懐かしさをもとめて

「タモのテレビボードのオーダー」

世田谷 O様

design:Oさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kouhei kobayashi/iku nogami
painting:kouhei kobayaku/iku nogami

タモ板目の壁面収納と本棚

こちらがテレビボード。今回はタモの板目材を使って製作しています。色はいつもの明るめなナチュラルな色ではなく、どこか懐かしい印象になるように、スこち茶色を入れたオイルで塗装しています。

最初にOさんが考えていたのは、キッチンと洗面台でした。でも、建売の場合はなかなか制約が出てきてしまうのか、いろいろとお話を進めていくうちに、キッチンも洗面台も他の業者さんが絡んできてしまう家具は取り止めとなり、代わりにテレビボードとローボードのお話しを進めることになっていったのでした。

タモ板目の壁面収納と本棚

こちらが本棚。上下セパレートにしたローボードとオープン棚も魅力的でしたが、この行き止まりみたいな場所にはこういうふうに本がずらっと並んでいる様子があると、何となく秘密の部屋っぽくて良い。(全然秘密じゃなくってむしろリビングですが。)

「家のイメージとしては、無垢材をできるだけ多く使い、シンプルでなんとなく懐かしさのある家にしたいと考えています。」

タモのリビングボードとローボード

最初のスケッチ。

そして、最初のキッチンのご相談の時にお聞きしていたこの言葉を大切に、Oさんとかたち作りを進めて言ったのです。
「テレビボードのイメージは、48インチのTVを収納できる壁付けの背面収納で、その他機器はDVDがありますのでそれが入るようにしたいです。ほかに収納したいのは、本や雑誌(結構多いです)、CD、DVD、子供のおもちゃ類を収納したいと思っています。、ローボードのほうは、上段に作り付けの棚がつくので高さ900×奥行500×幅約2000の扉付きの棚を検討しています。
収納したいのは、本や雑誌、薬箱や書類などの日常の細々したものです。
なお、床は無垢材で考えており、家具のイメージは木の風合いを活かしたものにしたいと思っています。色はちょっと濃い目の茶くらいが希望です。」
と言うご要望。

タモ板目の壁面収納と本棚

テレビボードのAV機器収納部の両側は引き出しの中に引き出しが隠れている作りです。

その形を元に原案を考え、それから数回やり取りを重ねて一つの方向がまとまりました。
そして、一度こちらまでいらして頂けることに。

「プランありがとうございました。それでは一度お伺いさせて頂きます。主人が伺いますので。」

おや、今までずっと奥様とやり取りしていたのにご主人がいらっしゃるとのこと。どうなるのでしょうか。

タモ板目の壁面収納と本棚

下段の引き出しだけが開いた様子。


タモ板目の壁面収納と本棚

上段の引き出しも開いた様子。このメリットとしては、閉めた時にすっきり見えることかな。

そして、打ち合わせ当日、やはりいらして下さったのはご主人。
今までのお話しの流れは奥様と一緒に相談されていたと思いますが、細かいニュアンスは、はたして共有できますでしょうか・・。
と、少し心配していました。
今までの打ち合わせで、女性のほうがどちらかと言うとフランクに自分の思いを伝えてくださる傾向があります。もちろん、今までメールをやり取りしていたから、という安心感もあってのことだと思いますが。でも男性の場合は、実際に会って話をしてみてもなかなか気持ちのその先までは分かりづらいものです。でも、私も同じく家具を頼む立場だったらご主人皆さんのように一歩下がって構えてしまうと思います。(笑)
だから、お互いを知りあうのに時間が掛かるのです。

タモ板目の壁面収納と本棚

もうひとつ変わった細工をしたのが、コンセントスペースを設けたところ。家具を設置する右側壁にコンセントがあったので、右の引き出しのさらに右端にちょっとしたスペースを作って、そこでコンセントを差して、引き出しの奥に線を通すような細工をしたのです。閉めると見えなくなるのですっきり。

学生時代もそうだった経験ありませんでしょうか。
女子たちはクラス替え早々に一緒にお弁当を食べ始めたりするけれど、男子は5月の連休が終わるころまでは部活でも始めないとなかなか輪を作ることができずに一人で弁当を食べていたり。男のほうが何かと不器用です。
でも、一度分かり合ってしまうと、むしろ女性よりものめり込んでくるのが男性。
Oさんもそれほど頑なな印象はありませんでしたが、最初は少しだけ俯瞰した表情で、私の話を聞いていたように感じます。
テレビボードはほぼ奥様とのメールのやり取りで完結していたので、打ち合わせは比較的簡単に済んで、素材も確認して頂いて、私たちが鈍化ふうに家具を作っているかも知って頂けて、さてもう一台のローボードのしましょう、となりまして、細かに説明をしていますと、おもむろに「このボードの上に吊戸棚をつけて収納量を増やすのも良いですね。」とご主人。聞くと、最初に聞いていたとおりにたくさんの書籍をお持ちで、ナショナルジオグラフィックをずっと揃えていてそれをしまうところがないっていうお話になったのです。何だかそこで私もとても気持ちがOさんに近づいてきて、「このボードの上にシンプルなこげ茶色の本棚があって、そこにあの黄色い背表紙がずらっと並んだらきれいですよね。」って。
だんだんと、二人で盛り上がってしまって、「それでは、この上の本棚を作る方向で。」なんてお話をまとめてしまって。
さて、どうなるのでしょう・・。

タモ板目の壁面収納と本棚

上の収納部には、書類などがぎっしり。

そうして、そのプランを図面にして、ひとりで「うはは、いーね、いーね。」とニンマリしていたのですが、ご主人、あれから奥様といろいろと打ち合わせされたようでして、、最終的には、扉付きのローボードとその上に宙に浮いたオープンの本棚と言うちょっとすらっとした形ではなく、床から天井までオープンの本棚にしましょう、と言う形でまとまったのでした・・。

タモ板目の壁面収納と本棚

本棚の様子。最初は、すべて固定棚にして、本棚兼飾り棚のように規則正しいマス目にしようという話もあったのですが、使い勝手優先で高さを変えられるような構造にしました。ちなみに、固定棚と可動棚、どちらのほうがコストが掛からずに作れるかと言うと、一般的には可動棚のほうが低コストで作れます。普通は反対に思われてしまうのですが、作る手間が固定棚のほうが掛かるのです。

でもね、こうしてよく見るとオープンの本棚で良かったのかもしれません。こっそり巣にこもって床から天井までのずらっとした書籍に囲まれて、好きな本を眺める、そう言うのってとても気持ちがうれしくなる。
ご主人がソファにふわっと座ってそういう風に本を眺める姿が目に浮かびます。
その横で奥様が大きなテレビをお子さんと眺めながら、コーヒーの良い香りが漂うこの場所で良い一日が今日も暮れていく。(伺ったのは午前中でしたが。)
そう言う懐かしさが、たしかにお邪魔した時にはありました。良い空気でした。

ありがとうございました。

タモ板目の壁面収納と本棚

A4サイズを基準に考えた本棚。大きな画集などはこのような感じ。お仕事関係の本でいっぱい。

タモのテレビボード

価格:600,000円(制作費・塗装費)

タモの本棚

価格:360,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は60,000円から)

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