってずっと思っていて、まさかイマイさんが作っていたのだとは・・。」
そして、いろいろとお話をしていくと、
「えっ、イマイさん、私と同窓なのですね。大げさかも知れませんが、「物事は偶然ではなく必然」であることを実感致しました。(笑)」
とご主人とは同じ高校で、年も2つ上ということで、きっと校内のどこかで顔を合わせていたかも・・。

クルミとステンレスヘアラインのアイランドカウンター

天板の木口の様子。

こういう巡り合わせはとてもうれしい。良い縁に恵まれて感謝ですね。
このようにとても気が合ったこともあり、家具をオーダー頂けることに。
うれしいです、頑張って良い家具作りを心掛けます。

クルミとステンレスヘアラインのアイランドカウンター

キッチン側は、食器棚として使っています。扉を開けると中に可動棚が入っているシンプルな形ですが、カウンターで奥行がとても深いので、可動棚を扉の手前ギリギリまで作ってしまうと、奥のものが取り出しにくいと思いまして、可動棚を少し奥に引っ込めて、手前に背の高いものなどをちょっと置いて置けるようにしました。

通常私たちが作る家具の構造となる部分は、反りが出にくかったり軽くしやすかったりと使いやすい突板を用いることが多いのです。
キッチンのように水回りだと湿気や水ハネなどを考えると、無垢材をそのまま用いるよりは突板のほうが形をまとめやすく使っていても木の伸縮などが少ないので使いやすいのです。
でも、目に見える部分や手で触っていた部分は、やはり無垢材のほうが表情が豊かだったりするので使いたいわけです。
今回のKさんの場合はその木の表情も大切ですが、目地張りするには、突板を使うよりも無垢材を加工したほうが作りやすい。でも、無垢だと縮むので、板がまとめて大きく縮んでしまわないように、1枚ずつが微妙に縮むくらいですむように、適材適所で考えていきます。

炊飯器用スライドテーブル

食器棚の隣は炊飯器をしまうスライドテーブル。コンセントも奥につけていて、ご新居建築時にこの場所にアイランドカウンターを置くと想定して、カウンターで隠れる床面にフロアコンセントをつけています。そこに差し込んでこの炊飯器用の電源を確保しています。

無垢を使う場合、私たちは静岡の材木屋さんから材を仕入れるのですが、仕入れた材というのは、きれいに四角いものではなく丸太を大きな鋸で挽いた状態の表面がボコボコしてささくれ立った状態でここに届くのです。
それを、使うサイズや枚数に応じて選んで、まずは仕上がりのサイズよりも一回り大きなサイズにカットし、削っていくのです。
それから、養生。養生とは板を寝かせて空気に触れさせることです。今までかぶっていた荒っぽい表皮を削るときれいな表情が出てきます。でも、その状態ですぐに箱にしたり、扉にしたりすると、新しい表面に湿気を取り込んだり、放出したりして、木がアッと今に動くことがあるのです。少なからずどんな木も少しは動くのです。そうなると、箱は歪むし、扉はガタつくし、引き出しは開かなくなっちゃう。
それを避けるために、一回り大きなサイズにしておいて、1週間から10日ほど平らにして、地面に接しないようにして寝かせておくのです。動きの激しい木はそれでむくむく動いてくる。動きが大きすぎると、一回り大きなサイズでも足りなくなっちゃうことがあるけれど、だいたいみんな少し動く程度で落ち着いてくれます。(時々使う軽い木たちは、このくらい置いてもなかなか動きが止まらなかったりします。)そうしてから、いよいよ仕上がりのサイズに加工をしてそれから初めて広い板にしたり、扉にしたりと細かい加工をしていくのです。

クルミとステンレスヘアラインのアイランドカウンター

炊飯器のスライドテーブルの下は、深めの引き出し。「今はまだ持て余しています。」ということですが、ここにはストックの食品や、乾物、お菓子などかさばるものが入れやすいかと思っております。

こういう工程を踏んでいくので、突板を使うよりも加工手間が掛かったりするのです。木によっては、カットしてみると割れて使えない部分が出てきたり、カットしている最中に熱で反りはじめたり、一台の家具を作るにも使えなくなってしまう部分が出てくるのです。それを無駄なく大事に使うことを考えながらやっていくと、なかなかコストが高くなってしまったりするのです。
そのあたりをうまく調整しながら、Kさんの希望に合った形を考えていきます。
当初はナラで作ろうかと思ったのですが、やはりコストが高くなってしまい、もう少し手軽に使えて魅力的な木を模索している中で出てきたのがクルミです、ブラックウォールナットとはまた違うクルミの木は、小節があったり、シミのような線がときおり入ったりするのですが、それが木の良い表情だって言ってくださる方が多く、Kさんにもとても気に入って頂けたのでした。

Kさん、いろいろありがとうございました。
また、呼んで頂ける日を楽しみにしております。

キッチンとダイニングを分けるクルミとステンレスのアイランドカウンター

価格:410,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は18,000円から)

ちょっと関わりのありそうな家具たち