にぎやかになるので分けたのです

「ナラ板目のリビング壁面収納のオーダー」

都筑 S様

design:Sさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kouhei kobayashi
painting:kouhei kobayashi

大きな引き戸のあるリビングボード

玄関からリビングに入ってくるとこの印象。とても気持ちの良い空間なのですが、うまく区切っていかないとただの大広間に見えちゃう。そこで前回は食器棚を吹き抜けの少し手前の見切りになっている部分に合わせることで空間的に区切ったのでした。

Sさんのところに最初に作らせて頂いたのは、食器棚でしたね。
朗々と
あの時は、Sさんご夫婦といろいろ悩みながら食器棚の形を模索していましたね。
最終的にとてもシンプルな形でナラの表情がよく分かる美しい食器棚になったのですが、あのあとお話に出ていたのはアイランドキッチンの印象をあの食器棚に合わせられたら良いなということでした。
そして、食器棚の納品から1年後に再びメールを頂いたのでした。
「お世話になっております。昨年キッチンの背面収納を作成いただいたSです。
背面収納については引き続き快適に使えておりますが、この度リビングに収納をつけたいと思っております。」

大きな引き戸のあるリビングボード

奥様が気にしていたことのひとつに奥行がありました。奥行きが深ければ、いろいろなケースごとしまえるのですが、ソファを置いた時に反対側に余計に出っ張るようではいけない。ということで、A4サイズのものをケースにしまった状態で無理なく収納できる奥行に決めたのでした。

リビングでしたかー。
キッチンだと思ったのですが、たしかにあの時もリビングのお話もしていましたね。
食器棚の様子も見ておきたいところでしたので、さっそくお邪魔させて頂きました。
「こんにちは、Sさん。」
「こんにちは、イマイさん。今度はリビングの家具を考えて頂きたいと思いまして。実は子供が生まれて家族も増えたものですから。」
そういえば、食器棚を作らせて頂いていた時は奥様のおなかが大きかったですね。
そこで、これを機会に部屋を整え直そうというお話になったということでした。
で、ご主人の希望としては、壁一面にオープンの棚を作る感じ。
その中に部分的に扉をつけたところを設けて、そこを収納として、他の部分は物を飾れるようにしたいということだったのです。
こちらのYさんのような飾り棚の印象が近かったかな。
せんせいの部屋」南林間 Y様

大きな引き戸のあるリビングボード

使い勝手を考えて採用したのが、ソフトオープンとソフトクローズの機能。引き戸を開けて全開になる手前で戸がゆっくりと開き切り、閉める時も閉まる直前でゆっくりと閉まる。便利な金物があるのです。ひとつになるのが、その上吊レール。結構しっかりとアルミの印象が出てくるので、好みが分かれるところです。ただ上吊式でした車が不要なので、地板はフラットに仕上がりとてもすっきりした印象になります。

でも、この場所は気持ちの良い吹き抜けになっていて、天井まで作るとかなり大掛かりになるのと圧迫感が出てしまいそうなので、最初はオープンの棚を宙に浮かせて、高さも抑えた形で隣り合う食器棚の吊戸棚と高さを揃えると良い雰囲気でまとまりそうと考えておりました。
そのあとに奥様にお話を詳しく伺っていくと、奥様としては、どちらかというと飾るよりもこれから家族が増えて物も増えてくるだろうからやはり部屋をスッキリさせたくて、できればすべてしまって隠したい、というお話になったのです。堅実的です。

smy009

それからすっきり見せる要素の一つとなったのが、この天板。前回ご主人の意見で食器棚の天板を50ミリと厚く作ったのですが、これが今回リビングボードをうまく納めるのに大変役立ったのでした。今回のこの家具ですが、もちろんこの長さを1台で作って持ち運んでくることはできません。中央で2分割にして作っているのですが、そのつないだ部分は隠したい。そして、天板を1枚で作っても家具本体が2台に分かれていると、天板も2重に見える形になってしまう。そうすると、この空間ではちょっと野暮ったく見えちゃう。そこで、家具本体の天板にこの長い天板が覆いかぶさるようにしてつないだ部分を隠しているのです。そのためにもこの厚みがあって大正解でした。


大きな引き戸のあるリビングボード

続いてスッキリ見せる要素、その2。中央部分の引き戸を開けると縦の板が2枚重なっているのが分かりますね。左側の板は戸を閉めても隠れない板なのですが、右側の板は戸を閉めると隠れるのです。こうすることで戸を閉めた時の印象がかなりすっきりします。

なるほど、意見が分かれましたが、ここはご主人一歩引いて考えてくださって、やはり奥様が家で過ごす時間が長いですから奥様が快適に過ごせるように、ということで、全てを隠す収納にするという話で進んでいったのでした。
では、すべて隠すとしたらどんな形にしましょうか、ということになりました。
できればすっきり見せたいけれど、しまうものの出し入れに不便があってはせっかく作っても良いないわけです。
もともと食器棚ができる前までは玄関からこのリビングに入ってくると、まずこの吹き抜けのあるリビング、そしてその奥にアイランドキッチンがあって、という広い一間だったものですので、部屋としての印象が曖昧で少しバラバラとした印象があったのでした。
そこにメリハリをつけたいと思って食器棚のレイアウトをあのように考えて、キッチンという空間がまとまってきました。

大きな引き戸のあるリビングボード

当初、このリビングのお話を頂いた時にテレビボードも一緒に作ってL型の家具にしましょう、ということになっていました。というのもリビングボードで隠れちゃう位置にマルチメディアコンセントがあったので、テレビの位置を動かさないならきれいにL型に作ったほうがまとまるかなっていう思いがありましたので。ただそうすると、もしかしてテレビの位置を変える必要が出てきた時に良くないかもしれないということになりまして(今テレビを置いている位置の後ろが廊下からリビングに入る引き戸の引き込み部分だったので)テレビボードまでは作らないことになりました。そこで配線だけをスッキリとこの今使っているテレビボードまで回せるように工夫したのがこの部分です。この一番端の板は取り外せるようになっていて、外すとコンセントなどの抜き差しができます。


大きな引き戸のあるリビングボード

コンセント類が収納ですべて隠れて、内部からしか使えなくなってしまうので、天板の上でも使えるようにコンセントを設けました。

ではまだ間延びして見えるリビングをどのようにするかとなった時に、Sさんとしては大きめのソファを置くことで、何となく部屋の境にしたい、と考えておりました。
テレビの位置もおそらく今の位置から変えないだろうからソファの位置も今使っているコンパクトなソファが置かれた位置のままサイズをボリュームアップする形にしたいという思いがあったのです。
そうなるとソファで収納の扉が開かなくなる、もしくは開けづらくなりそうです。
では、どうしようかな、と3人で悩みまして、出た結論が大きな引き戸にして、引き戸の木目の印象が良く映えて部屋を引き立たせてくれたらよいな、ということになったのです。
そこで長さ3600ミリある収納の扉は4枚の引き戸にして、1枚の幅が約900ミリある大きな戸の収納となったのです。
「引き出しのような細かいものをしまう場所は必要でしょうか。」とあれこれ考えましたが、「引き戸を開けた中にバスケットなどを用意して、それにしまうようにするので表のデザインはなるべくシンプルに見せたいです。」というお二人の意見がまとまって、この形が完成しました。

大きな引き戸のあるリビングボード

リビングボードの高さを食器棚と揃えたことで、つながりがありつつもキッチンとリビングがきれいに分かれたと思います。よい印象になりました。

こういうことを書いちゃうと失礼かもしれませんが、まだ食器棚を作る前の最初の打ち合わせでお邪魔させて頂いた時は、いろいろなものがキッチンからリビングに並べられていて、うまくまとまるかな、ってちょっと心配だったのでした。
これほどすっきりした空間になるなんて、私もとてもうれしいです。
次こそはアイランドキッチンの周りでしょうか。
楽しみにしております、Sさん。

引き違い戸のオークリビングボード

価格:630,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は35,000円から)

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