彩られていく
「ナラのセパレートタイプの食器棚のオーダー」
川越 S様
design:Sさん
planning:daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:yasukazu kanai
「本日お昼にお電話させていただきましたSと申します。
カウンターキッチンの背面カップボードの検討をしております。
カウンターと吊戸棚で、近いイメージとしましては、「つくる喜び、暮らす喜び」の府中のOさんの形が近いと思っております。
詳細に関しましては工房へお伺いしお話しさせていただければと思っております。
今週の日曜日の午後ならば何時でもお伺いできます。
よろしくお願いいたします。」
というメールを頂く少し前に、男性から食器棚についてのご相談でお電話を頂いていたのでした。
男の方で食器棚の相談とはなかなか珍しいのでした。
いらしてくださったSさんご夫婦はまだお若い。
いろいろとお話を聞いていると自分の昔が思い出されるように懐かしくなってきました。
私とアキコは27歳の時に結婚したのですが、暮らし始めた時のアパートは何もかもが新鮮で、私は今と同じく家具を作り続けていて、アキコは看護師として働いていて、なかなか時間がすれ違うことも多かったけれど、これからどんな暮らしが始まるのか、毎日が慌ただしくても週末さがみ野の駅前に買い物に出かけるだけでもワクワクしていたのでした。
そのあと、そういう時代だったのかアパートの家賃を払うくらいのコストで住めますよ、というお話で海老名の駅の近くに越してきたのですが、仕事柄なのかあまり家に対する思い入れはなくて、これから子供が生まれた時に(果たして自分が父親になんてなれるのだろうか‥)近くに学校があったり、駅から少しだけ離れた静かなところだったりと暮らすことの楽しさと、ずっと好きでいられる人とこれからどんな暮らしになるのかと暮らす楽しみにワクワクしていたなあ。
そうして、18年経つと、二人の娘はすっかり大きくなったし、私もおじさんになったし、アキコもおばさんになった。
いろいろとあったのですがうれしく楽しく年を重ねてこれたのだなあ。
お二人が顔を見合わせてはにかむ様子を見ているとそういう何か懐かしい気持ちが思い出されるのでした。
食器棚の形はね、おおよそまとまっていたので、なるべく早く新しい暮らしに食器棚を迎えたいということでさっそく川越までお邪魔させて頂きました。
「お邪魔します。」
良いね、キラキラしている。
アクセントカラーの入った壁紙。
少しずつ増えていくという家具たち。
そういう期待の中に私たちの食器棚を置かせてもらえるのはやはりうれしいです。
さっそく採寸をさせて頂いて、細かい部分について打ち合わせをしていきます。
当初は少し濃い色をまとめたいということで、ダイニングテーブルやテレいぼボードと同じくブラックウォールナット材を使って食器棚を作ろうかと考えていたのですが、ダイニングから見渡した時にやっぱり印象が重くなってしまうかな、ということになりまして、ただ、表情が豊かな材で作りたい、という思いもあって、ナラの突板をランダムに張ったもので仕上げることにしたのです。
塗装の色もクリアそのままではなく、少し重みを出すためにわずかに着色しています。
個人的には木が持つそのままの色が一番好きですが、着色することで導管に色が入るので、またクリアな仕上がりとは違った印象になります。
木のおもしろさです。
食器棚を納品させて頂いてから1か月ほど経った頃、ご挨拶に伺わせて頂きました。
以前お邪魔させて頂いた時からまた少しだけ部屋の印象が華やかになっていて、お二人で楽しそうに暮らしている様子を話してくださいました。
私たちが作っているのは家具なのかなあ。
自分としては家具を作ることでその人の暮らしを作ってゆけたらうれしいな。
私たちが絵の具や筆となって、暮らしに色をつけてゆくことができたのだなあと実感できる、そんな時間でした。
ナラランダム張り突板を使った食器棚
価格:640,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は35,000円から)
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