ロックなあなた
「ナラ節アリ材セパレートタイプの食器棚とカウンター下収納のオーダー」
横浜 N様
design:Nさん
planning:daisuke imai
producer:iku nogami/hiroyuki kai
painting:iku nogami/hiroyuki kai
正直、お会いするまでどのようなお人柄かってことは、全く分かりません。
私の仕事の進め方は、ほとんどメールで進めることが多いのです。
電話はまず難しいことが多くて、FAXを持っているご家庭は少なくなっているし、やっぱり今のところはメールかなあ。
電話ってその場ですぐに返事が聞けるぶん、記録を残しにくかったり、内容を深く考えたうえでお返事することが難しい時もあります。
「すみません、初めてお電話するのですが、○○のような○○を○○のようなサイズで作ると、大体いくらくらいになりますか。」
このようにお電話でご相談頂くことは多いのですが、お電話でお話ししながら、この樹種だとこう使って、このサイズだとこういうふうに材料取りをしてって、その場で考えながらお話しするのはなかなか難しかったりしまして。
そこで、今まで作ってきた作例の中から、おおよその金額をお伝えすることにあるのですが、その時はそのように作ったということをお伝えできても、いまそのご相談くださった方が思う形がどのような形で実現できて、どのくらいのコストが掛かるのかを電話で伝えるのは、なかなか大変。
「ある程度の目安を教えて頂けると助かります。」と言われるのですが、その後、その方のご要望をお伺いすると、思っているよりも複雑だったりして結構伝えた金額から離れたものをお伝えすることも多かったりします。
だから、あまり参考にならないかもしれなくって。
ですので、メールで頂いた内容を一度きちんとまとめ直して、どのような形でどのくらいの金額になるかを文章で書き連ねることで、その方に分かって頂きたい、という思いがあります。
このような理由で、メールで進めることが多いのですが、メールをやり取りする中で(あぁ、この方はきっとこのような人であろう。)なんて、そのお人柄を一人思いを巡らせるのですが、お会いしてみるとイメージと異なることってなかなか多かったりします。
Nさんもその一人でして、最初のイメージではもっとおっとりした女性なのだろうとずっと思っておりました。
最初にメール頂いた時に送られてきた参考写真が、白い細かな横格子の窓から明るい日差しが入り込んで、薄緑のタイルが張られた壁面に取り付けられた細い格子が特長の白く塗られた吊戸棚のガラス扉越しには白いティーカップが並んで、そして、白い石でできたキッチンのワークトップの下には手前のリビングに向かって作られている赤茶色く塗装されたオークのちょっとクラシカルな印象のキャビネット。(海外の雑誌のインテリアの写真を引用くださったので、そのまま写真掲載するといけませんので、文章でお伝えしております。)
どちらかというと、すこし涼しい地方のヨーロッパの午後3時という印象です。
ですので、Nさんもきっと紅茶を飲みながら風にひらりとされているようなお人柄だと思いながらメールのやり取りをさせて頂いておりました。
予定されていたマンションの内覧会の日程にも間に合いそうでしたので、さっそく予定を組んでお伺いすることに。
どこかで聞いたことがある住所だなと思いましたら、なんと「つたえる楽しさむずかしさ」のTさんと同じマンション。世帯数の多いマンションだとこういう偶然は、施工のしやすさもあったりしてなぜかうれしいですね。
おぉ、イメージと違うぞ。(Nさんすみません!)
どこか柔らかな印象をイメージしていたのですが、とてもはっきりとしっかりとした佇まいで、意見もお持ちで、そしてとてもお若い。
自分の年を感じてしまいますね。
そして、実際にリビングに入らせて頂いて、持参した木のサンプルをお見せしながら、どういう形でまとめると良いかをお話ししていきます。
すると、赤茶色のオークでおとなしい印象で考えていた柄は節がある表情豊かな素材に変わり、食器棚とカウンター下収納が独立したそれぞれの家具と考えていたものが、リビングから見た時の印象を大切にして、さらにはこまごまとしたものをうまく隠せるようにしましょう、ということで、キッチンごと節ありオーク材で囲ってしまうことに。
「おとうさん」茅ケ崎のWさんのように。
そして家具の印象は、欧風なイメージというよりは、だんだんとNさんの好みが際立ってきてアメリカ東海岸あたりのクラフトマンシップあふれるイメージになっていったのでした。
家具のほうは、せっかくこれから新しく暮らす住まいですから、大掛かりな改装なせずに今ある状況を生かして、なるべくその手作りの表情が生きた家具にしましょうということになりまして、食器棚とカウンター下の収納は新しく作らせて頂きまして、対面カウンターはどうしましょうかと悩みましたが、このままの白いカウンターを生かして木口部分で印象を揃えることにしました。
こうして、ひと通りの家具を設置しまして、ハイこれで完了です。
だいぶ印象が変わりましたね。
上述のTさんとはまた違った印象にまとまりました。
そして、設置後に使っている様子を拝見させて頂きにお伺いしたですが、やはりそのテイストで整った空間で、そこかしこに手の跡が残る印象の空間になっておりましたが、Nさんのその仕草ひとつひとつがたおやかで、その空間が出す色とNさんの仕草が何というかブレのないロックな印象に移ったのです。
そうして、家具の使っている様子を見ながら、お茶を頂きながら、この家具がある暮らしのお話をお聞きする中で、お子さんの遊ぶスペースにあるとても印象深い小さな家具たちがあったのです。
「これですか。」とちょっと照れ笑いしながら、「実は私、こういうふうにコツコツ手を動かしながら作ることが好きなのです。」と教えてくださいました。
いやあ、気持ちのブレない人だなあ。
「そうなのですね、それならもしよかったら木工教室に参加してみませんか。」
「えっ、イマイさんのところでそういう教室も開いていらっしゃるのですか!ぜひ参加したいです。」
ということで、Nさん。その木工教室に2回もご参加くださって、すてきな作品を作ってくださいました。
2018年8月26日 「夏のクレミル 木工教室1日目が無事に終了しました。」
2018年12月2日 「クレミル2日目 「工房開放」1回目」
とてもたおやかに、しなやかな人でしたね。
節のあるナラのセパレートタイプの食器棚
価格:640,000円(制作費・塗装費)
節のあるナラのカウンター下収納
価格:370,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は80,000円から)