もの作りが好きということ
「タモ柾目のリビング壁面収納のオーダー」
練馬 T様
design:Tさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:masakane murakami
painting:iku nogami
「はじめまして、Tと申します。ホームページから職人魂を感じられる素晴らしい家具を作られていると思い、ご連絡させていただきました。注文建築で建てたいと長らく土地を探していましたが、なかなか見つからないので、建売を購入しました。2月末の引き渡しです。一部でもこだわりたいと思い、キッチンの背面収納から壁面のデスクまでを作りたいと考えています。まだ自分でもイメージが固まっていませんが、タモ材を柿渋で仕上げたいな、などと考えています。是非ともイマイさんと良い物を作りたいと考えていますのでご連絡よろしくお願いします。」
Tさんからご相談を頂きました。
イマイさんと良いものを作りたいか、うれしいなあ。
ちょうど仕事が立て込んでいる時期でしたので、「すみませんが、図面と御見積を作るのにしばらくお時間を頂けますか」と、まずはお伝えしました。
すると、
「早速のお返事ありがとうございます。特段急ぎませんのでご安心ください。どんな図面が上がってくるか楽しみです。
(人間は案外何かを心待ちにしている時がワクワクして一番楽しい時間だったりするものです) 納期も特に急ぎません。
また、実際に暮らしてみて、例えば引き出しの深さだったり、配置だったり色々な事が見えてくると思いますので、ゆっくりとご相談させていただきたいと思います。」
良いですね、心待ちにしている時のワクワクって。
それから、頂いていたイメージに基づいて、それを製作可能なかたちへと図面に書き起こしてどのくらいの費用が掛かるかを考えていきます。
シンプルできれいな形にまとまりそうです。
さっそく、Tさんにそのプランと金額をお伝えしました。
するとまもなく、Tさんがお電話をくださいまして、その内容でご依頼を頂けることに。
ありがとうございます。
それでは、ということでまずは家具の設置場所を拝見させて頂くことになりました。
杉並区や練馬区は、ここからはそれなりに遠い場所なのですが、よくご相談を頂くことが多い地域でもあります。
ちょうどこの時期もキッチンを作らせて頂く方、食器棚を作らせて頂く方がすぐそばにいらっしゃって、このあたりをよく往復している日々でした。
それでも新しい町を歩くのはすてきです。
いつもは車で通り過ぎてしまう場所にお寺があったり、おいしそうなお店があったり。
暮らしも町もいろんな匂いがする場所ほど魅力的だったりします。
井荻の駅を降りてから20分ほど歩いて、Tさんのお宅に辿り着きました。
もともと建てられていた大きな建物が解体されて、分譲されたというこの場所は、すぐ隣に環状8号線なのに、どこかのんびり静かで、この街区だけ広々としていたのでした。
そののんびりとした空気の中、せわしくされていたのがTさんご夫婦。
本格的なお引越しの前に細かい作業をしていたのでした。
「こんにちは。」
「あっ、イマイさんですか。いらっしゃいませ。まだ何もないのですが、どうぞ上がってください。」
私よりも少し年上の優しい眼差しの男性が案内してくださいました。
間もなく奥様もいらっしゃって、この家具についていろいろと打ち合わせます。
ほぼ図面の通りで決まっていた部分ですが、やはり顔を合わせながらお話していくと、いろいろなものが見えてきます。
リビングからドンと目に入る部屋のメインになる家具。どう見せたいか、食器棚としてどう使いたいか、ご主人と奥様の意見をお伺いして、ようやく一つの形にまとまりました。
「楽しみにしております。」
はい、頑張ります。
今回特長的になるのが、KUMA鍛鉄工房さんのハンドル。何度も使わせて頂いておりますが、毎回その打ち味によって微妙に表情が変わって美しいハンドル。
そういう手の跡が残るものを使いたいって、Tさんが言ってくださったのがとてもうれしいのです。
今回は、いつもの長さのハンドルだけではなく、いつもよりも長いものを作ってもらって、良い雰囲気になりそうです。
今回は、奥様の希望で静かな印象のタモの柾目(木目がまっすぐなもの)材を使って作ることになったので、ハンドルの表情が良く引き立ったのでした。
またこの柾目が玄関を入ってからすぐに目に入ってくるので、その木目の流れが自然とリビングへと導いてくれるのでした。
家具はTさんのお引越しが終わってしばらくした頃に取付に伺わせて頂きました。
家具の設置後にお茶を頂ながらTさんのお話を伺います。
ものを作ることが好きだというTさん。お茶を頂いている時に目に留まったのが、キッチンの体面に置かれているシェルフでした。
「もしかして、これもお作りになったのですか。」
そう聞いてみると、
「プロの方に見て頂くのはお恥ずかしいですが、自分でホームセンターで材を用意して作ったのです。」
そう照れ笑いしながら教えてくださいました。
手作りというよりももっとしっかりとした作りで、とても日曜大工でできた簡易的なものには見えませんでした。
「いろいろと自分で手を動かすのが好きなのです。最初はね、このリビングの家具も自分で‥、なんて思ったのですが、やっぱり大きくて家の顔になるわけですから、きちんと作ってもらいたいなって思って、家具屋さんを探し始めたのです。」
なるほど、でもすばらしです。
そのあと、Tさんからお便りが届きました。
「昨日は家具の設置ありがとうございました。
おかげさまで最初に思い描いていた以上の家具と暮らしていけることになり、家族全員幸せな気持でいます。
イマイさんと出会う前、この家を購入してすぐこのような家具を作りたいと思い、業者さん探しと出来上がりのイメージ作りを始めました。
タモかナラにしたいと最後まで悩みましたが、我が家のシンプルなデザインの横長の家具にはナラのように虎斑が入らないタモの柾目がデザインと材木がお互いに引き立てあっている様な気がします。
もちろん、それにはイマイさんの技術とテイストと職人魂がこの家具に注がれているからこそですが。
家具職人さんには職人の一面と作家(芸術家)の一面が必要な気がするのですが、そのバランスが取れている時がユーザーからすると一番の家具屋さんだと思うのですが、どちらかの面に偏るとユーザーからは自分よがりな家具屋さんになってしまう気がするのです。
イマイさんは絶妙にバランスが取れている家具屋さんに思えるます。
これからも長くお付き合いさせていただきたいと思っています。
イマイさんの家具を見たいけど寒川までは行きにくい様なお客様が居たらご案内していただいても構いませんよ。イマイさんの家具に惚れた方なら歓迎します。
長文になりましたが、まずは感謝の思い伝えたくメールしています。
これからも素敵な家具屋さん職人さん作家さんでいてください。
ありがとうございました。」
うれしい言葉です。ありがとうございます。
とここで、家具納品までにお話は終わるのですが、後日、和たちが参加したクラフトマーケットにジャケットとハットを被った物静かな男性が一人いらっしゃった時は、Tさんとは気づかず失礼しました。
「こんにちは、良かったら手に取ってご覧になってくださいね。」と声を掛けたところで、ハットを取って「イマイさん。」と柔和な表情を見せてくれた時のことを今でもにこやかに思い出してしまいます。
タモ柾目のカップボードとリビングボード
価格:750,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は25,000円から、取付施工費は40,000円から)
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