土間

「ナラ板目材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン」

綱島 Z様

design:内田雄介設計室
planning:内田雄介設計室/daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:Zさん

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

客間から眺めた時のキッチン。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

お勝手口からキッチンを眺めた様子。

Zさんからキッチンカタログを希望されるメールを頂きました。そこには、「空間イメージを固める上でインテリア・家具のテイストから考えてみるのも有効ですと建築家の内田さんにアドバイス頂きました。ホームページで紹介されているオーダー家具を見て私たちのイメージに近いかもと感じています。直に見学できる家具、またはイベント等があればご連絡頂きたいです。」と言うお便りが書かれていたのです。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

アイランドキッチンのスケッチ。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

コンロ側キッチンのスケッチ。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

細長い通路のような部屋から見たキッチン。浮いているように見えますね。

内田さんといえば、アトリエを備えたご自宅を新築される際に作らせて頂いたキッチンとバックカウンターがとても印象的で、あのあと多くのお客様から好評いただいていたのをふと思い出しました。きっと魅力的な空間になるだろうから、またお手伝いさせて頂けるとうれしいなあ。
カタログをお送りしてしましてしばらくしました頃に、一度こちらにキッチンを見にいらして下さったのだそうです。タイミングが合わず、私は不在の時でしたので、詳しくいろいろなお話を聞かせて頂くことはできなかったのですが、私たちのことととても気に入ってくださったのでした。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

洗剤ポケット。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

カウンタートップの印象。ステンレスバイブレーション仕上げは、ヘアライン仕上げよりもマットな印象で、鈍く光るのが特長。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

今回は、水切りプレートも作らせて頂きました。水切りプレートを置いた時にカウンタートップとフラットになるようにシンクに段がついています。

その頃、内田さんからも連絡が入ってきました。
「早速ですが、施主の方から相談させていただいているかと存じますが、現在私の方で設計を行っている横浜市綱島の物件についてご連絡致しました。
現在、鵠沼海岸に住んでいる施主のZ様は、私の大学時代からの友人でもあります。
今回、綱島のご実家の全面改装の依頼を受け基本設計を進めておりました。
我が家のキッチンや、今井さんのHPの制作例を大変気に入ってくれ、また私としても今回の住まいにおいても是非とも今井さんにお願いできればと思い、紹介させていただいた次第です。
現在、私の方は実施設計に取りかかっている最中です。
キッチンの方もより詳細な打ち合わせが必要になってくるかと存じます。よろしければ今後は私も打ち合わせに参加させて頂ければと思っております。
また、ご一緒に仕事が出来るのを楽しみにしております。」
楽しみです。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

シンク前の収納部分の様子。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

ミーレの幅60cmタイプの食器洗浄機を導入。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

食器洗浄機の巾木部分だけ、取り外せるようにしないといけなかったので、このような納まりにしています。

それから、またしばらく経った頃、Zさんからのお便りが届きました。お待ちしておりました。
「以前カタログを頂戴しショールーム見学させて頂きました。イマイ様には会えずですが、ご作品を拝見しとても気に入っており、キッチン製作をお願いしたいと考えておりました。
建築家の内田さんとプランを練り、いよいよ実施設計の段階までこぎ着けてました。
またキッチンは床をモルタルで考えており、アイランドのカウンターをイメージ写真のように浮き上がった家具のように見せたいです。立ち上がりをモルタルで15cm程度上がらせてから濃い色系の木の側面があり、天板に人工石など・・。
詳細は打ち合わせの時にお話させて下さい。
今井様にもキッチン設計と製作をお願いしたいので打ち合わせの日取りをご調整お願いします。
我々の希望は来週以降の祝日、週末で予定は空けておりますが、、実は妻が臨月に入っております。出来ることなら産前に妻のイメージを本人からお伝え出来たらと考えています。直近で打ち合わせ可能な日を教えてください。
まずは日程のご連絡お待ちしております。」

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

シンク前の大きな引き出しを開けると、ゴミ箱が入るような引き出しにしています。

と、うれしいご連絡を頂いたのでした。
場所はここから近く、うさぎパンさんの家の近くです。さっそくお邪魔させて頂き、詳しいお話をお聞きすることになりました。
今お住まいの賃貸住宅はかなり小さな間取り。ご新居とは大きな間取りや広さも変わるので空間的なことは把握しづらいので、まずは図面を見ながら現在希望されている使い方や、実際に今キッチンを使っている様子などをお聞きしながら打ち合わせさせて頂きます。
最初にZさんが希望されていたイメージは、前述にもありますように浮いているアイランドキッチン。浮いているように見せるのに床材と同じような材でキッチンの巾木を作って、濃い色の箱がその上にドン、と座っている印象。
参考となるキッチンの写真を見せて頂きましたが、濃い色に着色したオーク材の少しグロス掛かった光沢がある塗装に、天然石なのか人工石なのか、表面がゴツゴツした火山岩のような印象で、なかなかリゾートホテルのようなちょっとキラッとした感じです。(表面がピカピカしているのではなく、何となくキラッとしている感じ。)

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

コンロ側の様子1。

なるほど。キッチンはこのイメージだと内田さんの考えている空間はどのような感じなのかな。
何となく、内田さんのご自宅とはまた違うテイストでしたので悩ましい想いで考えます。
でもその後、さらに詳しくお話を聞いて私たち太作った皆さんのキッチンを見て頂くと、それほどラグジュアリーな感じではなく、もっと自然な印象のキッチンをイメージされていることが分かってきたのです。
その印象でしたら、私の思いが伝えやすい印象でもありますので、より具体的な提案や確認をして、形を一つにまとめていきました。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

コンロ側の様子2。

おおよその形がまとまりましたら、今度は内田さんが私たちのところまで来て下さいました。
久しぶりにお会いするのですが、内田さんの柔らかな印象はいつものままでした。
ここで、どんなキッチンを考えているかを報告させて頂き、さらに内田さんからここがどんな空間になるのかをお知らせ頂き、ようやく一つの方向にまとまりました。
すごく魅力的なマンションなので、どんな風に仕上がるのかが楽しみです。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

吊戸棚のバランスは、Zさんの提案で上部を開けるところと閉じるところをうまく組み合わせています。また、レンジフードはなるべく出っ張らないように吊戸棚と奥行を揃えたDoubleのレンジフードを導入しています。

それから、いよいよ解体が始まり大工工事が始まりました。
現場で給排水管の位置出しなどを兼ねた打合せをするということで、その変わったマンションにはいじめて伺わせて頂きました。
場所は綱島で、駅から数分のところなので、人通りもそれなりに多いのですが、このあたりは軒並みが古く、その中のひとつがZさんのマンションでした。
築40年と言っていたでしょうか・・。
今よく見かけるマンションと違って、コンクリートでできた巨大な一戸建て、のような印象です。
軒先には、鉢植えがたくさん並び、ガラスがはまった古い框扉は常に開いたままで、1フロアに3世帯で3階建てのこじんまりしたマンション。その最上階で、屋根のように部屋がベロンと延びたところがZさんのご新居となる現場でした。
あの延びた場所は何だろう・・。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

吊戸棚の下には、薄型のLEDダウンライトを組み込みました。

エレベーターはないのですが、広い階段があり搬入も大丈夫なことを確認しながら部屋に辿り着きます。私が済んでいた団地についていたような古い鉄扉を叩いてはいると、ほぼスケルトン状態になった空間が現れました。
もうすでにZさんと内田さんと工務店さんが打ち合わせをされていました。ふと見ると先ほどの長い通路のようなところは部屋でした。
幅1間半くらいで、長さが10メートルくらいはあるのでしょうか。ものすごい遠近感で、はるか彼方につき当りの掃き出し窓が見えます。
おぉ、不思議な間取り、不思議な間取り。
その通路のようなスペースの反対にも部屋があり、キッチンは玄関を入ってすぐの広間に据えられる予定です。まるでスタジオのような印象になるのでしょうか。
さっそくキッチンの設置寸法や配管の位置や電気の位置などを確認して、製作に入れるように細かい部分を決めていきます。
製作自体は、もう少し現場の様子が見えてきてからあらためて採寸をする必要があるのですが、決められる部分は決めてようやくほぼプランがまとまりました。
それから、大工さんが壁の造作が終わるころにあらためて現地を確認させて頂き、いよいよ製作に入ります。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

建築士の内田雄介さん。

今回は、「フレキシブルボード」という、通常は不燃性を持たせるべき部分に貼る下地材を仕上げ材として巾木に使います。もちろん木よりも硬いので、きれいに作れるかがやってみないと分からない部分があります。さらにはキッチンを床から20cmほど浮かせて見せる部分と食器洗浄機の納まりがきちんと行くかどうかもある程度形になってみないと見えない部分もあります。
さらには、この部屋が最上階ということで、屋上の水はけをよくするための水勾配がキッチンの天井面に現れてしまっていました。(右と左で天井高さが違うのです。)そのあたりをどう吸収するか、レンジフードもそれに合わせて加工できるものなのか、いろいろな課題がありますがすべては始めてみないと見えない部分です。
製作を進めるのです。
その中でも一番心配だったのは、レンジフード。おそらくメカの部分は問題なく納まるのですが、ダクトカバーがきれいに納まるかどうか・・。
あらかじめZさんにもその点を了承頂き、カバーを一度解体して、部分的にカットし、加工してから再組立てします。
こういうことがレンジフードの説明書を見るだけである程度できるかどうか判断可能ならもう少し不安要素は減るのですが、説明書だけだと細かい寸法が出ていなかったりするので、Zさんに現物を購入してもらった跡にこちらに送ってもらい、実測しながら検討したのでした。こういうのはオーダーじゃないと難しい部分でもあります。
うまく梁型に合わせて加工もできまして、ダクトもつなげることができてひと安心。
そのほかの部分は、細かいだけに時間はかかりましたが、無事に設置完了。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

シンク側の引き出しの様子、その1。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

シンク側の引き出しの様子、その2。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

アイランドキッチンの玄関側から見た扉の感じ。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

コンロ側の引き出しの様子、その1。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

コンロ側の引き出しの様子、その2。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

コンロ側の引き出しの様子、その3。コンロ横の調味料用の引き出し。

モダンリビング賞を受賞したナラのステンレスバイブレーションのキッチン

コンロ側の引き出しの様子、その4。コンロ下のスライドワイヤーシェルフ。

それから、全体の工事も無事に終わって、お引き渡しも内田さんにお願いできることになり無事に済ませたのですが、その後なかなかZさんにお会いする機会がなかったのですが、その間に内田さんがご自宅の時と同じくあるコンテストに参加されていたのだそうで、ある日、「イマイさん、実は先日製作してくださったZさんのプランがコンテストに入賞しまして、イマイさんもその表彰式にぜひメーカーとして出席して頂けませんか。」と言われたのです。
「えっ!」

それからはバタバタと、アキコも一緒に(一人だと心細いので・・。)行くことになり、内田さんも奥様と一緒に出席されて、Zさんとも本当に久しぶりにお会いすることができて、それから無事めでたく、リネアタラーラさんが主宰する「オーダーキッチングランプリSHOW 2016」の表彰式が表参道のミーレさんのショールームで行なわれて、内田さんのプランが「モダンリビング賞」というすてきな賞を頂くことができたのでした。
「オーダーキッチングランプリSHOW 2016」
http://linea-talara.com/2016-fantastic-kitchen-competition-award/

今まで家具作りにおいても、キッチン作りにおいても、このように公に評価して頂く機会ってなかったものですから、このような場に立てることがとてもうれしく、同じ製作者の立場であるリネアタラーラの社長さんにもとてもありがたいお言葉を頂き、お話ししたかった作家さんとも知り合うきっかけができたりと、それはもううれしい日だったのです。
内田さん、Zさん、ありがとうございました。

キッチン仕上
天板 ステンレスバイブレーション
扉・前板 ナラ板目突板練り付け
本体外側 ナラ板目突板練り付け
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 ワトコオイル塗装仕上げ(Zさんが施工)

ナラ板目材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

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